すいー、すいー、すいー。
「それって楽しいの?」
「……やってみたらわかるんじゃね?」
「じゃあ、そうする!」
暇だし!
てことで、えーとノームのぶっちゃさんか。
せっかくなので、ぶっちゃさんの横に並んですいーっとしてみる。
おお、できたぞ。
「これって何かあるの?」
「何かって何が?」
「ゲーム的な何かだよ」
「ただのバグなんだから、あるわけがないだろ」
「ふーん?」
端から端まで横滑りしたら、また元の位置に戻って仲良く二人で並んで横滑り。
二人して並んで、すいー、すいー、と何度も繰り返す。
「カロンくんの中の人はねえ、今、このゲームを続けるかすごく迷ってるの」
気が付いたら、呟いちゃっていた。
同じ目線のかわいいノームちゃんが、カロンくんを振り向く。
「ゲームをやめたいならやめりゃ良いんじゃね? 続けたいなら続けりゃ良いだろ」
「そうなんだけどね……」
「どうせ遊びなんだから、好きにしろよ」
「だよねえ……カロンくん、ノームの踊り子なんですよ」
「あー……よりによって踊り子か。そりゃ厳しいだろうな」
「そんなにですか?」
「まあ、そんなにだな。どこかのギルドに拾ってもらえりゃまだマシかもだけど、えーと、カロンか。見たところカロンはソロでやってんだろ? 野良で踊り子は修羅の道すぎると思うわ」
「そろ……のら……?」
はて。また知らない言葉が出てきたぞ?
顔に出ていたらしくて、ぶっちゃさんが説明してくれる。
「ソロは単独行動、野良は固定パーティを組んで動いてないってことな」
「固定パーティとかあるんだ?」
「現実の友人知人と一緒に遊ぶとかなら普通だろ」
「ギルド名が出てない……ぶっちゃさんもソロなの?」
「ソロだな。回復職だから、ギルドの勧誘は多いんだけどなー。今のところは支障なく遊べてるから野良で良いかな」
「そっかー」
カロンくん、ギルドの勧誘とか一回も遭遇してないよ……がっくし。
「カロンのレベルは?」
「19歳だよ!」
「レベルだっての……ああ、レベル19なのか。野良専の踊り子で良くそこまで上がったな?」
「うん、親切な人たちのおかげだよー」
すいー、すいー、すいー。
何だろうこれ?
すごく楽しいとは言わないけど、妙に癖になるっていうか。
「寄生でそこまで成長したのか。神経が図太いな。すごいじゃん」
「褒められてる気がしない……ねえねえ、ぶっちゃさん。このバグ? とかいうのって他にもあるの?」
「お、気に入ったか?」
「気に入った!」
「よし、じゃあ次へ行こう。ストレス発散に良いのがあるから。教えてやるよ」
急に張り切りだしたぶっちゃさんのよくわからないノリで、移動することになった。
そんなこんなでぶっちゃさん的ツボスポットを連れまわされること数時間、別れ際になって、ぴこーんと音が鳴った。
『ぶっちゃからフレンド申請されました。登録しますか?』
はい いいえ
答は、「はい」だ。
その後、ぶっちゃさんとは街で遭遇すると挨拶して、一緒に横滑りをする仲になりました。
よくわからないノリで四人目のフレンドをゲットしたよ!




