表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/41

「遊んでる」




 正直なところ、前回みたいなことになった私は、月額料金を払っただけで課金もしてないんだしこのままゲームを止めても良いんじゃないかなって思ってた。

 仕事が忙がしかったから、飲み会があったから、合コン……は、なかった! 危うく見栄を張りそうになったわ……じゃなくて、だから次にログインしたのは一週間後のことだったんだ。

 でも、あれだね。

 ログインするまでは色々と考えてたって、ゲームが楽しいからゲームの世界に入っちゃうとまあいっか、てそう思った。私ってば単純……。

 みんなどうしているのかな~って思って、フレンド一覧を見ると刀戦士の雲海さんがもうレベル34歳におなりになっていた……はやいよ! いや、さすがだわ。

 さってと? ゲームにログインしてみたものの、何をしようか?

 手持ち無沙汰にとりあえずアヒル船長に乗っかって、街中を移動しながら屋台で買い食いして、屋台のおっちゃん相手にメンチ切って管を巻く。

 ……すると怒れるおっちゃんが私以上にエキサイトして、イカの串焼きを倍額で買うことになっちゃいました。ごめんおっちゃん。お詫びにイカの串焼きを二本買うから許して……。

 醤油ベースに焼かれたゲソを囓りながら、チャットの文字が目に入ったから何となくタップしてみる。

 いやあ、久々に見る気がするけどこれっていつ以来だっけか。あー……あ、そうだ。幸福の枝の時かな?

 前に見た時は魔境っぷりにすぐウインドウを閉じちゃったから、この機会に気分転換になるかもしれない。こんな日は、アヒル船長でドライブしながらぼうっと街並みを眺めてみるのも良いだろう。

 チャットは文字だけのやり取りなわけなんだけど、そこは相変わらず下世話な話や商売人やらで賑わっていた。


 ハイド:魚の武器がバグ利用で強化されてまーす。運営さん要チェック願いまーすw

 鯖吐:言っちゃめ、よ(・ω・)

 ハイド:笑うww おまえかくす気がないだろww

 カナリア:ここの運営はクソ。マジでクソ。フレがアカウントハックで引退したのに、運営からまだ回答がないらしい。オレも引退しまーす。


 あれ? この人、たしか前にもゲーム止めるとか言って……? まだいたのか。


 鯖吐:これは仕様です キリッ(・ω・)

 ハイド:うぜえwww 魚さばくぞコラ。刺身と日本酒最高!

 ゆきな:ザコは海へ帰れ

 ハイド:魚んとこのギルド壊滅したってのに元気すぎるだろ

 キリ・マクーレ:PKギルド妖精血盟をよろしくう~

 ハイド:!! な ん だ と

 鯖吐:おや、キリくんではないですか(・ω・)

 キリ・マクーレ:うちのギルマスさん、ちーす

 ハイド:まじでか……

 ろーりー¥:買い 邪妖の杖 20000000G ささやきお願いします


 ……あかん。

 ぽちっとな。

 たったの数分でお腹いっぱいになった気分になって、チャットウインドウをそっ閉じしたった。

 チャットの独特な世界観は、カロンくんの中の人にはまだ早い気がしたよ……。

 えっと。しばらく見ないうちに、なんかすごい荒廃した世界を覗いた気分なんですけど。あんなにログイン時のセキュリティがっちがちでもハッキングとか身近にあるんだね。怖いね…………はあ。

 しばらくご無沙汰している舞踏士ギルドに顔を出しても良いんだけど、正直今はそんな気分になれないっていうか………………うん、自分を誤魔化すのは良くないね。

 私は、悔しいんだ。

 カロンくんを軽く扱われて、散々馬鹿にされて、なのに本当に何もできなかったりなんかしたくせに、すき焼きさんにまでかばわれてしまった……。

 これを悔しがらずに、何を悔やしがるというのだろう。

 ただね、そうは言ってもさ。

 ……することがないんだよなー……。

 これが、現実。踊り子は、一人だと冒険ができない。そういうふうにできている。かといって、ゲーム内観光をする気分にもなれないんだから、困ったもんだ。

 何をしようかってなった。

 刺激を求めてうろうろと視線を彷徨わせるカロンくん。

 そしたら、不思議な行動をしているピンクなショートカットヘアのかわいい女の子なノームちゃんがいた。

 何やら、とある地点に飛び乗ってはすいーっと道の端から端まで横滑りしていて、何度もそれを繰り返しているようだ。

 一度気になり始めるといても立ってもいられなくなって、私はアヒル船長から降りて短い脚をフル稼働して走り寄る。

 かわいいノームちゃんに問いかけた。

「ねえ、何をしているの?」

「遊んでる」

「遊び……?」

 これが、治癒術士ぶっちゃさんとの出会いだったのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ