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だって踊り子だし?




 アヒル船長に乗ったカロンくんは、無事に冒険者ギルドへと到着した。

 扉が開きっぱなしになっていたのを良いことに、さっそく建物の中へ……冒険者ギルドは二階建ての木造の建物で、入ってすぐ右にはずっと笑顔固定のお姉さんがいて、左に受付カウンターがある。奥にはプレイヤーらしき人々やNPCがいてかなり賑わっていた。建物の奥の方には、二階への階段が見えている。

 さって、と。

 とりあえず来てみたものの、ここからどうしたら良いんだろうね?

 田舎者……もとい、初心者っぽさ丸出しで見回していると、ばちっと目が合う人がいた。

 白い聖職者っぽい法衣を着たプレイヤーネームなお姉さん。舞踏士ギルドのお姉様ほどのぼんっ! はないものの、こちらも中々の代物を持っていらっしゃる。リア友と同じくらいだからたぶんIだな。

 腰くらいまでのばした薄桃色の長髪が、なんとなく清楚っぽい。

 機会があれば逃さないカロンくんの中の人、さっそくててててってひとっ走りして、清楚なお姉さんの前に立つ。

 右手をしゅたっ! と上げたならば、首を傾げてあざといターン。

 ふふん、どうだいこの完璧なカロンくんの悩殺ポーズは!

「こんばんは!」

 ついでに挨拶も欠かさない。

 人間関係の基本中の基本、挨拶は欠かしてはいけませんよ。

 初対面、これすなわち第一印象においての唯一無二の機会である。ここを良くしなければ、コミュニケーションなんてものは成り立たない。ここをがんばらずに、いつがんばるというのだ。

 社会人ならこれは、とても大切なリアルスキルなんである。

「こんばんはー。もしかして初心者の方ですか?」

「あい! ここに来たら冒険ができると人から聞きまして」

「ああ……カロンさんの職業は………………」

 どうしたことか、お姉さんはカロンくんの頭上を見ながら沈黙した。

 キャラクターアバターの頭上には、仕様でキャラクターネームと職業を象った紋章が描かれている。人によっては他にも獲得した称号や所属ギルド名、私が初日にしていたみたいに『お小遣いちょーだい!』なんかのコメントを出している人もいる。

 それにしても、私の第六感がなんかぴこーんと反応したね。

 嫌な予感がするぞ!

 だが、そんなことは気にしたら負けだ。こういう時は、空気を読まないに限る。

「踊り子♪」

 自己紹介がてら、左足でステップを踏んでバク転ドヤァ。

 カロンくんの可愛さで誤魔化す作戦である。

 だって踊り子だし?

 技能で勝負するならこれでしょ。

 たぶん、この国の王様のお墨付きだぞ!

「あー、えっとその、ノームでさらに踊り子ですか……ノームもそうですけど、踊り子ってパーティを組む時にかなり嫌がられるんですよね……」

「そうなんですか? どうすれば良いですか? 私も遊びたいです」

「現状六人パーティ制じゃないですか。六人だと全員攻撃職で固めるか、盾火力回復の基本構成にするかで、あとは緩い遊び方の人だと盾火力回復と残り……って感じではあるんですけど、踊り子ってバフとデバフ特化じゃないですか。戦えない上に踊るから、すごい邪魔なんですよね」

 おうふ、的確すぎて胸の奥にぐさっときたね。

「お姉さん的には、私はどうすれば良いと思うですかー?」

「課金して転職とか……?」

 はい、却下。

「まだ一度も街から出たことがないんですよ。どうにかならないですかね?」

「うーん。ちょっと待ってくださいね。ギルメンに聞いてみます」

 よっし、勝った。

 ……とは、さすがに思えない。困ったな。これが初VRMMOなのに、踊り子だとVRMMOの醍醐味らしいパーティプレイとやらは難しいのかも。

 もうこれ、孤独に自分のゲームを遊ぶとか? 今のところ、ドワーフ先輩とか見たしそれでも良いような気がしてきたぞ。

 悲しい現実に思い悩んでいると、お姉さんの方は相談が終わったみたいだった。

「ギルメンと話が付きました。一度だけ私たちと旧地下道へ一緒してみますか?」

「あい。お願いします!」

 ここで遠慮なんかしても意味がない。

 「いいんですか?」とか社交辞令で言う人が多いのかもしれないけど、私は言わない。実際に行く気満々なんだから、せっかく譲ってくれてるんだし言うだけ相手に失礼だと思うんだ。

 てことで、お姉さんのギルメンとやら+カロンくんでお出かけすることになった。

 こんなことはもう二度とないかもだから、素直に楽しむことにするよ!




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