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ぴよぴよぴよぴよ。




 翌日、どうにか立ち直ってゲームにログインした私は、再び馬車に揺られて街へと戻ることになった。

 昨日は、言葉では言い表し尽くせないような色々があったせいで、燃え尽きて真っ白になってたからな。あれは、ほんと色んな意味で刺激的だった……。

 初めてのクエスト『王宮からの依頼』のクエスト報酬がまた、こうね……。

 私が王様に向かって「動く乗り物が欲しい」つったら、王様が良い笑顔で動く黄色いアヒルのおもちゃ(聖獣)を報酬として下賜してきたよ! 譲渡禁止付きのカロンくん専用アイテムだよ!

 マジですか、聖獣がこれで良いんでありますか。御者のおっちゃんが住処だっつってた綺麗な湖から顔をのぞかせる、間抜けなアヒル顔の何かが……棲んでるかもしれない……? とりあえず、めっちゃシュールですね。

 羞恥心と戦いながらも、ぴよぴよとうるさい黄色いアヒルのおもちゃを乗りこなすカロンくん……て、あれ? おかしいな。私のカロンくんがどんどん色物になっていく気がするよ……。

 馬車から降りて、さっそくカロンの中の人が命名したアヒル船長なるものに乗車。

 行け! 進め!

 ぴよぴよぴよぴよ……。

 道行く人々がどよっとざわついたのは、気のせいじゃないんだろうな。ぴよぴようるさくてごめんよー。でもごめん、カロンくんの中の人は歩きたくないんだよー。

 人生って案外長いものだし、人間てのは開き直りとあきらめが大切な時だってあると思うんだよね。

 ぴよぴよぴよぴよ……。

 見慣れてくると、アヒル船長の間抜け面も案外かわいいものですよ。なんたって「聖獣」だからね。

 なーんて現実逃避をしたくなる程度には、注目されている。

 ええい、見るな見るんじゃない。聖獣様のお通りだぞっ!

 ……私の心は聖獣乗り羞恥プレイと自力歩行の狭間で揺れ動き続けて、自力歩行さんが白旗をあげて退散した辺りで目的の舞踏士ギルドに到着した。

「よっこらしょ」

 アヒル船長(聖獣)から下車して、ぐいっと腰やら背中やらを伸ばす。

 いやー、乗りっぱなしも疲れるわー。まあ、アヒル船長(聖獣)の場合は、主に気疲れだけどね……。

 入手した乗り物をアイテムボックスに収納して、私は昨日ぶりになる舞踏士ギルドの扉を叩いた。




「おっ姉様ー。いるー?」

 相変わらず閑散としているギルドに、人の気配はない。

 でもなんとなく……というか、NPCだからこそのお約束っていうか、居る気がしたんだよね。

 でもね、いくらゲームっていってもさ。関わりのある場所がこんなに閑散としているのは、何だか寂しいかなあ。

「あら、坊やじゃないの。聞いたわよ? 王宮からもお褒めの言葉を頂いて、あたしは鼻が高いわ! これもカロンのおかげね!」

「えへへ……まあ、どちらかと言えば活躍したのはドワーフさんたちだったっす……」

「へえ、そうなの。良かったわね。それで、カロンの御用件は何かしら?」

 ――まさかの全力棒読み「良かったわね」だった。

 このゲーム、ゆるそうだし良く出来ているんだけど、ちょいちょいこういう残酷な何かを挟んでくるな。

「お姉様、私は冒険がしたいであります!」

「あらそうなの? だったらカロンが行くべきなのはここではないわね。地図を渡すからそこへ行ってみるといいわ」

「どういうこと?」

「冒険者ギルドへ行ってらっしゃい」

 カロンくんは片手でひょいっとつまみ上げられて、ぽいっと路上へ放り出された。

 右上の表示を見ると、街のマップに道筋と目的地らしき赤い点が表示されている。

 私は、思いました。

 舞踏士ギルドに人がいない原因の一部はあのお姉様だろうな、と。

 せっかくの巨乳が台無しになる、あの残念さ加減には感心するよ……。





~天の声~

黄色いアヒルのおもちゃ(聖獣) 移動速度+2

王様が踊り子のダンスに感動して下賜した逸品に、聖獣の魂の一部が宿りしもの。伝説の魔道具職人アイアイサーが最盛期に発表した意欲作だと云われている。同種族に限り二人乗りが可能。

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