キャラクター編
第三話はキャラクター編と参りましょう。
物語の重要な二要素、その一つですね。もう片方は無論、ストーリーです。
ストーリーをすっ飛ばしたのは、三人称視点である事と物語の大筋はあまり関係ないからです。
「じゃあキャラクターも三人称関係ないじゃないか!」という方。
はい、そうです。一人称でも言えることなので、正直三人称小説の書き方で言うのはドウなのか? と私自身ちょっと思いました。
ただ、個人的に思ったこと、考えたことがありまして、これは書くのに慣れていない! という方には伝えておかなければならないと思いまして、この編の作成と相成りました。
皆様、キャラクターの能力についてどのようにお考えですか?
アニメ、漫画、小説などで偉大な先人方が示してくれている通り、どんな能力であろうと使い道は大抵ありますし、それが上手くはまると、大なり小なり主人公らしさが生まれます。
登場人物の能力は、場合によって物語と密接に関わることもあり、それはこれを読んでくれている方々も重々承知だと存じます。
しかし一つ、初心者、あるいは戦闘描写が得意でないという方にお勧めしない能力の種類がたった一つだけあります。
――「器用万能」です。
端的に言えば、「一人で何でもこなせる」という事。普遍的なラノベのファンタジーなどで言えば、「剣も魔法も超一流、作戦立案や指揮も~」というお買い得パックのようなキャラクターですね。
パッと見、どんなことでも出来るっていうのは、単純に強いしいいじゃない! と思われるかもしれません。
しかし、そう簡単にはいかないんです。
まずは戦闘に於いての「なんでもできる」という事の弊害に於いて。戦闘とは基本、手札の切り合い、ぶつけ合いです。
ファンタジー世界で言えば剣、斧、弓、銃、といった武器による戦闘。魔法、罠(および罠への誘導)、小細工、徒手格闘などの技術といった類をぶつけ合い、最終的にそれらの総合が高い方が勝ちます。
トランプカードで言えば、(少し違いますが)大富豪のようなものでしょうか。
相手より強いカードを出す、相手の手札を予測し、カードの出し時は見計らう。カと思えば、革命で盤面をひっくり返す。これらがより複雑化したイメージでいいと思います。
そして、此処で出てくるのが「なんでもできる」の弊害。すなわち、手札が多すぎるんです。
剣も出来る! 弓も銃も撃てるし、魔法だって達人級! じゃあ、まずは何を切るの?
……戦闘描写になれない人などは、まずここでつまづいてしまいます。ようは、「出来る」ことが多すぎるがゆえに、「どれをする」か迷ってしまうのです。
上手い人になってくると、剣を使って近接戦闘、相手が離れれば武器を切り替えて弓or魔法、相手の魔法には魔法で……と言う感じで繋げていけるのですが、初心者の方や慣れない方はそうは行かないでしょう。
おそらくは、戦い方に偏りが出て、それを修正しようとして失敗し、結果どれもこれも中途半端になってしまう事もあると思います。
戦闘以外では、例えば岩を持ち上げて見せるとしましょう。素の筋力で持ち上げるか、魔法で軽くするあるいは持ち上げるか、もしくは幻術で持ち上げたように見せかけるか。
全て出来てしまうと、咄嗟にやれといわれた時、「どれでやろう!?」と混乱してしまうこともあると思います。戦闘でも同じことが起こると考えていただければ分かりやすいかと思います。
また、主人公の「万能性」は他キャラの「必要性」も奪います。自力で回復魔法を使える主人公に、それ以下の回復魔法しか使えないキャラは必要でしょうか? 魔法は? 近接戦闘は?
主人公より能力の低いキャラに必要性が無いとは言いません。ですが彼らの活用の仕方は物語が進むたびにどんどん難しくなって行くはずです。敵も強くなるでしょうし、それと同じぐらい主人公も強くなるでしょうから。
そういうストーリー、あるいはキャラクターならともかく、戦闘描写、あるいは小説そのものの初心者の方にはあまりお勧めできないキャラクターです。
個人的にお勧めするのは、「一芸特化」のキャラたちですね。筋肉自慢、足には自信アリ、剣を持たせれば天下無双、魔法を使うエキスパート、策略で敵を陥れる軍師、小手先の卑怯で勝利を掴むトリックスター……そんな彼らです。
彼らは自分の得手であるそれらを駆使して戦うことが自然と軸になってくるので、万能キャラよりは簡単に描写できるのではないか? と愚考いたします。
とはいえ、コレがいいんだ! という方の主張を押しつぶす気はありません。「やってみよう」が「できた」に繋がれば、更なる成長へと続いていきますから。
追記:
何かを突き詰めた結果万能になったキャラ、というのもありますが、それも正直あまりお勧めはしません。理由は上記の通り。
また、読者の方に「魔法でもできるなら剣士の○○いらなくね?」などと思われてしまう可能性もあります。逆もまたしかり。
突き詰め万能型は、用法・用量を守って正しく「万能性」を出しましょう。