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赤い桃太郎

作者: 赤緒衛

桃太郎を共産主義風に書きました

§


昔々あるところに、労働者のお爺さんとその妻であるお婆さんの無産階級二人が住んでいました。

二人には子供は居ませんが、思想的に良性な生活を送っていました。


ある日の事、今日のノルマ達成の為に、お爺さんは山に芝刈りにお婆さんは川に洗濯に行きました。

お婆さんが川で洗濯をしていると、川から大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこ、と流れて来ました。

お婆さんはこの革命的な出来事に驚くも、労働で空腹を感じているので桃を拾って一口食べました。とても美味しかったので、お爺さんにも食べさせてあげようと持って帰りました。


晩方、桃を半分こに割ろうとすると、桃が真っ二つに割れて中から元気な男の子が生まれました。子供が居なかったお爺さんとお婆さんは、男の子に「桃太郎」と名付けて育てることにしました。


桃太郎はおかゆや魚を食べさせて育てると、一杯食べると一杯だけ、二杯食べると二杯だけ、三杯食べると三杯だけ、大きくなりました。

幼少期から美徳である村の労働を積極的にこなし、数十年後には力持ちで鋼鉄の意思を持つ立派な若者になりました。


ある日の事、鬼ヶ島に鬼が現れました。

鬼というのは働きもせず、人民から食料を奪い過剰に食べつくし、富を奪い使いもしないのに貯め込むのに精を出し、あまつさえ人民を狩猟して楽しむ、悪しきブルジョアです。

桃太郎は、彼らがこれ以上のさばるのは見過ごせないと奮起しました。


桃太郎がお爺さんとお婆さんに鬼退治に行くと言うと、二人は大層驚き止めようとしました。無理もありません。戦士階級でもない者が鬼を打倒するのは前代未聞の事です。

それでも桃太郎の決意は変わりません。搾取する鬼に闘争を挑み打倒するという、鋼鉄の意思は揺らぎません。


お爺さんとお婆さんは桃太郎の革命的な主張に心うたれて、鬼退治に協力することにしました。

お爺さんとお婆さんは無産階級の希望の星である桃太郎の為に、日本一の吉備団子をどっさり作り、刀や衣装も用意して鬼退治に送り出しました。



§

桃太郎が旅の途中、犬猿雉の三匹にあいました。


「桃太郎さん、何処でお出かけですか?」


「鬼ヶ島へ鬼退治に」


「お腰に付けた物はなんですか?」


「日本一の吉備団子」


「私達もお共しましょう」


「それではお前達にも分けましょう」


こうして同志となった三匹と、吉備団子を平等に分けて食べました。


桃太郎達は山を越え谷を越え、嵐が吹き荒れる海に辿り着きました。後はこの海を越えれば鬼ヶ島ですが、桃太郎達は船を持っていないので渡れません。

辺りを偵察すると漁師達が居ましたので、話を聞きました。彼らは鬼が出てから嵐で漁が出来なくて、船が余っているとの事でした。

桃太郎が鬼退治の為に来たと話すと、漁師達は快く船を供出しました。


桃太郎達は嵐が吹き荒れる大海原を渡ります。途中で嵐によって船が壊れかけますが、人民を想う意思で前進しました。

そうして、遂に鬼ヶ島に辿り着きました。


鬼達は、人民から奪った食料をふんだんに使った退廃的な宴の真っ最中でした。

人民の労働の結晶が浪費される惨状を目の当たりにした桃太郎たちは、この貴族的な悪鬼羅刹を一刻も早く成敗すべきと攻勢をかけました。


桃太郎は鬼を刀で切り伏せ、犬は牙で噛み千切り、猿は爪で切り裂き、雉は嘴で突きました。それぞれの能力に応じた適格な働きで、鬼達は瞬く間に打倒されました。


§


見事鬼退治を果たした桃太郎達は、鬼ヶ島にため込まれていた富を村に持ち帰ります。

桃太郎達は国民的英雄と称えられ、村の中央に銅像が創られました。持ち買った富は、村に分配されました。

こうして桃太郎達と村の人民達は、末永く幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。

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