009.文字を教えてもらう
トキア様に文字を教わるのは、トキア様がお昼を食べる時間に決まった。
その時にはフルールも連れて行って、機密文書やら、僕の書き損じやらをフルールに食べさせるんだって。
お手間なんじゃないかと思ったんだけど、トキア様的には、食堂に来てフルールに食べさせて、執務室に戻る時間がなくなるから、短縮だとのこと。
……本当かな……。
「アシュリー、名前を書いてみなさい」
「はい、トキア様」
まずは名前なんだって。
それから、五十音を覚えるらしい。そうしたら、数字の勉強を教えてもらえる。
新しいことを覚えるのは楽しい。文字や数字はスキルと関係ないから、僕でもいくらか覚えられるようになるんじゃないかって思うと、ワクワクする。
「今日は名前を書きなさい。名前はスムーズに書けるようになった方が良い」
確かに。自分の名前だもの。たどたどしいより、サラサラと書けるようになりたいな。
トキア様がお手本として書いてくれた僕の名前をマネしながら、書く。
人が書いているのを見ていると簡単そうに見える。でも自分で書くと分かる。全然思ったように書けない。力が入り過ぎたりして、文字が潰れてしまったり。
「もうちょっと力を抜くと良い。それでは疲れてしまう」
分かってます、分かってるんですけど、どうしても力が……!
「まぁ、嫌と言う程書いていれば力も抜けてくるだろう」
パニーノを食べ終えたトキア様はフルールに機密文書を食べさせ始めた。ついでに僕の書き損じも。
文字の練習を終えて食堂に戻ると、クリフさんがいた。ラズロさんとコーヒーを飲んでる。
「こんにちは、クリフさん。休憩ですか?」
「アシュリーが文字を習うと聞いたから、家にあった子供用の本を持って来た」
差し出された絵の付いた本。
貴族の子供たちが見ると言う絵本。平民の僕なんかが手にする事があるなんて思わなかった。
「借りても良いんですか?」
クリフさんは笑顔で頷いた。
「勿論だ」
「ありがとうございます、大切に読みます」
クリフさんにも、ノエルさんにも、お世話になりっぱなし。僕でも出来る何かがあると良いんだけど……。
「またアシュリーは、クリフに申し訳ないとか考えてんだろ」
ラズロさんが僕の考えを見透かす。
「う……はい……」
「気に入らん事はしない男が勝手にやってんだから、気にすんなよ。安心して貢がれとけ」
貢がれる?!
それはどうかと思う!
「本当に気にするな、好きでやってる」
クリフさんはポンポン、と僕の頭を叩くと、フルールを触り出した。
……あっ、もしかして……?
無表情だけど、クリフさんの耳が少しだけ赤い。
クリフさんは、もふもふに目の無い人なのかも知れない。なんかそんな気がする。
少しずつお風呂の小屋が形になっていく。
建築過程を見学したいのに、ラズロさんやノエルさん、クリフさんが見ちゃ駄目だと言うので、見れない。
出来てからのお楽しみだよ、とノエルさんは言う。
……多分だけど、僕がお願いしたのより凄いお風呂が出来てしまう気がする……。
今度の週末には、出産してないのにミルクを出せると言う凄い牛がやって来る。
楽しみな事ばかりで、明日が待ち遠しい。
文字が読めるようになったら、クリフさんから借りた絵本も読むんだ。
村に手紙も書きたい。
「アシュリーが眩しい」
ラズロさんが突然変な事を言い出した。隣に座るノエルさんは笑ってる。
「え? 僕ですか?」
僕が眩しい? 何でだろう?
普通だと思うんだけど……。
「毎日楽しそうで、オレは己の汚れっぷりに凹むわ」
「僕はアシュリー達に癒されるし、毎日食事は美味しいし、言う事ないよ。そもそもラズロは自堕落過ぎ」
ねー、と言いながらノエルさんはネロを撫でる。ネロはノエルさんの事が好きみたいで、撫でられるのは嫌じゃないみたい。ラズロさんには撫でさせないけど。その差は何なんだろう?
「言われるまでもねぇよ。オレがアシュリーぐらいの年の時なんて悪い事ばっかしてた。勉強も嫌いだったしな」
十歳でする悪い事ってなんだろう? むしろそれが気になる。
「アシュリーはそのままで良いんだからね、ラズロみたいな薄汚れた大人になっちゃ駄目だよー」
あまりに直球なノエルさんの言葉に、ラズロさんが衝撃を受けた顔になる。
汚い大人、とかより、薄汚れたの方がより実感がある。
「薄汚れた?! その言い方は流石に酷すぎんだろ!」
悲鳴みたいに叫ぶラズロさんと、ノエルさんのやりとりを見て、やっぱり仲が良いんだなぁ、と思いながらフルールのもふもふを堪能した。
フルールは鼻と目を細める。スライムも撫でられたら気持ち良いとかあるのかな? あると良いな。
「アシュリーが本を読めるようになったら色々教えてあげるからねー」
「神童と魔導師団長直々とか、半端ねぇなぁ」
それは、僕も思います……。
「ねぇねぇ、アシュリー。牛が来たらさ、またミルクのスープを作ってよ」
「はい。勿論です」
栄養価のある食事が食べたいからと、ノエルさんは僕に牛をくれるんだから、美味しくて身体に良いものを作らないとね。
秋の野菜は美味しくて身体に良い物が多いから迷うなぁ。
「今は海鮮ものが出回ってるぜ」
かいせん?
初めて聞く言葉に首を傾げていると、ノエルさんが教えてくれた。
「海鮮。海の幸だよ。アシュリーは山に近い場所で生まれ育ったから、海鮮物は馴染みがないかな?」
うみ。
「初めて聞きました」
「よし、今から買いに行くぞ!」
ラズロさんがこんなに興奮する程、うみの素材は美味しいのかな? それなら僕も食べてみたい。
立ち上がってガッツポーズをしてるラズロさんを、ノエルさんが冷ややかに見る。
「海鮮素材で飲もうとか考えてるだけでしょ」
ため息混じりに言うノエルさんの肩を、ラズロさんが気にせず叩く。
「おまえも仕事終わったら来いよ! 今日は炙り焼き祭だ!」
あぶりやき? 祭?
ラズロさんの興奮状態とは対照的に、ノエルさんは諦めた感じだ。なんだろう。あまりに二人の状態が違い過ぎて、楽しみにして良いのか悪いのか、全然分からない。
ラズロさんに連れられて城を出た僕は、大通りから一本内側に入った場所にある市場に連れて来てもらった。
この前の買い出しの時には来なかった場所だ。
あちこちからお客さんを呼びこもうとする声がする。
人の通りも多い。にぎやか!
「あんまキョロキョロしてっとはぐれるぞ」
「あ、はい」
分かってるんだけど、見るもの全部が目新しくて、つい目がいっちゃう。
そんな僕の様子にラズロさんは笑った。
「アシュリーの文字の勉強の為にも、なるべく買い物は一緒に来るようにするか」
「本当ですか?! 嬉しいです!」
にっ、と笑ってラズロさんは僕の頭をぽんぽんと叩く。
「買い物の基本は、季節の物を買う事だ。安いだけじゃねぇし、栄養価も高いからな」
身体に良いのは知ってたけど、そうか、値段も安くなるのか。そうだよね。季節だから沢山獲れるんだもんね。
「今は北から海鮮物が王都に入って来る。冬になれば北の連中は雪が多くなってこっちに来れなくなるからな。今が稼ぎ時だ」
村も雪が沢山降ったけど、王都の北の国も雪深いんだね。王都に来れなくなるぐらい雪が凄いなんて。
ここだ、と言ってラズロさんが立ち止まったお店では、見たこともない食材が所狭しと並んでいた。
魚がいっぱい! でも、僕の知ってる魚とちょっと違う。
川や湖、沼なんかで獲れる魚があるから、魚自身は見たことあるけど、大きさが全然違う。倍は大きいんじゃないかな。
それに、川と違って、塩っぽい、なんかちょっと生臭い?においがする。
「ぅわぁ……!」
「ラズロ! 今日は良いのがたっぷり入ってるよ! 見てっとくれ!」
「おぅ!」
顔馴染みらしい女将さんがラズロさんに話しかける。
女将さんの視線が僕に向いたので、お辞儀した。
「ラズロ、あんた、いつ結婚したんだい? それにしては大きいねぇ……昔の女が連れて来た隠し子かい?!」
「違うに決まってんだろ! オレはまだ独り身だ!」
ラズロさんは僕の肩を叩いて、女将さんに紹介してくれた。
「こいつはアシュリー。城の食堂で見習いとして働き始めたんだ。これからは買い出しに来る事もあるだろうから、よろしくな」
女将さんはにこにこしながら僕の頭を撫でる。
きっと、年齢より下に見られている気がする。
「あたしはここで商売をやってるデボラだよ」
改めてお辞儀をする。
「初めまして、デボラさん。アシュリーといいます」
目をぱちぱちさせたデボラさんは、ラズロさんを見て言った。
「間違いない、ラズロの子では無いね。こんなに良い子がラズロの子の筈ないからね」
ラズロさん、日頃一体どんな生活をすると、ここまで言われちゃうの……?
「何言ってんだよ。オレに息子が出来たら、アシュリーのように良い子に育つに決まってんだろ。当然父親似だ」
デボラさんはあっはっはと笑うと、ラズロさんの発言を無視して、僕の頭を撫でる。
「ラズロと真逆のことをやってれば、きっと良い男になれるからね、アシュリーは真似しないようにするんだよ」
……ラズロさん……?
「アシュリー? 何でそんな目でオレを見るんだよ?
オレは酒と自由と女を愛してる善良な王都民だぞ?」
ここで賭け事が入らなかっただけ、良いのカナ……。
町に行く事になった兄さんに、父さんが口を酸っぱくして、賭け事は絶対にやるな、って言ってた。
何だったかな……えーと……。
「ノム ウツ カウ……?」
デボラさんが鬼の形相になってラズロさんを、バシバシ叩き始めた。
「ラズロ! あんたこんな小さい子に何てこと教えてんだい!」
「オレは教えてねぇよ!」
「デボラさんっ、誤解ですっ!」
慌てて止めると、ラズロさんを叩く手が止まった。
「ごめんなさい。前に父さんが言っていた言葉を思い出しただけなんです。ラズロさんから教わったんじゃないです。ラズロさんもごめんなさい……」
うっかり思い出した言葉を口にした所為で、かなり激しく叩かれてた……。
痛かったらしく、叩かれた場所をさするラズロさんと、豪快に笑って誤魔化すデボラさん。
「悪ぃ悪い、ラズロ。お詫びにたっぷり買っていっとくれよ!」
……お詫び……?
「さっさと買って帰ろう、アシュリー。このままだと骨が折られそうだ」
僕の言葉選びが悪かった所為で、散々な目に遭わせてしまった。
デボラさんのお店でラズロさんは大量に買い物をした。
大きな魚を何匹もと、貝を抱えきれない程。貝、初めて見た。
「ラズロさん、こんなに沢山買って食べられるんですか?」
「貝なんて中身はそんなに大きくないんだから、食べ始めたらあっという間だぞ?」
そうなんだ!
こんなに立派な殻に包まれてるのに、実は大きくないのか。なんかちょっと残念。
殻、フルール食べるかな? この前串焼きの串は食べてたけど、さすがにこの殻は硬すぎて食べられないかな?
お城に戻った僕達は、食堂ではなく、中庭にやって来た。どうして中庭なんだろう?
「今まで食堂でしか調理出来なかったけど、アシュリーの魔法があれば庭でも出来るんだって気付いてな」
中庭で調理した方が良いくらいに、煙が出るって事?
手慣れた様子でラズロさんは網と、網をのせるための台をレンガで用意していく。
初めて見る形に、なんだかワクワクしてきた。
タライの中に買ってきたばかりの魚や貝を入れる。お店では水の中に入れたりしていた。
同じように水の中に入れた方が良いのかな?
「ラズロさん、タライの中に水を入れても良いですか?」
「おーっ、入れちゃってくれー。出来たら氷の方が嬉しいんだが、アシュリー、氷出せるか?」
氷。
水ならよく出すけど、氷は出した事が無い。
「それなら僕がやるよ」
声のする方を見るとノエルさんだった。
タライの前に立ったノエルさんが、魔法で氷を作り出す。一瞬で大きな氷の塊が出来る。
凄い! 魔力を凝縮させないと氷は出来ないのに、瞬間的に氷が出来た!
……でも、ちょっと、って言うかかなり大き過ぎる?
「でかすぎるな。半分に割ってくれ」
ノエルさんは炎魔法で氷を溶かそうとしたんだと思う。でも炎が強すぎて、近くにあった木の枝に燃え移りそうになった。
「!」
枝に火が触れるかどうかの所で細かい霧が木を包んで、枝は燃えずに済んだ。
トキア様だった。
どうやらさっきの霧はトキア様が起こして下さったみたいだった。
そうかと思えばタライの中にちょうど良い大きさの氷が出来る。
「練習だな」
「……はい」
トキア様の言葉にがっくりと項垂れるノエルさん。
「魔力量の制御が苦手なノエルにはちょうど良い」
トキア様がいれば火災になる事も周辺が凍る事もなさそうだと、ラズロさんと僕は安心した。
ノエルさんは僕と違って魔力が多いから、そのまま使うと威力が凄いんだと思う。トキア様だって魔力が多いだろうに、威力をいとも簡単に調整してる。
分かってる事だけど、トキア様もノエルさんも、本当に凄い。
魔法師団の人たちは凄い人たちなんだなぁ。
「アシュリー、網の下に火をおこしてくれ」
ラズロさんはノエルさんの方を向くと、「料理にはアシュリーの火力が加減が良いから手を出すなよ」と言う。
ノエルさんは哀しそうな顔をするものの、さっきので身に染みているのか何も言わなかった。
言われるままに網の下に炎魔法で火を出す。ラズロさんは貝を網の上に並べていく。味付けはしないのかな?
「そのうち口が開くからな。そうしたらそこに酒を注ぐから楽しみに待ってろよー」
「塩は入れないんですか?」
「貝は海から取ってきてるからな、塩はいらねぇんだよ」
海から取って来たから、塩が要らない?
「海と言うのは巨大な湖だ。その海の中に大陸と呼ばれる島が浮いてると思えば良い。湖も色々あるからか、一概には言えんが、大きな差は海水か淡水か」
説明をして下さるのはとても嬉しいんだけど、今度はタンスイとか、カイスイと言う言葉が出て来て僕の頭には?が浮かんだ。
顔に出ていたのか、トキア様は眉間にシワを寄せる。
「説明のつもりが、アシュリーの分からぬ言葉で話してしまったな。
淡水や海水と言うのは、水の質を表現する言葉だ。簡単に言えば淡水は普通の水に近く、海水は塩を含んでいる為に塩辛い」
しょっぱい水?
次から次へと分からない事が出て来る。
「少しずつ教えるから、焦らずとも良いぞ」
そう言ってトキア様は僕の頭を撫でた。
「はい、トキア様」
ラズロさんとノエルさんが驚いた顔をしてる。
何でだろう……?
貝が口を開けた。あまりの熱さに耐えかねて開けるんだって。ラズロさんが言っていたように、殻の中の身はそんなに大きくない。
ラズロさんは手慣れた様子で身にお酒を垂らしていく。熱せられたお酒の香りが辺りに広がる。
「臭み消しだな」と教えてくれる。
トキア様はもう一つ網を用意すると、僕のと同じぐらいの大きさの火を出した。
「少量だが、維持し続けるのはなかなか難しいな」
ラズロさんは嬉々として網の上に大きな魚をのせて、塩をふる。さっきは塩は要らないって言ったのに、魚はいるの? 貝と魚は違うのかな。
「貝が焼き上がったぞ! 熱いから火傷すんなよ!」
持っていたお皿に貝をのせてくれた。……どうやって食べるんだろう?
そんな僕にノエルさんは直ぐに気が付いてくれた。
「ラズロ、アシュリーは食べ方が分からないんじゃない?」
「おぉ、そうか。じゃあノエル、食い方を教えてやってくれ」
ノエルさんのお皿に貝がのる。
「熱いから、手で直接触らない方がいいよ。フォークで刺すと良い」
そう言ってノエルさんは、身と殻の間にフォークを刺した。フォークの上にのった身はぷるぷるとして、それだけで美味しそうだ。
ノエルさんはひと口で身を食べた。
「うん、美味しい。さ、アシュリーも身を殻から剥がして食べてみて」
身を殻から剥がす?
不思議に思いながら、ノエルさんの真似をしてフォークを身と殻の間に刺し入れる。持ち上げようとすると抵抗がある。見ると身と殻が僅かにくっ付いていた。
なるほどー、これを剥がせって言ってたんだな。
剥がした身を口に頬張る。塩味とお酒の味がした。ちょっと生臭い。
美味しさもあるけど、生臭さが気になる。
ノエルさんもラズロさんもトキア様も気にせず食べてる。
生臭いのは今食べた貝だけだったのかも、と思い直して次の貝を口に入れる。……うん、生臭い。
コーヒーの時もそうだったけど、僕が子供だから生臭いと感じるのかも知れない。
生臭さを消す方法……。
厨房から胡椒を持って来て貝にかけてみた。
僕の様子を見て、ラズロさんが苦笑する。
「アシュリーにはまだこのにおいが辛いかー」
胡椒をかけたら少しは減ったものの、においは消し切れない。でも、美味しさは増した。
他のものもかけてみたいかも。
もう一度厨房に戻って、ニンニクとタマネギを細かく刻んだのを持って中庭に戻る。
「何だ? ニンニク?」
「そうです。ニンニクとタマネギならにおいを消せるかなと思って」
スプーンで貝の上に刻みニンニクとタマネギをのせ、胡椒もかけてから食べる。
んんっ! 美味しい!
「……アシュリー、僕ももらって良い?」
頷くとノエルさんもニンニクとタマネギ、胡椒をかけて貝を食べた。
「うまっ!」
「なにっ!」
ラズロさんも同じようにしてニンニクと胡椒をかけて食べた。
「うまいっ!」
気付けばトキア様もやってて、貝を口に入れた後、少し口角が上がってた。
「魚も焼けたぞ! アシュリー、こっちは貝ほど癖がないから大丈夫だと思うぞ」
ラズロさんが魚をお皿にのせてくれようとするんだけど、お皿の上には貝の殻がある。
いつの間に来たのか、フルールが隣にやって来ていたので、試しに貝殻を渡すと、両手で受け取る。
鼻をふんふんさせたかと思うと、貝殻をパキパキと音をさせながら割るように齧り出した。
あっという間に食べてしまって、僕を見上げる。まだある貝殻を渡すと、食べ始めた。
「言い忘れていたが、擬態しているスライムは燃費が悪いのだ」
ネンピ?
「沢山食べないと駄目って事だよ」とノエルさんが教えてくれた。
ノエルと一緒だな、とラズロさんがにやりと笑いながら言って、うるさいなと返すノエルさん。いつものやりとりです。
「その点、フルールは食堂で素材を沢山もらっているから、問題ないだろう」
トキア様がフルールに貝殻を差し出す。フルールは良い音をさせながら食べていく。
音だけ聞いてると美味しそうで、食べたくなってくる不思議。
ラズロさんは厨房からお皿を持ってきて、そこに貝殻を乗せ始めた。
フルール用って事みたいだ。
みんなのお皿にあった貝殻をお皿にまとめて、フルールの前に置く。
「フルール、貝殻だよ」
ふんふん、と鼻をひくひくさせた後、夢中で貝殻を食べていくフルール。
頭を撫でても気にせず殻を食べていく。おなか空いてたのかな。
食べすぎはよくないと思ってあんまりあげないようにしてたんだけど、どうやら気にしなくても良さそう?