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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第五章 金と欲望の街カルシナシティ
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その二十 黒とドリー

「う、う〜ん………ここは?」


ミノルは目が覚めるとベッドで横になっていた。


「療院場ですよ、ミノルさん。あんまり無茶しないでください。昨日治したばかりなのにもう来るなんて」


そう言って心配そうにこちらを見る。


「……みんなは?」

「あちらで待っています」


――――――

「ふざけんなリドル!!お前本気で言ってんのか!?」


俺は怒りのあまりリドルの胸ぐらを掴む。


「別に殴っても文句は言いません。ただ僕は良かれと思って言ってるだけです。これ以上ドリー盗賊団に関わるのはやめたほうがいいです」

「お前………!!」


俺はリドルを殴ろうと拳を上げたその時。


「かつ!」


後ろからミノルの声が聞こえて俺はその手を止めた。


「ミノル……気がついたのか」

「まあね、それでこれはどういう状況なの?何かすごい喧嘩してたみたいだけど」

「それは……」

「かつさん、説明の前に離してもらえませんか?」

「ああ……ごめん」


俺はリドルの胸ぐらを離す。


「それでどうして喧嘩してたの?」

「実はリドルがドリー盗賊団を諦めようって言ってんだよ。こっちはやらっぱなしなのにリベンジしないのはおかしいだろ?」

「あいつらはかなりの凶悪集団でした。実際に対峙したから分かりましたがあの中のひとりだけ異様に強い奴がいるんです。ここで再戦した所でまたやられるのがオチです」

「ミノルはどっちがいいと思う?」

「えっと……」


ミノルは困り顔で頬をかく。


「あのねかつ、私も無理して再戦する必要はないんじゃないかと思うの」

「え?何言ってんだよ……」


予想外の言葉に思わず声が震える。


「それには理由があって――――」

「1億の借金を返す為に言ってんだろ!このままあいつらに負けたまま、金も手に入らないまま諦めろっていうのかよ!!」

「違うのかつ諦めろとかそういうのじゃなくて、もっと簡単に解決できる案があるのよ」


ミノルは別の方法を考えているようだが俺はその話を聞かずに再び自分の思いをぶちまける。


「俺はそういう話をしてるんじゃないんだよ!このまま負けたまま、しかもブルームーンを奪われたままでいいのかよって言ってんだよ!俺は絶対やだ!だからこのまま諦めて帰るわけにはいかないんだよ。分かるだろ?」

「その話はもういいのよ!」

「お前今なんて言った?」


俺はミノルのあまりにも非情な言葉に動揺する。


「ミノルさん、その言い方は……」


リドルが耳元でミノルに訂正を求める。


「へ?な、何が?」


だが自分が何を間違っているのか理解できてないミノルを見て俺の決心は固まった。


「そうか……そうだよな。ミノルだけは違うと思ってたけどやっぱりそうなのか。仲間だと思ってたのは俺だけだってことか。所詮は寄せ集めのパーティーだしな。俺1人助ける為になんで自分達が命かけなくちゃいけないんだって思うのも無理ないな」

「お主何が言いたいのじゃ?」


デビはソファーに横になりながら質問する。


「俺は1人でも行くぞ。行かなくてもどっちみち死ぬしな。短い付き合いだったけど楽しかった。お前らはどうか知らないけど少なくても俺は充実した日々が過ごせたと思ってる。それじゃあ」


そう言って逃げるように療院場から飛び出した。


「ちょ、まっ―――――かつーーーー!!!」


ミノルの呼び止める声を受け流し俺はそのまま走り去った。


「かつ………」

「放っておけあやつが選んだ道じゃ。あやつの好きにさせようではないか」

「かつさんはドリー盗賊団がどこにいるのか分かるんですか?」

「お主らは気絶していて知らないかも知れんがブルームーンが飾れていた台座に紙が挟まっておったのじゃ」

「なるほどそれを見て行ったんですか」

「かつ………」


―――――――――――

「はあ、はあ、ここが……ドリー盗賊団のアジトか……人気(ひとけ)のない森にこんな立派なアジトがあったなんてな」


落ちていた地図を頼りに来たけど本当にアジトまでの地図だったのか。


「アジトがバレたところで問題ないって言いたいのか。上等だ、やってやるよ!」


俺は覚悟を決めてアジトの中に入って行った。


「暗いな。ここを拠点にしているからもう少し明るくてもいいような気がするが」


扉を開けて中に入ったのにも関わらず外と変わら無いくらい真っ暗で少し不気味だ。


「誰もいないのか?それは無いか、わざわざ来させるようなことをしたんだ。絶対何処かにいるはずだ」


その時足元に何かが触れたと思った瞬間、俺の体は一気に何かに包まれ天井にぶら下がる状態となった。


「な、なんだこれ!?網か!?」

「はっはっはっ!意外と簡単に捕まったな!」


笑い声を上げながら大柄の男が近づいてくると同時に辺りに明かりが灯る。


「くっ―――!まさかこれは罠か!」

「やっと気付いたか。それにしても1人で来たのか?」

「だからどうした!くそ!何だこれ!?めちゃくちゃ硬い!」


何とか引き千切ろうと引っ張ったり、魔法で燃やそうとするが切れる気配がない。


「特殊な物を使ってるんだよ。おいお前ら!仲間がまだ何処かに潜んでるかもしれない。一応辺りを散策しろ」

「分かりました!」


すると手下全員が散らばって行く。


「さて、お前とは、はじめましてだったな。俺はこのドリー盗賊団ボス、ドリーだ!」

「お前がドリーか!お前が2人を……ぶっ飛ばしてやる」


手を出そうにも宙ぶらりんになっている為もどかしさだけが残る。


「粋がいいな。そういうの嫌いじゃないぞ。それじゃあ早速本題に入るか」


そう言うとドリーはポケットからブルームーンを取り出す。


「お前がここに来たのはこれだろ?お前らのお仲間が必死になって守ろうとしていたからな。ま、守れ切れずにあっけなく倒されたんだけどな!」

「てめぇ………!」


怒りがこみ上げるが今の俺にはやつに攻撃することさえできない。

何か脱出できる方法はないのか。


「残念だがこれを渡すわけにはいかない。そしてお前を生きて返すこともできない!」


するとドリーは次に写真を取り出す。


「そ、その写真は……俺とミノル?」


なんであいつが俺たちの写った写真持ってるんだ。


「俺はある人に頼まれたんだよ。お前らを殺してくれと、ミノルは昨日殺し忘れたがかつ、お前は逃さないぞ!」

「誰に言われたんだ!」


するとドリーが嬉しそうにニヤリと笑う。


「黒の魔法使いだ。名前くらいは聞いたことあるだろう」

「黒の魔法使いだって!?何でそんな奴らがお前に……まさか!?」

「ふっふっふっ……そうだよ!俺は黒の魔法使いの仲間だ!」


信じがたい事実だがあいつが言っているのだから本当なのだろう。


「そうか……そうだったのか。それじゃあ尚更お前を倒す!」


黒の魔法使いなら懸賞金はかなり行くはずだ。


「動けないやつが何言ってんだ?ここでお前は死ぬんだよ!」


そう言ってドリーは魔力を右手に込める。


「俺の毒魔法はケイガの比じゃないぞ!」

「くそう!切れろ!切れろ!」


何度試しても切れる様子がない。


「諦めろ、それは最低でもレベル6以上じゃなきゃ切れねえよ。レベル1のお前じゃ絶対無理だ」

「レベルまで知ってるのか!?」


くそう!どうすれば。


「じゃあな小僧!ハイリオールポイズン!!」

「ぐああぁぁぁ!!」


全身に毒が周り、焼けるように熱く、そして痛みが俺の体を這いずり回る。


「ぐぉっ!?ぐあっ―――――!」

「はっはっはっ!!いい悲鳴だぞ!おらもういっちょ!」

「うぐあああぁぁぁ!!」

「痛いか?苦しいか?俺に逆らおうとするからこうなるんだ!少しは自分の立場ってもんが分かったか?」


俺は痛みを堪えながら顔を上げる。


「へ!こんな……もんかよ!これがレベル10の……力かよ!」

「何だと?」

「こんなもん……魔力暴走の時に比べたらへでもないぞ!」

「元気がいいな。見苦しいほどに」


俺は力を振り絞り網に手をかける。


「レベル10だったら……ごふっ!はあ……俺を1発で殺せる毒を出せるだろう!」


網を掴む手に力が入る。


「違うな……出せないんだろ!お前はレベル10にも……ぐふっ!はあ……黒の魔法使いでもない!」


そして網がちぎれる音がする。

そして俺はそのまま地面に落ち、自力で立ち上がる。


「これが証拠だ!俺はお前の毒を食らっても生きてるぞ!レベル1の俺がだ!」

「ガキが……調子に乗りやがって」


やっぱり予想通りあいつの魔法で何とか網から抜け出せた。

だがこれからどうするか。


「もしかして今までの奴らも自分が黒の魔法使いって言ってきたのか?そうやって今まで自分を偽ってきたのか?恥ずかしいな!そんな事しなきゃ自分についてきてくれないのか!」

「言いたい事はそれだけか……」


俺の予想とは違い冷静に質問してくる。


「いいか?俺はお前より長い時間を生きてるんだ。そんなこと言われたくらいで取り乱すほど俺はガキじゃない。だが今のは少し鼻に付く。ということで口を開けろ」


そう言って俺の髪の毛を引っ張る。


「いたっ!?や、やめろ!」

「偉そうなこと言う割には何も出来ないじゃねえか。所詮お前はその程度ってことだ」


すると俺の口を無理やり開く。


「今からお前の口の中に直接毒を流し込む。外側から受けるよりもひどい苦痛がお前を襲うだろうな。しかも魔力抵抗が低いからダイレクトにダメージが来るだろう」

「はが!はへろ!」

「何言ってんのかわかんねえよ!もっとはっきり喋ろよ!」


くそう!やり返してやりたいのに体が言うことを効かない。

こんな時に毒が!


「ほら、入れちゃうぞ?いいのか?何も言わないってことはいいんだな!」


するとドリーの手に魔力が高まる。


「はが!はへへろ!」

「じゃあな!能無しの小僧、少しは楽しめたよ!」


また何も出来ず俺は死ぬのか!?

あんなに言われてるのに1発も殴り返せないのか!?

そんな後悔をしながら無情にもゆっくりと俺の口の中に毒が――――


「プリズンフリーズ!」


どこからともなく氷の塊が俺の頭上を通り過ぎる。


「――――っ!?ちっ誰だ!」

「誰だって?聞かれたのなら答えるわ!私はかつのパーティーメンバーのミノル!」

「そして最強にして最高の魔法使い!デビ!」

「えっと……ただのリドルです」

「な!?お主台本と違うぞ!そこは紛うことなきうざ男じゃろ!」

「いやですよ、なんで自分でそんなこと言わなくちゃいけないんですか」


そんな緊張感のないやり取りで登場してきた。


「みんな!来てくれたのか!?」

「当然でしょ、かつは私達のパーティーのリーダー何だから助けるのは当たり前じゃない」

「そ、そうか……」

「なんじゃお主泣いておるのか?」

「な、泣いてねえよ!」


そう言って、目を両手でこする。


「やっぱり仲間がいたのか。まあ殺す手間が省けて良かったけどな」

「はいかつさん、解毒のポーションです」

「ありがとうリドル」


俺は、解毒のポーションを受け取ってすぐ全部飲み干した。


「すごい……毒が抜けていく」

「だいぶ危ない状況でしたね。間に合って良かったです」

「お前ら俺のことを無視すんじゃねえ!」

「ごめん、ごめん、倒すの遅くなったな」


俺は、手に魔力を込める。


「お前急に仲間が来たからって偉く強気になったな。本当にガキだなお前は」

「ああそうだよ。俺はまだまだガキだ。だからごめんな。手加減の仕方分かんないから大変な事になるかもな」

「あ?」


みんなの魔力が一斉に上がる。


「な!?」

「壊しても怒られない場所なら俺達は無敵だ!」

「や、やめ―――――!!!」

「じゃあな!ドリー!インパクト!!」

「プリズンフリーズ!!」

「ストーム!!」

「デビルオンインパクト!!」

「ぐぎやああぁぁぁぉっ!!!」


―――――――――――――

「よし!これでドリー盗賊団全員リュックに詰めたな」

「おい!まだあごひげが残っておるぞ」

「あ、ドリーのこと忘れてたな」


俺はリュックの口を広くする。


「そういえば何で助けに来てくれたんだ。お前ら自分の命が大切だって思ってなかったのか」

「えっと……それにはかくかくしかじかで」


便利な言葉でミノルの説明聞く。


「ええええ!?金は既に集まってるのか!?しかも本物の黒の魔法使いも来たのか!?」

「そ、実はもうコロット村の時に倒したあのモンスターの討伐金が1億なのよ」

「そ、そうだったのか……」


衝撃の事実にホッとしたが同時に悲しくもなった。


「ちょっと待てよ!だったら何で俺に黙ってたんだ。それにわざわざドリー盗賊団も捕まえようとしたし」

「それはさっき話した黒の魔法使いに関わってる事なんだけど、このドリー盗賊団って黒の魔法使いの収入源にもなっていたのよね。金品財宝をこのドリー盗賊団に盗ませてそれを金に変えて自分たちの収入源にしていたのよ」

「それでミノル達の所に黒の魔法使いが来たのか」


俺とデビが上で戦ってる時にミノル達はそこで待ち構えていた黒の魔法使いと対峙していたらしい。


「あいつはかなりやばいやつよ。魔法使いとしても性格もね」

「なるほど、ミノル達が倒された程だからかなりやばいやつなんだろうな」


すると気が付いたのかドリーがこちらに不審な言葉を投げかける。


「お前ら俺達を捕まえた瞬間から黒の魔法使いに消されることは決まったな。いつか復讐に来るぞ」

「うっさいだまれ!」

「ごふぅっ!?がく――――」


デビの見事な正拳で再び気絶した。


「とりあえず早く入れるか」


最後の1人を入れて、バックを締める。


「それじゃあこれ返しに行くか」

「それが終わったら飯にするぞ!」

「分かってるわよ。リドル店よろしくね」

「任せてください。とびきり美味しい店を紹介しますよ」


俺達はブルームーンを返す為に風間のいるカジノ店に向った。


―――――――――――――

「いやぁ〜まさか取り返してくるとは思わなかったな。よく取り戻したな」

「まっ案外楽勝だったぞ。ほらブルームーンだ」

「相変わらずの強がりだな。ちゃんと帰ってきたから文句は言わないけどな」


そう言ってブルームーンを受け取る。


「傷はないみたいだな。惜しいな、合ったら文句言おうとしたんだけどな」

「もし合っても文句は言わせないぞ」


するとツキノが何か言いたげに近付いてきた。


「何だ?」

「……ありがとう………風間………の為に………」

「な!?そんなわけ無いだろ!!風間の為じゃない!」

「そんなに否定しなくてもいいだろう。もしかして恥ずかしがってんのか?」

「お前は黙ってろ!」


やっぱりこいつと一緒にいるのは苦痛だ!


「おい!もう帰るぞ!!」


俺は先にカジノ店を出た。


「それじゃあ私達もう行くわね。今回は本当にありがとうね」

「お礼はあいつに言えよ。今回のことは王様に報告しといてやるから」

「それはどういうことですか?」

「あれ?言ってなかったっけ?俺この街の王だよ」

「「「え、ええええええ!??!?」」」

「おい遅いぞお前ら!」

「ちょ、かつ聞いて聞いて大変なの!」

「ん?どうしたんだよ―――――」


こうして俺達の長かった戦いは終わった。

だが街に戻ってまた新たな事件に巻き込まれる事をかつ達は知らなかった。

カルシナシティ編完



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