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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第五章 金と欲望の街カルシナシティ
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その十九 ドリー盗賊団との一夜後編

「どうして私を選んだの?」


暗い道を音を立てないように静かに進む。


「う〜ん……そうですねえ……単純に興味が湧いたんですよ。ミノルさんの魔法に」

「それってどういう――――――っ!?」


その時奥から何かの気配を察知してその方向を見た瞬間リドルも同じ方を見る。


「リドル……」

「はい、何かいますね奥に」


ここまでそこそこの下っ端を倒して来たけどもしあの奥にドリーが居るなら少し警備が薄い気もするわね。


「相手はかなりの強敵ですけど僕とミノルさんなら楽勝ですね。ですから一瞬で決めましょう」

「そうね……」


私達は奥の部屋までゆっくりと進んで行った。


――――――――――――

カジノ店2階倉庫部屋 1時15分


「おらおらおら!!どうした!?逃げてばっかじゃねえか!」


現在男が毒を撒き散らしている為攻撃出来ず防戦一方でいる。


「おい!そんな毒をばんばん撒き散らすな!当たったら危ないだろ!!」

「てめえは馬鹿か!?当たるように撒き散らしてんだろうが!」


ごもっともだ!

でもこのままじゃ本当に不味い!

毒を撒き散らしているから体に当たらないように気を付けなければいけないため攻撃に集中出来ない。

適当に撃っても。


「くそ!ファイヤーボール!!」

「は!?どこに撃ってんだよ!カスリもしてないぞ!!」


このように見当違いの方向に行ってしまう。


「はあ、はあ、はあ……どうすれば」

「おい何息切れしてんだよ。俺の復讐はこんなもんじゃないぞ!!」

「だから復讐ってなんなんだよ!俺は関係ないぞ!」


すると男が動きを止める。

どうした?もしかして魔力が尽きたのか?


「意地でも思い出さないみたいだな」

「いや、思い出さないじゃなくて知らないんだよ」


すると男がポケットに手を突っ込める。


「うおっ!?何だ!なんか武器でも出すのか!?」

「ちげえよ!これだ!」


俺が身構えていると何やら紫色の魚を取り出した。

それは見覚えのある魚だった。


「それって……まさか……」

「そうだよ、これは俺が毒で殺したゴールドフィッシュだ!!これで分かったかクソ野郎が!」


そうだ、すっかり忘れていた!

ていうか思い出したくも無かったから無理やり忘れてた。


「そうか……てことはお前はケイガ……後ろのやつはデフか!」

「ちっ!やっと思い出したか」

「だから俺に復讐復讐って言ってたのか。でも、ちょっと待てよ、何でお前がここにいるんだ?確かお前はロープで縛って捕まえたはずだぞ」


そうこいつらはゴールドフィッシュを狙っていたため返り討ちにしてやった。

その時に抵抗できないようにきつくロープで縛り付けていた。


「てめえ……とことんムカつく野郎だな!忘れたとは言わせねえぞ!」


何かすごい怒ってるな、俺何かやらかしたっけな。


「お前あの後俺達を置いていったよな。まあそれには感謝してるぜお前らがバカ!のおかげでこうしてこのドリー盗賊団に戻ってこれたからな!!」

「それどういう意味だ?」


そういえばドリー盗賊団の全員が毒の魔法を得意としてるって言ってたな。

もしかして……


「お前はドリー盗賊団の一味なのか?」

「そういうことだ!!これで心置きなく復讐できるな!!」


そう言うとケイガは嬉しそうに高笑いを上げる。


「お前、初めて会った時と変わらず変人だな」

「うるせえ、舐められっぱなしはムカつくんだよ!死ねや!デットリーポイズン!!」


そう言うといきなり魔法を撃ってきた。


「うわっ!?いきなり撃ってくるなよ!!」

「うるせえ!死ねよ!」


するとどんどん間合いを詰めてくる。

まずい!このままじゃやられる!


「おら!おら!おら!おら!おら!!!」

「勢いがすごいな―――――!?」


その時足を滑らせ、俺はその場で背中から倒れる。

すると一瞬の内に俺の上に乗り首を絞める。


「ぐふっ!」

「勝負ありだな。絶対かつ」


このままじゃ殺される!

俺は何とかケイガを退かそうと足を動かしたり手で首を離そうとする。


「おいおい、そんな暴れるな。すぐ楽にしてやるからよ」

「かつ!」

「黙るだす!抵抗するなだす!」

「はははは!!いいぞ!その苦しそうな顔!もっと見せてみろ!」


すると俺の首を絞める強さが増す。

まずい、本当に死ぬ!


「決めた!その顔をじっくり見る為毒で殺すんじゃなく絞め殺してやろう!」


すぐには殺せないけど、苦しさもある絶妙な強さで首を絞める。

それを笑いながらやるケイガは普通じゃない。


「ぐえっ…………こ、この野郎………や、やめろっ!!」


無理やり引き離そうにも力が強く引き離せない。

ああ……俺ここで死ぬのか。

すると今までの記憶が凄い速さで頭の中を通り過ぎる。

これが走馬灯か。

その時ミノルの顔が俺の頭を支配する。

そうだ俺はまだ借金を返していない。

ここで死ぬわけにはいかない!


「かつ!何しておる!起きるのじゃ!」

「おい!そのガキを黙らせろ!うるさくてしょうがない!!」

「分かっただす!黙らせるだす!」

「ふぐぅ!ふご!」


このままじゃ俺は死ぬ。


「どうせ死ぬなら………」

「あ!?何言って―――」


俺はその瞬間右手に、魔力が一気に集中する。


「なっ―――――!?」


それに気付いたのか、すぐに上に乗るのをやめ俺を蹴飛ばした。


「イッタ、やってくれたなお前」


俺は蹴られた顔を擦る。


「お前なんだ、今の魔力!?」


俺はつい、にやりと笑う。


「何笑ってんだよ。お前今の状況わかってんのか!?」

「何のこと――――痛っ!?」


俺は痛みのする左手を見ると紫色に変色していた。


「いつの間に毒入れてたのか」

「ふっ!違うな、床を見てみろ」


俺は風間の言われた通り下を見る。

すると紫色の液体が地面を濡らしていた。


「さっき乱発してた毒は地面に撒くためか」

「気づかないほうが悪いんだよ。これでお前の左手は死んだ」


俺はベルトのポケットから解毒のポーションを取り出し、蓋を開けて半分だけ飲んだ。


「ぷはっー!これで大丈夫だ」


先程紫色だった左手は元の肌色に戻って行った。

少し疑ったりもしたが本当に効果があったのか。


「やっぱり解毒のポーションは持ってやがったか。だがあと半分しかないが大丈夫なのか?」

「半分じゃないゼロだ」


俺は解毒のポーションの中身を床にばら撒いた。


「な!?」

「これで床の毒は完全に消えたな」

「お前、なめてんのか?」

「なめてねえよ。逆にお前のほうがなめてんじゃないのか?毒以外の魔法も使えよ。使えない訳じゃないんだろ」


するとケイガは俺を睨むつける。


「あの日俺は自分の作った毒でやられた。毒の使い手として1番屈辱的な倒され方をした!だから俺はあの時の借りを返す為に毒で殺す!!」


ケイガの魔力が上がる。

なるほどあいつなりにケジメをつけようとしてるのか。


「お前はちゃんと自分に罰を与えてるんだな。でも俺はそこまで出来るほど強くないんだよ」

「まあ、お前の魔法と魔力を見るにレベル3くらいか?」


だいぶ違うがまあそういう事にしておこう。


「お前は自分のプライドを傷つけられたから復讐したいって言うけど、俺にだって復讐したいほど憎んでるんだぞ」

「てめえが?俺は何もしてないぞ!」


その言葉にむかついた俺は手を強く握りしめる。


「俺はお前のせいで………5億の謝金を背負ったんだぞ!お前がゴールドフィッシュを殺さなければこんなことには……ていうか毒撒くんじゃねえよ!生き物の環境を考えろこのバカ!アホ!クズ!」


俺はいままでの不満をケイガにぶつける。


「て、てめえ……言わせておけば!5億ぐらいでグダグダ言ってんじゃねえよ!」

「5億くらいだと?」


俺はケイガの発言に苛立ちを覚える。


「お前にとってはくらいでも俺にとっては“も”!なんだよ!」


俺はそう叫びながらケイガの元に一瞬で向かい襟を掴み背負投をした。


「ぐはっ!」


そして休ませることなく俺はケイガの両手の周りを地面に付けて凍らせて動けなくさせた。


「……………」


ケイガは未だ状況が理解できてないのか呆気にとられている。


「……はっ!お、おい!どうなってんだこれ!」


ケイガは手を動かそうとするが氷が地面と結合して拘束器具みたいになっているため腕を動かせない。


「俺昔いじめられてて父さんが舐められないようにって色々な格闘技習わされたんだよ。結局喧嘩して勝っても先生とかに怒られるだけだったから意味なかったけど、ここで役に立つとわな」

「意味分かんねえこと言ってんじゃねえよ!これ壊せ!」

「復讐したいやつに助けて貰っていいのか?」

「ぐっ!?」


よし、これでこいつはしばらく動けないな。

火の魔法を使えば逃げられると思うがこいつのプライドじょうそんな事しないだろうしな。

俺はデフのところに向かった。


「な、何だす!?やるだす!」

「デビを離せ」

「おいデフ!そいつを殺せ!」


うつ伏せになりながらデフに命令を出すケイガ。

こいつどんだけ俺を殺したいんだよ。


「もごっ!――――ぷはっ!おいかつ!早く妾を助けるのじゃ」

「捕まっても偉そうだなお前」


だけど助けようにもデフがデビを抱えているせいで助けられない。

ていうかデビとデフ名前が似てるから言いにくいな。


「来るなだす!離れるだす!」


どうやって助けるか。


「おい!デフ!そのガキを殺せ!」

「な!?お前何言ってんだ」

「ここでひとりでも殺せばボスに褒められるだろうな」

「分かっただす!殺すだす!」


するとデビを抱えている手の力が強くなり絞め殺そうとしている。


「な、何をする!?や、やめ……痛い……!」

「デビ!お前!」


考えてる暇はないな!

俺はデビを助ける為にデフの顔に触れた。


「ファイヤーボール!!」

「だす!」


デフの顔の近くで爆発する。


「これでデビを離した――――な!?まだ掴んでいるのか」


デフは先程と変わらずデビを締めている。


「くそ!離せ!ファイヤーボール!ファイヤーボール!ファイヤーボール!」


何発撃っても動じずデビを締める。


「何でだよ!?何で効かないんだよ!!」

「てめえの魔力が弱いだけだろ!」

「魔法抵抗か!」


ここまで効かないのかよ!


「か……つ……」


俺の魔法は目の前で防御をしていない敵でさえ倒せないのか!?

そんなに俺は無力なのか?


「助け……て……」


苦しそうに目に涙を浮かべながら俺に助けを求める。

そうだ何やってんだ俺。


「仲間が助けを呼んでいるのに、敵に情けなんてかけてる暇なんてないだろ」


俺は魔法で氷柱を作る。


「ちょっと痛いが我慢しろよ!」


そう言って俺はデフの腕に氷柱をぶっ刺す。


「―――――っ!?痛いだす!」


かなり痛かったのかたまらずデビを離す。


「がはっ!げほっ!げほ!」

「デビ大丈夫か!?」

「遅い!もっと早く助けるのじゃ!」

「よし!大丈夫そうだな」


俺は苦しそうに腕を抑えているデフの腕を掴んだ。


「サンダー!!」

「――――っ!?痛いだす!やめてだす!」


普通魔法抵抗で効かないが傷にやれば抵抗はあるだろうがさっきよりも効くだろう。


「やめてほしいか?だったらもう俺の言うことを聞け!!わかったか!」

「わ、分かっただす!聞くだす!!」


その言葉を聞いて俺は魔法を止めた。


「ちっ!デフのやつもやられやがって」

「それじゃあ俺達もう行くから」


すると後ろで何かが壊れる音がした。


「おいおい、他の魔法は使わないんじゃなかったのか」

「お前の魔法くらい毒で壊せる!」


氷の破片が溶けて紫色に変わる。


「おいおいまじか。おいデビ!先に外に出てろ!」

「お主はどうするのじゃ?」

「俺はこいつを倒してから行く!俺のことはいい早く―――」


デビの方を見るともうすでにその姿は無かった。

あいつ〜!早く行けとは言ったが流石に早すぎだろ。


「殺す!絶対殺す!」


こいつなんでこんなに俺を殺したいんだ?

復讐にしては少し俺を殺すのに執着し過ぎる気がするが。


「お前を逃がすわけには行かない!じゃなきゃ俺が……」

「俺が?」

「うるせー!死ね!デットリーポイズン!!」


するとケイガが毒を飛ばしてきた。


「もうその手は喰らわないぞ!ウインド!」


風で毒をケイガの方に飛ばした。


「これは俺の毒だぞ!効くわけ無いだろ!!」

「そうだよな!だったら」


右手はウインド、左手はファイヤーで。


「そのまんまだがファイヤーウインド!!」


俺はケイガに熱風を飛ばした。


「どうした!こんなもんじゃ俺を倒せないぞ!」

「別に倒す気なんてない!いけデフ!!」


俺は震えているデフに命令する。


「行くだす!」


そう言って素直にケイガの方にジャンプしてケイガを下敷きにする。


「おいてめえ!何しやがる!さっさと降りろ!」


デフが重りになってケイガは全く身動きが出来ない状態になった。


「じゃあなケイガ!楽しかったぜ!」

「くそ!まて!このくそやろーーーー!!!」


ケイガの悔しそうな声を聞きながら俺は部屋を出た。


「一応ドアノブを凍らせるか」


俺はドアノブに向かってアイスを使う。

するとみるみる内に氷は広がっていき、完全に凍りついた。


「ふーこれで大丈夫だな。て、うわっ!?」


足元に何かを触った感触がした。

恐る恐る見ると半獣が倒れていた。


「こいつらドリー盗賊団の奴らか何で倒れてるんだ?」


すると近くに誰かの気配を感じる。

俺は近づいているその気配に注意しながら身構える。


「何をそんなに警戒しておるのじゃ?」

「何だお前かよ。びっくりさせんな」


デビの声が聞こえたので俺はほっとする。


「とりあえずここらへんの奴らは倒しておいたぞ。あとは下だけじゃな」

「仕事が早いなそれじゃあ早く下に行こう。もうミノルとリドルが倒し終わってるかも知れないからな」


俺達は倒した下っ端をロープで縛った後下に降り奥の扉を目指した。


「さすがあの2人だな。下の奴らは全員倒されてるな」

「ま、妾もこれくらい余裕じゃがな。お!あそこじゃな!」


奥の扉は少し半開きになっていた。


「誰かいるみたいだな」

「そうじゃのう。とりあえず魔法ぶっ放すか?」

「物騒だろう。ゆっくり入るぞ」


俺達は半開きになっている扉をゆっくりと開ける。


「な、何だこれ……」


その部屋には窓ガラスが割れていて、何かが置いてあったと思われる台座があった。

あの窓は故意に割られたのだろう、それに所々誰かと争った形跡も見られる。

そしてその窓の下には血を流している2人の半獣が倒れていた。


「み、ミノル!?リドル!?どうしたんだ!」

「な、何じゃ!どうなっているのじゃ!」

「おいミノル!ミノル!」


揺らしても反応が無い。

この2人以外誰かがいる気配がない以上窓ガラスを割って脱出したのだろう。


「ミノル!!ミノルーー!!」


俺達は負けたのだ。



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