その十四 連携
「さぁ〜って何する?」
俺達はミライさんに占いをして得意魔法を知った帰りだ。
俺の得意魔法は無属性らしく、まあ俺にとっちゃ意外と当たりでもある。
「そうね。皆……いや、一部を除いて得意魔法を再確認出来たし、こっから本格的にクエストの準備をするわよ」
クエストというのは後2日後に迫っているドリー盗賊団の事である。
こいつらを倒して何とか1億を3日後までに返せればいいが、まあそれは当日になってみないとわからないわけでとりあえず今はミノルの準備とやらが何なのか話を聞くか。
「準備などもう必要なかろう。妾にかかればドリー盗賊団など小指で倒せるぞ!」
「それで準備というのは何ですか?」
意味不明な言葉を発するデビを無視してリドルは話を進める。
無視された事に怒っているのかこちらを凝視している。
いや、俺のせいじゃないからな。
「皆、実はもう後は解毒剤確保して終わりとか思ってない」
「まあ、正直なところそう思ってるな。他にやることないだろ」
するとミノルは呆れたようにため息を漏らす。
「何だそのため息は」
「かつはまだまだ駄目ねー。察しなさいよね」
「察しろって言っても分かんないもんはわかんないんだよ」
するとミノルはまた先程と同様の顔をする。
何かその顔ムカつくな。
「リドル!私達の作戦を言ってみて!」
「え?作戦ですか?作戦……は!そういう事ですか」
リドルは何かを察したみたいだな。
俺はまだだけど。
「それじゃあ次かつ言ってみて」
「え?俺?」
急に振られると困るのだが。
「えっと……作戦ってあれだろ?スカーフまいて解毒剤使って色々やるんだろ」
「曖昧すぎでしょ。でもこれでよく分かったように私達は道具しか用意していないのよ!まだちゃんとした作戦を立ててないの」
そう言われるとなんかそんな感じがする。
「確かにそうですね。いつの間にか作戦を立てた気になってました」
「俺も。そういえばそうだったな」
「妾は最初っから気づいていたぞ!」
「お前の馬鹿さならみんな分かってるから安心しろ」
「妾は馬鹿じゃない!」
そう言って小さな拳で俺の体を叩く。
うわあ〜全然痛くない。
「それじゃあこれからどうするんだ?」
「もちろん作戦を立てに行くわよ」
俺はデビに叩かれながら話を聞く。
「そうですね。僕たちは出来たばかりのパーティーなのでまだ連携もとれないですしね」
「戦ったのってコロット村しかないしな。よし!連携を取れるように作戦を立てるか。それで何処に行くんだ?」
ここには何処かに戦闘施設みたいな所があるのか?
「ちょうどいい場所があるのよ」
「ちょうどいい場所?」
―――――――――――――
「ここがそのちょうどいい場所か」
そこは昔で言うコロッセオみたいな場所だった。
「この街はね他の街にはなかったカジノでだいぶ潤っているのよ。つまり資金が有り余ってるの」
なるほどあいつはあいつなりにやってたってことか。
「それでね、他の街も何だけどみんな魔法使いの育成に力を入れているのよ」
「それは何でなんだ?」
俺達は中に入り階段を上がる。
「それはね、この島の王は現在ガルア様何だけど実はそれは一時的なのよね」
「一時的?それってどういうことだ」
「この島では5年に1度島王戦というものがあるのよ」
何か物騒な名前だな。
話をしながらまだ階段を上がる。
「それでね、それぞれの街の代表つまり王が集まってこの島の王を決めるの。しかも王は指示をしたりするだけで戦うのは王が自分で決めた魔法使い2人まで出せるのよ」
「なるほどだからそれぞれの街でより強い魔法使いを育ててるのか。ちなみにガルア様の代表って何処なんだ?」
実際にあったことはないがこの島の王ってことはかなりやばい奴らを引き連れているのだろう。
「私達の街よ」
「え?」
今なんて言った?
「だから私達の街だって。シアラルス、そこがガルア様の街よ」
「…………」
結構な衝撃に空いた口が塞がらないとはこのことを言うのか、本当に口が閉まらない。
「そんなに驚く事?」
「いや、だって俺達の街ってそんなに強かったのか?」
俺はこの街をあまり知らないけど強そうなやつはあんまり見かけない気がする。
「まあ、私達の街は人間が多いから特訓施設とかあんまり作れないのよ。だから強い魔法使いはガルア様の所に居るのよ」
なるほど特別待遇みたいなもんか。
「俺達も選ばれたら借金とかチャラにしてくれないかな」
「頑張って強くなったらあり得るかもね」
強くなるか……俺はちゃんと強くなれてるのだろうか。
「しゃんとしなさいよ!かつ!」
そう言ってミノルは俺の背中を思いっきり叩く。
「イテッ!何だよミノル」
「何そんな暗い顔してんのよ。あんたはもう1人じゃないでしょ?今はこういう戦い方でいいのよ。焦る必要なんて無い」
「う……まあそうだな」
今考えても仕方ない。
地道に行こう。
「じゃあジャンケンでどうじゃ?それでいいじゃろ」
「それよりもにらめっことかどうですか?それならいいですよ」
「よし!それでいこう!それじゃあいくぞ!!にらめっこしましょう笑うと負けよ、あっぷっぷ!」
その瞬間シャッターを切るような音が聞こえた。
「素材ありがとうございました」
「ぬぉおおお!!」
そう悔しそうな声を上げながらリドルを叩く。
「お前ら何やってんだ」
「いや、ちょっと遊んでただけですよ」
「遊んではいない!妾は本気だ!」
「ほら遊んでないでもう着くわよ」
「だから遊んでなどいない!!」
俺たちはあの長い階段を上り終え扉を開けた。
「ここは……闘技場?」
「みたいなものね」
そこは所々ひび割れしている床と何か大きな衝撃があったのか壁が半壊している。
「ここって確か修練コロシアムですよね。結構人気があって人がいつもいると聞いたんですが、今日は居ないみたいですね」
「今日は貸し切りよ。風間さんにちょっと頼んでね」
「いつの間にそんなことしてたのかよ」
でもそれだけで貸し切りとか出来るのか。
あいつってカジノ作ったりとか色々やってるから結構偉い位置にいるのか?
「それじゃあ早速行きましょうか」
「それでどうやって修行するんだ?」
「こうやってよ」
すると奥の鉄格子が上にゆっくりと上がって行った。
「な、何だ」
すると奥から人みたいな形をした何かの影がゆっくりと現れる。
そしてその影は段々と大きくなって、その正体がわかった瞬間俺は少し後ずさった。
「まさかここの修行って………」
「そうよここは実際のモンスターと戦える。別名モンスターコロシアムよ!」
その瞬間、その人の形のモンスターはそのまま真っ直ぐ突っ込んできた。
「来るわよ!」
「え?ちょ、ま―――――」
俺は突拍子過ぎて皆が余裕をもって避けて行く中俺ひとりだけギリギリの所で避けた。
「あ、あぶねぇ……」
「ほらシャキッとしなさい。いくわよ」
「ああ分かったよ」
俺は1回深呼吸をして覚悟を決める。
「よし!修行開始だ」
―――――――――――
宿屋 23時52分
「最悪だ!マジで最悪だ!」
俺達はモンスターを使って連携作戦を練習し終わった帰りなのだが、実際やってみるとひどい有様だった。
「大体連携以前の問題だろ!みんな好き勝手し過ぎだ。特にデビ!とミノル!お前らだよ」
「何じゃ?まさか妾のせいというのか。それは違うぞ!妾の魔法ならあんなやつ一撃じゃった」
「そう言う割には一発も当たってなかったけどな」
「そ、それは………」
わざとらしく目を逸らす。
こいつの魔法は一撃は強力だが大雑把で素早く動くやつには効かないな。
「次にミノル!お前なんで急にあんな動揺したんだよ」
「だ、だってまさか変形するなんて思ってなかったのよ!しかもヌルヌル見たいな粘液を出す系のやつだなんて……粘液は無理!」
「じゃあ何であいつを選んだんだよ」
「だから知らなかったって言ってるでしょ。あ〜もう最悪体がベトベト」
「俺だってベトベトだよ」
今回戦ったモンスターは人型のモンスターで特に特殊な攻撃はして来ないと聞いていたのだが、実はそれは擬態ができる液状のモンスターだった為だいぶ連携がとりづらくあえなくボロ負けした。
「やっぱりあれね。相性ってあるわよね。多分私達は大きいモンスターの方がいいのよ」
「まあ細かな操作をできる人はあんまりいなさそうですしね」
「できるやつなら居るぞ。ほれ」
そう言って俺を指差す。
「それってどういうことだ」
「だって1番レベルが低いんじゃから―――ひゃ!冷気を当てるな!冷たいじゃろ!?」
「うるさい。お前が変なこと言うからだ。ていうかレベルお前らに話してないだろ俺」
多分言ってなかったはずだ。
「そりゃお主ファイヤボール使ってる時点でもうレベルが―――――ぎゃー!冷気が目がーー!!」
「ま、もうみんなが察しの通り俺のレベルは1だ。あんまりこれ言いたくなかったんだけどな」
「何でですか?別にいいじゃないですか。レベル1でも。ていうか珍しいですねレベル1何て」
「まあすべての魔法を覚えられるって言うプラス思考でいってるよ」
すると粘液がポタポタと体から落ちる。
「今日はもう解散しましょう。私はもう風呂に入りたいわ」
「そうだな。それじゃあまた明日」
そう言うと皆重い体を辛そうに動かしながら帰る。
デビは冷えた目をこすりながら帰って行った。
「俺も早く風呂入ろう」




