その十三 ミライの占い
「ここが占いの館か……」
「そうよ。早速行きましょう」
俺たちは今自分達の得意とする魔法を確認するべく占いの館に来ていた。
「なあミノル、本当にここに行けば自分の得意魔法が分かるのか?」
「分かるわ。大丈夫安心して、怪しい店じゃないから」
「そうなのかな……」
目の前には小さな紫色の建物に怪しさ満点の占いの館と書かれた看板が掲げられていた。
「怪しくないっていう方が無理があるような」
日本だったら見た瞬間やばいと思ってしまうが、ここは異世界だ。
案外中は普通なのかもしれない。
ていうかそうじゃなきゃ無理!
「とりあえず入りましょうか」
リドルに言われ俺は覚悟を決め入っていった。
「ここが占いの館か」
「何か不気味じゃのう」
デビの言うとおり中は不気味なほど薄暗くものもあまり置かれていない殺風景な場所だった。
「何か御用かね」
「え?」
どこからともなく声が聞こえたと思ったら、目の前にいきなり誰かが現れた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「騒がしい、少し静かにしてもらえるか」
「え?あ、すいません」
え?これ俺が悪いのか。
「何しに来た。冷やかしなら帰るのをおすすめするよ」
その人は怪しい衣装を身にまとった女の年配の方だった。
何か俺嫌われたか。
「いえ、違います。今日は占って欲しくてきたんです」
「なるほど。して、何を占って欲しい?」
怪しい雰囲気でこちらを見る。
「得意魔法です」
「ほう、得意魔法か……」
怪しい雰囲気のおばあさんはニヤリと笑う。
「それで、誰を占えば良い」
「この人じゃ」
そう言って、デビは俺を指差す。
「あ、そうです」
いきなり差されたから少し動揺したぞ。
「ほうほうほう、なるほど。お主か……」
そう言ってこちらをじろじろと見てくる。
何だ今の反応は?
もしかして俺になんかやばいものが見えたとか?
「良いよ。そこに座りなさい。占ってあげよう」
言われた通り俺は怪しいおばあさんの前に座った。
おばさんは小さな机の上に乗っている水晶玉に手をかざしていた。
「得意魔法だったね」
「は、はい」
目の前にすると少し緊張するな。
こういう占いとか行ったことないから、何気に初めてなんだよな。
まさか異世界で体験する事になるとは、人生何が起きるかわからないもんだな。
「それじゃあ行くよ。はぁぁぁ………」
占いのお供でもある水晶玉の前で1回深い深呼吸をした瞬間怪しいおばあさんは目を見開いた。
「っ!?」
「$#%^##^%##^^%&&***&^%$%(www$!!!!@」
なんかよくわからない呪文をブツブツ言いながら水晶玉の周りを手でかざす。
ていうか目が見開いていて怖いんだけど。
「#@#$#@%^&&&^^$@$はっっ!!」
呪文のようなものがつぶやき終わったあと一瞬水晶玉が光ったように見えた。
怪しいおばあさんの方を見てみるとまた深い深呼吸をしていた。
「やっぱりそういうこと……」
「何が出たんですか?」
「無だよ」
「へ?無!?」
予想外の答えに俺は思わず聞き返してしまった。
「そうだよ無だよ。あんたの得意能力は無だ」
「無………」
もしかしてこれって本当に無なのか?
俺の得意能力は無いってことか?
「これは少し予想外ですね。無が得意能力とは」
「え?何?無って無しってことなのか?それとも無っていう得意能力があるのか」
そこら辺がよくわからないな。
「無って言うのは属性に入らないものよ。火や水みたいな物じゃなく重力魔法やテレポートみたいな魔法のことよ。かつはインパクト持ってるし逆にちょうど良かったんじゃない」
「なるほど無ってのはそういうことなのか。てっきり無いものかと思ってた」
「ま、無いようなものじゃろう」
デビの唐突な煽りにムカっときた。
「お前それ以上言うと写真ばらまくぞ」
「やめろ!!なぜお主もばらまこうとするのじゃ!」
デビの泣きそうな顔を見て少しスッキリする。
「それじゃあ得意魔法も分かったしそろそろ出ましょうか」
「そうだな。そうするか」
「ちょっと待て」
俺達が出ようとすると怪しいおばあさんが俺達を呼び止めた。
「はい?まだ他になんかあるんですか?」
「いや、お前みたいなやつをここ最近2人ほど見かけてね。そいつらの未来が少し面白くてな。ここから先はお代はただで良い。少し未来を占わせては貰えないか?」
突然の申し出に少し迷う。
未来を占うってのは少し興味があるが、何か怖い気もする。
「かつさんこんな機会ありませんよ。あのミライさんが直々に占いたいなんて」
「ミライさんってもしかしてあのおばあさんのことか?」
あの人ミライっていうのか。
なんかマジで未来見えそうな名前だな。
「でも、確かにこんな機会ないよな。分かった。よろしくお願いします」
そう言って、俺は再び椅子に座った。
「覚悟は出来たようだな。それでは占わせて貰うよ」
先程よりも緊張感が増してるようなきがする。
「これから占う未来は、いつ起こるか分からない。明日かも知れないし1年先かも知れないしあるいは1000年先かも知れない。だが必ず起こる未来だ。心して聞きなさい」
「必ずってそんな断言できるのか」
だがあのミライさんの目は何か先を見ているような目だ。
「かつ、実はあの人の本名はミライさんじゃないのよ」
「え?じゃあ何でミライって呼ばれてるんだ」
いや、なんか理由は何となく分かるのだが一応な。
「それはあの人の未来占いは100%当たるからよ」
「いや、たまたまじゃないのか」
まだ信じがたい事実に疑いを覚える。
「最初の頃は皆そうだった。でも占いをしてもらった人が増えれば増えるほどその事実は広まって行ったの。そして今では怪しいおばあさんと呼ばれていた人は未来を見るおばあさん。ミライおばあさんと呼ばれるようになったのよ」
そんなファンタジーみたいな話を何故か俺は信じてしまった。
それはこの世界自体がファンタジーみたいな世界だったからだ。
「分かった。それを踏まえて覚悟ができた」
「それでは行くよ」
そう言うとミライさんは先程と同じ様に呪文のようなものを呟きながら水晶玉を手でかざす。
「はぁぁ………はあ!!」
「っっ!?」
終わったのか?
「やっぱりね………」
「何が見えたんですか………」
俺は恐る恐るミライさんに訪ねた。
するとミライさんはゆっくりそしてはっきりと告げた。
「いつかは分からぬ未来にお前は3人の死体を見るだろう。それも親しい間柄の人のだ」
「……………」
予想以上の残酷な未来にみんな言葉を失う。
「気持ちは分かるよ。だがこれをどう受け止めるかはお前次第だ。これの意味が分かるね」
「はい………」
正直意味がよく分からなかった。
だが口が自然とその言葉を発していた。
「何かよく分からんが、とりあえず死んだら生き返らせればいいだけじゃろ」
「な、何だそりゃ。そんな魔法でもあるのかよ」
「ない!」
「無いのかよ!」
唐突な発言に場の空気が緩む。
「ふふふっ!デビちゃんらしいわね。なんか気が抜けちゃったわね」
「そうですね。逆にそういう考えがあってもいいのかもしれないですね」
何はともあれ何か気まずくならなくなったから、別に良いか。
「それじゃあ行きましょうか」
「あ、ちょっと待ってください。占いたいんですけど」
そう言ってリドルがみんなを引き止める。
「珍しいなお前占いたいのか?」
「いえいえ、占いたいのは僕ではなく」
そう言うとリドルは指を指した。
「ミノルさんを占ってもらいませんか?」




