その十二 解毒剤の確保
「今日で4日目か」
俺達が返済の期限を決められてから今日で4日経った。
「あと残り3日で1億か……正直無理だと思ったけどまさかそれができるところまで来てるなんてな」
すると扉をノックする音が聞こえた。
「かつさん。入っていいですか?」
「ああ、いいよ」
ゆっくりとドアノブを捻りリドルが部屋に入って来た。
「どうしたんだ?」
「もう出かけるのでかつさんを起こしてきてくれと言われたので」
「ああ、そうだったのか。すまん!今行くよ」
俺がベットから降りようとした時、ふと昨日のことを思い出した。
「どうしました?」
「あ、えっと……」
一応リドルにも新聞のこと聞いた方がいいかも知れないな。
「そういえばリドルって新聞をどこから手に入れたか知ってるか?」
「新聞?……というのはなんですか?」
「あ、情報紙のことだよ」
そういえばここでは新聞って言わないんだったな。
まだあまり慣れてないから情報紙とは言えないな。
「そのことですか。かつさんはミノルさんから聞かされてないんですか?あれは友達から貰ったみたいですよ」
「やっぱりそうなのか。昨日ミノルから聞いたんだよ」
リドルは俺より前にそのこと知ってたのか。
「昨日聞いたんですか。何か以外ですね。かつさんって結構好奇心旺盛だと思っていました」
「え?何で?」
「だっていつもミノルさんとかに色々聞いてますよね。だからもうその事については既に聞いてると思っていました」
何か俺怪しまれてる?
まあ確かにちょっと質問をしまくってるのかも知れない。
ここでは普通の事も質問しちゃってるしな。
「かつさん?どうしました、放心状態になってますよ」
「え?あ!?ごめんごめん!」
ここは逃げるに限る!
「ミノル達待ってるんだろ!だったら早く行こうぜ」
俺はそのままリドルを部屋に置き去りにしてそのまま階段に向かった。
「え!?かつさん!ちょっと待ってください!」
すまないリドル!
「あー危なかった〜!危うくバレるところだった」
ここ最近あんまり気にして無かったから気い抜いていたな。
「最初はミノルにバレたら体を色々とされるって聞いたけど今は、人間との対立とかもあって即処刑だよな」
そう思うと急に体から寒気が襲った。
「よし!こっから気を引き締めるか!」
「何を引き締めるのじゃ?」
「おわぁ!びっくりした!急に出てくんなよ!?」
ひとりモードだったから心臓のドキドキがやばい。
「妾もびっくりしたぞ!急に大声を出すでない。それで何の話をしていたのじゃ?」
「うっ!お前には関係ないだろ」
正直聞かれたのがデビで良かった。
こいつなら聞かれても別に大丈夫だしな。
「なんかお主今妾の事馬鹿にしなかったか?」
「いや、別に」
なんかすごくデビが疑いの目を向けているがそんな事は気にせず俺はミノルの元に向かった。
「ミノルおはよう。今日はどうするんだ?」
「かつおはよう。今日は昨日見つけられなかった魔道具をまた探すわ」
そういえば昨日は見つけられなかったんだっけな。
「てゆうかその魔道具ってなんだよ。昨日教えてくれなかっただろう」
「教えないっていうか、聞かれてなかったから言わなかったのよ」
まあ確かに俺は言ってないな。
「とにかく!その魔道具教えてくれないと探したくても探せないだろ」
「う〜んそうね……」
ミノルはしばらく考えたあと何かを決意したのか考えるのをやめてこちらをまた見つめる。
「分かったわ。隠すことも無いしね」
「よし!それじゃあどんな魔道具なんだ」
これだけ探してるんだ多分かなり希少な物なのだろう。
「ドリー盗賊団は昨日も行った通り毒を得意とする奴らよ。毒があるってことは……」
「てことは………解毒剤か?」
「正解!私達は解毒剤を探してたのよ!」
「解毒剤か……」
かなり探していたから、もうちょっと凄いものだと期待してたんだが。
「かつ今ガッカリしたでしょ?」
「へ?いや、がっかりしてるわけ無いだろ」
やばい!顔に出てたか!?
「まああんだけ探してればもっと凄いものを期待するわよね。でも解毒剤も中々どうして手に入りにくいのよ」
「そうなのか。でも毒って回復のポーションで直せないのか?」
あれなら何でも治せる気がするけどな。
「回復のポーションは体力と軽い怪我が回復するだけで毒は治せないわ」
「そうなのか……それじゃあ魔法では無いのか?毒を治せる魔法くらいあるだろう」
するとミノルは首を横に振る。
「そういう魔法は無いのよ。体力回復とか状態異常回復とかの魔法は無くて、さらに攻撃力アップとか速さアップとか自分の身体能力を上げる魔法も無いのよ」
「へぇ〜そうなのか」
てことはほとんど攻撃系魔法しかないのか。
「で、話し終わったのかお主ら」
なぜか満足そうな顔をしているデビが急に話に入ってきた。
「え?何かお前腹膨れてね?」
デビのお腹は明らかに何か腹に詰めてるくらい膨れていた。
「ああ、ちょっと小腹がすいたのでな食べてきたのじゃ」
「美味しかったですよ。お2人も今から行ってみてはどうですか?」
当然の事のように言うデビとリドル。
「え?ちょっと待て、2人で飯食べに行ったのか!?」
「ええ食べましたよ」
「だってお主ら話が長いんじゃもん。妾はもう待ちきれんかったのじゃ」
そう言ってデビは満腹そうに腹を擦る。
「にしても食べるの早くねえか?」
「僕は少食ですし、デビさんは早食いなので」
「おい、主に向かって早食いとは何じゃ。下僕は変なこと言わず妾の命令だけ聞いてろ」
そんなデビの意味不明な発言にリドルはニコリと笑う。
「あの写真掲示板に貼らせてくれるなら命令を聞いてあげますよ」
「今回は許す!」
リドルの脅迫にあっさり心が折れる。
「かつさん、僕許されました」
「良かったな〜」
そんないつもの風景をミノルは優しく見守る。
「おいミノル。何見守るモードに入ってんだよね。俺たちも飯食いに行くぞ」
「別にいいじゃない。分かったわ。それじゃあ早速行きましょう」
俺たちはちょっと腹ごしらえをした。
「ふ〜、朝飯はこれでバッチリだな。それじゃあ早速行くか」
朝食を先に食べたリドルとデビを部屋に残しているので呼び戻さなければいけない。
「それじゃああの2人を、呼びに行きましょうか」
「いや、もう来てる」
先程部屋に居たはずの2人は何故かもう俺達の隣に立っていた。
「え?いつの間に。私達が終わるの分かってたの?」
「ふっふっふっ!それはな妾が超能力者じゃから――――」
「いえ、ただ単純に窓から見えただけです」
話の腰をおられて不機嫌そうにリドルを見つめる。
「どうしました、デビさん?」
「妾お主大っきらい」
「それは残念です。僕は好きですよ、デビさんのこと。可愛いですし」
デビの言葉を大人の対応で返す。
そんな事を言われてまんざらじゃなさそうな顔をする。
「可愛いなんて……そんなわけなかろう!」
こいつちょろいな。
「仲直りしたところで早速行きましょうか」
「また魔道具店をハシゴするのか」
昨日もかなり魔道具店を見たが解毒剤を見つける事はできなかった。
今回もただ疲れて終わるだけのような気がする。
「今回は昨日の行ったマキノの店に行くわよ。もしかしたら入荷されてるかも知れないしね」
「それじゃあ行こうか」
俺たちは早速マキノの店に向かった。
中に入るとマキノは棚の整理をしていた。
「あ、昨日のお客さん達!今日も来てくれたんですね」
「ええ、もしかしたら入荷されてるかも知れないって思ってね」
周りを見たところそのような品は無さそうだけど。
「ふっふっふっ!お客さん、それだったらついてますよ!実は解毒剤をちょうど発注したんですよ!」
すっごい丁度だな。
「そうなの!?それじゃあいつくらいに入荷するのかしら」
「う〜ん明日くらいですかね。でもでも、入荷したら真っ先に教えますよ!」
「それは助かるわ。それじゃあ入荷した時はよろしくね」
「はい!任せてください!それじゃあなんか買っていきますか?」
そう言って色々な物を渡してくる。
「今日はやめとくわ。また別の日に買いに来るわね」
「え?あ、そうですか……」
なんか露骨に悲しそうな顔をしてるのだが。
「別に2度と来るわけじゃないんだからそんな顔するなよ」
「来ない人の最後の台詞っていつもそれなんですよね」
またなんか言ってるよコイツ。
「なあこれ何ていう物じゃ?」
こいつまた勝手な行動を。
「おい!デビ勝手に触るな。壊したらどうするんだよ」
「妾を子供扱いするな!」
「いや見たまんま子供だろう」
「妾は子供ではない!」
どっからどう見ても子供にしか見えないのだが……
「まぁまぁ落ち着いてください。それとあまりうるさくしないで下さい。客が逃げるので」
「え?あ、す、すみません」
先程までの笑顔が引きつった笑顔に変わりなんか怖い。
「それじゃあ私達もう行くわね!それじゃあ」
このままここに居るのはまずいと思ったのか、ミノルが逃げるようにその場を去る。
「あ、またのお越しを〜!」
そんなマキノの声がドアの向こうから聞こえた。
「えっと……とりあえず解毒剤は入手出来そうね」
「目的も達成したようですし、これからどうします?」
たしかに、このあとやることもないような気がするのだが。
「もちろんやる事はあるわよ」
そう言ってミノルはニヤリと笑う。
「皆の力量を見に行くわよ」




