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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第五章 金と欲望の街カルシナシティ
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その八 その夜

ここはどこだ?

下に何か柔らかい物が敷いてあり上にも同様に柔らかいものが乗っている。

冷たい空気を肌で感じ懐かしい匂いも感じる。

俺は閉じているまぶたをゆっくり開いた。


「………へや……か……?」


そこまでは理解できたが見たことの無い部屋で場所が分からない。

すると隣から声が聞こえた。


「かつ!よかった……あんた本当に気をつけなさいよね!」


いきなりの出来事で脳が追いつかない。


「えっと……俺どうなったんだ」


とりあえず現在の状況を理解するべくミノルの話を聞いた。


「かつはついさっきいきなり倒れたのよ」

「倒れた?俺が?」


まだ覚めたばかりで記憶が曖昧だ。


「そう、確かそう言ってたわ」

「そう言ってた?お前はその場にいなかったのか」

「何かつ、忘れたの?かつは風間さんと話をするって言ってどっか行っちゃってたじゃない」

「風間……風間!!」


その瞬間に過去の記憶がフラッシュバックするかのように記憶が蘇る。


「そうだ、俺風間にやられてそれで……」


その時、不意に怒りが湧き上がった。

あの時風間が言った言葉は俺の心の奥深くまで食い込んでいる。

多分一生忘れないだろう。


「みんなーかつが起きたわよ!!」


するとミノルが大きな声を出し俺が起きた事をみんなに知らせる。


「かつ、顔が怖いわよ。笑顔、笑顔」


そう言ってミノルは俺に笑顔を見せる。

その顔を見ると自然に怒りが消えていった。


「風間さんと何があったのかは知らないけど、せっかくみんなと会うのにそんな怖い顔してちゃ駄目でしょ?」


そうか……ミノル俺を励ましてくれてるのか。

その時、妙な安心感が俺の心を満たした。

そうだよなここはもう日本じゃないんだよな。

すると目頭が急に熱くなった。


「え?かつ泣いてるの?」

「え?」


ミノルに指摘されて俺は目を拭った。

その時手に染み付いた涙を見て泣いてるのに気付いた。


「いや、これは汗だよ汗だよ!」

「何その古臭い言い訳、ふふふっ」

「何イチャイチャしてるのじゃ」

「おわっ!びっくりしただろお前!」


いきなりのデビの登場で心臓がバクバクと鳴っている。


「あれ?デビちゃんいつの間にいたのね」

「何言っとるのじゃ。お主が呼んだではないか」

「ああ……そういえばそうだったわね。すっかり忘れてたわ」

「な!?お主が呼んだのに忘れるでない!」

「えっと……そろそろよろしいですかね」


そう言って話の中にリドルが入って来た。


「リドルも居たのか」

「そうですよ。かつさんが帰ってくるまで、待ってたんですから。それでどうだったんですか?」


その質問に俺は少し答えるのに悩んだ。


「えっと……あんまり話したくないんだけど……」

「だったらいいですよ。話したくないなら無理に話さなくてもいいですしね」

「そうだよな。話しなくちゃ―――って今何つった?」


予想と違った答えが帰ってきたので思わず聞き返す。


「はい、話さなくていいですよ」

「話さなくていいんだ……そうかいいんだよな。話さなくて」


すると安心したせいかまた涙腺が緩くなる。

危ない危ない、流石にそんな簡単に泣いちゃ駄目だよな。


「それでこれからどうするのじゃ」

「そう!今それを決める為に集まったのよ」


そういえば誰かを捕まえに来たんだったな。

風間の件もあってすっかり忘れてた。


「まずは宝石がどこにあるか確認したほうがいいと思いますよ」

「それってカジノ店にあるとか言ってたよな。俺も暇だからだいぶ回ったけどそんなもの見当たらなかったぞ」

「妾も見てないぞ」


どうやらみんな見てない様子だ。


「宝石は奥に大事に閉まってあるのよ。一般公開はされないらしいわよ」

「なるほど。そりゃ見られないわけだ」


そういえば風間はカジノ店の支配人だったなもう会いたくないけどその前に聞けば良かったな。


「それでほんとは支配人と仲良くなって宝石の警備を任せられるようになったら完璧だったんだけど」

「まあ、しょうがないですよ。事情は事情ですしね」

「申し訳ない……」

「それじゃあどうするのじゃ?」


ここまでの話を聞くにカジノ店に盗みに来る奴を捕まえるのは出待ち以外に無いような気がするな。


「侵入するの!」

「侵入?もしかして勝手に入るのか?それって大丈夫か」

「大丈夫じゃないですね。あそこのカジノ店は不法侵入というルールがあり勝手に入ったら処刑されますよ」


ああ、例の安直ルールだな。

この島はすぐに処刑を選ぶな。


「普通に入ったら処刑されちゃうから、ドリーが侵入したのを見計らって私達も侵入するのそしたら誰かが入ったのを見たので気になって入りましたって言う理由が出来るじゃない。それに何か壊したとしてもドリーのせいに出来るしね」

「つまりなすりつけるってことか」

「言い方悪いわよ」


俺が予想してたよりもだいぶやばい作戦を考えてたな。


「まあ、でもそれも結構出来上がった作戦ですよね」

「まあ、確かにこっちも被害も出ないしな」

「ふわぁ〜!……眠い」


デビの唐突なあくびにみんなもつられてあくびをする。


「今日はもう寝ましょうか」

「そうだな。もう遅いし」

「それじゃあ僕は自分の部屋に戻りますね」

「それじゃあ妾も〜」


そう言って2人共部屋に戻って行った。

残ったのはミノルと俺の2人だけになった。


「それじゃあ私ももう寝るね」

「ああ……おやすみ」

「かつもぐっすり眠りなさいよ。明日は忙しくなるからね」

「わかってるよ」


するとミノルが扉の手前で立ち止まる。


「かつは今幸せ?」


唐突な質問に少し驚く。


「ああ、幸せだよ」


答えは案外すっと出た。


「そう……なら良かったわ」


ミノルは笑顔で手を振りそのまま部屋を出て行った。


「………さ、寝るか」


そう思い俺はベットに体を預ける。


「ていうかこのベットすごいフカフカだな。もしかして結構ここ高いんじゃないか」


金はそこまで無いはずだけど大丈夫なのだろうか。

そんな心配をしながら俺はゆっくりまぶたを閉じた。

コンコン


「ん?誰だ?」


何か言い忘れたことでもあったのだろうか。

俺はベットから降りて扉に向かって行った。


「ん?何だこの小さな穴は?」


俺はフタで閉ざされている小さな穴を覗き込んだ。


「デビ?何しに来たんだ」


穴の向こうにはデビが扉の前に立っていた。

なるほど、日本でもあった除き穴みたいなやつか。

てことはここを設計したのは風間ってことになるな。


「かつ、話がある。開けてくれぬか?」


俺はデビに言われた通り扉を開け、部屋の中に入れた。


「それで、話ってなんだよ。お前が直接来るなんて珍しいしな」

「妾だって話したいことくらいあるわ!」

「分かったってそれで話ってなんだよ」

「そ、それは……その……」


何だ?急にモジモジし始めて。


「なんだ、もしかして俺の睡眠を邪魔しに来たのか。だったら早く帰れ!」

「違うわ!その……ありがとう!と言いに来てやったのだ!」

「何だその上から目線は。てかありがとうってなんだよ」


こいつがお礼に言うなんて珍しいな。


「妾をあの汚らしい男から守ってくれたじゃろ?まあ下僕として当然なことなのじゃが妾は寛大な心を持っとるからの、お礼を言いに来てやったぞ」

「素直にお礼が言いたいと言えないのか」

「言えない」


なんて強情なやつだ。

まあこいつなりの感謝の気持ちなのだろう。


「ま、ありがとな。だけどお前もこれに懲りたらあんまり突っかかるなよ」

「妾に嘘をついたあやつが悪い」

「それがお前だな」


すると再びデビはモゴモゴと口を動かす。


「改めてありがとう……助けてくれた時ちょっと嬉しかったし………ちょっとだけかっこよかったぞ!それじゃあ!!」


そう言って逃げるように出て行った。


「ちょっとだけかよ」


ま、別にいいか。

俺は再びベットに潜り込み今度こそ眠りについた。



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