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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
最終章 異世界で最強を目指す物語
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その二十六 おかえり

あれから一年が経った、その間に様々な出来事がこの島で起こった。


「うーん、朝か‥‥‥」


窓からの日差しを受けて目が覚める。

すぐに寝間着から着替えると階段を降りて、洗面台で歯を磨いて身支度をする。


「おはよう」


誰も居ない居間で私は毎日欠かさずその言葉を言う。

いつか彼が帰って来て、おはようと返してくれるのを願って。

いつの間にか料理を作るのが前よりも上手くなっていた。

たまにリドルの料理が恋しくなるけど、あっちはあっちでやる事があるからご飯を作ってもらうだけで呼び出すわけにはいかない。

ここの食卓に付くと、あの日の光景を思い出す。

騒がしい食卓、豪勢な料理、互いの顔を見合って食べるご飯。

あの日々は私にとって宝物でいつまでも色褪せない思い出。

だからこそ今の日々は少し、寂しさを感じてしまう。


「ごちそうさま」


食べ終えた食器を台所に運ぶ。

ココにはいつもリドルが居て、食器を持って行ってはありがとうございますと言って置かれた食器を洗っていた。

その間デビちゃんは満足そうにお腹を撫でながらソファーにくつろいで、かつはデビちゃんを無理矢理退かしてソファーに座っていた。

その事に文句を言って二人で喧嘩をしているのを、私が止めて。


「はあっまた思い出に縋っちゃってる」


私は頭を振って考えるのをやめる。

皿洗いを終えると、必要な物をカバンに入れて家を出る。

この島から魔法は完全に消失した。

皆が魔法を使えなくなった、あの戦いの後かつとガイスが戦った島が消失したことが確認されて、ガイスが戻って来る事はなかった。

それはかつも同様だった。

それにより島は早速復興を開始したが、魔法が使えなくなったことが影響し思う様に復興作業は進まなかった。

さらに島外からの来訪者も多く訪れ、その者達の目的をガルア様が自ら赴いて確認する作業も相まって復興の指示も遅れ島の発展は大幅に遅れた。

だけど幸いなことにモンスターの脅威はさほどなく、直前に大量にモンスターを討伐したことが功を奏したようだ。

とにかく島内外とわず問題が山積みなのである。


「ガルア様大丈夫かな。まあラミア様も十二魔導士の人達も居るから大丈夫か」


ラミア様はガルア様のサポート役として城に残り、十二魔導士の方たちもその二人の護衛とサポートを担っている。

正直、あの戦いでは多くの物を失った。

それでも残された物を大切にして、これから先の島の発展を願う事が生き残った私達の役目なのだろう。

だからこそ私は今日もここに来た。


「おはようございます。島は相変わらず混乱のさなかに居ますが、皆さんが守ってくれた命とこの島を大切にしていますよ」


私は数多くの墓石の前に立ち、この島の状況を話した。

ここは始まりの草原、この島で最も綺麗な場所であり私が大切にしている場所。

この場所にあの日戦って散って言った英雄の魂を休ませるためにお墓を建てた。

お墓を建てることはかつに教えて貰った事と、かつての私が居た国で行っていた文化だったような気がする。

周りにお花は沢山あるが、ここにはないお花を摘んで来てその墓に備える。

そして持って来たお水を使ってお墓を丁寧に拭いた。

これが私の日課、これが終われば魔法師協会が支援しているボランティアを手伝う事になってる。


「さてとルルも待っている頃合いだし、そろそろ行こうかな。また明日来ますね」


道具を片付けてから早速この場を離れようとした時、草花が揺れる音が聞こえた。


「っ!誰!」


モンスター?

いや、この周りにモンスターは居ないはず。

残っているモンスターも臆病で人里何て来れないだろうし、でもだとしたら誰?


「いてててっ飛ばすにしても乱暴すぎるだろ」

「‥‥‥え?」


その声を聞いた時、途端にかつての思い出が蘇って来た。

何度も何度も記憶の中で聞いてきた声。

何度も何度もその声が返って来る事を願っていた。

思わずその声の先をじっと見つめてしまう。

淡い期待と興奮が瞬きを決して許さない。


「けど、ようやく帰って来たんだな。ここも懐かしいな、そう言えば最初にこの世界に来たのもこの場所だったっけ」

「あ、ああ‥‥‥」


声が震える、瞳が滲む。

走り出したい衝動に駆られるが、グッと体を堪えて一歩ずつ確かな足取りでその先に進む。


「ん?あっ‥‥‥」


ゆっくりと振り返るそのしぐさを見逃さない様に。

その顔が愛おしくと、その体を強く抱きしめたくて、その温もりを思い出したくて。

優しく微笑むその笑顔が大好きだから。


「かつ‥‥‥」

「ミノル‥‥‥ごめん、俺――――――」


気が付けば私は思わず彼に抱きついていた。

それが本物だとすぐに確かめたかったから。

幻想ではなく確かにそこに存在していると、確認したかったから。


「いいの、いいから。ずっと信じてたから。だからもういいの」

「ミノル、ありがとう。ずっと待っててくれて」


その言葉が返って来てくれるのをずっと待っていた。

毎日言って返事のない言葉が返って来るのを。


「おかえり‥‥‥!」

「ただいま」


そうして私達は口付けをした。

離れていた時間を取り戻す様に、長く濃厚な時を。

風が優しく頬を撫で、花びらが宙を舞う。


思い出が帰って来た。



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