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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
最終章 異世界で最強を目指す物語
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その二十 扉が開く時

「デュラ!メメ!!」


ゼットは勢いよく研究室の扉を開いた。

するとそれに驚いた様子を見せていた二人が、中に入って来たゼットを見る。


「ゼット師匠、どうしたんですか。そんなに慌てて」

「調整ならもう終わってるのだよ。後は合図を待つだけ、どうするのだよ」

「今すぐに実行してくれ。なるべく早く」


ゼットは慌てた様子でメメに詰め寄る。

その圧に気をされて、メメは目を丸くさせ動揺する。


「な、何をそんなに焦っているのだよ」

「ガイスが島を出る奴をここに閉じ込めようとしている。早くしなければ扉が壊され永久的に島から出られなくなる」

「なっ!?」

「ガイスが、どういうことだ。なぜわざわざそんな事を」

「とにかくすぐに扉を開け。中に入る者達を一斉に入れる。扉を開く時間をなるべく長くしてほしい」

「そんなこと言われてもどんなに早くても扉が開くまで五十分はかかるし、締まるのだって五分しか持たないのだよ」

「理屈がよく分からない。どうして、扉が開くのと閉まるのとでそこまで時間の差があるんだ」

「何も分かってないのだよ。扉はあくまで飾り、実際にはゲートが開くまでの時間なのだよ。扉が開くまでの時間は、別の次元とゲートを繋げる間の時間。閉まるのはそれを維持する時間。例え扉をぶっ壊したとしても、ゲート自体は閉じるのだよ」


メメは身振り手振りでゲートの説明をする。

デュラはその説明を聞いて納得した様に頷いた。


「という事は今から五十分後がカギと言う訳か」

「俺は道中の扉に向かっている人達をなるべく救う。その間、俺は安全なルートを開拓してイズナを運ぶ。デュラはどうする」


その問いはこれからの行動ではなく、自分たちがこの島を離れるかどうかの最終確認だった。


「博士はここで扉を動かさないといけないのだよ。必然的にここに残るしかないのだよ」

「俺はメメ博士を守る役割がある。ゼット師匠とは同行できません」

「分かった。お前ら、達者でな。後の事は任せたぞ」


その言葉に二人は頷くと、ゼットは研究所を出ようと扉に手をかける。


「ゼット師匠!!」


デュラに呼び止められその手を止める。

そして後ろを振り返った時、すでにデュラが頭を下げていた。


「今までお世話になりました。どうか別の場所でもお元気で」

「ちょっいきなり何してるのだよ。そこまでいう間柄でもないのだよ」

「デュラ、お前は優しい子だ。だからこそ時には面倒事に首突っ込んで大変な目に合うかもしれないが、それでもその優しさを忘れないようにな」

「もちろんです」


ゼットはそのまま研究室を出て行った。

ゼットはすぐに行動を移す。

先ずは扉へと続く道中に捕まっている人が居ないかの確認から始めた。


「やはり待ち伏せしていたか」


考えられる道筋にはすでにガイス派の連中が通りがかってくる人たちを待ち伏せしていた。


「お前ら退けよ!何で邪魔をするんだよ!」

「この島からは一歩も出さん!余計なことはしないで貰おうか」

「それは俺のセリフだが」

「な!?お前は!」

「ゼットさん!!」


ゼットはすぐに通せんぼしていた人達を排除する。

そして道が開かれた事ですぐに扉へと人々が走り出す。

だがまだ扉は開かれてはおらずこのままでは扉の前で多くの人が立ち往生することになる。

そしてそれよりも早くガイスが扉を破壊する可能性があった。

ゼットはそれを阻止したいが、未だに道を封じられて扉へと行けない人たちが多い。

この道中に呼びかけを行ったが、扉に近づけば近づくほど立ちふさがる相手も強くなってきている。

戦闘向きではない半獣では強行突破するのが難しかった。


「地道にやっていたら安全な道の確保にも遅れる。いや、それよりも早くガイスを止めなければ扉が破壊される可能性がある。どちらを優先すべきだ」


ガイスの強さはゼットが一番理解している。

簡単に倒せる相手ではない。

そしてゼットから見るガイスの評価としては正面から戦うのではなく小細工を弄して敵を倒すという事。

邪魔しに来ることを想定して、いくつもの策を用意しているはずだとゼットは考える。


「素直に扉へと向うのは危険だ。かといって時間をかけるわけにはいかない。なら俺は」

「ゼットさん!ようやく見つけた」


するとブライドが勢いよくゼットの方へと走って来る。

その姿を見てゼットは安心した様子を見せる。


「ちょうどよかった、二人の様子はどうなった」

「簡単な治療をして、今は休ませています。ゼットさんが中々帰って来ないんで外の状況を確認しようと出たんですけど、これは最悪だ。とりあえずあっちの方で足止め喰らってる奴らは全員助けた。扉の方に向かう様に指示はしたけど、今の所は全員そっちに向かってるんですよね」

「助かる。そのまま足止めを喰らってる人々を助けてやってくれ。俺はイズナを扉に向かわせるための安全な道を作る。ガイスの方も足止めしないといけないからな」

「扉が開くまではとどれくらいですか」

「残りは四十分って所だな。まだ少し余裕はあるが、あまり楽観視できない。とにかく急ごう」

「分かりました。それなら早く行動を開始しましょう」


ゼットとブライドは互いの役割を理解してから早速行動を始める。

ゼットは風の魔法を使って最短の道筋を探し出す。


「お前はぜっ——————」

「邪魔だ!」


そのまま止まることなく水の魔法で立ちふさがる相手を吹き飛ばして。

そうしてゼットは扉まで行くまでの最短で安全な道を作り出すことに成功する。


「あとはイズナをここまで連れて行くだけだ」


扉の方を見るとすでに半分以上開きかけていた。

時間で言えば残り二十分で完全に開くだろう。

ゼットはすぐに頭の中で時間配分を考える。


「戻ってからここに再び帰って来るまで少しギリギリか。お腹の子の安全を考えると無理に早くさせるわ件はいかない。道中の邪魔な奴に時間を稼ぎ過ぎたな」

「そしてここでも時間を稼ぐことになると思うぞ」


その時、奥から知っている声が聞こえて来た。

その声が聞こえて来た時、ゼットは覚悟を決めるようにして振り返った。


「ガイス‥‥‥」

「顔が怖いぞ、守護者様」


ガイスは余裕たっぷりの表情でゼットの方へと歩み寄る。

ゼットはガイスが何を考えているのか理解しようと、言葉を発する。


「ここまでする必要が合ったのか。俺に対する嫌がらせか何かなら、どうして他人を巻き込む」

「嫌がらせ?ははっそんな子供じみた理由でこんなことをしたと本気で思っているのか」

「じゃあ何でこんなことをした、ガイス」

「怒っているのか。だが怒りを感じているのは俺の方だ。お前の身勝手な行動がどのような結果を示すのか。冷静に考えたのか?」

「どういう意味だ」


ガイスは静かに告げる。


「あの扉を動かした時、どうなるかは誰にも分からない。もしかすると外の奴らにバレる可能性もある。俺が行動を起こす前に勝手にそんな事になって、島に来られたらどうする。俺としては先手を取りたいんだ。分かるだろ?」

「今回の事でお前らに影響を及ぼすことはない。これは俺達だけの決断だ。お前に対して悪い事は何一つ起きない」

「信じられないな。とにかく大人しくしてもらおうか」


その時、扉に向かって魔法陣が展開される。


「待て、ガイス!」

「そんなに守りたいなら守ってみろ。だが扉だけだとは思わない方がいいぞ」

「きゃあああ!」

「っ!?」


少し離れた距離の扉の近くから声が聞こえて来た。

ゼットがその声に気付いた時、ガイスはニヤリと笑みを浮かべる。


「扉か仲間、どちらを守るんだ。島の守護者よ」



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