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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第五章 金と欲望の街カルシナシティ
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その七 憎しみ

「俺達をこの島に連れてきた人……」

「ああ、そうだ。お前もいつか会うだろうな」

「いつかっていつだよ!」

「知らねぇよそんなの。俺に聞くな」


俺はずっと考えてきた、この島に連れてきた誰かを。

何で俺をこの島に連れてきたのか。

今すぐ知りたい!


「俺は今会いたいんだ!場所を教えろ!」


俺はかなり興奮してたのもあって食い気味に風間に詰め寄った。


「おい、落ち着け!場所は知らないんだよ!」

「そうやってまた嘘をつくんだろ!」

「嘘じゃない!何でもかんでも俺を疑うな!」


風間は先程よりも真剣な表情で訴えかけてくる。

嘘はついてなさそうだな。

俺はそれに気づき急いで手を離した。


「す、すまん。つい……」

「たく、あのなあー俺だって空気ぐらいは読める。そんな嘘つくわけ無いだろ」

「分かったって、ごめんな」


何か謝るのは悔しいがこれは先走った俺が悪い。


「話を戻すが、俺はあの人の居場所を知らない。あの人と会ったのは突然だ。目が覚めた時急に現れた。そして一通り話したあと再び目の前が真っ暗になり気づいたら、俺が寝てた部屋に戻っていた」

「てことは自分の意思ではなくその人の意思でしか会えないってことか?」

「そういうことだ。これで俺の潔白は証明されただろう」


先程の話を掘り返されて一瞬申し訳ない気持ちがよぎった。


「悪かったって言ってんだろ」

「分かってるって」


でもそうか……自分の意思で会えないとなるとしばらくは会えそうにないな。


「なあ、その人と会って何を話したんだ?」

「それは教えられない。あの人に口止めされててな」


そう言われると余計に気になってしまう。

そのもどかしさが顔に出たのか俺の顔を見ながら風間が笑った。


「なんだよ?」

「ずいぶんと悔しそうな顔してると思ってな。しょうがない1つアドバイスしてやろうか?」

「アドバイス?教えてくれ」


風間を頼るのは尺だが今はそんな事言ってられない。


「死ぬ思いをしろ」

「…………え?それだけ?」

「ああこれだけだ」


死ぬ思いをしろ、これだけだと意味がよくわからないな。


「そのままの意味だと俺結構死ぬ思いしてるんだけどな」

「知ってる。処刑されそうになったんだろ?上手く言いくるめて金で納得させたそうじゃないか」


その唐突な発言に俺は驚きを隠せなかった。


「何でお前が知ってんだよ!?」

「新聞だよ」

「新聞?」


それは懐かしの日本で聞いたことがある言葉だった。


「ま、ここだと情報紙って呼ばれてるが新聞紙の方がいい慣れてるだろ?」

「まてまてまて、それ以前にそんな物あったのか?」


新聞紙みたいな物があったらこの世界の事についてよく理解できる。

でも何かどこかで聞いたことあったような気がする。


「残念だがこれはVIP、つまりある程度の権力を持ってるやつにしか配られない代物だ。人間に渡されないようにする為らしいけどな」


ここでも人間は嫌われてるのか。


「て、ちょっと待て!その話だとお前はある程度の権力を持ってるやつになるけどそこんところどうなんだ」

「どうなんだって、おいかつ、俺はこの街を救った男だぞ。このカジノ店も俺が作ったんだよ」

「まじかよ……」


そういえばあそこの従業員達も風間を様付けで呼んでたな。


「ん?てことは俺がここに来るのを知ってたってことか」

「ま、そうなるな」


だからあんな冷静にしてたのか。


「と、話を戻すが、お前が処刑されそうになった理由は黒の魔法使いにあるみたいだな」


黒の魔法使いというワードが出て俺は真剣に話を聞いた。


「ああ……実は1回戦った事があるんだ」

「やっぱりか……かつ、俺の体験した出来事に基づいて1つ忠告しておく。自惚れるな。お前は強くない」


念を押すように言われ流石に少しイラッと来た。


「俺は別に自惚れてなんか――――」

「かつ、お前はうぬぼれている!レベル9と聞いてなお立ち向かってきたのが何よりの証拠だ」


そう言われるとなんかそう思ってしまう。

だが俺はすぐには納得出来ず反論した。


「あれはお前が茶化すような事言ったから勢いで……」

「それが命を失うかも知れなかったら?」


急な声質の違いに、一瞬固まる。


「どういう意味だ?」

「この世界の命の重さは軽い。たった1日の裁判で処刑が決まるなんてこと日本じゃありえないだろ」


たしかにあの裁判には色々と不審な点があった。


「それにこの島には罪がない」

「それってどういう事だ?」

「この島全体のルールが無いってことだ」

「つまり罰せられないってことか?」

「そもそもそういうもんが無いってことだ」


何かよくわからんな。


「はあ……まあ簡単に言うと人を殺しても何も言われないってことだ」

「はあ!?意味わかんないぞ!人を殺したら罪に問われるだろう!普通!」


だがその瞬間、自分の言葉の正解を自分で理解してしまった。


「気づいたか?そうだこの島は普通じゃない。まるで出来たばっかの国みたいで穴だらけだ。人が殺されても運が悪かったと思うんだ。この島は」


それに気づいてしまった瞬間全身に寒気が走った。


「ここの店や場所などの小さなルールは存在するがこの島全体のルールは存在しない。そんな島でも1つだけルールがある」

「な、何だ?」


また空気が張り詰める。

だが先程とは違う空気だ。


「人間との接触または交わることを禁ずる。これを破った者もしくは干渉した人、全員を処刑とする、だ」

「また人間……」


やっぱり人間と半獣を関わらせないようになってるのか。


「街や島の発展もせず法律も作らず、ただ人間との交流を固くなに禁じている。あの戦争に妙に固執してるように思えないか?」


話を聞けば聞くほど疑問がよぎる。


「確か終戦したのは10年前だよな」

「ああ、まだ日が浅いとはいえ終戦を宣言したガルア様自身も仲を取り戻せるように頑張っているらしい」

「そうなのか?だったら何でこんな法律があるんだよ」


すると風間が俺の話に同意するように拳を握る。


「それが謎だ。そこでさっき話した裏で牛耳ってる奴がいるっていう話だ。俺はガルア様に誰かが圧力をかけてるとしか思えない」

「無くすにもなくせないってことか?」

「そういうことだ」


俺は頬に一滴の汗が流れ落ちる。

この島相当ヤバイのかもしれない。


「かつ、この話を踏まえてもう1回忠告するぞ。うぬぼれるなよ。お前が生きてこられたのは仲間のおかげと運が良かっただけだ。いつか必ず後悔することになる。分かったな」


その言葉を聞いて1人の人物を思い出す。

クラガ……あいつも同じようなことを言っていた。


「分かった。気をつけるよ」


その時どこからともなく鐘のなる音が聞こえた。


「これって……」

「俺が作ったんだよ。日本でもあったろ?5時のチャイムみたいなやつ。これなら時計を見なくても時間がすぐ分かるだろ」


風間も異世界で色々とやってるんだな。


「と、暗くなって来たしそろそろ帰るか。あ、あともう1つ、俺とお前の他にあと3人日本人がいるぞ。その内の1人はすでにもう会ってる人物だ」

「まだ他に3人もいるのか!?」


何でそんなに異世界転移してんだ?


「じゃあなかつ。またどこかで会おうぜ」


そう言って背中を向けて立ち去ろうとしている風間を俺は呼び止めた。


「風間!!」

「何だ?」

「どうして俺を助けてくれるんだ?俺の事嫌いじゃないのか?」


すると風間が不気味な笑みを浮かべる。


「かつ、俺は別にお前のことを嫌いなんて思ってないぞ?」

「じゃあ何であんなことしたんだよ!」

「それはな………」


その時風間の顔が見たことの無い顔に変わった。


「興奮するから」


その瞬間全身に寒気が走った。


「俺はさぁー刺激が欲しかったんだよ。だからいじめというスリリング、やってはいけない行為をする背徳感、その人のこれからの行動を制限出来るという独占力、それらが合わさり俺の中の退屈を無くしてくれた」


俺は風間をまっすぐ見つめ拳を握る。


「たがそれも慣れてくれば刺激も薄くなる。そんな時あの出来事以来いじめの標的とされていた。お前を見つけた」


そういえば途中からだったな。

こいつが俺をいじめるようになったのは。


「その時のお前の目は今でも忘れない。他の奴らとは違う。憎しみや殺意のこもった眼だ!他の奴らのようにただ泣き叫び許しをこうバカ共とは違い反撃してくるやつを見たのは初めてだった」


だんだん胸が苦しくなってくる。


「その目を見た時今までとは違う不思議な感覚が俺を満たした。お前をいじめていくうちにそれが何なのかようやく理解した」


体の震えが止まらない。


「俺は恨まれたり、殺意を向けられる事によって幸せを感じるってことがな」


その時、俺は気づいてはいけないことに気づいてしまった。

もしそれが本当なら俺は自分を抑えられる気がしない。


「1つ聞いていいか?」


震える声で俺は風間に質問をした。


「どうぞ」


風間の笑顔を見ていくうちにある感情が出始めた。


「お前は俺を嫌ってるからいじめをしたんだろ?」


やめろ!

これ以上言うな!


「違う」


だが、一度動いてしまったらもう止められなかった。


「じゃあ、お前は」


これ以上はもう!


「暇つぶしの為に、自分の欲求を満たす為にやったのか?」

「うん、そうだよ」


その瞬間目の前が真っ赤に染まった。


「かざまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


俺は目の前の男を殺す為だけに突っ込んでいった。


「ははははははははは!!!グラビティ!」


俺の体が勢いを落としその場で止まる。


「殺す!殺す!!」


前に行きたいのに進めないストレスがまた怒りを一層に昂ぶらせる。


「はははははは!!いいよ!その目だ!やっぱりこの目を見ると幸せに包まれてるような最高の気分になる!!」

「くそぅ!くそぅ!!くそぅ!!!」


俺はこいつの暇つぶしの為だけにあの地獄のような日々を送ったっていうのかよ!

そう思うと更に怒りが沸き起こる。


「理不尽だ!!お前みたいなやつがいるから世の中は腐ってやがる!!」

「ははは……!!笑った笑った。かつありがとう。最後にその素敵な顔を見せてくれて」

「うるせぇ!!ここで殺してやる!」


くそぅ!!届かねぇ!あともうちょっとでぶっ殺せるのに。

すると風間が手に魔力を込め始めた。


「じゃあなかつおやすみ」

「クソ野郎がぁーーーー!!!!」


その瞬間腹に強烈な痛みが走り俺はその場で気絶した。

悔しさの涙を流しながら。



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