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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
最終章 異世界で最強を目指す物語
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その十七 変革の時

それは徐々に広まりつつある。

二人の王の画策が。


「おい、聞いたか。ゼットさんがこの島を出るつもりらしいぞ」

「は?それ逆じゃないのかよ、むしろガイスさんがこの島に出たがってるんだろ」

「俺も噂で聞いただけだからよく分からないんだけどな」

「そんなことより、そろそろ始まるぞ」


噂が広まりつつある中、城を前にして人々が集まる。

そして城の中からガイスが悠然とした態度で登場する。

それに対し歓声を上げる者、疑いの眼差しを向ける者、ただ興味本位で来た者など多種多様に居た。

それらの人々をガイスが一瞥する。


「皆よく集まってくれた。俺の事を慕ってくれた者達、そして興味本位や品定めの為に来てくれた者達も歓迎しよう。全員が納得出来る提案を俺からしたいと思う」


その言葉でさらに声が上がる。

だが一部の者は不満げに言葉を漏らす。

ガイスは自身の言葉を聞いてもらう為にゆっくりと手を上げる。


「一つ、今から約束をしよう。お前たちが苦しんで来たすべての障害を、この俺ガイスがすべて取り除くと。真の自由と平和をもたらすことをここに宣言する」


その大胆な宣言に驚きの声が次々と上がって行く。

ガイスはその反応を分かっていたかのように用意していた言葉を続けて良い。


「ただ言うだけなすべての人間が出来る事だろう。虚勢は一時の興奮や感動を呼ぶものだが、後からそれらの負債を背負う事になる。だからこそ今ここで具体的な計画を伝える。そうする事でこの言葉が虚勢なのではなく、事実だと言う事を改めて感じることになるだろう」


ガイスは巧みに人々の心を掴む話術を披露する。

最初に興味本位で来ていた者達も段々とガイスの次の言葉に期待を寄せる。


「まず俺が目指すべき目標から言おう。すなわちこの島を正式な有人島として世界に認めてもらう。今の我々はこの世に存在していないことになっている。つまり生きていても死んでいてもどうでもいい存在。だからこそ俺達の存在やこの島が生き物が住める島として世界中に認知させる。そうする事で俺達はこの世界に存在する事が出来、好きな場所、好きな所へ赴くことが出来る。これが俺の目標と方針だ」


ガイスは知っていた、今の人達が求めていることを。

ガイスは知っていた守られることで人間は安心感を覚えられると言う事を。

大きな目標にはそれなりの代償が伴う。

その代償は誰しもが取りたがらない。

だからこそ代わりにそれを受け入れてくれる人物を求めてしまう。

それが進んでそれを引き受けてくれる者ならなおさらだ。

この島には先導者が二人いる。

最初からその立ち位置に付いていたのだとすれば、後は実行するだけのビジョンを説明すればいいだけ。

そうする事で人々はこの人物なら任せられると、思考がそう判断してしまう。

なぜなら人は難しい事を考えるのが嫌いだからだ。

だからガイスは率先して嫌がる事を請け負う。

計画も実行も未来も過去も、全てを担う。

それが彼にとって思い通りの展開だと言う事も知らずに。


「その為にもお前達には協力してもらいたい。魔法を使って外の世界の者達と戦うんだ。愛する者達が居るのならその人達の幸せの為に、自由を求めるのなら新の自由を勝ち取る為に、それぞれの正義の為に共に手を取り合い戦うじゃないか。戦闘は俺に任せろ、お前らの道は俺が切り開く。俺達はもう昔とは違う、冷遇され世界から拒絶され人権を失い好き勝手に人生と体を滅茶苦茶にされた。そんな過去は今から忘れろ!俺達は半獣だ、俺達は新たな人類だ。証明しようじゃないか、俺達がここに生きていると言う事を!これから先は俺達の時代だ!!」


その場にいた人々の心が今ひとつなる。

歓声は島を揺らす程の声量となり、それらが新たな王の誕生を予感させていた。

真の先導者はガイスだ。

それを証明するかのように、ガイスの名前が何度も呼ばれる。

その光景をガイスは満足げに眺め続ける。

すべては順調に自身の思いのままに動いている。

その中で思い通りにならないのが一人、その演説を影から見ていた。


「ガイス、やってくれたぜ」


ブライドは悪態をつくとそのままその場を離れた。

ブライドはすぐにある場所へと向かう。

黒い四角いその異質な建物の中を隠された入り口から入る。

そしてある部屋の中でメメが必死に作業している姿をゼットが眺めていた。


「ゼットさん、ちょっといいですか」

「おう、ブライドか。どうした」

「ガイスが正式に島を出ることを宣言しました。それにより奴の演説に感銘を受けて奴らがこぞってあいつの計画に賛同しています。中立的な立場に居た奴らも傾きつつあります」

「そうか、あいつは口が上手いからな」

「呑気な事言ってる場合じゃないでしょ。状況分かってるんですか。このままだとこの島で戦争が起きますよ。本格的に動き出すことをあんな大胆に宣言されればこっちの奴らが黙っていられない。無理矢理にでも止めようとする。相手も抵抗するだろう、そうなれば争いは避けられねえ。大勢死ぬ、それでいいんですか!」

「きたきたきたー!!」


突如作業をしていたメメが興奮気味に声を上げる。

ゼットは話しを止めてそちらの方へと向かう。


「ついに出来たのか」

「ゼットさん、まだ話は」

「ついに来たのだよ!ようやく直ったのだよ!どうだ見たか!未来研究所、博士を馬鹿にしてきた奴ら!お前らが作った機械もバッチリ解明してやったのだ!」

「メメ、それで動かせるのか」

「バッチリなのだよ。というかここの施設自体、その扉を動かす為の物だったらしいのだよ。運がよかったね」

「なら動かせるんだな」

「複雑なコードや設定、大量のエネルギー何かも必要で専門知識が無いと動かすのは困難なのだよ」


その言葉を聞いてブライドは残念そうな表情をする。


「そうなのか」

「だけど、それらの小難しい事はすべて機械がやってくれるのだよ。でもそれだと細かい指定が出来ないから、扉の行き先は未確定になるのだよ」

「おい、それってどういう意味だ。そもそもあの扉は何だ」

「言ったはずなのだよ。博士は個々の専門家ではないのだよ。だけどこの装置を見る限り、次元間の移動装置だと予想できるのだよ。つまりここではない全く別の世界に跳ぶ可能性があるのだよ」

「ここではない、別の世界‥‥‥それって生きていけるのか?」

「辿り着くまでに生命に対する害は無いと思うのだよ。それにこういう装置を作っている以上、移動先もある程度の生命的環境が整っている場所のはずなのだよ」

「根拠がねえな。それは本当なのかよ」

「博士も完璧に理解している訳じゃないと言っているのだよ。とにかく使えるとしても一回限り、扉が開き閉まるまでの間だけしか移動できないのだよ。それ以降は二度と扉は開かない。どうする?」


メメはゼットの方を見ると、ゼットは覚悟を決めて頷く。


「メメ、それはいつでも動かせるのか」

「自動設定をオンにしてその設定が適応されるまでだから、稼働してから一時間後に動かせるのだよ。始めるタイミングはいつでもいいのだよ」

「分かった、ブライド。ガイスは自身の計画を島民に話したんだよな」

「ああ」

「なら、俺も同じことをしようじゃないか。俺がすべきことを話そう」



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