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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
最終章 異世界で最強を目指す物語
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その十一 確信

「あれは!」


ゼットの元へと向かって行くブライドとガイスは空中を浮かんでいるモンスターを目撃する。

そしてそれは凍り付き、そのまま下へと落ちていく。


「もしかしてゼットさんが‥‥‥」

「急ごう、何か合ってからじゃ遅い」


二人は風の魔法を用いてすぐに現場へと向かって行く。


————————————————————

「はあ、はあ、うぐっ!」


血が、止まらない。

段々と意識が‥‥‥


「くっがはっごほっ!俺はまだ」


体を起こせ、まだ死ぬわけにはいかない。

死ぬ、わけには。


「‥‥‥いや、もういいか」


俺はそのまま地面に背中を付けて横たわる。

片腕を失い、出血もして魔力も使い果たした。

ここまでよくやっただろう。

あの化け物は現時点のこの島に居る者達では束になっても敵わないだろう。

活動を開始した時点でそれを止めるすべはない、島はこのモンスターによって壊滅させられていただろうな。


「なら、もういいだろう」


十分やったさ、この島の守護者になると決めた直後の事だしな。

役割は果たしただろう。

体がだんだんと冷たくなって来た。

そろそろかな。


『助けてやろうか?』


「っ今更何だ」


『こういう時の為に存在しているんだよ』


「もういいんだ、それにお前にはもう頼らない」


『生きていて欲しいだけだ。友達だろ』


「何を言って」


『それに行きたい理由があるはずだ』


「もう俺にはそんな物‥‥‥」


また作ってもいいですか


『約束があるだろう』


「それは」


『自身が一番分かってるはずだ。死を否定しようとしていると』


「死ぬことに恐怖は」


『だが後悔はある』


「‥‥‥」


『役割は始まったばかりだ。まだ終わりじゃない。さあ、どうしたい?』


「俺は‥‥‥」


—————————————————————

溶岩地帯はひどく冷え切っていた。

氷が解けた様な水たまりが複数出来ていて、氷漬けにされたモンスターは地面に大きなヒビを残して沈んでいた。

ガイスとブライドはそんな異様な光景を見て呆然と辺りを見回す。

死闘の後は一人の男の安否を確かめる必要があった。

二人の脳裏に過ぎる、無事ではないかもしれないという不安。

最強と言われた男でもこのレベルのモンスターとの死闘で無傷で済むはずがないと。

少し離れた所で人の気配を感じたブライドはゆっくりとそちらへと歩いて行く。

それにガイスも付いて行くと、その場で思わず足を止める。

続けてブライドも無意識に足を止めていた。


「ああ‥‥‥」


ガイスが自然と漏れ出ていた声、それは目の前の状況に対する讃美か感激か。

悠然と佇むゼット、その姿は傷一つなかった。

この時、ガイスは確信した。


「来たのか、お前ら」


目の前に居る男こそが。


「目標はすでに討伐した」


これから先の半獣たちを導く。


「作るぞ、俺達の国を」


新時代の王なのだと。


「ああ、作ろう。俺達ならどこまででも行ける」


ガイスの瞳には確かな野心が宿っていた。

それから街の開拓が始まった。

先ずはベースとなる街の設計図から書き出していく。

街の人達はほとんどがはみ出し物であり、そう言った分野では活躍する事が出来なかった。

だからこそ主にゼットとガイスが先導して街づくりに励んでいく。

だが街の完成図は個人で決める物ではなく島民全員で作る事を重視して、様々な意見を取り入れた。


「俺はおしゃれなショップが欲しいっす」

「アクセサリーショップとか」

「服屋は外せないっしょ」

「料理も大事だろ。飯がまずいと生きてくしかしない」

「娯楽がないのもまずい。危険な島だからこそそう言うのがあった方がいいだろ」

「そう言うの魔法でよくない」

「スポーツできる場所が良い。スポーツって具体的には知らないけど」

「動物を飼いたい。ああでももう居ないのか」

「魚も見たい、というか娯楽施設は大事でしょ」

「本、読みたい」


様々な意見を取り入れて、図案を完成させていく。

最初の話し合いで主要都市を決めることになった。

何かあった場合はそこに集まることになっている。

その為、最初にその街から作ることになった。


「城を作る」


話しが纏まってからガイスがそんな事を口にした。

それに対し、ゼットは眉を吊り上げる。


「必要か?」

「必要だ。城は街の象徴だ。あるだけで人々を安心させられる。各街に作った方がいいだろう」

「分かった。だがそれは一番最後だ。まずはライフラインの確保と生活必需品を揃えた方がいい。快適に過ごせるようにな」

「ああ、それで構わない。城の件は俺に任せろ。こっちで勝手にやっておく」

「人員は?」

「必要最低限しかとらないさ。そうだなあ、ここら辺を連れて行く」


島の住人をまとめた紙を手に取るとその中で五人のメンバーを選出する。

それらの人物は特に目立った様子を見せない者達だった。


「構わない。その程度で大丈夫なのか」

「ああ、それと建てる場所をあらかじめ決めさせてくれ。ここに建てたい」

「街の中心か。ガイス、この場所はまだ研究所が多く残っている。それらはどうするつもりだ」

「使える外観は利用した方が効率がいいだろ。中の資料は全て破棄すればいい。危険な道具もだ」


その言葉にゼットは疑うことなく頷いた。

それを見てガイスも安心したように笑みを見せる。


「すべての街が生活するに十分なレベルまで行くのに二年はかかるだろう。地形的にも難しい場所はあるからな。この街みたいに建物を利用する事が出来ない場所もある」

「溶岩地帯は素材を変えなければな。あそこが一番の難所だろ」

「あそこはエネルギー街に成る。それまでは人力だな」

「さらに効率良くするためにはあいつらにも教養は付けさせた方がいい。元が義務教育もろくに受けてない奴らだろう。半獣の体は頑丈だからへまして余計なことをされても困る」

「学校を作ると言う事か?」

「セミナー位の感覚で良い。そこまで大袈裟にしなくていいだろ」

「会場は何処にするつもりだ」

「研究所を代わりにすればいいだろう。ピッタリじゃないか知識を深める場所としては」


ガイスはまとめられた資料を手に取って部屋を出ようとする。


「しばらくは個々の役割を全うしよう。それじゃあな」


それだけ言うとガイスは部屋を出て行った。

それから人々は街づくりに励んだ。

土地を開拓していき、建物を建設していく。

モンスターが襲い掛かって来てもゼットが迎撃をする。

それを繰り返していくことでこの土地は危険だと刷り込まれたのかモンスターが寄り付かなくなった。

人々は汗水たらして働く、労働をして来なかった者はその喜びと生きている実感を感じる。

あの地獄を抜け出した者達はこの日々が人間としての生を実感できるのだ。


「みなさーん、料理が出来ましたよー!」

「おお、待ってたぜ!」

「ようやくか腹減ってたんだよ」

「今日も美味そうだな」


料理が得意な者達は働いている者達に料理を提供していく。

それらは全てモンスターで作られた料理だ。

モンスターを料理に使う事は常識では考えられないが、現状通常の動物がこの島には存在しない。

そこでモンスター料理を研究している者を筆頭に日々その技術を磨いている。


「今回の料理も美味そうだな」

「そうなんです。普段使わない材料を使って見たので、どうぞ」

「ああ、頂こう」


ゼットはスープを一口飲む。

それから中のお肉をひと噛みする。

味わうように数回咀嚼してからそれを飲み込んだ。

イズナはそんなゼットを少し不安げに見つめる。


「どうですか?」

「独特な風味だが相変わらずの腕前だ。さすがだな」


その言葉を聞いてイズナはパッと目を輝かせる。


「そうですよね!肉の味やにおいが独特だったのでそれを中和する為にスープを特にこだわったんですよ。いつもの手法だと味が喧嘩しちゃうので煮込む時間や足す量などを変えたりして」

「落ち着け、暴走してるぞ」

「あっつい、テヘへ‥‥‥」

「おかわりおねがいしまーす!」


近くでそんな大声が響き渡る。

それに反応してイズナが声を上げる。


「はーい、今行きます!それじゃあ、ごゆっくり」


そう言って慌てて走り出してしまった。


「イズナ、走ると危ないぞ」

「え?何かいっ——————きゃあああ!」


イズナは余所見をした事で足を躓いてしまい、体が傾く。

ゼットは持っていた料理を風の魔法で置くと転びそうになるイズナを支える。


「大丈夫か?」

「は、はい、ごめんなさい」


イズナをゆっくりと立たせると、イズナは少し恥ずかしそうに頬を染める。


「そ、それじゃあ今度こそごゆっくり!」

「走るなよ」

「はい!」


元気いっぱいな返事をしてからイズナはおかわりを求める人々の所に向かって行った。

イズナはその明るい性格と分け隔てなく寄り添うその姿勢にあっという間に人気者になった。

それをゼットは嬉しく思う。

街の開発は順調に進んで行った。

まだパーセントで言えば十パーセントほどだがそれでも予定よりも早く進んでいる。

完成していく街並みを見ながら風の魔法で浮いているお椀を手に取り一口すすった。


「おい、お前!ぶつかった癖に謝りもしないのかよ!」

「ん?何だ?」


その時近くで怒号が響き渡る。

それぞれが過酷な環境を生き抜いてきた者達だ。

気性が荒い物も少なからずいる。

今回の街の開拓にも協力的でない物は居る。

ガイスはその人達に付いて可能な限り話を聞き説得するべきだと言う。

それはこちらに任せてくれと言っていたが、ゼットも目の前の騒動を見逃すわけにはいかない。

騒ぎの近くに行くと、一人の男が地面に尻もちを付いていた。


「おい、何とか言ったらどうだ」

「すまない、考え事をして居たんだ」

「考え事だと?そのせいで俺は怪我を負ったんだぞ。金払えよ」

「今のこの島に通貨はないと思うが」

「分かってねえな。ここでの金は物資に決まってんだろ」

「もっていない」

「もってねえだと?なら直接確かめてやるよ!」


尻もちを付いている男の胸ぐらを掴むと、怒鳴り声をあげていた男は拳を振り下ろそうとする。

その拳が相手に届く直前に、停止した。


「な、何だ。動けねえ」

「これ以上はやめておけ。仲間内で争う必要はない」

「お前は‥‥‥!ちっ!」


男が胸ぐらを掴んでいた相手を放り投げると、ゼットは拳に纏わせていた風を解除する。


「大丈夫か?」

「ありがとう」


再び倒れた男をゼットは手を取って立ち上がらせる。


「あんた、ゼットだろ。有名人だ」

「ああ、そっちは?」

「俺は、デュラだ」



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