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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
最終章 異世界で最強を目指す物語
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その八 選ばれたのは

あの事件から一ヶ月以上が経った。

あれから島に何者かが入ってくる様子はなかった。

その為方針を島に来る不確定要素の排除からこの島での生活を整えることに注力することになった。

手始めにこの島でどこが生活できる環境が整えられるか、その場所を見定める為に島中を回ることになった。

この島をすべて周るのはあまりにも時間がかかる為、ゼットとガイスの二手に分かれてそれぞれ反対方向から島を見渡すことになった。

当初は一人だけで行動することになったが、着いて行きたいと強く願う者達が多くその中でも実力がある物を選定し同行することになった。

そして期間は目安として一ヶ月を想定した。

ゼット班


「ここは中々厳しい環境だな」


そこは火山が複数存在する溶岩地帯、灼熱の地獄のごとく地に足を付けた者の体を容赦なく燃やし尽くす。


「ゼットさん‥‥‥ここに居て、平気なんですか‥‥‥」

「平気だ。あらゆる環境に対する対抗があるからな。多少熱い位で居る分には問題ない」

「すごい、流石ゼットさん。俺達の英雄だ!」


他の物たちは地面に氷の魔法を張って周囲の熱気を風の魔法で調節する事で、何とかその場に居られる状態だ。

この土地にはモンスターも住んでおり餌が来たと言わんばかりに来訪者を睨みつけている。


「ここは危険です、すぐに離れましょう。まだ行くべき場所は多くあります」

「ああ、そうだな。すぐに離れ——————」

「必要ないだろ」


その時、その言葉が聞こえて来たと同時に同行してきた一人の男が氷の地面から離れる。


「っ」

「おい無理をするな。半獣の体と言えどこの環境はきついだろ」

「ここまで温度、どうしてだと思う。最強」

「俺の事を言っているのか」

「お前以外に誰が居るんだ。ここに居るモンスターは全部が熱に耐性がある」

「それはそうだろうな。じゃなきゃこの環境では生きていけないだろ」

「ああ、そしてここのモンスターたちがこの溶岩地帯を生み出しているとしたら」

「つまりここに居るモンスターを全員殺せば、温度は低下し住める環境になると言う事か」

「予想だ。どうする?」


男は挑発的にゼットに提案する。

ゼットは少し思案すると結論を出したのか、ゆっくりと顔を上げる。


「ここを候補地として設定しておこう」

「本気ですか!?こんな所で人が住めるわけないじゃないですか」

「今やらないのか」

「君は黙ってろ!ゼットさん、考え直しませんか。ここはやばいですって」

「安心しろ。お前らには迷惑をかけない。とりあえずここは記録していく」


ゼットは用意していた地図に印を書く。

そこは自らが歩いて書いてきた自作の地図だ。

それでも本物の地図と見間違うほどの精巧さに描かれていた。


「すぐにやりに行かないのか」

「焦るな。今回の目的は済める環境が整った場所を見つけることが重要だ。ひとまず移動しよう」


ゼットは書き終えるとその場を離れようとしたが、足を止めて再び振り向く。


「お前、名前は何て言うんだ」

「ブライド、それで?生意気な奴を覚えておきたいのか」

「いや、ブライド感謝する」

「は?何でだ」

「ブライドのおかげでここの溶岩地帯が候補地として見過ごすことはなかった。ありがとな」

「‥‥‥別に、単にそう思っただけだよ。何だ、思ってよりも寛容な人なのか」


ブライドは気の抜けたように頭をかく。

それからゼットと仲間たちは数々の土地を訪れた。

そして予定していた期日になり集合場所に戻って来る。

集合場所にはすでにガイスと同行したメンバーが待っていた。


「ゼット、戻って来たな。メンバーも欠けてないようで安心した」

「当たり前だ」

「ははっ頼もしいな。よし、まずは情報交換と行こう。こっちはある程度住めそうな場所を見つけて来た。候補はざっと三つだな。それらの土地は一つの街として機能できるほどの面積がある」

「俺も二つほど見つけた。面積は街としては十分な広さだ。だが少し手間がかかると思う」

「へえ、それはどうして?」

「ここの地点を見てくれ」


ゼットは自作の地図を広げるとガイスに同行していた人たちがそれを見て歓声をあげる。


「少し、本物の地図の様だ」

「これ手書きだよな。ゼットさんが書いたのか」

「相変わらず何でもこなせるな。さてと、お前が言ってたのはこの地点か」


ガイスは候補地としてマークしてある地点を指差す。

それを見てゼットは頷いた。


「そこは溶岩地帯だ」

「っ溶岩地帯!?それまた随分すごい場所を選んだな」

「現状では人は住むことは出来ない。だがそこに巣くうモンスターを倒せば周囲の環境を整えることが出来るかもしれない」

「わざわざそれをする必要はあるのか?候補地は現状五つも存在する。それを除いても四つだ。これだけあれば住む分には十分じゃないか」

「この島にどれだけの人が住んでいると思ってる。1つの場所に留めるのは多すぎる。そしてこれからもここに住んでいくのなら増えていく」

「そんなに生き残れる環境でもないけどな。まあ教える奴がいれば生存率はグッと上がるとは思うが」


ブライドはリスクを考えて溶岩地帯を攻める事に躊躇いを感じている。

現状島民の数はそれほど多いわけではない。

だが今後の事を考えればゼットの言う事は一理ある。

そしてゼットは自身の考えを口にした。


「ガイス、俺は一つの価値観にとらわれて欲しくないんだ。もっと広い視野を持って様々な事を経験して欲しい。ここに居る奴らはもうこの島でしか生きてはいけない」

「‥‥‥」

「ならこの島で出来る限りの経験を出来るように、俺は自分の出来ることをやりたいんだ」

「随分と優しいな。見ず知らずの子供の将来まで心配してるのか?まあ俺としてはお前が先頭に立つ自覚をもってくれて嬉しいけどな」

「からかうな。今の俺が生きている理由を見つけたいだけだ」


ゼットは少し切なげにつぶやく。

ガイスはそれ以上言及せずに溶岩地帯の話題に戻った。


「確かに炎はエネルギーになる。街として構えれば今後の生活で欠かせない場所にはなるかもしれない。問題は火山が近くにあるから噴火する可能性がある事と、熱に対する耐性を持った服なんかも合った方がいいな」

「まだ獲れても無いのにそんな先の話もするのか」

「考えるだけならただだろう。問題は溶岩地帯だけじゃない。畑など作物が育ちそうな環境の良い土地には中々に強力なモンスターが存在している。やはりモンスターもそこが住みやすいんだろうな」

「つまり生活する土地を得る為にはモンスターを排除しなければいけないという事か」

「そういうことだ。まあ、難しい話でもないだろう。俺達でさっさと退治して土地を確保しよう」

「ちょっと待て」


ガイスとゼットとの会話を聞いていた集団の一人が声を上げた。

それはゼットの班に居たブライドだった。

彼は真剣な顔つきで少し怒っているようで眉間にしわが寄っていた。


「俺も行かせてくれ。溶岩地帯での事忘れたわけじゃないだろ」

「ブライド‥‥‥」

「へえ、随分と血気盛んな若者だな。溶岩地帯に行ったってことはそこに居るモンスターも見たってことだな。それでも戦えると思ってるのか」

「‥‥‥」

「あれ?俺の言葉には無視なのか。会ったばっかりだってのにもう嫌われちゃったのか」


ブライドはガイスの言葉を無視してゼットの方を見る。


「覚えて、ますよね」

「ああ、だがやめておけ。無理に戦う必要はない」

「何で!」

「危険を犯すな。命を失う必要はない」

「俺にはやれないって言ってるのか」

「そう言った」

「っ俺は!」


ブライドが一歩を踏み出すとその勢いを止めるようにしてブライドが横入りする。


「まあまあ、落ち着いて。ゼットも許可してあげればいいだろ。後進の育成だと思えばいい。お前も行ってただろ。この島に長く住み以上、ある程度の魔法技術が必要だ。そうすれば人も増える」

「俺達が守ればいい」

「無理言うな。全ての街を管理するってわけか?そもそもこれは島の奴らが一か所に集まってひっ迫しない様にするための処置だ。もし土地の面積が予想以上に大きくある程度の余裕があれば何か起きた時様の非常街として残しておくことも検討しておくべきだ」

「いや、全部の街に人が住めるようにする。全ての土地にそれぞれの特色がある。全員が全員違う側面を持っている」

「はあ、お前の頭は固いな。とにかく土地を奪う事が先決だ。それで何の話だったか」

「俺を一緒に連れて行け、忘れるな!」


話しに置いてかれていたブライドは怒りに声を上げる。


「そうだった、俺は連れて行っていいと思う。今回の島内半周ツアーでも人数が多い方が利点がある事に気付いたし、何より親睦が深まる。街を作るとなったらそれらは大きな意味を持つ。もちろん今回の様なやり方ではなくより厳密な審査をして連れて行くやつを選んだ方がいいとは思うぞ」

「分かった。そういうことにしよう」


そう言うとゼットはブライドの方をちらりと見る。


「来るか?」

「っああ、もちろんです」


それを見てガイスは静かに微笑んだ。



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