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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
最終章 異世界で最強を目指す物語
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その六 殺戮と自由

「状態は?」


計画は順調に進んで行き、多くの半獣が生み出された。

薬の開発も滞りなく進んで今ではほとんどリスクのない薬を開発するまでに至った。

後はコストの面をクリアすれば誰でも強力な生物として生まれ変わる事が出来る。


「非常に良好です。一般的な物から適正値が低い者まで、軒並み半獣化に成功しています。現在半獣化に成功したのは三百四十五体、その内の三十体は魔法を放つまで至っています」

「いい、とてもいい。これこそ俺が求めて居た結果だ。後もう少し、もう少しで完璧な薬が完成する。それを使えば今度こそ奴らに一泡吹かせられる」

「なあ、あの人の野心て一体どこから来てるんだ」

「昔上の人達に色々と言われてたみたいだぞ。無駄な実験とかリスクとコストが見合っていないとか。そのせいで満足に実験も出来なかったみたいだ」

「確かにこの環境ならリスクもコストも度外視だ。でも正直この研究ってあの人のおかげって言うよりも周りの研究者が優秀なおかげだよな」

「そこ、何か言ったか」


鋭い目つきが二人の若い研究者に注がれる。

それに気づいた研究者はすぐに姿勢を正して何も話していないふりをする。

それに対し呆れたため息をつき、再び研究対象に視線を向ける。


「計画は順調だ。俺の邪魔は誰にもさせない」

「‥‥‥」


その後方には一人の若い女の研究者が立っていた。

その人物はタブレットに文字を打ち込んでいく。

その様子を横目で見ていた研究者はイラつくように舌打ちをする。


「さっきからカチカチとうるさいな。レポートなら帰ってから書けばいい」

「その一瞬一瞬の出来事を記録しているだけなので。お気になさらず」

「気になるから言ってるんだ。せめて別の部屋でやれ」

「いえ、この研究に対する記録を取らなくてはいけないので」

「ちっ未来研究所の刺客が。監視のためにか知らないが、俺の研究の邪魔をするなよ」

「口出しも邪魔もしませんよ。私はただ記録を取っているだけですから」


そう言いながらも彼女の手は止まる様子はない。

画面を見ずにタイピングをしていく様子を見てますます不快感に苦悶の表情を浮かべる。


「それと一つ聞きたい事が、あれは何処ですか?」


複数の場面が映し出された巨大なモニターの一番端っこの部分を指摘する。

そこは暗い洞窟の様な場所で色とりどりの鉱石が壁や天井に埋め込まれていた。


「あれはトップシークレットだ。お前に教えるわけにはいかない」

「未来研究所で行われる研究は全て管理するのが規則です。秘密は存在しません。これは人類の遺産です」

「言っただろ。これはトップシークレットだ。そんなに恨めしそうに見るな。時が来たら教える。だがお前らは信用できない。俺の研究を盗む可能性すらある」

「研究はその研究の担当者にゆだねています。先ほども言いましたけど、介入する気はありません」

「教えねえって言ってんだよ。その頭は飾りか、小娘が調子に乗るなよ」


ドスの効いた声で鋭い視線を向ける。

だがその研究者は物怖じすることなく、諦めるようにため息をつく。

それからモニターに映る研究対象を見てから考えを改めた。


「分かりました。それでは失礼します」


それだけ言って、彼女は部屋を出て行った。


「へっ内心ビビってるぜ。女が調子に乗るからだ。そうだろ?」

「そ、そうですね」

「ほら、お前ら仕事に戻れ!」


その怒鳴り声に他の研究者も仕事に戻る。


「っすみません。例のゼロプロジェクトのZの様子なんですが」

「Zどうした」

「さっきから何かをぶつぶつと言っているのですが」

「音声を記録すればいいだろ」

「それが何故か音声を認識出来なくて」

「監視室はどうなってる。何のためにそこに居るんだ」

「それが応答されなくて」

「おいおい、今がどれだけ重要な時期か分かっているのか。こんな時に余計な問題を起こさせるなよ」


研究者はゼットが閉じ込められている部屋をアップにして映す。

そこにはうつむいたまま、微かに唇を動かしているゼットの姿があった。


「‥‥‥おい監視室への連絡は?」

「まだ出来ません」

「直ぐに監視カメラを繋げろ。監視室の様子を確認するんだ」

「分かりました」


指示された研究者は慌てた様子で監視カメラへと接続を試みる。

その時ゼットが動き出した。


「研究対象、動き始めました!」

「っやめてくれよまじで」


ゆっくりと立ち上がりそのまま体を動かして監視カメラの方へと向く。


「ちっ!」

「出ました、これはっ!大変です、監視室に居た研究者が全員血を流して、ちょっと何処に行くんですか!」


研究者はその言葉を聞き終える前にすでにその場から慌てて逃げだしていた。

そしてゼットは顔を上げると、ニヤリと笑みを浮かべて唇をうごかした。


『み、な、ご、ろ、し』


その瞬間、強烈な揺れと共に監視カメラに何も映らなくなった。

続いて研究所内に警報が響き渡る。

それを聞いた研究者が一斉に慌てふためき、すぐにこの場から離れようとする。

そして自らを閉じ込めていた狭いその世界を、ゼットは自らの手で破壊した。


「ようやく、出られた」


今まで自由とは程遠い束縛を受けてこの部屋を出ていた。

だが今この瞬間、自らの意思で自らの足でその部屋を出る。

それはゼットからしてみれば全てからの解放だった。


「さあ、やるか。大掃除を始めよう!」


その日は人々の悲鳴が絶え間なく聞こえ続けた。

三日三晩、逃げ惑い命乞いをする研究者を皆殺しにしていく。

最初は研究者の機能の無力化、それにより拘束されていた半獣は自由の身となった。

これはガイスの役目、ゼットは研究者を皆殺しにして行って解き放たれた半獣に対して状況を伝え鼓舞をする先導者の役目。

これにより半獣はその圧倒的な力と勇敢なその行動に胸を打たれ、自らの力を振るって研究者を皆殺しにしていった。

だがその中には殺戮を逃れられた研究者もいた。

そして一人の研究者がデータチップを手にしてこの島を離れた。

それから一週間が立った後、血にまみれたその島では叫び声が途絶えた。



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