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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第五章 金と欲望の街カルシナシティ
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その五 圧倒

「お前名前なんて言うんだ?」

「え?絶対かつだけど………」

「もしかして勝負とかしたら絶対勝つってことか」

「え!?そ、それは……」

「どうした、しょうた」

「こいつ名前が絶対かつらしいぞ」

「マジかよ!それって戦ったら絶対勝つってことなのか!」

「何なに、どうしたの?」

「こいつ名前が絶対かつ何だよ!やばくね!強くね!」

「あんたに聞いてないわ!翔太に聞いたの!」

「そんなのどっちでもいいだろ。それよりどうなんだよ!絶対勝てるのか!?」

「え、いや、そんな事、言われても…………」


子供の頃の純粋なこの気持ちが俺の人生を大きく狂わせた。

ここからがすべての始まりだった。


「何で……ここに居るんだよ………」


そこにはこの世界にはいるはずの無い男が…………風間翔太が目の前に現れた。


「久しぶりだな。絶対かつ。元気にしてたか?」


何度よく見ても、声を聞いても、あの日本にいた風間翔太に間違いなかった。


「元気にしてたかって、どういう事だよ!何でここにいるんだよ!」

「そう怒るなよ。俺にだって色々事情があるんだから。と、まずはこっちの要件を済ませてからだな」


そう言って、一時的に蚊帳の外になっていた男に目を移す。


「な、なんだよ!言っとくが俺はやってないからな!」

「まあまあ、落ち着け。別にお前とは言ってないだろ?」


優しい言葉で男の怒りをなるべく駆り立てないようにする。

相変わらず表と裏では全く違うな。


「くっ!こうなったのもお前のせいだからな」


そう言って、デビを睨みつけようとしたので俺はデビの前に立ち、顔を見せないようにした。


「チッ!」


たく、油断も隙もないなあいつ。


「今回は証拠もないから判断のつけようが無いな。そうだな、だったらこうしよう」


そういってポケットからトランプを取り出した。


「お前もこれは出来るだろ?」


見せ付けるようにトランプを並べる。


「は?もしかして、トランプで決めるってのか」

「そういうことだ。勝負内容はポーカー、俺に勝てばお前は無罪、負ければ有罪、簡単だろ?」

「いいぜ。だが条件がある!」

「何だ?」

「俺が勝ったら謝礼金として50万よこせ!こっちはイカサマ扱いされてまいってんだよ。これくらいの謝礼金は妥当だろう!」


こいつ、自分が被害者だと言い切る気か?

ま、何言ってもあいつは了承すると思うけどな。


「いいよ。だが少し訂正すると、イカサマはここではご法度だ。イカサマ扱いされたら今後のカジノに支障が出るのは間違いない。それらを考えると50万では無く1000万が妥当だと思うが?」

「な!?1000万!?いいのか!」

「言っただろう?妥当な額だと」


50万からの1000万の急激な値上げにギャラリーはどよめきたっている。

そりゃそうだこいつは相手が有利になるようにわざとしているんだ。


「あ、ちなみにポーカーでイカサマを使っても構わないぞ」

「は?」


男は風間の予想外の提案に言葉を詰まらせる。

まあ、元々この男はイカサマをするつもりだったろうからそれもあるだろう。


「あれ?嬉しくないのか?勝てる確率が結構上がると思うんだけど」

「テメェ!俺がイカサマしてると思ってんのか!」


するとここの従業員らしき大男が風間に怒鳴り付ける男の後ろに立ち、睨みつける。


「貴様、風間様を侮辱したか?」


大男の威圧に流石の男も尻込みしている。


「な、何だお前。俺は文句を言っただけだぞ!」

「そうか、ならばあの世で後悔しな」


そう言って、大男は怒りの拳を男に向かって振り下ろした。

だが――――


「やめろ!!」


その言葉で大男の拳は男の顔面のスレスレで止まった。


「お前、俺の客になにする気だ?殺されたいのか?」


その言葉で辺りの空気が張り詰める。


「て、冗談だよ、冗談!本気にするんじゃねぇよ。ま、手出しするなは、ホントだけど」

「も、申し訳ありませんでした。風間様」

「ま、俺の名誉を守ろうとしてくれたし今回は許してやる。次からは命令以外の行動は起こすなよ」

「承知しました」


話し終わったのか、再び男に向きを変える。


「ごめんな。あいつも悪気があるわけじゃないし許してやってくれ」

「あ、ああ………」


今までの男だったらここで謝礼金の増額とかねだりそうだが急な出来事過ぎてそれどころでは無いのだろう。


「それじゃあ早速やろか。あ、ちなみにイカサマはしてもいいけどバレずにやれよ。流石にバレバレのイカサマは反則負けにするが、判定は緩くするからよほど下手じゃない限りバレることはない」

「後悔するぞ」

「後悔させてみろよ」


既に2人の間には、火花が散っている。


「かつここにいたのね」


ミノルがひょこっと顔を出す。


「ミノルか、ちょっといろいろあってな。デビのせいでこうなったのもあるけどな」


皮肉を言ったつもりがデビの反応がない。

デビの方を見ると2人の対決に釘付けになっていた。

こいつ立ち直り早いな。


「デビちゃんが大変な事になってたのに近くにいなくてごめんなさい。やっぱりついていけば良かったわ」

「謝ることじゃないだろ。逆にミノルがケガしたら大変だしな」

「なんで私がケガしたら大変なの?」

「え?そ、それは……」


予想だにしないカウンターに俺は思考が止まる。


「ねぇ、何でなの?」

「そ、そんなことより!ほらあいつらの対決が始まってるぞ!いやぁーすごいなぁー!」

「ふ〜ん、まあいいわ」


意識が俺ではなく2人の対決に移った。

いやぁー危なかった。

いや、なんで危なかったのも良くわからないが何か危なかった。


「うるさいぞ、かつ!集中できないじゃろ!」


そう、文句を言ってくるデビにお前のせいだと言ってやりたいが、ここはぐっとこらえた。

まあ、俺にはこの勝負の結果なんて分かりきってることだけどな。


―――――――――――

10分後

「はい、ロイヤルストレートフラッシュで俺の勝ち」

「また………負けた………もう1回だ!」


ここまでの勝負は風間の圧勝、完勝、還付なきまでボコボコ状態だった。


「またやるのか?結果は同じだと思うが」

「クソ!クソクソクソクソ!」


流石にこんだけ負ければ悔しさを言葉で表すしかできないだろう。

それ程までに風間は強かった。


「ま、もう充分だろ。今回の目的はイカサマをしてるかしてないかだからな。もう帰っていいぞ」

「は?何だよそれ……これで何がわかったっていうんだよ!」


涙目の男の訴えに、ニコリと笑うと立ち上がり男の耳元で何かを囁いた。


「こんだけやっても勝てないんだから、イカサマなんてやってるわけ無いよな」

「――――――――!?」


こいつ、ギャラリーに聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量で喋ってやがる。

相変わらずやり方が汚ないな。


「………帰る」

「そうか、それじゃあまたのご来店をお待ちしております」


顔を真っ青にしながらフラフラとよろけるようにカジノ店を後にした。

あの男はもうカジノ店には来ないだろうな。


「おい、後はよろしく」

「かしこまりました」


何かを伝えると従業員は声を張り上げ、カジノ店に響き渡るほどの大声を出した。


「皆様!お騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした!お詫びとして、皆様に1人ずつ100万を、お渡しします!今後も我らカジノ店をよろしくお願いします!!」


突然の朗報に、皆の歓声と拍手が入り交じる。


「何か色々とすごいことになってますね」


そうつぶやきながらさっきまで何処かに行っていたリドルが帰ってきた。


「あれ?リドルいつの間にいたのね」

「さっき来たので、それよりデビさん災難でしたね。まあ、デビさんも少し非がありますけどね」

「何を言っておる!妾は被害者じゃぞ」


先程の空気とは一変して、いつもの調子に戻っていた。


「えっと……皆!何か楽しんでる所申し訳ないけど、もう出よう!」

「もう出るのか?」

「もう充分楽しんだだろう。それに早くここから出たい」

「どうして早く出たいんですか?」


俺の妙な焦り具合に疑問を抱いたのか、理由を聞きたがる。

くそ!早くしないとあいつが来ちまう。

その時、今最も会いたくないやつに声をかけられた。


「かつ、ちょっと2人で話さないか?」


来やがった。


「もしかしてあの人のことですか?」

「え?かつあの風間さんって人知ってるの?」

「いや、知らん」

「ひどいなかつ。俺たち幼馴染だろ」


そんな事を平然に言ってくる風間に苛立ちを覚えるが、ここで怒ればあいつの思う壺なので冷静になる。


「どの口が言ってんだよ。俺を陥れたくせに」

「それは昔の話だろ。それよりいいのか?ここで話してもいいんだぞ」


こいつ無理矢理でも俺と話をする気か。


「嫌だって言っても、無駄なんだろ」

「ご想像に任せる」


行くしかないってことか。

俺は風間と決着をつけるつもりで向かった。


「かつ!」


俺はミノルに呼び止められたが、振り返り笑顔で答えた。


「行ってくる」

「かつ………」


もう、終わらせなきゃいけない。

この異世界はそのための場所だ。



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