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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その九十三 帰還

「牛乳神のおなーりー!」


上機嫌にそう高らかに叫ぶメイさんの後ろには到底理解出来ない様な不可思議な物体が立っていた。

牛乳神て本当に出現させたんですか。

というか、牛乳神って一体何。


「これはまたすごいな」

「何なのあれ」

「お城ぐらいあるんじゃないかな」

「でっかい‥‥‥」

「さあ、やっちゃって牛乳神!私達を助けて!」


するとメイさんの指示を聞いたかのようにその牛乳神さんらしき謎の物体は、組んでいた腕を解いてガイスに向かって拳を振り下ろす。

だがそれよりもなお早くガイスが魔法を展開する。

そしてその牛乳神さんはするどい岩の魔法で貫かれた。


「あー!!」

「ちょっ瞬殺じゃない!」

「割れちゃった‥‥‥」

「何が牛乳神だ。遊びに来たのなら俺の目の前に立つな。所詮は幻覚、これ自体に実体がないのは明らかだ。意表を突きたいのならまだ納得が出来るけどな」

「ふふーん、私がどうしてロボットに勝てたと思う?」

「何を言っている」


メイさん、牛乳神さんが割られてしまったのに余裕の表情を崩さない。

むしろこの状況を望んでいるような雰囲気を感じる。


「びっくり箱の新境地!牛乳神はただの置物じゃないよ!どんなピンチも救ってくれる、救世主様なんだから!」


すると粉々に砕けた牛乳神さんはそのまま散って行った破片が液体に変貌する。

そして滝の様な量と共にガイスの元へと降り注いだ。


「っ!?一体何の真似だ‥‥‥」


水の魔法に変化した?

ですが大したダメージにはなっていない様な気がしますね。

そんな考えはガイスの様子がおかしい事に気付いた瞬間、取り払われた。


「これは、まさか!」

「牛乳神を割ったらどうなるか、そんなのおこちゃまでも分かることだよ」

「一体何なんですか、あれは」

「あれは、牛乳だよ!!」


メイさんは人差し指を突き立てる。

そんな堂々と言う事ではないと思いますが。


「それもただの牛乳じゃないよ。かけられた相手は徐々に体が硬くなっちゃうの。しかも、ちっちゃい隙間からもすすっと入り込むから中からも固まるのだ!」

「そっか‥‥‥ガイス‥‥‥ボロボロ‥‥‥」

「傷口に牛乳が沁み込むことで内部からも体を固まらせる」

「内部から攻撃するってそれってまるで」

「かつみたいだね」


メメ博士は優秀な魔法使いを選出してロボットの撃退に向かわせました。

メイさんが一体どんな方法で倒したのか見当もつきませんでしたが、精密機械にこの様な魔法は確かに大ダメージですね。

そして結果的にはガイスのレベル魔法の課題をクリアしているオリジナル魔法の作成、メメ博士は見抜いていたんですね。

メイさんの魔法使いとしての才能を!


「こんな物、源魔弾で吹き飛ばせば同じっうぐ!?」


その時、ガイスが顔をゆがめ苦しそうな表情をする。

傷口に牛乳が沁み込んで痛むのでしょうか。

いや、今更その程度では苦しむことはないでしょう。

それならまた別の効果が。


「牛乳はね、零すとすっごく臭いんだよ!」

「ものすごく単純な理由だな!」

「いえ、確かに僕もそう思いましたが実際臭いというのはかなり効果的です。魔法を使うには集中力が要りますから、鼻が曲がりそうな程の強烈な臭いの前ではまともに魔法陣を展開する事も難しいでしょう」

「そう言う事ね。あいつが自信満々に言っていた理由は分かったわ」

「それじゃあ、あとよろしくね!ブラッち!!」


その瞬間を狙っていたかのように、ブライドさんがガイスの目の前に現れる。


「まったく現代の魔法ってのはどれもおかしなものばかりで付いていけねえな!そうだろ、ガイス!」

「ブライドぉぉおお!!」

「あの日の決着を付けようぜ!百発百中!」


その時、ブライドさんはガイスにオリジナル魔法を放つことはなく自身に対して魔法を施した。

一体、何をするつもりですか。


「あの日から、ずっと考えて来た。テメエに敗北したその日からな。どうしても魔力レベルが課題だった、どれだけ魔法を当てても魔力レベルの差は埋めようがない。だからこそ、俺もゼット師匠と同じ領域に立つ必要があった」

『クリシナは死の間際でその領域に片足を突っ込んでいた。俺には出来なかったことだ、尊敬する』

「俺のオリジナル魔法、百発百中は対象の魔法に必中効果を付与する。じゃあ魔法ではなく人間に施したらどうなるか。試してみたくなった」

「まさかそれがお前の言う必勝法か」

「そう、自身に魔法を施したらその身にオリジナル魔法が刻まれた。それにより、全ての魔法が必中効果を持つようになる」

「たかがその程度で、俺を殺せると思ったのか」

「思ってねえよ。最後まで聞けや」


ガイスは再び怪訝そうに眉をしかめる。

それが臭いからか、ブライドさんの言葉によるものなのかは分からない。

ブライドさんは続けて話す。


「これは邪道なやり方なんだがな。自身に魔法を施したことで必中効果の部分を操作できるようになったんだ」

『まあ、その代わりに俺の命を直接削る事にはなるが今更そんな事ビビるわけにはいかない。クリシナが命を懸けて繋いだチャンスを見逃すわけにはいかねえからな』

「俺の魔法は全てお前の体を貫通する」

「そう言う事か‥‥‥!」


ガイスは何かに気付いたのか目を見開き興奮気味に声を震わす。

そしてブライドさんはニヤリと笑みを浮かべると、一瞬にして魔法陣を展開させる。

この数は二十個以上は展開されています。


「ちょっ多すぎじゃない」

「それくらいしなきゃ殺せないんだろ」

「‥‥‥っ!」

「無理するなよ。体中の穴から血が出てるぞ」

「へっ命かけなきゃゼット師匠に顔向けできねえだろ!」

『俺の全てをここに注ぐ!ここが俺の死に場所だ!!』

「あの世で王様気取ってな!全魔法(オールペネトレイト)貫通(マジック)!!」


七色に輝く魔法が全てガイスへと放たれた。

強烈な爆風と地響きにより立っているのがやっとです。

これほどの強力な魔法を魔力レベルを無視した一撃でぶつけられればガイスも、もしかして倒したのでは。

その時、側にいたピンカさんが真剣な表情で魔力を高める。


「ピンカさん?」

「準備しなさい、リドル。まだ終わってないわ」


その視線の先には先程までガイスが居た場所。

土埃が晴れて視界が良くなるにつれてその姿が露わになって行く。


「まだ‥‥‥届かないんですか」

「命を懸けた一撃、よかったぞブライド。貫通する魔法、おかげで邪魔な根と牛乳を取り除けた。俺も素直に受けてやったんだ、これでお相子にしよう」

「つくづく嫌なやろーだな。がはっ!」

「ブライドさん!」


今のブライドさんはもうこれ以上動けません!

すぐにでも助けなければ。


「はあ、はあ、はあ‥‥‥」

「今にも死にそうな面だな。結局はその程度ってわけだ。急速魔力補充」

「余裕ぶっこいてる暇あるのかよ。まだお前を殺そうとしている奴らは沢山いるぜ」

「残りの奴らは大したことはない。ゼットの残党以外は興味がない。あの男も姿を現さないしな。となると残りは消化試合だ」


ガイスはブライドさんの胸に手を当てる切り替えで殺すつもりですか!


「させませんよ!」

「来るな、リドル!!」

「っ!?」


ブライドさんの言葉に思わず足を止めてしまう。

まさかブライドさん、最初から死ぬつもりで。


「賢明な判断だ。このまま来ていたらお前事そいつを殺していた。最後の最後まであまい奴だな」

「俺は託されてんだよ。ゼット師匠にこの島を頼んだってな。だから俺は守る、島も底に居る人々もお前に奪わせはしない」

「そう言う言葉はあの世でゼットに直接言ってやれ。いや、奴はまだ生きてるんだったか。この手で弟子もろとも送ってやれないのは残念だ。だがこれで奴の残した者はすべて消えた」

「消えてねえよ、もう既に受け継がれてんだ。あいつが受け継いだ」

「かつの事か。その本人が尻尾を巻いて逃げてるじゃねえか」

「ははっまだ気づかねえのか。俺達の切り札を」

「そうか」


その時、ガイスの手が光り輝いたと同時にブライドさんの体にいくつもの鋭い岩が貫通する。


「‥‥‥っ!?」

「ガイスさん!!」

「終わりだよ、ブライド。負け犬の人生ご苦労様だったな。お前の頑張りは全て意味はない」

「意味はなくねえよ」

「何だ」

『この目、まだ何かを企んでいる。死んでいない』


「お前は‥‥‥殺した人間を、覚えているか」

「興味ないな。過ぎた過去に執着はしないんだ。もういい、さっさと死ね」

「ぐっあ、あはは‥‥‥!よかったよ、お前がただの小物のクソ野郎で。おかげでお前に一矢報いられる」

「さっきから何を」

「俺は、布石だ。その油断が命取りだぜ」


血を吐きながらも瞳をぎらつかせ、ニヤリと笑みを浮かべるとブライドさんの姿が瞬きすると同時に消えた。

そして代わりに別の人物が目の前に現れる。

それはガイスがその手で葬ったはずの、血の繋がった存在。


「王の領域!」

「お前は——————っ!!?」


ガルア様が帰還した。












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