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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第五章 金と欲望の街カルシナシティ
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その四 イカサマ

「おいおい、いいのか?半分も賭けちまって」

「大丈夫!勝てばいい」

「ま、あんちゃんがやりたいって言うならやるしかないか!」


そう言って機嫌良さそうに椅子にまた腰掛ける。


「で、ゲーム内容はどうする?」

「さっきと同じゲーム内容で。あと、次は俺が選ぶ」

「いいぜ。じゃあ俺のカードはこれだ!」


それは周りが黒く真ん中に死神の鎌が描かれているシンプルな絵だった。


「分かった。それじゃあそのカードを入れた3枚は……」


このカード選びも結構重要なんだよな。

できればタイトが選んだカードと似たようなものがいい。

そうすれば俺が先程やった視線を見るやり方をある程度封じれる。


「それじゃあ、これとこれだな。よし!準備完了だ」


残りの2つは先程俺が選んだカードとうさぎっぽいモンスターとデカイ龍みたいなモンスターが見つめ合っているカードの3枚を選んだ。


「よし!それじゃあかつのリベンジマッチを始めるか!」


すると早速並べたカードをゆっくりと眺める。

サングラスはずっと付けているけど外さないのかな?


「かつ、お前利き手どっちだ」

「右手」

「よし、じゃあこれだな!」


すると迷わず真っ先に当たりのカードに手を掛ける。


「え!?」


あまりの速さについ声が漏れる。

焦るな、俺!

まだバレたわけじゃない。

ここから切り替えればいい。


「どうした?急に声なんか上げちまって」

「いやぁ……本当にそれでいいのかなと思って」


するとあたりのカードを持ちながら再びカードを見返す。


「いや、これでいい」


そういった瞬間、そのカードを勢いよく引いた。


「あ!……」

「ほい、俺の勝ち!」

「また負けた………」


でも、何か違和感があるな。


「どうして分かったんだ」

「お前みたいな頑固者にはさっき自分が選んだカードをいれると思ってな、それに利き手に自分のカードを置きたがる傾向もあるって聞いたことあってな。それで試してみたってわけよ!」

「え?待ってくれ。もしかして俺で試したのか、それを」

「ああ!そうだぜ」


やっぱりこいつ、何か隠してるな。

この説明も嘘だとは、はっきり言えないけどあんまりそういう心理学みたいなのは使わない気がする。

それに利き手を聞く前からずっと当たりのカードを見てた気もするし……


「すまねぇな!それじゃあ、あんちゃんも満足したろうし。俺は帰るわ」


そう言って、タイトは再び勝利した気持ちいい状態で帰ろうとしている。


「タイトさん、ちょっといいですか」

「おいおい、タイトさんなんて固くすんなよ。呼び捨てでいいだろ」

「じゃあタイト、お前ってすごいな。流石プロのギャンブラーだな」

「おいおい、どうしたんだ急に?残念だが金は返せねぇぞ。流石の俺もそこまでは面倒見切れねぇ」


こいつは絶対にイカサマをしている。

それは……あの時ツキノがイカサマを指差していた中の1人だったからだ!

正直忘れてたけどこいつのことを見ているうちに思い出した。


「その凄腕のギャンブラーにちょっと頼みがあるんだけど」

「何だ?もったいぶらずに早く言えよ」

「じゃあお言葉に甘えて。そのサングラス貸してくれないか?」

「……!?」


その瞬間、さっきまで上機嫌だった顔がすっと消え焦りの表情が見えた。

やっぱりこのサングラスに何かあるのか。


「それわぁ……できない相談だな」

「何でだ?」

「これは親の形見なんだ。だから渡せねぇよ」


そう言って俺にサングラスを渡すのを拒んだ。

これはもう確信してもいいな。


「だからずっとサングラスを付けてるのか?」

「そう、そうなんだよ!」

「どうした?笑顔が引きつってるぞ」

「く……ちょっとギャンブルのやり過ぎで疲れたのかもしれねぇな。じゃ、もう帰るわ」


そう言って、慌てて振り返ったせいで目の前の従業員に気づかずぶつかった。


「おわっ―――!おい!気をつけろよ!」

「これは申し訳ありませんでした。あ、落とし物をしていますよ」


チャンスだ!

タイトから離れた今なら見れる。

俺は従業員からサングラスを貰おうと近付いた。

だが従業員の様子がおかしい。


「…………」

「ちょ、従業員さん?早く返してくんない」

「お客様、とても珍しいサングラスですね。レンズが2重なんて」

「な!?何勝手に見てんだよ!返せ!」


無理やり従業員の手からサングラスを奪った。

やっぱり何か細工があったんだ。


「申し訳ありませんでした。それではごゆっくりしてください」

「俺はもう帰るところだ!じゃあな、あんちゃん!!また遊ぼうぜ!」

「ちょ―――従業員さん!今の人止めて!」


だがタイトは逃げ足が早くもう既に人混みに紛れて見えなくなってしまった。


「どうしました?」

「あ……行っちゃった。いや、今の人、何かサングラスに細工してて」

「やはりそうでしたか」

「え?それって……」


すると従業員が札束を俺に渡してきた。


「これって……もしかして、さっきのギャンブルで取られた俺のお金?」

「はい。あの方は要注意人物としてマークしていたんですよ。いつか捕まえようと思ってたんですけど……これは運が良かったです」


そう言うとタイトが持っていたカードを従業員が手に持っていた。

ぶつかった時に盗み取ったのか?

するとカードをじっくりと見始め手でなぞるようにしてカードの質感なども確認し始める。


「このカードやはり特殊なインクが塗られていますね。ずっとこういう証拠が欲しかったので助かりました」


そう言って嬉しそうにポケットにカードをしまう。


「それは良かったですね。えっと……これ貰ってもいいんですか?」

「はい。協力してくれたお礼金として受け取ってください」


俺に営業スマイルで丁寧に答える。

これはラッキーと考えたほうがいいのか?


「ありがとうございました。それじゃあ、俺他のところ行きますので」

「はい。楽しんで行ってください」


俺はなんだかスッキリしないままその場をあとにした。

何か、すっごいもやもやする。


「そんな!こんなのイカサマじゃ!」

「ん?何だ、また騒がしくなってるな」


そこにはギャラリーも沢山いて騒ぎが大きくなっていた。


「なんだてめぇは!人をイカサマ呼ばわりしてんじねぇよ!」

「うるさい!うるさい!イカサマじゃ!」


おい、もしかしてあれってデビじゃないのか?

本日2回目の騒ぎになっているのだがあいつは騒がしくして無いと死んでしまうのか?


「イカサマイカサマイカサマじゃ!!!」

「テメェ………」


すると男の人が拳を握りしめた。

まずい――――――!


「しつけぇーんだよ!ガキが!」


その男の拳がデビ目掛けて振り下ろされると同時に体が勝手に動いた。


「何やってんだ?お前」


俺はギリギリの所で男の手を掴む。

相手の行動に無性に腹がたったが逆にその怒りが俺を冷静にさせた。

急に手を握りしめられたことで男が困惑の表情を浮かべる。


「か……つ……?」

「だ、誰だてめぇ!」


ようやく状況を理解した男が握りしめられた手を振り払う。


「俺はこいつの仲間だ」

「連れか?だったらこいつどうにかしろよ!俺の事イカサマ呼ばわりして困ってんだよ!」

「違うぞ!ホントじゃぞ!こいつはイカサマしたんじゃ!」

「こいつ……まだ言うか!」

「やめろ!!」


もう一度殴りそうになった男を俺は強引にやめさせた。


「デビも勝手に言ったのは悪いけどそれに腹を立てて殴るのは違うだろ」

「かつ……でも妾―――」

「分かった、分かった。ちょっと待ってろ今話を聞くから」


俺はデビの声を近くで聞くため腰を落としデビと同じ目線になった。


「それでデビ、あいつはほんとにイカサマしたのか?」

「ほんとじゃ!信じてくれ!」


そう言って潤んだ瞳で訴えかけてきた。

嘘は付いてなさそうだな。

それにこいつがこんな真剣な顔をしたのは初めてだ。

まあ、会ってまだ数日しか経って無いけどな。

俺はデビの話を聞き終えると立ち上がり男の方を向いた。


「……正直言うと俺はよく分からない。あんたがイカサマをした現場も見ていないし、証拠もない」

「な!?かつ!」

「ふ!そうだろ?俺は何にも悪く――――」

「ただ!俺は知らない奴の意見と仲間の意見、どっちを信じるかってなったら仲間を信じるに決まってる」

「な!?テメェ!証拠もない俺を疑うってのか!!」


俺の言葉に更に苛立ったのか口調が激しくなった。


「お前の目はなんか汚い。嘘つきの目に見える。まだあいつの目の方が真っ直ぐでキレイだったぞ?」

「し、知らねぇよ!そんなのお前の勝手な思い込みだろ!」

「ああそうだな。だからこれは俺の個人的な意見だ」

「テメェら……揃いも揃ってムカつくんだよ!!!」


そう怒号を挙げながら俺に殴りかかってきた。

こいつ何て、手が出やすいんだ!

俺が男の拳を受け止めようと構えた時何処からか声が聞こえた。


「そこまでだーー!!!」

「―――!?」

「な、何だ?」

「ちょっとどいてくれないか。前通るよ。ごめんな〜」


奥からギャラリーを押し退けて誰かが出てきた。


「ふっーやっと出れた。久しぶりだな。絶対かつ」


整った顔立ち、爽やかな笑顔、相手を射抜く鋭い目つき、懐かしい声。

忘れるはずの無い男!

俺が憎くてたまらないあの男が俺の目の前に姿を現している。


「お、お前は………」


その瞬間、ある記憶がフラッシュバックした。



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