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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その九十一 避難した人々

「‥‥‥大分揺れるな」


避難所として増築したメメの研究所には島の人々が集まっていた。

地下に作られたその頑丈な建築物でさえ、振動を感じるほどに揺れている。

その度に避難した人々は不安な表情をする。

サキトは揺れ動く建物を見て、不安げに上を見つめる。


「あいつら大丈夫だろうな」

「大丈夫だと思いますよ。かつさん達ならきっとやり遂げて見せます」


不安そうなサキトの所にルルとウルフとアカリがやってくる。


「そうだぜ、かつなら絶対やり遂げてくれる。ここの居る奴らもそれを願ってると思うしな」

「もちろん、というか買ってもらわないと困るからね。少年にはぜひとも買ってもらいたい物だ」

「別に俺も信じてないわけじゃねえけどよ。外は偉い事になってるのは確かだぜ。状況でもしれれば一番なんだろうが」


この建物は一通りの生活用品は揃っているが外の様子を見る手段がない。

その為、ただひたすら避難民たちは彼らの勝利を願う事しか出来ない。

願う事でしか自分を安心させられないのだ。


「ちょっと本気で行くつもり!」


その時、部屋の中で突如大声が聞こえて来る。

静かにしていた避難民たちは突然の騒がしい声に視線を誘導させられる。


「まだやるべきことが残ってるかもしれない。それにここでじっとしてられないんだよ!」

「らしくないじゃない。そんな熱血みたいな事言うタイプじゃないでしょ」

「あれは‥‥‥怪盗ハイ&ローか。何か揉めてるみたいだな」


ハイ&ローはガイスがキンメキラタウンに来た頃を報告した後、役目を終えたことで非難をしていた。

ハイはすぐにでも飛び出しそうな勢いだったが、ローは掴んで何とか引き留める。


「私達に出来る事なんて何もない、それはもう十分に理解したでしょ。報告を済ませた後、直接現場を見て理解したはず。私達とはレベルが違う。私達は所詮怪盗よ!」

「怪盗でもあいつらの仲間だ!仲間がピンチに陥っていたら助けるのが俺達だ。そうだろ?」

「っそれでも」

「おいおい、盛り上がっている所すまないが何をするつもりだ。みんな怖がっているぞ」


サキトは言い合いをしている二人の元に行く。

ハイ&ローはサキトの言葉を受けて周りを見渡すと、皆一様に不安そうにこちらを見ていた。


「ピンチって言ってたな。何か知ってるのか。情報屋の俺よりも情報を多く仕入れてるのは、俺のプライドが許せないな」

「通信機を貰ってるんだよ。一応それを常時オンにしてもらって、戦況を報告してもらってる」

「危険なんですか?」


ルルはそう尋ねると、ハイは少し言いにくそうにしながら答える。


「状況は‥‥‥五分みたいだ。正直どちらにも片寄りうる。このまま、時間いっぱいまで戦えるかどうか」

「だからって戦場に行くのは危険。死ぬような物、私は認めないから」

「言い合っても仕方ないだろ。仲良く行こうぜ、ていうかかつがピンチなのか。私達に出来ることはないか」

「いや、素人が外に出るのは危険だ。ここに居るのが一番だろうな」


そう言いながらもハイの表情は死の覚悟を決めた様だった。

それを察しているローは掴んで腕を離そうとしない。


「そう言うならハイも戦闘はド素人でしょ」

「ド素人ってわけじゃないぞ。ていうかお前キャラ忘れてるじゃねえか」

「はっ!しまったっぴ!キャラを忘れていたっぴ」

「また変な語尾で喋ってるし。要するに今結構まずい状況なんだろ。だがお前らは何をするつもりだ」

「それは‥‥‥何かだ!」


ハイの計画性のない言葉にサキトは思わず頭を抱える。


「その通信機、俺達にも聞かせてくれないか」

「なっ!?」

「ほお、そんな事が出来るのかな。青年は機械には強い方だったり」

「いや、よく分からないが俺の情報によるとあのロボットが何とかしてくれるだろう」

「なるほど、つもりロボット任せってことか!」

「という事で大丈夫か?」


ハイ&ローは少し悩みながらにゆっくりと頷き、その通信機をロボットの方に持って行く。


『通信機を接続完了、スピーカーに変更します』

「もしもし、サキトだ。通信が聞こえてたらこっちの情報をくれないか」


サキトが通信を試みると数秒後に声が聞こえ始める。


『サキト!?あんた一体何してるの!』

「っ!その声はミノルか。お前、寝てたんじゃなかったのか!」

「ミノルさん!よかったです、気が付いたんですね!」

「ミノルはそこの通信室を任されたんだよ、そこから経由して色々と情報を伝えら貰ってる」

「なるほどな、それでミノル。感動の再会の所悪いが俺達にも戦況を」

『何じゃ何じゃ、サキトが話しかけて来たのか。忙しいから切るのじゃ。こやつに構っている暇はないぞ』


今度は別の声が聞こえて来ると、サキトは不機嫌そうに眉をしかめる。


「おい、随分な言われようだな。これは個人的な通信じゃないぞ。ここに居る避難民たちにも戦況を伝えてくれ。みんな不安でいっぱいだ、勝ってるか、負けてるかも分からない。情報は良くも悪くも心を落ち着かせてくれる」

『デビ、邪魔しちゃ駄目だよ。ほらこっちに言ってよ』

「どうやらそっちは仲間が沢山要るようだな。それでどうなんだよ」

『分かった。現在の状況を簡潔に伝えるわ。今、ガイスを追い詰めてるメンバーはブライド、リドル、ハイト、ツキノ、イナミ、ピンカ、ガイ以上よ』


ミノルの言葉を聞いて皆がざわめき立つ。


「随分と数が減ったな」

『名前が挙がらなかったメンバーは既に戦線を離脱しているものがほとんどよ。今現状まともに動けるのはこの人達だけ。ガイスは皆のおかげでかなり身体にダメージを負ってる。だけど魔力レベルの差がどうしても決め手にかけてしまっているわ』

「どちらにしろまだ予断を許さぬ状況みたいだ」

「怪盗ハイ&ローが戦場に出たがっている。何か出来ることはあるか」

『はあ!?本気で言ってるの!出来ることなんてあるわけないわ!』


通信機から怒鳴り声を上げるミノルの言葉が聞こえて来る。

事実だと分かっていても、改めて伝えられると心に来るものがある。

ハイは悔しそうに拳を握る。


「だそうだ、大人しく居た方が良いと俺も思うぞ」

「それでも、俺は役に立ちたいんだ。戦いの中で俺も命を懸けたい。仲間だから、じっと何てしてられないんだよ!だってあいつは死ぬ気なんだろ!」

「あいつ?それって」

「何の話をしてるんだ」


その時、後方から突如幼げな声が聞こえて来る。

そこから皆が道を開けるとムラキがクレハとマナを引き連れてやってくる。


「各部屋の見回りをして居たんだが、戻って来たら何やら面白い事になってるな。それで何やってるんだ」

「ムラキ様!あのですね、私達通信を聞いて戦況を知ろうとしてまして」

「戦況をですか?ですがそういった類ものは用意は出来なかったと聞いてますが」

「ハイ&ローが持ってたんですよ。それで情報を仕入れようとミノルに色々と聞いてたんだ」

「ミノルが!?」


するとムラキは興奮気味にそのロボットの元へと急いで向かう。

そしてロボットに向かって大声を出して、ミノルに伝える。


「聞こえるか!いつ起きたんだ!俺はずっとお前が気がかりだったんだぞ!」

『その声はムラキね、心配してくれてありがとね。でも大丈夫よ、そっちに戦況を伝えておいたわ』

「戦況?まずい状況なのか?」

「どうやら五分らしい。まあでもガイスが何かして来たらすぐにでも敗れるかもな」

「そんなに危険な状況なの。まあでもガイスが相手だからそう簡単には行かないわよね」

「それでお前らは何でそんな騒いでたんだ。負けると思って、慌ててるのか」

「いや、こいつらが外に出たいっていうんですよ。なあ」


ウルフが二人を指差すと気まずそうに俯く。

ムラキはそんな二人を見て真剣な表情で告げる。


「何か出来ることがあるのか」

「それを知る為に行きたいんです」

「ハイ!まだそんなこと言ってるっぴ!」

「何だ、その語尾は」

「キャラ付けです」

「まあ何でもいい。死ぬかもしれないんだぞ」

「承知のうえで」


ハイは物怖じすることなくはっきりと言った。

それを聞いてムラキは息を付く。


「行かせてやれ。足だけは引っ張るなよ」

「よいのですか。本当に死んでしまう可能性がありますよ、無駄死になるかもしれません」

「俺も何か出来ないかとガイスに聞いた。戦場に出れない自分が情けなくてな。それでもガルアは俺を王として立派だと言ってくれた。俺にはここに居る必要があるが、お前らにとってそれが戦場なんだろ」

「ムラキ様‥‥‥」

「すみません、ありがとうございます」

『ちょっと見ない間に随分と逞しくなったわね。分かったわ、王様がそう言うのなら私が言えることは何もない。でもミレイと合流しなさい。そこで指示に従う事、無理だと判断された場合すぐに帰る事。これが条件よ』

「それでいい、ありがとう!」


ハイはロボットに対して深くお辞儀した。

流石にローもこの状況で止めることが出来ずに、掴んでいた手を離す。


「相棒がそう言うなら私も付いて行くっぴ」

「ロー!いいのかよ」

「私達は二人で一つっぴ。何処に行くのも一緒っぴ」

「ありがとな」

『行くメンバーはその二人ね。近くに転移魔法陣があるからそれを使って。言っておくけど、自己責任だから』

「ああ!分かってる、それじゃあ行って来る!」


ハイ&ローは覚悟を決めると転移魔法陣の方へと向かって行った。



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