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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その八十六 地獄に落ちたとしても

「うん、美味しいわね」


ようやく完成させた料理を食べて見た所、普通に美味しかった。

今まで味は特段美味しいと言うわけではないが、食感がお肉を食べているのにぷにぷにしており、噛めば噛むほど味が出て来る。


「解凍した時に思ってたけど、もしかしてこれってモンスターの肉?」

「はい!というかその肉しか取れないですから。モンスターの食材とか、この島で撮った果物や木の実、花などで作った調味料もまだ試作段階でお店として出すのはまだまだ何ですよね」

「どれもこれも癖が強そうなものが多いわね。でもそれを食べられるレベルまで持って行ってるんだから、十分すごいわよ。美少女の力は無限大よ、私はあなたの夢を応援するわ」

「ありがとうございます!」


でもその夢がこの島で叶うかどうかは分からないけどね。

料理の研究以前にお店としての機能を持たせるための土台も出来ていないし。


「ナズミ、追加の食料と店の図面を持って来た‥‥‥」


その時、巻いた紙と大きなモンスターの死体を担いで持って来た男がやって来る。

あの男は。


「悪い、今日は帰る」

「え?何で!一緒にご飯食べないんですか」

「ちょっと待って。こんな美少女のお誘いを断る何て失礼だと思わない?」


そう呼びかけると男は足を止めてこちらに振り返る。


「お前は俺がここに居てもいいのか?」

「用があってここに来たんでしょ?私のせいで帰らせるわけにはいかないわ。ごちそうさま、あなたのお店が出来たらまた来るわね」

「はい、お店じゃなくてもここにいつでも来てください」


ナズミの言葉を受けて私は洞窟を後にした。

それから花畑を復活させるために出来ることはないかと考え、先ずは種を手に入れようと島に生えている花を探した。

そこから種を手に入れてそれを片っ端から土の中に入れた。

水は魔法を使ってあげた。

汲んでくるのは流石に大変だし、魔法の方が綺麗な水だから。


「ふう、お花を育てるのって大変なのね。でもそれだからこそ美しく咲き誇る。そうよね」


実際に芽吹くのってどれくらいの期間が必要なのかしら。

まあ、毎日来れば変化も分かるわよね。

あんまに種をまき過ぎると養分が取られちゃったりするのかしら。

でもあの花畑を再現する為にはもう少し種をまくべきよね。


「ちょっと張り切っちゃおうかしら」


しばらく花の種を探して水を撒くのを日課として花畑予定地に毎日通い詰めた。

その間にも何回かガイスに前に会った時と同じ話をされた。

当然その話は断ったけど、懲りない様子でまた来るよと言われてしまった。

男の人につき纏われるのは慣れてるけど、しつこい男はやっぱり好きになれないわね。

まあ私が美少女だからという理由もあるけど。

しつこい男と言えば、以前追い払った奴らが何やら悪いお友達集めをしているみたい。

ガイスの仲間集めに対抗するように勝手に勢力を拡大させている様ね。

魔法という強力な力を悪いことに使ういけない子が多くなっているのは、まあ仕方ないけどこっちまで迷惑が掛かるのはやめてほしいわ。


「クルシミナさーん!」


考え事をしていると後ろから元気な声が聞こえて来る。

この声はあの子ね。


「こんにちはイズナ。久しぶりね、相変わらず元気いっぱいの様ね」

「はい!クルシミナさんも相変わらず綺麗ですね」

「あら、嬉しいわ。それで今日は一体どうしたの?何だか美味しそうなものを持っているようだけど」


イズナは肩にヒモをかけ、それを台に結んだものを両手に持っていた。

そしてその台の上には赤い香辛料らしきものが振りかけられた、一口サイズのお肉が皿に乗っていた。


「今日は新しい調味料を試そうかと。この調味料はかなり辛いですがパンチが効いて、食材の味をさらに引き出してくれるんです。辛いもの好きにはかなりおすすめの調味料ですよ。ですが、私は辛いのが苦手で。それで誰か試食してくれる人が居ないかなと」


うーん、これはもしかして私に食べてって言ってるのかしら。


「それじゃあ一つ頂こうかしら」

「っはい!!」


イズナは心底嬉しそうに笑みを浮かべる。

やっぱり期待していたようね、可愛いわね。

私は台に乗っているお肉に木で出来た楊枝を指して口に運ぶ。

一口サイズの為とても食べやすく私はすぐにお肉を飲み込んでしまった。


「うん、確かに辛くて美味しいわね。これこの前食べたお肉でしょう?前とは違う味がして不思議ね」

「本当ですか!辛みの調節が自信が無かったのでよかったです」

「私はもう少し辛くてもいいけどね。後味のパンチもちょっと弱い感じがしたわ。まあこれ以上強くしたらお肉の味が損なわれてしまうかもしれないから、そこら辺はプロに任せるわ」

「なるほどなるほど、メモメモと‥‥‥参考にさせてもらいますね」

「また新しい物を作ったら教えてね。いつでも試食するわ」

「本当ですか!実はまだ二十種類ほど試食して欲しい物があるんですけど!」


そう言ってイズナは目を輝かせながらこちらに詰め寄って来る。


「あら、そんなに食べちゃったら体形が崩れちゃうわ。また後日にさせてくれるかしら」

「そうですよね。分かりました、それじゃあまた来てくださいね」

「ええ、それじゃあね」


私はイズナが見えなくなるまで見届けてから背後に居る人物に視線を送る。


「いつまでストーカーするつもりかしら。魅力的な女性の背中を追い続けるのは自分に自信がない証拠よ」

「いやあ、バレていたか。すまないな」


すると物陰に隠れていた男数十人が出て来る。

思っていた以上に多いわね。


「随分な大所帯ね。撮影会にしては機材が足りてないようだけど」

「少し話がしたくてね。知っているとは思うが、ガイスという男が半獣たちに声をかけて新たな国を作ろうとしている。だが、いささか傲慢だとは思わないか?俺達は支配から逃れたくて研究者たちを皆殺しにしたと言うのに、また自由を制限されそうになっている。お前も支配されるは嫌だろ」

「そうね、自由に生きるのが私だから」

「やはりそうか、何でもガイスの誘いを断っているのは知っている。私と共にガイスのちんけな王政府を打ち破らないか。自由の島を守ろうじゃないか、俺達と共に」


そう言って男は私に手を差し伸べる。


「自由な島ね‥‥‥」


私はそのまま手を伸ばす。

男はニヤリと笑みを浮かべてその手を掴もうとして来た為、それを振り払った。


「悪いけど、お断りさせていただくわ」

「何だと?」

「私は誰の物にもならないわ。だから残念だけど、あなたの気持ちに応えることは出来ないわ。その代わりに素敵な笑顔をプレゼントしてあげる」

「ふざけているのか?分かっているのか、これからの時代何処にも属さない者は淘汰される。勝ち馬に乗らなくいいのか」

「私は誰の物にもならないわ」

「はあ、残念だ。もう少し利口な女だと思ったんだがな」


その瞬間、男は空中に魔法陣を展開させる。

攻撃を仕掛けてきたわけじゃなさそうね。

そしてそのまま炎の魔法が上空に放たれると、空中で爆発した。


「何をしたの?」

「合図を送ったんだよ。最近よく通っている場所とお友達が出来たみたいじゃないか」

「まさか‥‥‥!」

「どちらか選びたまえ、大切な物を失う事には変らないがな。それとも気が変わった——————」

「くっ!」


私は即座にイズナが向かって行った方向に走る。


「そう焦るな」

「っ!?」


走り出した方向に複数の魔法陣が展開された。

咄嗟に右に回避した瞬間、ものすごい勢いで魔法が放たれる。


「簡単に行かせるわけがないだろう。俺達の誘いを断ったんだ、それ相応の報いを」

「邪魔よ」


私はその瞬間、巨大な魔法陣を展開させる。


「なっ!」

「ぼ、ボス‥‥‥これは!」

「やばい、逃げろ!」

「消えなさい!!」


強烈な暴風と共に目の前に居た男たちは散り散りに吹き飛んで行った。

そして風の魔法を用いてすぐにイズナの洞窟へと急ぐ。

ごめんなさい、イズナ!

私のせいで貴方を巻き込んでしまった。

二度とこんなことにならない様に徹底的に叩き潰す!


「イズナ!!」

「ぐわああ!」


洞窟の中に入った瞬間、屈強な男が簡単に吹き飛ばされ地面に倒れた。


「あっ!クルシミナさん!」

「イズナ!それに、あなたも居たのね」


そこには花畑を燃やし尽くした男が居た。

その周りにはすでにやられている半獣がそこら中に居た。


「まさか倒してくれたの」

「ああ、イズナが絡まれているのを目撃してな。急いで来たってことはお前の方にも来たのか」

「これは‥‥‥私のせいよ。ごめんなさいね、イズナ。私のせいで、危険な目に合わせちゃって」

「何言ってるの!クルシミナさんの方だって危険な目に合ったんでしょ!全然クルシミナさんのせいじゃないよ!だから自分を責めないで」


そう言ってイズナは私の両手を掴んで力強い瞳で見つめてくる。

この子、こんな顔出来たのね。


「ありがとう、優しいのね。でもケジメは付けるわ」

「え?」


私はその手を離して洞窟を離れる。

苦しむのは私だけで十分、他の人が苦しむのは絶対いや。

たとえ、地獄に落ちることになろうとも。



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