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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その八十四 燃え尽きた景色

「おい、小娘。先日はお世話になったな」


そう言って下品な笑みと共に複数人の巨漢が私の元にやって来る。

眼をぎらつかせて舌なめずりをするその三人はいかにも獣の様な不潔さを持っていた。


「あら、私の事が忘れられなくてストーカーしてたのかしら。でもごめんなさい、私は宝石の様に美しい美少女、誰の物でもないのよ」

「あっ!?調子乗ってんじゃねえぞ!テメエのせいでせっかくの上玉を逃したんだ。それに仲間の一人をやってくれちゃってよ。ただで済むと思うなよ」

「お前を抵抗できなくさせた後にはたっぷりと楽しんでやるぜ」

「俺達に歯向かった事を後悔するんだな」


男の人ってどうしてそう言う事ばかりしか考えられないのかしら。

それとも半獣化による影響でこうなったとか?

どちらにしろこれ以上警告をしても無理そうね。


「せっかくのお洋服を汚すのはあまり嫌なのよね」

「洋服だけじゃ済まねえぞ!」


そう声を荒げた瞬間、三つの魔法陣が展開される。

私はたった一つの魔法陣を展開させて、相手の魔法陣から魔法が放たれるよりもなお早く魔法陣ごと三人の首を切り落とした。

ゴトンという、重い物が地面に落ちる音が聞こえる。


「ふう、今回は上手く行ったわね」


あまり血を飛ばさずに切り落とし、それでも飛んだ血を風で吹き飛ばす。

最初の頃は魔力加減が分からずに血を飛ばしすぎちゃったけど、仕組みをちゃんと理解すれば何てことなかったわね。


「また処理を頼まないと。電話がないからこういう所は不便よね。とりあえず印を付けておけば、大丈夫かしら」

「美しい手際だな」


そんな言葉と共に拍手を送られる。

この人達の仲間?

そんな感じには‥‥‥見えないわね。


「その美貌も相まって君の魔法は幻想的だ。噂になっているよ、裏で悪さをする奴らを粛清している奴がいると」

「あら、そんな風に言われてたのね。私は別にそう言う意味でやっていたわけじゃないのだけど。ただ、私が美しすぎるから皆構ってほしくてちょっかいをかけて来るだけ」


私は相手の背後に魔法陣を展開させる。


「あなたも私に魅了されたクチかしら?」

「魔力の操作の展開スピードも申し分ない。さすが、選ばれし物だな」

「まるで私の事を知っているような口ぶりね」

「あの研究所時代で優秀な個体と呼ばれる者はチェックをして居たんだ。知っているか、クリシミナ?半獣たちが自由を得ても俺達はこの島という巨大な檻に閉じ込められている。真の意味で俺達は自由に慣れていない」


勧誘?それとも脱出のお手伝い?

どちらにしろ私には興味が無い物ね。


「そうね、皆まだ心にストレスを抱えている。今のこういった現状もそれに起因するものだとは思うわ。でもだからと言って私はそれでも良いと思っている。だってそうでしょ?力を手に入れたらそれをひけらかしたいのは人の性だもの」

「そうだな。研究所を飛び出し、外には俺達の元になった化け物がはびこる世界が広がっていた。その力を存分に発揮させるのには絶好の機会だ。今、抑圧された欲望が最大限まで溜まりつつある。いつしか矛先はここではない別の場所に向かうだろう」

「前置きが長いわね。簡潔に話してくれないかしら。女の子は忙しいのよ」

「すまない、簡潔に言おう。新たな王を作る」


新たな王?

ちょっと予想外かも。


「統制する物が必要だ。ただ暴れまわるだけじゃなくその力を有効に使う。文明を築きあげるんだ。幸いその為の資源は無限に増やせる。完全に隔離された島である以上、時期が来るまでここで生きていく環境を整えなければならない」

「その王があなたがやるっていうの?」

「まだ決定とは言えない。まずはそう言って物を提唱する者と動き出す者が必要だ。提唱は俺、実際に行動を起こしてもらうのはゼットだ」

「ゼット?」


何処かで聞いた事があるような名前ね。

確か暴れていた半獣がその人達が近くに居るって言って逃げ出した時が会った気がする。


「そうだ、一部の者はあの日起きた出来事を奇跡や偶然で片付けているが知っている者は知っている。あの行動を起こした者がゼットだと言う事を。すでにあいつを崇拝する者もいる。それを利用し多数派をこちらに持って行く」

「過半数はをないがしろにして勝手に進めていくってことね」

「誰もがそうしてきた。皆が皆同じ道を歩けるわけじゃない。だが見捨てたわけじゃない、基盤が出来ればそう言った人達に沿った新たな政策も作る事が出来る」


つまり自分が王になりたいから他の魅力的な人物の後ろに隠れて、陰で操るってことね。

そして徐々に自らの考えを浸透させて、気が付けばこの人を王として迎え入れる準備が整うってわけ。


「ちょっとつまらないわね」

「何?」

「言っておくけど、さっき殺した人と私は何ら変わりはないわよ。私もそいつも誰もがイカレちゃってるの。みんな見ている方向はバラバラ、だから対立したり殺し合っちゃったりする。そんな人達を纏めようとする何て、余程のカリスマ性か行動力に説得性を持たせないといけない。言っておくけど大勢の人に流されるような意志の弱い人間はこの島には居ないわよ」

「おい、何処に行くんだ!」

「汚い物を見たから目の保養をしようと思って。頑張ってね裸の王様」


そのまま路地裏を離れてもその人が付いて来る事はなかった。

あの男は王を作ると言っていたけど、誰かも分からない人物を王に仕立て上げるほど簡単な事じゃない。

確かにこの島で生きていくとしたらこんな無法地帯な状況は避けるべき。

生きるのに必死で明日は我が身のこの世界は、あの日の地獄の延長戦の様な気がする。

まだ終わっていないんだ、みんなの心にはまだあの傷が残ってしまっている。


「ふう、着いた」


ある丘の上、人里離れたその場所には人工的な建物は建っておらず誰も来ないおかげか美しい花々が咲いていた。

荒れ果てた土地の中で唯一心を癒せることが出来る場所。

こんな島でも美しい場所が残っているのが唯一の救いね。


「綺麗ね。私と同じくらい‥‥‥ん?」


何かが飛んでくる?

急に巨大な影が花畑を覆い、咄嗟に上を向くと上空にはモンスターが飛んできた。


「え?えええええええ!?」


その衝撃に呆気に取られていると、上空に巨大な魔法陣が展開される。

そして大きな炎と共にそのモンスターは一瞬にして燃やされそのまま地面に落ちて来る。

私は風の魔法ですぐにその場を離れたが燃やされたモンスターが落ちたことで、花畑は燃え盛っていた。

そんな中燃えているモンスターの真上に誰かが立っていた。


「やっと大人しくなったか。少し飛ばし過ぎたな。ん?どうしたお嬢ちゃん、そんなにじっと見つめて。危ないから離れてろ」

「は、花畑が‥‥‥」

「花畑?あっ」


その人は自分のしたことに気が付いたのか慌てて水の魔法で消火を始める。

だがすでに燃えてから三分が経過しており、その火の勢いから見るにすでに手遅れだった。

焼け野原になってしまったその景色を見てその人は気まずそうにしながら。


「ごめん」


そう軽く頭を下げた。



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