その三 本当のカジノ
「やった!また勝ったぞ!やっぱり妾は最強じゃな!」
何やら騒がしい奴がいるな。
俺は興味本位で騒いでる人のところに行ってみた。
「すごいわ!デビちゃん、もしかして才能あるのかもね」
「そうじゃろ!そうじゃろ!もっと妾を褒め称えろ!」
騒いでる奴らは俺の知ってる人だった。
「お前らか騒がしかったのは」
「あれ?かつ、どうしたの。そっちは稼げてる?」
「妾たちはガッポリじゃぞ!」
「そうみたいだな」
横には明らかに2つ程増えているアタッシュケースが置いてある。
こいつ等どんだけ稼いだんだよ。
「ミノルちょっといいか?」
「何?どうかしたの」
「いいからちょっと来い」
「もう、何なのよ……」
俺はミノルを無理やりデビから遠ざけた。
「ここらへんでもう切り上げないか?」
「は!?何言ってんのよ。これからでしょ、本番は」
「ミノルの目的は魔道具を買う為の資金稼ぎだろ?だったらもう十分じゃねえか。調子乗って続けたら失敗する可能性もある。ほらよく言うだろ、欲は身を滅ぼすって。だから、な?」
「かつ何言ってるの?」
「え?」
ミノルは疑問の表情を浮かべながら俺の言葉を否定した。
「私はただ皆に楽しんでもらいたいだけ。特に意味は無いわ。ちゃんと魔道具用のお金は用意してあるしね」
そう言って指で丸を作った。
「それならいいけど……ほんとに大丈夫なのか?なんかイカサマするやつとか居るみたいだし」
「そういう人はつまみ出せばいいのよ。それじゃあ私行くから」
そう言って足早にデビのところに戻ってしまった。
「ほんとに大丈夫なのか…あいつ」
ミノルが大丈夫って言ってるのだから大丈夫なんだろうけど。
「そう言えばリドルの方は、どうしてんだろ」
あいつは地味に頭が回るから結構稼いでそうだな。
すると沢山のギャラリーに囲まれてるリドルが見えた。
「何やってんだお前」
「あ、かつさん。さっきぶりですね。今いいところなんですよ。はい、これが僕のカードです」
「ま、まじかよ〜!」
これは一体どういう状況だ?
「えっと……これは何のゲームをしてるんだ?」
「カード当てゲームですよ。記号と数字を相手の持ってる3枚の内1つでも当てれば勝ちと言うゲームです。かつさんもやります」
「いや、俺はいいや」
このゲーム多分心理戦とかだろう。
そりゃあこいつが稼げるわけだ。
「それじゃあもう行くよ。お前なら心配いらなそうだし」
「そうですか。それではかつさんも頑張ってください。はい、ハートの9ですね」
「クソー!何でだー!」
「ほんとに心配いらなそうだな」
俺はリドルの元を離れまた暇になってしまった。
100万片手に持っているのに使えないなんてもどかしいな。
「もう誰でもいいからやろうかな……」
そんな独り言をつぶやいた瞬間誰かが俺の目の前で止まった。
「じゃあ俺とやらないか?」
しまった聞かれてたか。
「え、えっと……俺初心者なんだけど」
「え?初心者なのか!」
何だ、妙に嬉しそうだな。
あ!そうかしまった、このカジノにおいて初心者なんて絶好のカモだ。
俺は何て失言をしてしまったんだ。
「やっぱり俺は遠慮しとく―――――」
「大丈夫だ!俺がちゃんと教えてやるから。ほら、座れって」
「ちょ、ちょっま―――――」
有無を言わさずに俺は無理やり椅子に座らせられた。
「それじゃあ早速やろうか!」
なんて強情なやつだ。
サングラスの様な物を掛けていて何か怖い。
年は30代後半くらいか?
いや、にゃんこ島で年齢なんて考えるだけ無駄か。
「で、何のゲームをやるんですか」
「君は初心者だからね。簡単なゲームをやろう」
何かすごい舐められてる気がする。
ベテランぽいし、気を抜いたら全部持ってかれそうだな。
「やるゲームはこの絵合わせゲームだ」
すると男の人は絵柄の描かれた6種類のカードを2セット取り出した。
「このゲームは至って簡単だ。自分の持ってるカードと同じ絵柄のカードを相手の3枚あるカードの中から当てるゲームだ」
なるほど、てことは心理戦ということか。
そう言うのは苦手だが、やるしかないか。
「それじゃあ引く側と選ぶ側を決めようか」
「と、その前にカードを調べさせてもらってもいいか?」
「ふっ疑ってるのか。ま、無理もないか。ほれ、好きなだけ調べな」
そう言うと男の人は2セットのカードを俺に渡した。
「別に疑ってるわけじゃないけど、ここはイカサマも多いって聞いてな」
「別に疑うことは悪いわけでないぞ。逆にそういう考えは無いよりはあった方がいい」
「それなら良かった。そういえば名前聞いてなかったんだけど……」
「そりゃ悪かったな。俺はタイトだ」
「俺は絶対かつだ。はい、カード返すよ。何も無かったし」
ま、カードに仕込むなんてバレバレなイカサマはしないだろうな。
「それじゃあ再開しようか。いくぞ!最初はグージャンケン!ポン!」
俺が出した手はグーだ。
相手は……
「チョキで俺の負けか。かー!ジャンケンの運はこっちの負けか。ま、あんちゃんはどっちにすんだ」
最初は相手の動向を伺うってことで引く方にしとくか。
「じゃあ引く方で」
「おー引く方か。あんちゃんかなり勝負師だねぇ〜。それじゃあカードはどれにするんだ」
「カードかぁ……んーと」
派手な絵の方が相手の意識とか目線が行きやすいかな。
「じゃあ、このカードで」
俺は1つのカードを抜き取り手元に置く。
それは月と太陽と人間が描かれているカード。
「オッケ、オッケ、そのカードだな。それじゃあそのカードを入れて、ほい3枚」
タイトは月と太陽と人間が描かれたカードを含んだ三枚のカードを選び、手元に置く。
「それじゃあ早速金の話と行きましょうか」
そうかこれはカジノだ。
かける金額を決めなきゃな。
「じゃあ5千で」
最初は様子見って事でこれくらいでいいだろう。
するとタイトが呆気にとられているような顔をしている。
「あんちゃん本当に初心者なのかよ。それじゃあ初試合のお祝いって事で10万だ!」
「じゅ、10万!?ほんとにそんなかけるのか!」
するとこの反応を待っていたかのように嬉しそうに笑う。
「いいねぇーうぶだねぇー。いいんだよ、賭けっていうのはこういうもんだ」
相手が10万で俺が5千……流石にこれじゃあ釣り合わない。
「追加で9万5千だ!」
「おいおい、いいのかそんな賭けちゃって」
「勝てばいい」
「ふっいいじゃねえか、その考え。嫌いじゃないぞ。それじゃあ始めるか」
「よろしくお願いします」
ついに始まったな本当のギャンブルが。
まずは相手から情報を聞き出さなければ。
「俺が入れたカードの他にどんなカードを入れたんだ?」
「ドラゴンと少女の絵と海の中に落ちていく本の絵だな。俺が個人的に好きな絵でもあるぞ」
この質問にはスラスラ答えたか。
目は俺をじっと見ていて目線で分からせ無いようとしている。
この様子だと目線でカードを探るのはちょっと難しそうだな。
「タイトはここにはよく来るのか?」
「そうだな、俺はそんなには来ねぇぞ。ま、ちょっとした刺激が欲しい時にはよく来るな」
「職業って魔法使いか?」
「んなもんやらねぇよ、俺は。職業は、まあしいて言うならガラクタ屋だな。何かよく分からん物まで何でも売ってる店だ。良かったら来てくれよ。半額で売ってやるよ」
「この町ってかなり発展してるけど、誰か関わってるのか?」
「そうだな、その話はかなりびっくり仰天なんだが、突然知らない奴がこの町を変えてやるって言って、そいつに町の復興を任せたら立派なカジノの街になっちまったんだよ。いやー本当にどっから来たんだか」
「この町は外灯が多くて夜も明るそうだな」
「ああ、おかげで不審者も減って、怪しまれることもなくなったな」
「今は朝で太陽も出てるけど、やっぱり夜の方がここは人が多いのか?」
「そりゃあそうだろ。夜はガチプレイヤーだらけでそりゃあ一瞬で身ぐるみ剥がされるぞ」
と、一通り質問とかしてみたけど、結構絞れたぞ。
夜とか太陽とか俺の持ってるカードのキーワードを言ったら左のカードに視線がほんの少しだけ動いていた。
「決まった。それじゃあ行くぞ」
「お!いいぞ、来い!」
「これが俺のカードだ」
俺は予想した左のカードを取ろうとした。
するとタイトは不気味な笑みを浮かべた。
「な、何だよ……その顔」
「いやぁ……何でも無いぞ。早く引けよ、そのカード」
もしかして間違っている?
いや、わざと笑って俺を混乱させようとしているだけだ。
自分の答えを信じろ。
「このカードだ!」
「じゃあ引いてみな」
俺は緊張で手汗が出ている手でゆっくりと引いた。
そして表面を見て俺は顔が動けず、ずっとカードを見続けた。
「月と……太陽と……小屋の絵……」
外したのか……?
何度、見返しても俺が持っている絵とは違っていた。
その時タイトが嬉しそうな声を上げた。
「残念だったな、かつ!てことでこれは俺の物だ」
そう言って嬉しそうに俺の10万を持って行く。
騙されたのか俺は?
先ほどは言っていなかったカードの絵柄。
あの目線もフェイク、俺をあのカードに誘導する為。
質問の答えも嘘か。
「考えれば分かったことなのに……くそ!」
「まあまあ、そう悔しがるな。こうやって成長していくもんだ若いのは。それじゃあ頑張れよ!」
そう言って俺の10万を持ってその場を離れようとしている。
悔しい!こんな簡単なことで騙されるなんて。
「ちょっと待て!」
俺にだってプライドがある。
「もう1回だ!」
「逆にいいのか?もう1回やって」
やっぱりタイトは俺を下に見ている。
初心者だからってこのまま舐められるのは嫌だ!
「次は50万だ!」




