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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その八十一 クルシミナ

「実験体サンプルA、B、Cが今日の正午、生命活動を完全に停止させました」


一人の研究者が淡々と報告を告げる。

それを聞いて満足そうに目の前のカプセルに入った胎児を見つめる。


「概ね順調だな。ゼロプロジェクトの足掛かりとして作った三体だったが、我々の予想以上の成果を示してくれた。人間と魔物の交配種、そのDNAを培養し新たに生命体を作り出す計画はこれより最終段階に入る」

「フナキリさん、魔物ではなくモンスターです。お間違いなきよう」

「それはすまない!とにかくもう少しで完成するだろう。これが完成した暁には最強の人類が誕生するだろう」


フナキリは目の前の完成品を見て嬉しそうに両手を上げる。

緑色の液体に入ったその胎児は身を縮めて、ゆらゆらと体を揺らす。


「そしてそのDNAを元に大量の半獣を製作すると言う訳ですね」

「そうだ、まず最初に魔物と人間を合成して新たな生物を生み出す実験は失敗。やはり魔物の特性が強く出来すぎたな。人体の一部、もしくは全体、さらには交配や臓器の移植など様々な可能性を探ってみたがどれも失敗。やはり人間は脆すぎる」

「魔物ではなくモンスターです。そうですね。モンスターはその性質上、人間よりもはるかに身体能力が高いですから」

「まあ、そこに目を付けたわけだが。とにかく人間と魔物」

「モンスター」


今度は語気を強くさせて注意を促す。

フナキリは肩をすくめて渋々それを了承する。


「そのモンスターと人間が生み出す究極の生物、それこそが私達が目指す最強の人類。ここは豊富な資源とサンプルで溢れている。提供者もいることだし、ようやく私の研究が成就する。そしてこの研究を完成したあかつきには、私を馬鹿にした老害どもを引きずり落として未来研究所のトップに立ってやろう!」

「随分と壮大な野望をお持ちのようでよかったですね。私は好きなことが出来ればいいので。生物を好きに解剖出来ればそれで」

「解剖中毒め、だがまあそれでいい。欲望に忠実なのが研究者なのだからな。とにかく計画は既に詩集段階に入った。こいつが十分に成長し、予想通りの力が使えれば次のフェーズに移行できる」

「次のフェーズですか」


白髪の研究者はデバイスにまとめたデータを見ながらそんな事を呟く。

そこには未来研究所の生物部門の研究者たちと意見しまとめた、最強の人類育成計画がまとめられていた。


「それにしても他の部門はどうなってるんですかね。科学部門は相変わらず時間移動装置を製作中、あの事故以来大きな成果はないそうですが」

「どうでもいい。私達は私達の研究に集中すればいい。よりよい未来のためにな」

「ただのエゴでしょう、まっそう言う事にはしておきますが」

「そう言えば例の粗悪品はどうなった」


フナキリは目の前にあるカプセルから目を離すと、ふと気になったかのように尋ねる。


「粗悪品とは何のことでしょうか。サンプルの為に合成させた人間の事でしょうか。それなら適性のモンスターの食料にさせてますが」

「それはいい!肉付きもいいからさぞ美味しいだろうね。じゃないんだよ、誰が肉の塊に何かに興味を示す。私が言ってるのはアブノーマルの奴らだ」

「アブノーマル組は粗悪品ではありません。むしろ適正ありの優秀な献体です。まあ、問題行動が多い為特別監視室に送られてるわけですが」

「勝手な行動をするモルモットなど必要ない。残すのではなく処分しろと言ってるのに」

「大量の献体はありますが、半獣になる適性がある者は早々居ません。そう言えば、そろそろ起きる頃ですかね」


研究者はタブレットを数回操作しながら確認をする。

フナキリは珍しくその言葉に興味を示す。


「適正ありの献体か?リストには乗っているだろうな」

「まだきちんと検査をしていないので分からないですが。献体の血を抜いて例の液体に付けた所反応ありでした。もう少し詳しく調べれば適正値の幅が分かるかもしれません。リストはそれを調べてから更新しますが、おそらく最初の献体の候補に加えてもいいかもしれません」


研究者はその場で印刷した紙をフナキリに渡す。

それを見たフナキリは感心したように声を上げた。


「優秀なモルモットは好きだぞ。さらなる進化を促してくれるからな」


—————————————————————

『手術が完了しました。これより対象を起床させます』

「うぐっ!」


心臓強烈な痛みが走る。

その瞬間、私の意識は覚醒した。


「ううん‥‥‥あれ?私‥‥‥」


目が覚めた。

そう思えたのは光を感じられたからだ。

今まではずっと闇の中でしか生きていけなかった。

人工的な光が私が生きていることをきちんと示してくれた。


「ああ、そうか。私ようやくなれたんだ」


私は起き上がり自分の手と体をよく確認する。

元々酷くなっていた状態を知らないけど、元の肌よりもすべすべで滑らかなような気がする。


「鏡を見て見たいわね。そこのロボットちゃん、鏡とかないかしら」

「鏡ならここにありますよ」


突如声が聞こえて来たと思ったら白髪の青い瞳をした精悍な顔立ちをした女性が立っていた。


「あら、こんにちは。美しい美少女が最初に出会う人も美しい美少女だって決まってるのね」

「頭痛が痛いみたいなことを言わないでください。顔がいくら整っていても知能レベルが低ければ意味ありませんね」

「ごめんなさいね。起きたばかりで少し上がっちゃってるのよ。鏡、ありがとう」


その美しい女性から鏡を受け取り自身の顔を見る。

それは自分とは思えない程に張りのある肌、鼻も高く、ぷっくりとした唇は潤いがあり、目元はぱっちりとしてキラキラとした瞳で引き込まれるようだ。

鏡というよりも写真を見ているようだ。

この手で感触を感じられなかったら自分の顔だとは思えないだろう。


「自身の顔に見とれている所すみませんが、これからあなたにはやってもらう事があります」

「ふふっ宝石のような美少女に生まれ変わらせてくれたんだもの。もちろん何でも協力させてもらうわ」

「それじゃあ身体検査をするので全裸になってください。安心してください、私が隅から隅まであますことなく調べます」

「それはとっても刺激的ね」


それから私は何故か丸裸にされて出会ったばかりの女の人に体をべたべたと触られたのだった。



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