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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その六十七 変わる武器

『はあ、はあ、はあ‥‥‥』


エネルギーゼロパーセント、全機能をシャットダウンします。

ロボットの装甲はボロボロと剥がれ落ちていく、そのまま鉄の塊となってピクリとも動かなくなった。

中に居るメメは砲撃の際に頭を強く打ったため、額から血がしたたり落ちる。


『ははっちょっと無茶しすぎたのだよ。久しぶりにはっちゃけすぎたのだよ』


頭を押さえて乾いた笑みを浮かべる。

液晶は真っ暗で状況は分からない。

戦況を確認する為に外に出て行こうと立ち上がろうとした時、何かがレーダーに反応した。

ひび割れでろくに確認できないが、確かに二百メートル先に生体反応が表示されている。


『うそ‥‥‥』


思わず絶句する。

それはすなわちあの悪魔が未だに立ち上がって来ていると言う事だった。


『そんな、いくらガイスでもあの状態で直撃すれば立ち上がるのは——————っ!?』


その時、機体が激しく揺れる。

外では魔法によって動かなくなったロボットを攻撃していた。

機体は激しくシェイクされ上下の間隔を失うと共に投げ出された。


「うぐっ!?おええ、気持ち悪い‥‥‥ん?がはっ!?」


その瞬間、メメの腹が思いっきり蹴り上げられると数メートル体が飛ぶ。

そして地面に倒れた時、苦しそうな表情で腹を抑える。

そんなメメの様子にガイスは気にも留めずに近付く。


「久し振りに血を流したな。ここまで傷つけられたのはあの日以来だ」

「血を流したか‥‥‥本当ならそんな物じゃすまないのだよ」


ガイスの体は半身火傷したかのようにただれており、口から血の筋が見える。

だがそれでも両足でしっかりと立っている様子から見て、致命傷までには至らなかった。

その事実にメメは内心悔しそうにする。


「そうだな、たしかにあの攻撃を直撃で受ければ俺もただでは済まなかっただろう。だから直前に源魔弾を二発ほどぶつけて軌道を逸らした。まあそれでも直撃は避けた程度で受けはしたけどなっ!」

「がっ!」


再びメメの顔面が蹴飛ばされる。

大きくのけ反ると、そのまま力なく背中から倒れる。


「鉄くずも本当のクズになってしまったな。お前の切り札はこれで終わりか。ならもうお前には興味はない。殺す」


それだけ言うとガイスは切り替えでメメに向かって手を突き出す。

それを見てメメは乾いた笑みを浮かべる。


「あはは、あはははは‥‥‥殺すか。博士を殺すか。そうやって歯向かってくるものを消して行って、何が残るんだろうな。一人ぼっちの王様」

「何が言いたい」

「君には居たはずだ。守るべき人や隣に居てくれる者が。でもそれをすべて捨てて、この世の頂点に立って君は一体何がしたいんだ」

「時間稼ぎのつもりか?答える必要もない、くだらない問答だな」

「くだらないのは君の人生なのだよ。本当はこんなこと望んでいなかったんじゃないのかな。それとも自暴自棄になっていたりするのかな。あの男に敗北をしてから——————ああああっ!」


その瞬間、メメの右足に水の弾丸が貫通する。

そして何度も何度も何度も何度も何度もメメに向かって水の弾丸を飛ばしていく。

体の至る所に穴が開いて地面から血の水たまりが出来ていく。


「ふーっふーっふーっ‥‥‥随分と、痛めつけてくれるね‥‥‥」

「まだ生きているのか。引きこもりだが、中々根性あるみたいだな。だがすでに虫の息と行った所か。大人しく籠っていれば、こんな目に合わずに済んだのにな。あの男が死んで、触発されたのか?」

「‥‥‥」

「安心しろ。お前もすぐにその後を追うだろう」

「やっぱり、博士は肉体労働に向いていないのだよ。こういうのはブライドたちに任せるべきだったね」

「まったくだ、無駄死にせずに済んだだろうからな。さてと、そろそろ終わらせるか」


次にガイスはメメの心臓を狙う。

するとメメは懐から何かを取り出す。

ガイスはそれを訝し気に見つめる。


「まだ何か奥の手があるのか?」

「何で、博士がこんな所に来たと思う?全ては繋ぐためなのだよ」


そう言うとメメはボタンを押した。

その時、吹き飛ばされた機械から何かが勢いよく飛んで行った。


「何だ今のは」

「さあ、何だと思うのだよ」

「虫の息なのによくやる。まあいい、これで終わり——————」

「ありがとうございます!メメ博士!!」


突如背後からそんな大声が聞こえて来た。

ガイスはすぐにそちらに視線を向けると先程飛ばされた者の方向に人影が見える。

そこに居たのはナズミだった。

空中にある物を手に取ると、魔剣の柄の部分をその巨大な筒の形をした物に接続する。

そしてその方向をガイスへと向けると、そこにある引き金を引いた。


「魔砲、発射!!」

「っ!?」


その瞬間、光の光線が真っすぐガイスに向かっていく。

ガイスは溜まらずそこから距離を取ると、ガイスが居た場所に大きく穴が開いた。

その隙にナズミはメメの元へと急いで向かう。


「メメ博士!」


その姿を見てナズミは絶句する。

体中血だらけで今にも命の灯が消えてしまいそうだった。


「すみません、もう少し早く来ていればこんな事にはならなかったのに」

「気にするな。これが、博士の役目なのだよ。一分一秒でも時間を稼ぐ、それで魔力は回復できたか?」

「前回とは言えなくとも十分回復しました。そしてこの武器も、無茶な願いを聞いてくださりありがとうございます」

「気にするな、博士は科学者。頼まれれば作るのが仕事なのだよ」


———————————————————

決戦が起きるよりも前の事


「メメ博士、ちょっといいですか」


メメ博士の研究所にナズミが訪ねて来る。


「ん?君はナズミか?どうしたんだ、今博士は色々あって忙しいのだよ。用があるのなら手短に——————」

「お願いします!私に武器を作ってください!」


そう言ってナズミは勢いよく頭を下げた。

その突拍子のない言葉にメメは目を丸くさせる。


「えっと、急にどうしたんだ。武器を作ってほしいと言うが、そんな物なくてもナズミにはとっておきの武器があるだろう」

「はい、分かってます。お姉さまが残してくださったこの魔剣は私のかけがえのない武器です。でも、これはお姉さまの魔法であって私の魔法じゃないんです」

「ふうむ、というと」

「先程戦った柱を守るロボット。私の相手は様々な武器を瞬時に作り出す能力を持っていました。私は魔剣で応戦したんですけど、相手も同じ剣を使って来て」


そう言いながらナズミは段々と落ち込んでいく。

その様子を見てメメは察する。


「もしかして負けてしまったのか?」

「はい、相手は銃や大砲、ギロチンや鎌などありとあらゆる武器を使って来たんですけど、何とか魔剣で凌いでたんです。ですが、突如剣を作り出し攻撃してきたんです。剣なら行けると思ったんですが、正面から立ち向かったのにも関わらず破れてしまったんです」

「ならどうやって勝ったのかな?」

「ロボットが武器を変形する時、一度コアのような物が見えたんです。そこを光の魔法で撃ち抜きました。それで何とか勝てたんですけど、魔剣だけでは勝てなかったんです。以前から分かってたことなんですけど、私には剣術の才能がないんです」


そう言って項垂れるナズミをメメは少し考えてから答える。


「確か君のオリジナル魔法は魔剣というが、それはただの一時的な形を模しているだけで変えようと思えば変えられると聞いてるのだよ」

「はい、ですが私にはどうしてこの魔法は剣ではないといけないと思ってしまうんです。そのイメージで固まってしまって、だから」

「博士の機械で形を強制的に変えて欲しいと」

「はい」


その言葉にメメはどうしたもんかと唸り声を上げる。


「あの変態には話さなかったのか?そっちの方が幅は広くなると思うのだよ」

「確かに魔法の事に関してはデュラさんに聞いた方が良いと思いますけど、また新しく魔法を作ってそれを覚えるのに時間が無さすぎると思いまして」

「まあ、あの変態の魔法陣は複雑だからな。すぐに覚えるのは難しいのは確かなのだよ」

「だからお願いします、私に武器を作ってください!」


再度ナズミは頭を下げてメメにお願いをする。

それを見て今度は真剣な表情でナズミに尋ねる。


「良いのか?それは大事なお姉さまに託された物だろう。それを変えて別の武器に変えるのは」

「確かに、そう思います。この力で勝ちたいという想いは強いです。でもお姉さまならこういうはずです。迷う暇があるのなら前へ進みなさいって、だからお願いします。もう、足手まといは嫌なんです」


そんな真摯な思いを受けて、メメは納得するように頷いた。


「分かったのだよ。特別に作ろう、博士の渾身の武器を。まずは何をモデルにするかから始めようか」

「本当ですか!ありがとうございます」

「気にするな、それで何か要望はあるか?」


そう聞かれるとナズミは困ったように声を漏らす。


「あーっ特には無いですね。私そう言った知識はないので」

「ふうむ、そいえばロボットのコアを魔法で撃ち抜いたと言っていたな」

「はい、それで何とか倒せました。上手く当てられてよかったです」

「少し試してみたい物があるのだよ。ちょっとこっちに来るのだよ」


メメはある場所へとナズミを誘う。

ナズミは不思議そうに後を付いて行くと、壁に中心から複数の丸が描かれた的とがあった。


「これを使って見るのだよ」


そう言うと、メメは奥の木箱からある物を取りだした。

それをナズミに渡すとずしりと重い感触がその手に来る。

そしてそれを見た瞬間、ナズミは目を丸くさせる。


「これって、銃?」

「中にはゴム弾が入ってる、それで的を撃ち抜いて見るのだよ」

「いや、でも私は銃なんて使った事は無いですよ」

「まあいいからやってみるのだよ。横にあるロックを外して、そこのトリガーに指をかけて押すだけなのだよ。五発入ってるから、とりあえずあの的に向かってなるべく中心を狙って全弾撃つのだよ」

「わ、分かりました」


ナズミは緊張した面持ちで的に向かって銃を向ける。

少しだけ手先がぶれているが片目をつぶってしっかりと的に狙って撃つ。

一発もは中心から大きく逸れる、二発目は的には当たる物の的からはまたも外れる。

そして三発目で真ん中を当てると四、五発も真ん中に当たった。


「やっぱり、君の武器が分かったのだよ」

「まさかこれですか」

「そう、君には射撃の才能があるみたいなのだよ。だから武器もそれに似せた物を作るのだよ」

「てことはもっと銃の練習をした方が良いんですか」

「いや、魔力を銃弾として発射するからその必要はないのだよ。それよりもデュラを連れて来るのだよ。魔法の事に関してはあの変態にも知恵を借りた方が得策なのだよ」

「分かりました、それじゃあ宜しくお願いします」


————————————————————

「魔法の銃か」


回避したガイスが真っすぐナズミを見つめる。

そして倒れているメメを守るように前に出る。


「それじゃあ早速使わせてもらいます。私の新しい武器、魔銃(マルチバレット)を!」



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