その一 初めてのカジノ
「お客さん着いたよ」
「ありがとうございました」
俺はおじさんに礼を言ってコ車から降りる。
「ここがカルシナシティか………」
シアラルスとは違って大きな建物がたくさんあるな。
見た目的には日本の都会に少し似てるか?
「かつー!」
ミノルの声が遠くから聞こえてきた。
「何か名前呼びながら走って来るってデートみたいじゃないか」
「な!?何言ってんのよ!」
ミノルが拳を上げて俺を殴ろうとする。
俺は危機感を感じすぐに訂正した。
「お、落ち着け!冗談だよ!ジョークジョーク!」
あぶねーあともう少しで殴られるかと思った。
「もう、そんな馬鹿なこと言ってないで、行くわよ」
「え?どこ行くんだ?」
「そんなの決まっておるだろう。さあ、早速ご飯を食べに行くのじゃ!」
急に話に参加したと思ったら何言ってんだこいつ?
「そんなわけ無いだろ。あれだ魔道具店だろ。ドリー盗賊団を捕まえる為の魔道具を買うんだろ」
「いえ、まずは情報収集でしょう。敵の姿や力量を知る必要がありますからね」
「それならまずは腹ごしらえじゃろ」
「それなら先に魔道具店の下見とか」
「ちがーう!」
俺達がこれから何するか論争しているとミノルが大声で否定した。
「え?違うの」
「1つも違うのか?」
「これっぽっちもですか?」
「全く違うわ」
自分の考えたことが外れて落胆するがすぐにミノルに視線を向けた。
「じゃあどこ行くんだよ」
するとミノルがニヤリと笑い
「カジノよ」
その瞬間なぜか分からないがみんな黙ってしまった。
「か……カジノってお前本気か?」
その黙った理由は明白だ。
何せ今ここにいるのは金を稼ぐ為であってカジノで遊ぶためでは無い。
それがみんな分かっているからみんな黙ってしまっているのだ。
「ああ、もしかしてみんなお金の心配してる?大丈夫よ。あのカジノ店は初回キャンペーンで100万貸してくれるのよ!」
「「「ひゃ、100万!」」」
普通ならこんな数字俺は正直驚きはしない。
何せ5億の数字を聞いているし、今更100万何て鼻で笑ってしまうだろう。
だが貸してくれるのとなれば話は別だ。
「ミノル、それは本当なのか?」
「本当よ。こんなとこで嘘つくわけ無いでしょ」
マジかよ。
本当なのか。
「でも何でカジノに向かうんですか?」
「話は後でまずは向かいましょう」
「何かワクワクするのう〜」
貸してくれるということが分かったおかげで少し気が楽になった。
カジノ何て、普通やらないからな。
少しワクワクしている。
―――――――――――
「ここがカジノ店か……」
それは巨大なドーム型の建物にキラキラと光り輝く看板が飾られているいかにもな感じがする店だった。
「それじゃあ早速入りましょう」
するとすぐ建物に入った瞬間、整えられた黒いタキシードを着た男性が出迎えて来た。
「初めてですか?」
紳士的で丁寧な言葉遣いに少し動揺して声がすぐに出せなかった。
「はい。初めてです」
そんな俺達より前に出てミノルが即答した。
ミノルのコミュ力はすごいな。
いつも初対面の人とすぐ話せる姿勢は見習わないといけないな。
「それではこちらにどうぞ」
「は、はい」
紳士的な店員……いや、従業員に連れられカジノの店に入って行った。
中はほんとに異世界かってくらい日本のカジノとどことなく似てる雰囲気を感じる。
「初めて来られるお客様には特典があるのはご存知でしょうか?」
「はい。その為に来ましたから」
「ありがとうございます。それでは早速こちらが100万ガルアです」
すると大勢の従業員が人数分のアタッシュケースを持って来た。
そしてそのアタッシュケースを机に置き俺たちに見せるように一斉に開けた。
「1人100万です。どうぞ楽しんで下さい」
そう言って従業員はニッコリと笑う。
「ほ、ほんとに100万あるのか?」
「すごいですね。ほんとに無料で貰えるなんて」
「妾これで早速美味いもの食べるぞ!」
「すいませんお客様。これはカジノ専用なので外に持ち出す事ができません。ご了承ください」
まあそりゃそうだよな。
でも、金だけもらって出ていくやつも居ると思うけどな。
すると店の奥で何やら暴れている客がいた。
「おい!こんなの詐欺だ!イカサマだ!」
「イカサマとは失礼だな。これでも実力はある方なんだよ」
「くそ!俺の金を返せ!」
うわぁ、あれは負けて全額失ったって人だな。
カジノってなんかやっぱりこんな感じだよな。
「おい、あちらのお客様に帰ってもらえ」
「はい」
何やら合図をすると同時に屈強な男が暴れているお客を持ち上げた。
「おい!おまえ、離せ!くそ!覚えてろよ!」
そう捨て台詞を吐いたと同時に外に投げ出された。
「…………」
「すいません。お騒がせしてしまった」
従業員さんは先程と変わらぬ笑顔で謝罪した。
やっぱカジノって怖い。
「と、とりあえずみんながっぽり稼ぎましょう!」
「でも妾カジノとか分からんぞ」
「僕は多少知ってるので大丈夫です。それじゃあお先に失礼しますね」
「それじゃあデビちゃんは私と一緒にやりましょ」
「ふっふっふっ!いいじゃろ!どうしてもと言うなら付いていってやっても良いぞ」
みんな各々で行動してしまい1人になってしまった。
「とりあえず、できるやつでもやるか」




