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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その四十八 責任と覚悟

『こちらミレイ!状況的にガイスが魔法を放つまでもう間もなくだ。なにやらデュラが何かしようと動き出しているが、ブライドたちともめているみたいだ。私はどうすればいい、このまま任せていいのか!』


ミレイからの通信を受けてメメ博士は焦る。

デュラのオリジナル魔法である模範的な魔法の効果を知っているからこそ、デュラが何をしようとしているのか容易に想像する事が出来た。


「デュラは一体何をしようとしているのじゃ。死ぬつもりと言っておるがまさか本気なのか」

「デュラは恐らく再現をしようとしているのだよ。かつの仲間であるリドル君のオリジナル魔法を」

「それって魔法を無効化する奴だよね。でもあの規模の魔法を無効化するのってかなり難しいんじゃ」

「その通りなのだよ。恐らくそれをした瞬間、自らの魔力だけで耐えられなくなりその魂を使ったとしても補えずに」

「その命を終えるってわけね」


ミノルがそう言うとメメ博士の隣に立つ。

それに気づいたメメ博士が不思議そうにミノルの方を見る。


「どうしたのかな。まさか君に何か考えがあるとか?」

「この状況で何か最適なのか、判断出来るのは現場に居る人だけ。どうしたらあの魔法を解除できるのか、今の私には思いつくことが出来ない」

「ふん、なら大人しく後ろで待機してる事だよ。横に居られると気が散って仕方――――――」

『デュラが動き出した!もうやるつもりだ!どうする、私はこのまま見ていていいのか!』

「ちょっと待つのだよ!ブライドは!クリシナはそれを止めてないの!」


聞こえてきた通信機にメメ博士は大声で状況の説明を求める。

するとまた雑音と共に通信機から声が聞こえて来た。


『途中までは止めている節は合ったが、今は見守っているだけで動き出そうとはしていない。まるでデュラに全てを任せたような様子だ』

「そんな‥‥‥」

『分かっていた。デュラがどんな性格なのかを。変態ではあるものの誰よりも優しい心を持っているのを。この状況で皆が死ぬことになれば、デュラが真っ先に命を捨てる覚悟があるのを。博士は一緒に居たからこそ分かるのだよ。それはブライドたちも同様だ』


メメ博士はゆっくりと瞼を閉じる。

何が最善で何が正しいのか。

博士という肩書の通り彼女は頭脳明晰で物事に対して最適解を出す事すらも可能だった。

何か問題が起きた時の対処も博士なら迅速に行える。

だがこの時は頭ではなく感情で物事を考えてしまった。

何が正しいか何が間違っているのか。

そんな物は全て弾いて、もっとも純粋な感情。

ただ生きてて欲しい、それだけがメメ博士の頭の中を埋め尽くした。

その結論にたどり着いた瞬間、すぐに通信機に向かって声を荒げていた。


「ミレイ!今すぐに魔法を――――――」

「それは駄目」


興奮気味に声を荒げるメメ博士に対して冷たい言葉が掛けられる。

それはメメ博士が手にかけている通信機をその上から抑えていた。


「ミノル‥‥‥どういうつもりなのかな。ここは博士が決定権を持っているのだよ。すぐにその手を退けるんだ」

「あなたは今冷静じゃない。その選択がどういって結末に向かうのか、理解していないわ」

「何を知った風な口を言っているのかな。私は博士なのだよ。私の言う事よりも君の言う事の方が正しいと、そう言いたいのか」

「確かに頭の良さで言えばあなたの方が上よ。でもそれをすることでどうなるかは私でも分かる。かつが死ぬ、それがメメ博士が決断した結末よ」


冷静にそして淡々とミノルは答える。

かつの死はこの作戦の失敗を意味していた。


「分かっている、そんなの分かっているのだよ。まだ源魔石は完全にチャージできていないから遅れない。中途半端な火力で生きながらえさせてしまえば、身を隠しまたこの島に災いをもたらす。魔力も島に残っているからオリジナル魔法で再び魔力を増やすことも可能、すべて分かっているのだよ!でも、でも‥‥‥デュラは博士の仲間なのだよ。変態でデリカシーのない奴で、でも誰よりも優しい大切な仲間なのだよ」


博士の瞳から涙が零れ落ちる。

仲間が死ぬ、その恐怖と苦しみにメメ博士は耐えることが出来なかった。

だがこの戦場でそれは当たり前の事でもあると言うのも事実だ。

ミノルはゆっくりと博士に歩み寄る、そして優しい口調で語りかける。


「私も仲間が死ぬのは嫌よ。皆生きて欲しい、悪い奴だけが倒されてそれでみんなが平和に生きられる。そんな世の中だったらどんなによかったか。でも現実はそんな上手い事は行かない、誰かが死んで救われる平和もある。あそこにいる皆が自分の命を懸けて本気でこの島を救おうとしている、もちろんかつも」

「ミノル‥‥‥」

「この選択はメメ博士にとってはとてもつらい選択だと思う。だからすべてを背負う必要はないわ」


するとメメ博士の手に握られている通信機器を抜き取りミノルがそれを持つ。


「私が責任を取る」

「なっ!?」

「何を言っておるのじゃ!ミノルがミレイの指示をするというのか」

「この選択で起きたすべての不幸は私の責任、だからメメ博士は何も後悔する必要はないわ。これは私が下した決断だから」

「どうして、君はそんなにも心が強いんだ」


メメ博士がそう尋ねるとミノルはクスリと笑った。


「大好きな人の力になりたい、たったそれだけの普通の人よ」

「ははっそう言えばそんな事を言っていたね。分かったよ、ここは君に任せるのだよ」


そういうとメメ博士は席を立ちその場を離れようとする。


「ちょっとどこ行くんですか!」

「博士は博士でやる事があるのだよ。ここはミノルに任せるのだよ」


そう言ってメメ博士はその部屋を後にした。

そしてその場にミノルとデビとアイラのみが残った。

ミノルは早速通信機を使ってミレイと通信を試みる。


「ミレイ、聞こえる」

『その声はミノルか。メメ博士はどうした、早く判断をしなければもう実行に移すつもりだぞ』

「これから私の言う事をよく聞いて、メメ博士は別件で席を離れた。ここからは私が判断を下すわ」

『っ分かった』


深くは追及せずにミレイはすぐに同意する。

それはミノルにしてもありがたかった。

続けてミノルは今後の指示を出す。


「それじゃあ今から指示を出すわね。まず魔法は使わない。今はまだ待機して。それから次に私が魔法を出す様に指示をした時、迷わずに魔法を使って。それ以外ではこちらからは基本的に通信は行わないから。そして何か大きな出来事が起きた時とか気になる事が合ったらその都度通信をして私に知らせて」

『分かった。だが本当にいいのか、デュラは自らの命を使おうとして居るぞ。このままでは』

「それは私達が判断できることじゃない。私達も目的は作戦を必ず完了させる事、源魔石のチャージが終わったらすぐにでも切り替えを行うつもり。どんな状況だろうとね」

『分かった、今はミノルが責任者だ。ミノルに従おう。何か合ったらまた通信を行う。いったん切るぞ』


そう言ってミレイからの通信は切られた。

ミノルは通信が終わったことで額の汗を拭って息を吐く。


「おつかれなのじゃ。にしても毎度毎度お主は何かを背負わないと生きていけないのか」

「本当に大丈夫なの。そんな重責を自ら進んでやるなんて」

「分かってるわ。命を預かっているのと同義だもの、本当に重たいわ。でもだからこそ迷ってはいけないの。皆が最初に決めた事だもの。感情で動いていいはずないの。でも感情で動きたくなったちゃう気持ちも分かる、それがずっと一緒に居た人ならなおさらね」

「だからお主が引き受けるのか。お主は他人だから」

「そっ案外冷たいでしょ私?」

「ふっ何を言っておるのじゃ。大切な人を見殺しにする決断をわざわざ引き受ける何て、お人好しにもほどがあるのじゃ」


そう言ってデビはやれやれと言った様子で手を上げる。


「それじゃあ、私達は源魔石がチャージし終えるまでここで待ってればいいんだね」

「そう言う事ね、残り二時間、それまで頼んだわよ」


―――――――――――――――――――――――

そしてミノルがメメを止めた頃、ブライドたちも話し合いが決着していた。


「行っちまったな」


デュラの背中を見てブライドはそう呟いてしまう。


「そうね、デュラは優しいからこういうことに進んで行っちゃうのよね。それに意外と頑固だし」

「たまに頭が固い時はあるよな。決めたら譲らねえ、特に誰かが傷つくような場面ではな」

「確かにそうね。メメの時とかは特に、一回メメがモンスターに襲われそうになった時があったでしょ。でもその場にデュラが居たから、何とかなったのよ」

「そう言えばあれ以来、よくメメの護衛みたいなことをしてたよな。今もメメが一人になる状況は進んで護衛を買って出てたし」

「そうね、そのせいで変態って呼ばれるようになってたけど」


その言葉を聞いてブライドは思い出したかのようにクリシナに聞く。


「そう言えばあいつが変態ってどうして呼ばれてるんだったっけ。俺の記憶ではしつこくストーカーしてたから変態って呼ばれていたと思うんだが」

「違うわよ。よく彼女の部屋に入っては掃除をしたり洗濯をしたりしたからよ。ほら、デュラって世話好きでしょ。だから代わりにそう言った事をしてメメが怒ったのよ」

「それは怒るわ、なるほどね。まあでもあいつらしいな」


そういうとクリシナとブライドはガイスの方を見る。


「それじゃあ俺達も行くとするか」

「そうね、大切な仲間の最後を盛大に飾りましょうか」



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