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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その四十 聞きたかった声

真っ暗闇の深夜、徐々に夜明けへと近付いて行く。

各々が各々のやり方で最終決戦に備えて過ごしている。

そして俺は最後の覚悟を決める為にミノルの元へとやって来ていた。


「ミノル‥‥‥」


以前としてミノルは目覚める様子はない。

吉兆は何個かあった、目覚めるのも時間の問題だと思う。

だけどやっぱり直接話すまではいかなかったか。


「これが運命なのかな」


最後に話せば何か変わっただろうか。

いや、そんな事はないか。

もう変えるは出来ない、今の自分を手放して前に進むためにも。


「よし、後数時間でガイスがここに来る。俺は島に向かわないといけないし、準備もしないとな。それじゃあミノル言って来るよ」


俺は最後にミノルにお別れの挨拶を言ってその部屋を後にする――――――


「かつ」

「っ!」


咄嗟に後ろを振り向く、だがそこにはただ眠りについているミノルの姿があった。


「馬鹿だな、俺」


期待して、切望して、結局ミノルに頼ってしまう。

その声が聞きたくて、言葉を交わしたくて、幻聴なんてものが聞こえる程に求めてしまっていたのか。

自分では平気だと思っていたのに、そんな事はなかったな。

それもそうか。

だってミノルは俺にとって大事な人で愛すべき人だから。

だからこそ俺はそんな君が居るこの世界と居場所を守りたいと思ったんだ。

ミノルが笑っていられるように皆が生きていけるように。


「よし、行こう」


自分の頬を叩いて改めて気合を入れる。

そして俺はこの部屋から出て行くために扉を開けて、それを閉めた。

ガチャンっ


――――――――――――――――――――――

ブライドは人が居なくなった町を巡回する。

お店も閑古鳥が鳴いておりかつての賑わいが失われている。

まるで廃墟にでもなってしまったかのように、寂しさだけがそこに残されていた。


「まるで別世界ね」


反対方向からクリシナが歩いて来る。

彼女も同様に街の巡回をしていた、そしてあるところで交わった事で二人は出会った。


「名残惜しいなら今のうちに目に焼き付けた方がいいぞ。この景色も数時間後には変わってる」

「意外とそうでもないの。だって私達が再びこの島で活動をし始めた時だって、景色は様変わりしていたんだもの」

「まっそうだな。それでそっちは誰か残っている奴は居たか?」

「大丈夫よ。避難誘導はバッチリだった。そっちはどう?」


クリシナの言葉にブライドは頷く。


「こっちも完了だ。この様子だとデュラとムラキの方も大丈夫そうだな」

「ムラキならさっき会って来たわよ。どうやらガルアと話をしに行くみたい」

「なるほど、あいつも王の立場があるからな。二人で話したい事もあるだろう。それにすべてが終わったとこそが、あいつらが一番大変だろうしな」

「ねえ、ブライド」


クリシナが改まってブライドの名前を呼ぶことで、ブライドもクリシナの方を見る。


「すべてが終わった後、私達はどうするべきかしら。ゼット師匠の意思を最後まで引き継ぐ?それとものんびりと過ごす?前に話した時みたいに」

「島の秩序を守る役目は俺達の仕事じゃないだろ。それに俺達が託された事はただ一つだ。この島を守る。先の事はその後だ」

「‥‥‥そうね、先ずは目の前のことよね」


クリシナは俯くといつもよりも悲し気な笑みを浮かべる。


――――――――――――――――――――――

「ガルア、最後に話がしたい」


見回りを終えたムラキはガルアの元を訪ねていた。

そしてガルアも待っていたかのように告げる。


「まあそうだろうな」

「俺はどうしたらいい。俺には何か出来ることは‥‥‥」

「ああ、そう言うのはいい。お前は大人しくシェルターに隠れて置け。街の奴らも王が一緒に居れば安心するだろう。ああいう場所ではお前のような奴は必要不可欠だ」

「だが、俺も王として戦う事は出来ないのか。俺は何の力にも慣れてない」


ムラキはそう言うと悔しそうに拳を握る。

皆の為に何かをしたい、昔のムラキからは考えられない思考だった。

そんな反応を示すムラキを見てガルアは感心した。


「変わったな。最初のお前はただのクソガキだと思っていたが、今は男になった。お前になら安心して街に奴らを任せられる。従者と共に避難していろ、そこでの指示は全てお前に任せる」

「俺を頼りにしてくれるのか?こんな俺を、ガルアは認めてくれるのか」

「お前は王だよ、立派な王だ」

「――――――っ分かった!任せてくれ!」


ムラキは震えるほどの喜びを抱きながら従者たちが待つ城へと向かって行く。


「この島はよくなるはずだ。そういや、ラミアに挨拶がまだだったな。最後に会いに行くか」


ガルアは最終決戦を迎える前にラミアの所へと向かって行った。


――――――――――――――――――――

それから数分後、俺は城に戻るとすでに皆が準備を済ませていた。

そしてミレイが源魔石を手に取って待っていた。

具体的には源魔石によく似たただの石だ。


「これは印を付けた石だ。源魔石の魔力が溜まったらこれで交換をする。無くすなよ。そしてもう一個、これは例の物と入れ替えるようだ」

「ああ、ありがとな」


俺はその二つの石を受け取ると大切に懐に仕舞った。

これで源魔石を直ぐに手に入れることが出来る。

そして今度はツキノが前に出て来る。


「それじゃあ‥‥‥握手‥‥‥しよ‥‥‥」

「ああ、そうだな」


俺はツキノと固い握手を交わす。

そこから魔力が流れていっている感覚がする。

そしてしばらく握手をしてからツキノから手を離した。


「ありがとう‥‥‥これで大丈夫‥‥‥」

「頼んだぞツキノ」


ツキノは一歩後ろに下がると、次にマキノが瓶を手に持ってやって来る。


「はい、これが例のポーションです。特別に作ったんですから、大切に飲んでくださいよ。壊れたり、零してももう作れませんからね」

「分かってるよ。ありがとな、わざわざ作ってくれて」


俺は瓶を受け取ると石が入った場所とは違うポケットにそれを仕舞う。

そしてメメが通信機をこちらに手渡してくる。


「これで例の島の場所まで博士が案内するのだよ。ちゃんと島外に出ても電波を受け取るように改良した特別製なのだよ。その代わり音質はあまりよくないのは目をつぶって欲しいね」

「通信が出来るのなら何でも構わないよ。ありがとう」


俺はそれを受け取ると耳に付けた。

準備は完了だ、後は島に向かうだけだ。


「お前のワープを使えば一時間半で目的の場所には付けるだろうな。そこからしばらく一人で待っていてもらうが、大丈夫そうか」

「大丈夫だよブライド。皆の無事をその島で祈ってるよ。それに時間がある分、仕掛けも十分に出来るしね」

「それじゃあそろそろ出発した方がいいのだよ。ガイスに島を出て行く姿を見られるわけにはいかないからね」

「だな、それじゃあ皆、行って来る」


俺は皆に最後の言葉を告げて島の外を出て行く。

ワープで島を出ても特に何も起きることはなかった。

柱が機能を停止しているおかげだろう、これでこの島も外から視認出来るようになったんだよな。

俺はちらりと背後を見る。

確かに島の外からもその島を見ることは出来た。

その時、耳に付けた通信機から雑音が聞こえて来る。


『あーあーこちら博士、聞こえるかなかつ君』

「ああ、聞こえてるよ。道案内を頼む」

『任せた!それじゃあ博士の指示に従うんだよ。その通信機はGPSの役割もあるからここからかつ君の居場所はバッチリ分かるのだよ。てことでしっかりと聞くように』


それからメメは通信機から目的の島へと向かうルートの指示をしてくれた。

魔力はかなり消費したが、ワープ自体そこまで魔力を一気に消費する物ではない為今の俺の魔力レベルからすれば楽勝だった。

約一時間半が過ぎた頃、何もない海だけの場所だったが小さな島が一つ見えた。


「見えた、あれが例の島か」

『どうやら視界に捉えたようだね。なら早く上陸するのだよ』


俺は更にワープのスピードを速めて島へと上陸する。

そこはジャングルのような物がありながら、特にそれ以外は何もない砂浜だけが広がっている小さな島だった。

生き物も生息している感じはしない、本当に誰も居ない無人島だな。


「メメ、島に着いたよ。ここであってるんだよね」


通信機から呼びかけて見るが反応が返って来ない。

あれ?おかしいな、もしかして通信が切れた?

ここまでは電波が届かないとか?

一度、ワープで空に行った方がいいかな。


『ちょっ何で君が——————』

「ん?今声が‥‥‥駄目だな雑音が酷くて全然聞こえない」


通信機の方聞こえて来る声が騒がしいな。

何か合ったのだろうか。

その時雑音と共に声が聞こえて来る。


『かつさん、かつさん!通信機を切って――――――』

「ん?リドル、急にどうした」

『かつ』


っ!?

その瞬間、心臓が勢いよく跳ねた。

この声、通信機から雑音が入り混じっているけどそれでもわかる。

この声は、この声は‥‥‥!


「ミノル?」


それは俺が待ち焦がれていた大好きな人の声だった。



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