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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その三十六 眠り続けて来た意味

「ここがツキノが眠っている部屋よ」


俺はクリシナに案内されてツキノが居る部屋にたどり着く。

そしてクリシナは俺の代わりに扉を開けてくれて、俺は早速部屋の中に入る。

そこにはカプセルの中で眠っているツキノの姿があった。

確かに、ツキノはまだ起きていないようだ。


「ツキノ‥‥‥」

「ずっと眠っている状態ね。傷はとっくのとうに完治しているみたいだけど、何か別に原因があるのかしら」


俺はカプセルへと近付く。

中のツキノの様子を見ると目をつぶったまま動こうとしない。

確かに眠っているようだが、何か少し違和感があるような。


「ツキノ?お前、もしかして起きてないか」

「っ!」

「あら、もしかして寝たふりをしてるのかしら。だとしたらちょっといけないわね。カプセルは重傷者の為に開けて置かなきゃいけない物だから、もう目覚めてるのなら出てこないと」


俺はじっとツキノを見続ける。

確かに寝ている様には見えるのだが、少しだけ目元が動いてるような。

それに表情も何だかさっきよりも強張っているような気もする。


「ちょっと待ってくれ、少し話をさせてくれないか」

「分かったわ。ツキノに用があるのはかつだもの。私は大人しく待機してるから」


そう言うとクリシナは壁際で俺達の様子を見守る。

俺はツキノに対して独り言を言う様に呟く。


「これからガイスとの戦闘が始まる。確実に一筋縄じゃ行かないだろうけど、皆自分たちが出来ることを最大限にやってるんだ。俺も自分の出来ることをするつもりだ。俺はこの戦いで死ぬ」

「っ!?」

「ツキノ、お前はよくやったよ。研究所で強力なモンスターと戦ったんだろ?ツキノが戦ってくれたおかげで犠牲者が出なかった。だからもう大丈夫だ。後は俺達に任せてくれ。全部終わらせるから、だからそれまでゆっくり休んでくれ」


俺はそれだけ伝えるとその場を後にする。


「いいの?頼みたい事が合ったんでしょ」

「大丈夫だ、ツキノに無理をさせるわけにはいかない。だから行こう」

「ちょっと待って!」


その時、カプセルが突如開くとそこからツキノが出て来る。

その姿は帰って来た時と同じだったが、傷はすっかりと無くなっていた。


「ツキノ、お前‥‥‥」

「どうして‥‥‥進めるの‥‥‥」

「え?」

「怖く‥‥‥ないの‥‥‥」

「ツキノ‥‥‥」


不安そうな顔をしている。

そうか、ツキノは怖いのか。

この先の戦いが、これから自分がやらなければいけない事が。


「あの時‥‥‥モンスターを目の前にして‥‥‥足がすくんだ‥‥‥戦いが終わって‥‥‥気が付いた時‥‥‥あの時の光景‥‥‥頭に焼き付いて離れない‥‥‥」


そう言うとツキノは手を震わせてそれを強く握りしめる。

研究所で出会ったモンスター、あれは普通の物とは違うたしか原初の半獣だったが。

確かに俺は見たことはないけどそんな名前が付いたモンスターならば、一目見ただけで恐怖を覚えるのは仕方ないのかもしれない。


「ツキノ、俺だって怖いよ。死ぬのは嫌さ」

「なら‥‥‥どうして‥‥‥立ち向かえるの‥‥‥」

「立ち向かわないといけないからだ。誰かがやらないと前に進めないから、それが俺だったからやらなくちゃいけないんだ」

「何で‥‥‥受け入れられるの‥‥‥死ぬことを‥‥‥受け入れられるの‥‥‥」

「死ぬことよりも皆が傷つく方が嫌だから。この島は嫌なことも嬉しかったこともそれら全部含めて大切な場所だからさ。だから守りたいんだ、皆の帰る場所を思い出をだから俺は戦えるんだ」


ツキノは目を見開くと動揺したように後ずさる。


「私は‥‥‥無理‥‥‥もう戦えない‥‥‥あの時から‥‥‥私はもう‥‥‥」

「大丈夫だツキノ。ツキノの分も俺達は戦うよ。ツキノは十分に頑張った、皆がそれを認めてくれるはずだ。ツキノが生きていてくれるだけで俺は嬉しいんだから。ここから先は命を懸けて戦える人が行った方がいい。じゃなきゃ無駄死にになるから」

「どうして‥‥‥そんなこと‥‥‥いうの‥‥‥そんな風に‥‥‥言われたら‥‥‥私‥‥‥」


ツキノは怯えた目をしていたが次の瞬間、両目を思いっきり瞑ると何かを覚悟した様に見開いた。

そこには先程まで震えていたツキノの姿はなく、瞳に強い覚悟を宿した姿があった。


「戦う‥‥‥もう逃げない‥‥‥」

「ツキノ、無理しなくていいんだ。戦いたくないのならそれで良いんだよ」

「大丈夫‥‥‥覚悟は‥‥‥決めた‥‥‥頼みたい事が‥‥‥あるんでしょ‥‥‥」

「ツキノ、でも」

「ありがとう‥‥‥大丈夫‥‥‥本当に‥‥‥大丈夫‥‥‥私には‥‥‥戦わないと‥‥‥いけない理由があるから‥‥‥」


戦わないといけない理由。

それが何なのか、ここで言及する必要はないよな。

ツキノの中で何かの覚悟を決めたのなら俺はそれを尊重するまでだ。


「それじゃあ、ツキノ。俺達と一緒に戦ってくれ」

「うん‥‥‥」


俺はツキノに手を差し出すと、ツキノはそれを力強く握りしめてくれて。

その時背後から拍手が聞こえて来る。


「素晴らしいわ。二人ともとっても素敵よ。こうなった以上何としてもハッピーエンドに向かわないとね。だってこんなに可憐な少女が登場人物としているのに、幸せにならない何ておかしいでしょ。それに努力は報われるべき、私はそう思うよ」

「ああ、必ず作戦を成功させよう」

「うん‥‥‥それで私は‥‥‥何すればいい」

「ツキノは実行役に行ってもらう。実際の戦闘に参加してくれ。クリシナもそれでいいよな」

「もちろん、ツキノのオリジナル魔法については私も聞いてるわ。十分戦力になる、期待してるわ」

「分かった‥‥‥」

「それで俺の方も手伝ってほしい事があるんだけど」


するとツキノは少し首を傾ける。


「何‥‥‥?」

「ツキノのオリジナル魔法、それでガイスと戦う時に一役買ってほしいんだ。それは——————」


そして俺はガイスとの戦いについての作戦をツキノに伝えた。

着実に準備は整って行く、決戦はあと少しだ。



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