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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その三 命が終わる時

「サザミ!!」


俺はブライドに連れられてすぐさまサザミが眠っている場所へと向かう。

そこには俺の他に元十二魔導士のメンバーが集まっておりメメ特性の回復液に浸かっているサザミに向かって声をかけていた。


「サザミさん!死なないでください!」

「サザミ!あんたはそんなたまかいこれくらいで死ぬんじゃないよ!」

「まだ俺達の戦いは終わってませんよ!死んだら駄目です、エングさんを置いて行くんですか!」


皆の焦り用からして状況はかなり悪そうだ。

その時マイトが俺が来たことに気付きこちらに近づく。


「かつも来たんだね」

「ああ、マイトはいつ来たんだ。デビを送り届けた後姿を見かけなかったから、何か合ったのかと思ったぞ」

「ごめんね、ちょっと色々あってさ。それよりも今はサザミの方が大事だ」

「ああ、そうだな」


俺はサザミの方を見る。

ガラスで覆われたカプセル状の機械の中の特殊な液体に漬かりながら、サザミの胸を何度も押す動作をしている手の形をした装置と口にはチューブと繋がった物が装着されていた。


「やあやあ、来たみたいだね。ブライドが運んできてくれたのかな」

「メメ、サザミは大丈夫なのか」

「うーん、正直なところかなりまずいね。心肺停止から既に五分が経過してる。今は心臓のマッサージと空気を直接適切な量送って入るけど助かる見込みは限りなく少ないだろうね」

「メメ、あいつはここで死なせるわけにはいかない。何か方法はないのか?」

「かなりの重傷だったからね。魔力の酷使と身体の欠損、重度の火傷に血も流し過ぎてる。私が作った超回復液のさらに濃い液体が入ったカプセルに移し替えてもこうなるって事はもう無理なのかもしれないね」


無理、それはこのままサザミの死を見て行くしかないって事なのか。


「せっかく勝ってここに帰って来たんだ。あいつの為にも絶対に死なせない」


俺はすぐにサザミの元へと向かう。


「かつさん‥‥‥」

「サザミ、お前は凄い奴だよ。自分のやるべきことを命を懸けてやり遂げたんだから。でもだからこそ生きて帰らなきゃ駄目なんだよ。この戦いで沢山の命と負傷者が出た。でも本当ならもっと多かったのかもしれない。それもこれもサザミがカノエを倒してくれたからだ。お前がこの島の人達を守ったんだよ。だから今度はお前が自分の為に生きていくんだ。お前の人生はまだまだこれからだろ。だから生きろ、サザミ!」


サザミが目覚めてくれるのを願って何度も声をかける。

だがサザミは目を閉じたままピクリとも動かなかった。


「心肺停止から十分経過、生前率は絶望的だろうね。これ以上の蘇生は意味ないのかも――――――」

「ちょっと待てえええ!!」


その時、出口付近に突如大声が響き渡った。

すぐさまそちらの方へと視線を向けると、そこにはボロボロの姿で立っているエングの姿があった。


「エング!?」

「こりゃたまげたね。まだ眠ってるんじゃなかったのかい」

「おやおや、まさか出てきちゃったの。それは駄目だよ、君はまだ完全に回復するまで数日はかかるんだから」

「どけ!サザミの元に行かせろ!」


エングは興奮気味にメメを押しのけるとサザミの元に向かおうとする。

だがやはり体が完全に回復していないのか、数歩歩いただけで体はふらつきそのまま床に膝を付く。


「くそ、思うように動かねえ」

「エング、無理をするな。今のお前の体は通常なら立っているだけで奇跡だ。大人しくメメの治療を受けろ。サザミは俺達に任せろ」

「死んでねえよ。まだあいつの魂はそこにあるぜ」

「博士の診断が間違っているとでもいうのかい。君は医者か何かなのかな」

「医者じゃねえが、あいつの事は誰よりも分かってるつもりだ」


そう言うとエングは握りしめてていた拳をゆっくりと開くと、そこには源魔石の欠片があった。


「最後の欠片、エングが持ってたのか」

「固く閉ざしてたからな。手に取ろうとしても無理だったんだ。だけど今更何で」

「ブライド、これをあいつに渡してくれ。頼む、そうすれば助かるかもしれねえ」

「源魔石の魔力をサザミさんに渡すと言う事ですか。でもそれって効果あるんでしょうか」

「そんな事をしても意味ないのだよ。既に魔力の回復を促進させる効果がある液体に漬かってるからね」

「こいつにはカノエの意思が込められてる」

「っ!?」


その言葉を聞いた瞬間、ブライドはすぐさまエングから源魔石の欠片を受け取るとサザミが眠っているカプセルへと向かう。


「ブライドさん?どうするつもり何ですか?」

「まさか本当に源魔石の欠片を中に入れるのか?」

「試してみる価値がある。それにエングがあれだけ必死になってるんだ、何かあるんだろう、メメ」

「はいはい、分かったよ。すでに十三分が経過してるから希望は薄いだろうけどね」


ブライドはカプセルの中に源魔石の欠片を入れると、先程まで心臓マッサージをしていたハンドがその欠片を手に取りサザミの手へと握らせる。

これで本当に何かが変わるのか。

いや、今はエングの言葉を信じるしかない。

そのまま俺達は何か変化が起きるのを期待して固唾を飲んで見守った。


―――――――――――――――――――

「‥‥‥ん、ここは」


真っ暗闇だ何も見えない。

俺は今地面に立っているのか、何だか体が妙に軽い気がする。

方向感覚が分からなくなるな。


「一体どうなってるんだ。エングは何処にいる、俺は勝ったんだよ」


まさかあれは夢だったのか。

全ては俺が思い描いた幻想。

実際は俺はすぐに殺されたのか。

だとしたら何とも滑稽な物だな。

自分の勝利を夢の中でしか表現できない何て。


「エングも居ない。それどころか誰も無い。なるほど、死ぬって言う事は孤独なると言う事か」

「そうとは限らねえんじゃねえか?」


その時背後から声が聞こえて来た。

だがその声はとても機器馴染みのある、そしてその声色は普段のあの人と同じ物。

絶対にあり得るはずがない、だがもしこれが非現実的な物だとしたら。

俺の願望が叶うようならば、それは。

ゆっくりと後ろを振り返るとそこには不敵な笑みを浮かべてこちらを見据えているカノエ様の姿があった。



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