その二十一 村長の頼み
「付いて来てください。こっちです」
ここは村長の家の階段の下にあった秘密の通路だ。
階段も何度か降りたりしてかなり深い所に来ているような気がする。
その通路はひんやりと冷たく足音が反響してやけに響く。
ちなみにデビはまだ寝ているので俺がおんぶしている。
にしても……
「ここどうやって作ったんだよ」
明らかに家の壁よりも強度が高そうな石垣だ。
この壁を作る技術が今のこの世界にあるとは思えなかった。
「特別な人に作ってもらいました。あの人には色々と世話になっているのでね」
「そうですか……」
特別な人って一体誰だ?
誰だろうとこれを作れるってことは建築家みたいな人じゃないと無理だろ。
「そろそろです。この先にドラゴンがいます」
すると狭い通路の先に1つの扉が見えた。
「この中にドラゴンが居るのね」
緊張しているのか少し声が震えている。
俺も心臓のドキドキが止まらない。
何せファンタジーの中の存在だと思っていたあのドラゴンが目の前で見られるなんて。
まあこの世界もファンタジーみたいなもんだけどな。
「それじゃあ早速会いに行くとしましょうか」
期待に胸を膨らませ扉の中に入って行った。
「ここがドラゴンの保管所ですか」
「ひろっ!凄いなここで野球ができるぞ!」
そこは色々と物が置かれているがそれでも広いと言えるほどの大きさだった。
「村長さん。もしかしてこの大きなカプセルの中にドラゴンを保管してるの?」
それはこの場所にざっと見ても20個以上も置かれていてこの部屋を埋め尽くすほどだった。
しかもかなり大きく一軒家くらいの大きさだ。
この部屋がこんな広く無かったらまず最初に指摘してただろう。
「そうです。その中にドラゴンを入れて保管していました。今はもうただのガラクタですけどね」
そう言って寂しそうな顔でカプセルを撫でる。
「物思いにふけっている所を申し訳無いですがドラゴンがいるカプセルはどれですか」
「分かっている。こっちです」
そう言って奥に村長が進んで行く。
何かリドル積極的だな。
実は困っている人とか見過ごせないとかなのか?
すると村長が1つのカプセルの前に立ち止まる。
「これがドラゴンがいるカプセルです」
その中には赤い鱗に黒い瞳そして俺達なんかを一口で食ってしまうほどの大きな口、まさにドラゴンと言える姿だった。
「デカイ……これがドラゴンか……」
あまりのデカさにただただ呆気にとられてしまう。
「確かにデカイわね」
「そうですね。普通のよりもだいぶデカイと思いますよ。大物ってやつですね」
ドラゴンを目の前にして普通の会話をしている。
「え、なに、お前らドラゴン見た事あるのか?」
あまりの反応の薄さにそんな疑問を覚えてしまう。
「そりゃ見た事あるわよ」
「はい、僕も見たことありますよ」
まるでそれが当たり前のように返事をする。
何なんだこいつらもしかして俺が思ってるだけで案外ドラゴンは、見かけやすいものなのか。
「あ、ちなみにドラゴンそんな見かけないわよ。私は昔この村の近くを通ったから見れただけだからね」
「僕もそんな感じですね。だからかつさんそんな落ち込まなくてもいいですよ」
何か慰められたんだが。
「と、とりあえずこのドラゴンを使って例のモンスターを倒すんだろ」
「そうですね。とりあえずドラゴンがあるというのは確認できたので次の段階に行きますか」
そう言うとリドルが村長の方を見る。
「まだ何かあるのか」
「はい、少し聞きたいことがあるんですが。例のモンスターの事について何か情報はありませんか」
その言葉に村長は首を降る。
「わしらにどうすることもできないだろう。あのモンスターは強い。分かっているのはそれだけだ」
そりゃそうだよな。
ドラゴン以外のモンスターは倒せないんだ。
ドラゴンを倒すモンスターなんて会いたくも無いだろう。
「リドルこれ以上はもういいだろう。早く作戦を考えよう」
するとリドルは帰ろうとせずまだ村長と話し合おうとしている。
「おい!早く行く――――」
「毒はどうですか?」
俺の言葉を遮って村長に質問する。
「そ、それは……」
「ドラゴンはあなた達にとって貴重は存在です。少しは戦ったんじゃないんですか。取り戻すためにあの毒で」
先程の口論と同じ空気が流れる。
だが先程とは少し違い村長が既に諦めた顔をしている。
「ああ…お前さんの言うとおり戦ったさ。もちろんあのヌマクでな」
村長は結果はすぐに言わなかったが何となく悔しそうな顔で分かった。
「頼む!あいつを倒してくれ!もうあんたらしかいないんだ!」
泣きながら俺達に土下座する村長。
「村長やめてください。大丈夫!俺たちに任せてください」
こんなに頼まれたら断れるわけが無い。
覚悟を決めるしかないな。
「その為にも村長出来る限りの情報をください」
「ああ…わかった!」
そして俺達の作戦会議が決まった。




