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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十四章 半分獣と呼ばれた者達
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その一 源魔石の交渉 

「さてとお前らここで死ぬか」

「ガイス‥‥‥!」


あいつもうここに来たのかよ。

しかも、ブライドと一悶着あった様子だな。

明らかに魔法がぶつかり合った後が地面に出来ている。

周りの人達も何事かと建物から出てきて不安そうに様子を伺っている。

ガイスは周りを見渡すと一つため息をつく。


「まだこんなにも生き残りが残っていたのか。俺に付き従う事も無く反抗する奴がここまで居るとはな。掃除が大変そうだ」


するとガイスがキョロキョロと辺りを見渡す。


「ガルアはいないのか。まあいい、ここに来たのは源魔石もそうだが裏切り者を見極める為だ。なあ、ミレイ」

「っ!」


ミレイに視線が向けられることでミレイは体を震わせる。


「自分の判断が間違いだったことを身をもって知る事になるだろうな。それはお前らも例外じゃない」


殺すつもりか今ここで。

確かにガイスがこの人達を生かす理由はない。

そして殺せない理由もない。

分かっていた事だ、作戦が終わったとのガイスの行動。

ブライドはどうするつもりなんだ。


「勝負は俺達の勝ちだな。先に仕掛けて来たのはそっちだぜ。負けたから無しとか言うんじゃねえよ」

「確かに宣戦布告をしたのは俺からだった。お前らは死体の王を打ち破り、城の源魔石も奪って行った。そう城の源魔石までもだ。俺は伝えたはずだ、王がそれぞれ源魔石の欠片を持っていると。欠けた物はそれだけだ、城の源魔石を賭けに出したわけじゃない」

「屁理屈が。それで暴れていい理由になると思ってるのかよ」


ブライドは吐き捨てるように言うとガイスを睨みつける。

確かにこじつけだ、でも今のガイスにそもそも約束を守る何てことするのか。

後から駆け付けたメンバーもその場の空気に飲まれて黙ったまま動けないでいる。

今はただでさえ怪我人が居るうえに戦力も十分じゃない。

唯一の対抗できる仲間と言えばデビ位だけど、あれは特別な状況で出来た様な物だし。

このまま戦いに発展すれば怪我人所か死者も出る可能性がある。


「ブライド」

「分かってるかつ。穏便に済ませるのが一番だ」

「つまり源魔石を俺に渡すと言う事か」

「渡せるわけねえだろ。あれはあいつらが命懸けで手にした物だ。お前如きに渡すわけがねえ」

「そうかなら、俺も俺の物を取り戻す為に暴れるのも仕方がないな」


その瞬間、周りに一瞬にして魔法陣が展開される。

あっという間に四方を魔法陣に取り囲まれる。

速い、そして一つ一つの魔法陣が当然のように命を刈り取るには十分な一撃。

町ごと破壊するつもりかよ。


「これ、まずくないかい」

「先手を取られたら後手に回るしかないけど、この魔法はどれも防ぎようがないよ」


イナミの言う通りだ。

この魔法が一斉に放たれたら防ぎようがない。

それを分かっているからこそブライドも迂闊に動けないでいるんだ。


「昔、言ったよな俺。お前はいつかゼット師匠の大事な物を奪おうとするって、そして敵として現れるって」

「何だ、自慢か?自分の予想が的中したからこそ、どうだ見たかとそう言いたいのか」

「違う、俺は間違ってた。その程度で終わるわけがなかったんだ。お前はゼット師匠所か、この島の全てを奪おうとしている。この島はもう、にゃんこ島じゃなくなっちまった」

「まだそんな名前に執着していたのか。あの能天気女が付けた名前を大事にする何て、まさにあいつの弟子だな」


そういうとガイスは周りの魔法陣に魔力を送り始める。

魔法を放つ気か!


「くそ、こんな所で死んでたまるか!」


何もせずにやられるわけにはいかない。

俺は魔法を放とうと準備すると、他の皆も同じ考えなのか迎撃の構えをする。


「やめろ、お前ら!!」

「っ!ブライド、でも」

「俺に任せろって言っただろ」


するとブライドは懐に手を突っ込めるとそこから紫色に輝く石を取り出した。

あれは源魔石、しかもくっ付いていて欠片じゃなくなってる。

それを見たガイスが唸り声を上げる。


「そうだ、大人しくそれを渡せ」

「渡さねえよ、馬鹿」

「ははっこの期に及んでまだそんな生意気な口を聞けるなんてな。初めて会った時から、お前は変わらないな。だから死ぬんだよ」


その瞬間、ブライドの目の前に別の魔法陣が展開される。

まずい、ブライド死ぬぞ!!

直感的にそう感じた瞬間、なぜか魔法が発動されることなくその場で止まった。


「どういうつもりだ?」

「どうもこうも無いだろ、俺を殺すって事はそう言う事だ」


何をやっているんだ。

ガイスの視線の先を辿るとそこには源魔石が握られているブライドの手があった。

だがその手は明らかに力が込められており、微妙に源魔石に亀裂が入っているようにも見える。


「ブライドさん、源魔石を壊すつもり何ですか」

「何で何で!そんなの勿体ないじゃん、要らないなら私貰うよ」

「馬鹿メイ、そういう意味じゃないから」

「源魔石は互いにとって切り札みたいなもんだから、それを壊すとなると迂闊に手が出せないってことだろ」

「さっきからペラペラとうるさいぞ死にたいのか」

「ひいいいいいいい!」


カビットは口を抑えながらガタガタと震えだす。

それを見て満足したのか、ガイスはブライドの方に向き直る。


「それでお前はそれを使って俺に交渉をするつもりか」

「その通りだ。源魔石を破壊されたくなかったら俺の言う事を聞いてもらうぞ」

「何を望んでいるんだ」


本当に交渉をするつもりなのか。

でも確かに源魔石はガイスとしても欲しい物だろう。

だからわざわざここに来たわけだし、交渉にはなるかもしれない。

でもガイスが素直に従うのか。


「先ず、この街の奴らには一切手を出すな。誰一人として傷つけることを許さない。そしてこの島から出て行く事、どうせ島を出て色々やらかそうとしてるんだろう。お前の帰る場所はもうない」

「なるほど、完全にこの島に永住するつもりか。正直この島には俺はもう興味がない、ここの連中も今更俺の敵になるとは思えない。それで源魔石が手に入るのなら、そうだないいだろう。約束してやる」


交渉成立?

意外とあっさりだな。

これですべて終わったのか、正直ガイスと戦う覚悟もしてたけどそれも無くなったってことか。

するとブライドは源魔石を渡すことなく手を引っ込める。

それをガイスは怪訝そうな目で見つめる。


「どういうつもりだ」

「まだ終わりじゃねえよ。最後に源魔石を渡す日を一週間後にしてくれ」

「何だと?なぜわざわざ期限を設ける。その間に何をするつもりだ」

「源魔石はまだ完全に直ってはいない」


そう言うとブライドは源魔石の一部が欠けていることを見せる。

確かに源魔石はまだ一欠けら分開いてるな。

それを見たガイスが不快そうに呟く。


「わざとか」

「諸事情で一欠けらがまだくっつけられないんだよ。それに源魔石にもひびが入っちまったからな。それらを合わせればざっと一週間くらいの期間は必要だ」


その瞬間、再びブライドの前に魔法陣が展開される。


「話にならないな。そもそも、俺は源魔石が無くても大丈夫だと言う事に気付くべきだったな。源魔石は念の為の補助タンクだ。もしもの為の道具、何か合った時に備えて用意しておきたかった物。魔力自体は魔法で無限に増やせる。つまり最初から交渉なんてものは存在しないんだよ」


まずい、この拮抗した状況を作り出すのは源魔石があったからだ。

その必然性がガイスに無いのだとしたらこの拮抗が崩れてしまう。

状況が刻一刻と破滅の方へと向かって行く中、美しい声色がその空気を一掃した。


「それはどうかしら」

「‥‥‥お前はブライドと同じ」

「源魔石が必要じゃないって本当に言えるの?それならそこまで必死になって探し続けたのはどうしてかしら。それに本当は怖いんじゃないの?」

「何だと」

「あなたは確かに強いけど、それはこの島での話。井の中の半獣大海を知らずよね。外の世界の情報を何一つ知らないからこそ、怖いのよ」

「俺が外の世界を恐れているって言いたいのか?」


明らかに機嫌が悪くなってるよな。

ていうかクリシナも良くこの空気でガンガン行けるよな。


「クリシナの言う通りだな。お前は恐れてる。外の世界はどうなっているのか、外の世界には魔力が存在してるのか。魔法以外の強力な武力が存在しているのか。何十年も前から人工的に生物を作り出す研究が進んでいたのだとしたら、今の技術はその先を行っていると考えるのが妥当だろ」

「武力?そんな物は意味がない。俺達は武力なんてものじゃ比べ物にならない程の魔力を手にした。魔法があればすべてを手に入れることが出来る。俺達は半獣だ、人間を超えた上位種だ。そんな奴らが作り出した物に俺が負けるわけがないだろ」

「そいつが作り出したのが半獣だって事を忘れるなよ」

「‥‥‥これ以上の問答は意味をなさないな」


そう言うとガイスは周りの魔法陣に再び魔力を注ぎ始める。


「源魔石を破壊してもいいっていうのかい」

「好きにすればいい。言っただろう、源魔石はおまけだ。外に魔力が無かろうがあろうが俺にはオリジナル魔法の永久魔力機関を使えばいいだけの事だ。お前は欲張らずに先程の条件で源魔石を手渡して居ればこんな事にはならなかった。これはお前が招いた不幸だ」


魔法陣がどんどん輝きを増していく。

これ以上は無理だ、やっぱりここで対処するしかない。


「皆、戦う準備をするんだ!絶対にここを守るぞ!」


やるしかない、ここまで来たんだただでやられるわけがないだろう。

そう覚悟を決めていた時、ブライドはまだ動きを見せなかった。

ブライドどうしたんだ、まさか戦わないつもりなのか。

諦めたわけじゃないだろうな。

そして魔法陣から魔法が出ると言った時、俺達も迎撃しようと魔法を発動とした瞬間ブライドが口を開いた。


「永久魔力機関はマナじゃなきゃ使えないだろ?」

「っ!」


その時、全ての魔法陣が光り輝き空中に魔法が解き放たれた。

そして空中で爆発すると物凄い突風が襲い掛かる。

ガイスはその場に佇みブライドを睨みつける。


「永久魔力機関は純粋なマナを使わなきゃ増やすことが出来ない。それがルールだ。そうだろ?」

「だとしても源魔石が破壊されたとして、また復活するのを待てばいい」

「それは何年後だ?何十年後かもしれないぞ。それまで悠長に待ってられるのか。誰も居ない島でさらなる発展を遂げた世界を相手に出来るのか?」


何だ、空気が変わった。

迷っているガイスが、こちらが主導権を握っている。

ガイスのオリジナル魔法がマナでしか出来ないのなら、外の世界にマナが存在しなかった場合魔力切れを起こす可能性がある。

だけど純粋な魔力を生み出す源魔石ならばそれを補う事が出来る。

ここで一気にガイスにとっての源魔石の価値が上がった。

恐らくガイスはこの事実を隠して俺達を殺した後に源魔石を回収するつもりだったんだろう。

だけどもうこれで簡単に壊させるようなことは出来ないはずだ。


「一週間、待ってくれるよな?」

「五日だ。それ以上は待たない」

「は?ちょっと待て――――――!」


だがガイスは有無を言わさずにその場から姿を消した。


「五日、それがデッドラインってことか?」

「ああ、正直ギリギリだがやるしかないだろう」


そう言うとブライドは覚悟を決めて皆の方に顔を向ける。


「残り五日でガイスを殺す計画を立てる。それが最後の戦いだ」



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