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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その六十五 可能性

目が覚めた時、目の前にはラミアの姿がいた。

私は衝動的にラミアを連れ去り、現状を把握してすぐに行動に移した。

そして今、実の息子を殺そうとしその息子に殺されようとしている。

私の人生を巡る旅は終わり、現実が襲い掛かって来る。

結局私の人生は何だったんだろう、今まで散々人を殺してきたそれは全て愛を知る為だ。

でもそんな物は結局分からなかった、それどころかそれを求めて色々な物を失った。

私は生きてきてよかったのだろうか、両親を殺してその後の人生は必要な物だったのだろうか。

そんな物は分からない、分からないけど少なくとも私の人生は息子に殺意を向けられるような母親になってしまったってことだ。

何も変わっていない、それはもう学んだろ。

一番なりたくないと思っていた奴に自分がなっていた何て、蛙の子は蛙ってわけね。

だったらせめて私はこの死を受け入れよう。

領域の中でガルアは炎の魔法を展開させていた。

私は自分が発動させられた魔法をガルアから逸らす。

最後の言葉‥‥‥

炎が迫りくる刹那、私はガルアにだけ聞こえる声で。


「ガルア、ラミア‥‥‥愛してやれなくてごめんね」

「っ!炎撃!!」


目の前が炎に包まれて体がどんどん落ちて行く。

その直後に大きな衝撃と共に山が崩れた。

その体はゆっくりと開いた谷へと落ちて行く。


――――――――――――――――――――

ガルアがコアを倒した。

それは喜ばしい事だったが、その直後にコアが最後に発動させた魔法が山に直撃し地響きと共に山が崩れ始めた。


「やばいぞ!このままじゃ巻き込まれる!」

「‥‥‥」

「おいガルア!早くラミアを助けに行くぞ、ぼーっとするな!」

「ああ、分かってる」


俺とガルアは崩れていく山を全力で走ってラミアが居るであろう、研究所の跡地へと向かった。

すると山が崩れたことで隠れていたはずの研究所の入り口が露わになっていた。


「あそこから入れるぞ!」

「ああ」


だがガルアは覇気のない返事をしてくる。

こいつ!


「しっかりしろ、ガルア!ラミアを助けるんだろ!まだ終わってねえぞ、気合入れろ!」

「っ分かってる、お前に言われなくても分かってるよ!!」


ガルアは気合を入れ直したのか俺より前を走り出す。

ようやく正気に戻ったか、確かに実の母親を自らの手で殺したとなればすぐに立ち直る事は出来ないだろう。

でもまだラミアが無事かどうかは確かめてない。

そこまでは気をしっかり持たないといけないんだ。

俺達は研究所の中に入ると、中は真っ暗闇だった。


「扉を閉めろ、土砂で埋まる可能性がある」

「分かった」


俺は近くに合った開閉レバーらしき下ろすと扉が閉まって行く。

よし、これで何とかなったな。

だが電気が通ってないから扉が閉まると何も見えないな。


「かつ、悪いが炎の魔法で明るくしてくれ。俺はもう魔力が残ってない」

「ああ、分かってるよ」


俺は炎の魔法を使って周囲を明るくさせる。

だが近くにはラミアの姿は見られなかった。


「奥に居るのか?」

「かもな、早く行こう。ラミアの体が心配だ」


そう言いながら進むガルアの足取りもかなりおぼつかなくて心配なんだが。

俺はすぐにガルアの横に立つとそのまま肩を担ぐ。


「そんなことしなくても俺は大丈夫だ」

「無理すんなよ、立ってるのもやっとだろ。お前が倒れたら意味ないだろうが」

「はっなら急ぐぞ」


俺はガルアを支えながら研究所の探索を始める。

すると一つだけ開いている扉を見つけた。

俺達は互いに顔を見合わせるとその部屋に入ることを決める。

空いている扉から中を覗き込む。

何かしらの罠が仕掛けられている可能性もある、ここは慎重に言った方がいい。

だが中覗いた瞬間、そんな考えは一瞬にして消し飛んだ。


「ラミア!」


ガルアは俺の支えを解いておぼついた足取りで走り出す。

何度も転びそうになるのをこらえてラミアの元にたどり着くとそのまま優しく肩を触る。


「ラミア!おいラミア!」


ガルアはラミアの体を何度も触る。

俺も後ろからラミアの姿を観察する。

最後に見た姿と見比べると明らかにやせ細っていた。

骨も少し浮かび上がっており頬もこけている、そして明らかに生命力が落ちている。

静かに目をつぶり壁に寄りかかっているラミアはすでに手をくれのようにも見えた。


「ラミア、ごめんな。助けるのが遅くなって、こんなにもやせ細っちまって全部俺が悪いんだ、ごめん本当にごめん」


ガルアは涙を流してラミアを優しく抱きしめる。

もっと早く来てれば結末が変わったのかもしれない。

だけどラミアは目を覚まさない、目を覚まさないんだ。

思わず拳を握りしめるとガルアが突然顔を上げた。


「息をしてる‥‥‥」

「っ本当か!!」


俺は思わずラミアの側に行く。

まだ目覚める様子は見せないが、微かに呼吸音が聞こえて来る。


「生きてる、ガルア生きてるよ!間に合ったんだ!」

「ああ、でもこれじゃあ時間の問題だ。おいかつ、回復のポーション持って来たよな。すぐにこっちに渡してくれ」

「ああ、分かった!」


俺は事前に持ってきていた回復のポーションを渡す。

そしてゆっくりと口元に瓶を寄せて回復のポーションを流し込む。

ゆっくりとゆっくりと、ラミアの体に流し込む。

すると次の瞬間、ラミアが激しい咳をし始める。


「ラミア!大丈夫か!助けに来たぞ!!」

「ごほっごほっ!誰?」

「俺だ、ガルアだ!!」


するとラミアが瞳をゆっくりと開くと虚ろな目でガルアの方に視線を向ける。


「お、兄様‥‥‥?ああ、そうかまた夢を見てるんだ」

「夢?」

「家族で幸せに暮らす夢、私が、妹で皆から優しいまなざしを向けられて、ガルアがお兄ちゃんで、私が寝坊した時はいつも起こしてくれて、コアは優しくて料理好きのお母さんで、いつもオムライスを作ってくれるの、そしてガイスは私のお父さんでしっかり者ので、でも厳しい所もある頼りになる人で、そんな家族で過ごす日々が、私の願いなの‥‥‥」

「ラミア‥‥‥」


それは現実とは真逆の関係だった。

家族という事だけが共通しているが、決して幸せに暮らすことは出来ない。

過去が今の家族を作り上げて、そして壊していった。

すると、ラミアはもう一度目を閉じた。


「ラミア!?おい、大丈夫なのか!」

「ただ眠っただけだ、回復のポーションが聞いてるんだろう。だけどどっちみちすぐに見てもらった方がいい」

「だな、すぐにハイトを呼んで‥‥‥やば、壊れてるな」

「俺のも駄目だった。さすがに通信機が耐えられなかったみたいだな。仕方ねえ、歩いて帰るしか‥‥‥」


ガルアはラミアを抱えて立ち上がろうとした時、そのまま床に倒れる。


「ガルア!?」

「駄目だ、流石に限界が来た。体が動かねえ」

「まじか、まああれだけの戦いをすればそうなるよな。俺はまだ比較的に魔力消費してないから、俺が運ぶよ」


俺は二人を一緒におんぶさせる。

うん、何とかなりそうだな。


「そういや、お前何で生きてたんだ」

「生きてちゃ悪いか」

「作戦があったんだろ、俺に内緒の」

「まあな、言わなかったのは悪いと思ってる。でも言ったらその作戦は無駄になってた」


俺は二人を担いで研究所の出口へと向かう。


「俺がブレイクインパクトを失敗した時、正面から魔法をぶつけるのはもう無理だと思った」

「ブライドが言ってた奴か」

「ああ、強力な魔法程実力のある魔法使いは警戒を緩めない。ましてや、俺はあれ以外に攻撃手段がないからな。絶対に当たらないと思った」

「だから死んだことにしたのか?」

「そう、死んだ人間を警戒する奴はいないだろ。ましてや戦いに集中してれば完全に意識がそっちに向かう。その一撃にもう一度かけたんだよ」


俺は開閉レバーを上げて扉を上げる。

山崩れは収まっており、見晴らしがよくなっていた。


「ワープを使って避けたのか?」

「じゃなきゃ無理だろ。それにコアは昔の魔法は知ってても今の魔法は知らないんだろ。だからワープも知らないんじゃないかと思ったんだ」

「最初から選択肢に無かったら、予想も出来なってことか。どうやらお前の方が一枚上手だったみたいだな」

「そんな事ねえよ。これは俺達の勝利だ」


するとガルアは喋らなくなった。

寝てしまったのだろうか、まああれだけの戦いをすれば疲れて眠るだろう。


「ラミアの言ってたことなんだが」


っまだ寝てなかったのか。

だが先程よりも声のトーンは低い。


「家族の夢の事か?」

「ああ、俺もたまに夢に見るんだ。四人で一緒に何気ない日々を暮らす、そんな当たり前の家族のような光景を」


ガルアもラミアと同じなんだ。

本当は心のどこかで家族になりたいと思ってるんだ。


「何か一つでも変わればそんな事が起きたんじゃないかと、変な希望を持っちまう。だけど、それは無理だって事は分かってるんだ。分かってるけど、それでも俺達は家族だから、一緒に生きて生きたかった。もし、願いが叶うのならもう一度皆でやり直しててえな」


ガルアはそう呟くと今度こそ寝息を立て始めた。

家族の在り方、それを俺は今日改めて知る事が出来たかもしれない。

普通の家族って言うのは、もしかしたら一番の奇跡なのかもしれないな。


「会いたいな」


俺はそのままキンメキラタウンへと歩いて戻って行った。


コアvs絶対かつ&ガルア   勝者絶対かつ&ガルア

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