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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その六十四 純愛

「おめでとう!!」

「幸せになれよ!」

「ゼットさんかっけーっす!」


その日はゼットとイズナの結婚式が行われた。

それが行われる建物も特別に作られ、多くの人々が会場に集まり祝福を送った。

私はその会場には行かなかった、行った所で何もないからだ。

ただただ気にくわない、あんなものを好んで見に行くやつはいない。

それにもしあの二人を目の前にしたら私はそれを壊さずにはいられなかっただろうな。


「やあ、こんな所で何をしているんだ」


一人でモンスターを椅子にして夜空を見上げていたらいきなり声をかけられる。

そいつが誰なのか私は知っていたので無視をすることにした。


「無視か、相変わらず俺に対しては冷たい態度を取るな」

「何しに来た。ゼットの結婚式に言ってたんじゃねえのか」

「終わったよ。二次会には行かなかった。大人数はあんまり得意じゃなくてな」


そういうとガイスは地面を蹴って私の隣に立つ。

それを見て私はすぐにモンスターから降りた。


「どうしてこなかったんだ。ゼットとは仲が良かったんだろ。ちょくちょく二人で合っていたようじゃないか」

「テメエには関係ないだろ」

「好きだったのか、あいつのこと」

「っ!?」


突如放たれたその言葉に私は過剰に反応してしまった。

それを見逃さなかったガイスはニヤリと笑みを浮かべる。


「だがお前じゃ無理だ。あいつにはああいう明るい人間が合ってる。お前のような殺人鬼じゃ一生振り向いてもらえないだろうな」

「何言ってんだテメエ、誰が好きだって?そもそも好きとかよく分かんねえし」


そう、そんな物理解できるはずがない。

私が知りたいのはそんな事じゃなくて愛を知れればそれでいい。

あいつとは別に特別な関係でもないし、いつか倒すべき敵だ。


『俺はコアの味方だ』


「‥‥‥消えろ、不快だ」

「まあそう言うな。ここに来たのは何も結婚式の様子を語りに来たわけじゃねえ」

「どうした、あの気持ちの悪い偽善者の喋り方はやめたのか」

「コアとは自然体で行きたくてな。ある計画を考えてる、それに協力してくれねえか」

「興味ねえ」


こいつと話すと不快感がより強くなる。

すぐにその場を離れようとした時、ガイスがこちらにある言葉を投げかける。


「最強になりたいんだろ?」

「っどういう意味だ?」

「単純な話だ。俺達半獣はより強い次世代を作る様に能力を受け継ぐ機能が備わっている。つまり強力な魔力を持った者同士がまぐわえば、両親よりも強い子が生まれると言うわけだ」

「テメエは私と子作りしたいのか」

「その表現はあまり好きじゃないが、そういう事だ」


私はそのままガイスの元に行くと唾を吐きかけてやった。


「気持ちわりいんだよ、さっさと消えろクソ野郎」


ガイスは不快そうにつばの付いた個所を拭うと私の方を睨みつける。


「特別に許してやる。だが次はないぞ」


その瞬間、私はもう一度唾を吐きかけてやった。

するとガイスは明らかにこちらに殺意を向けてきた。


「死にてえのか、テメエ」

「偉そうにしやがって、テメエは最初から気にくわなかったんだよ。かかって来いよ、ぶちのめしてやる」

「俺とやって本気で勝てると思ってるのか。なあ、愛も知らねえ殺人鬼」

「テメエ!!!」


私はガイスを殺すつもりで魔法を放つ。

そしてガイスも同タイミングで魔法を放ったことで二つの魔法が相殺された。


「ここでの戦いは意味を産まない。コア、これはお前にとっても利がある。愛を知りたいんだろ?」

「性行為ならもうやった。そんな事で愛は知れねえ」

「母性ならどうだ?」

「母性?」

「子供が出来たらその子を愛せるようになるかもしれないぞ。いまさら好きでもねえ男と一緒になるつもりはないなんて乙女心を持ってるわけじゃねえだろ。利用できるものは何でも利用する、そうだろ」


子供が出来たら愛を知れる。

それは本当なのか、本当そんな事で愛知れるのか。

試したことはない、今更誰の子供がいいなんてもの持ち合わせてはいない。


「そいつが最強の子になって私の前に立ちはだかるのか?」

「英才教育をしよう、お前は女の中では最強だ。俺たち二人が教えれば、ゼットすら超える」


私が本当に愛を知る為にも最強になるのは必要不可欠。

ならこの提案は受けた方が得だ。

そんなの分かってるはずなのに、心がそれを許そうとしねえ。

私は何に対して抗ってるんだ。


「返事は?」

「いいぜ、その提案受けてやるよ」


目的は愛を知る事。

それならばどんな手段も取ってやる。

それが私が生きてく理由だ。

それからやく一か月後、私は身籠った。

その情報をいち早く聞きつけたゼットが初めて会った場所にやってきた。


「ここに居たのか」

「何しに来たんだよ」


月明かりに照らされ、ゼットの表情が良く見えた。

いつもあまり表情を見せないゼットがこの時ばかりは笑みを浮かべていた。


「妊娠したんだってな。おめでとう、コアとガイスがそういう関係だとは思わなかった」

「テメエには関係ねえだろ」

「なぜ関係ないんだ。ガイスもコアも俺の友人だ。祝福する」


やめろ、そんなことを言うな。

何で喜んでるんだよ、何で受け入れるんだよ。


「ゼット、何でイズナと結婚したんだよ」

「‥‥‥彼女の人柄に惚れた。俺に無い物を持っていて、イズナの隣に居ると幸せな気持ちになれた。普通に生きて行けると思った」

「何で、あいつを選んだんだよ。何で」


最強の子供を作る為?

そんなのは言い訳だ、自分を納得させるためのただの言い訳。

心に空いた穴を埋めたくて自分は関係ないと、どうでもいいと思いたくて。

それでも溢れ出た本音。


「何で私じゃ――――――」

「コア、赤ちゃんが聞いてる。その話はやめよう。それに大声を上げるのもお腹の赤ちゃんによくない」

「っ!私に気を遣うなよ」

「コアはその子を愛していないのか」

「愛せる訳ねえだろバカ‥‥‥」


誰にも聞こえないように呟いたその言葉はゼットの耳には届かなかった。

島は発展いき町が増え、その象徴として城が作られるようになった。

そして私とガイスはそこで暮らす様になっていった。

それから子供が生まれて島に変化が起き始めた。

ゼットとガイスが互いの意見をぶつけ合いその結果島に残るものと島を出ようとする物で分かれていた。

私は心底どうでもよかった、子供が生まれた日から私は無気力に生きていく。

あれから七年が経った、島では明らかな内部抗争が起き初め血が流れることも多かった。


「コア、近々仲間内で今後の話し合いをする予定だ。お前も来い」


だが私はその質問に答えることなく窓から空を呆然と見上げていた。


「お前も島の状況は分かっているだろう。ゼットとは相容れない、当然お前はこちら側だよな」

「どうでもいい、心底」

「いつまでその調子で居るつもりだ。子供が生まれてから生気を失ったかのように毎日空を見上げ続け、まるで囚われの身のお姫様になったつもりか」

「お姫様なんて柄じゃねえだろ」

「だろうな、とにかくガルアはもう六歳、ラミアも三歳になる。なのにも関わらず遊ぶどころか、ろくに話もしないのはどうかと思うが。お前の子供だろ」


ガイスの方を向くとその後ろにはガルアが恐る恐るこちらを覗いていた。

ガルア、私の子供。

何であの子が居るんだ、何のためにあの子が存在してるんだ。


「‥‥‥思い出した」


私はすぐに立ち上がるとそのままガルアの元に行く。

ガルアは私が近づくたびに怯えた目でこちらを見て来る。


「おいテメエ、修行するぞ」


―――――――――――――――――――――

「がはっ!!げほっげほっ!」


ガルアは嗚咽しながらお腹を押さえてその場でうずくまる。


「おい、何この程度でへばってんだ。私よりも強くなってもらわなくちゃ困るんだよ。おら、早く立て!!」

「コア、修行を付けるのは構わないがやりすぎだ。壊れたら意味がない、まだ子供だ、成長に合わせた訓練をするべきだ」

「うるせえよ、こいつは俺の物だ。テメエが口出しするんじゃねえよ。おら、早く立て」


まだガルアはうずくまったまま立とうとしない。

脆い、魔法じゃないただの殴りを十発受けただけで動けなくなるなんて。

魔力は確かにあるがそれでも意味がねえ。


「俺の子でもある。お前、ガルアを殺す気か?」

「この程度で死ぬ奴ならはなから私よりも強くなれるわけがねえ。それに死んだって構わねえ」

「まさかガルアが死んだら、ラミアに変えるつもりか?やめておけ、あの子は魔力量はかなりあるが魔法の使い方がなってない。お前のやり方じゃすぐに死ぬ」

「ならつべこべ言わずに黙って見てろ。私のやり方でこいつを強くする。おら、いつまで休憩してんだ!早く立て!!」


だがガルアは首を振るだけで立ち上がろうとしない。


「無理だよ、お母様。苦しくて、立てないよ」

「なら死ね、強くなれないお前に価値なんてねえんだよ。私がお前を最強にしてやる。だから死にたくなければ死ぬ気でやれ」


私はガルアを無理矢理起こさせて修行を再開させた。

それからガルアを強くさせる為に魔法を与えたら実践を行なったり、血反吐を吐こうが全身が動けなくなろうが続けた。

全ては最強になる為に、そして愛を知る為に。

そして島の抗争もどんどん過激になって行った、そんなある日私の耳にある知らせが入って来た。

それを聞いた瞬間、私は居てもたっても居られなくなりある場所へと飛び出していた。


「ゼット!!」

「コア‥‥‥久しぶりだな」


いつもの場所にゼットは立っていた。

顔つきが変わった、少し凄味が出ているような気がする。

疲れているのか目元にクマも出来ている。


「本当なのか、子供が出来たってのは」

「ああ、本当だ」


ゼットからその知らせを受けたことで改めてそれが事実だと思い知らされる。

その瞬間、私の中で何かが崩れた。


「どうして、どうしてなんだよ!!何で、そんな奴の子供を作った!あんな弱い女の子供を作って何になるんだよ!」

「強さは関係はないだろ」

「あるだろ!より優秀な奴と子供を作れば優秀な子供が生まれる。私とお前なら最強の子供が出来たんだ!なのに、よりによって何であいつと」


許せなかった、結婚はまだしもあいつとの間に子供が出来たことが。

それが無性に腹立たしくて、全力で否定したかった。

だって私が本当に欲しかったものをあの女が奪って行ったから。


「好きなんだよ!私はゼットが好きなんだ!!だから、私を――――――」

「コア、それは無理だ。俺はイズナを愛してる」


ゼットは申し訳なさそうにそう言った。

愛、愛してるだって?

何でだよ、何でその言葉が言えるんだよ。

私はようやく好きを知れたのに、その先の愛をまだ教えてもらってない。

教えてくれよゼット、あの女に教えたのに私には教えてくれないのかよ。


「コア、俺はこの島を出る。ここはもう変わってしまった、ここはもうにゃんこ島ではなくなってしまった」


するとゼットは空を見上げて悲しげにつぶやく。

それから再び私の方へと向き直った。


「島の端っこにある巨大な扉、あそこから島を出る者達と一緒にこの世界から離れる。コアはどうする?コアはガイスの妻だ、当然この島に残るんだろうがそれでももし」

「やめろ!そんな話聞きたくねえ」


もう終わったんだ、何もかも、

だから少ない未練すらも断ち切らないといけねえ。


「戦えよ、ゼット!私と戦え!」

「戦う理由がない」

「決まってんだろ、私は最強を目指してんだ。だからテメエを殺して私が最強になる」

「コア、俺は味方だぞ」


説得するようにゼットが言ってくる。

だがゼットは知らねえ、その言葉はもう意味がないって事を。


「味方じゃねえよ、お前は敵だ!だから戦え!」

「理由がない!」

「なら、あの女を殺す。ちょうど子供も出来たからな、あいつの血筋をここで途絶えさせるのもいいな!」

「コア、それ以上は許さねえぞ」


ゼットは低い唸り声で私に明確な殺意を向けて来た。

初めて向けられた殺意、それを受けて私はようやく覚悟が決まった。


「なら私を殺せ!!お前が戦わなきゃあの女所か、島の奴ら全員殺してやるよ!」

「馬鹿が!!」


初めて私はゼットと殺し合いをした。

そして気が付くと私は空を見上げていた。

負けたのか、全身に疲労感と痛みが残る。

死んでねえ、あいつ私を殺さなかったのか。

あんなこと言ったのにそれでも殺さなかったのかよ。


「クソが、お前が殺さなきゃ私はどうやって死ねばいいんだよ」

「派手にやったようだな」


声が聞こえて来てそちらの方に視線を向けると、ガイスがこちらに近づいて来ていた。


「何しに来やがった」

「真正面からゼットとやって勝てるわけがないだろう。それとも死ぬ気だったのか?」

「うるせえ、どっか行けよ!今はテメエと話してる暇は‥‥‥あ?」


その時、ガイスが私に向かって魔法陣を展開させる。


「どういうつもりだ」

「元々は優秀な子供を産ませるためにお前と一緒になっただけで、情も何もない。まともに家族ごっこも出来ないのなら消えてもらった好都合だ」

「最初から私を殺すつもりだったのか?」

「そう言う訳じゃない、お前とはいい関係を築いて行きたかった。だが実の息子に訓練と生じたただの暴力、そして勝手な暴走、制御できない爆弾をいつまでも抱えてるわけにはいかないんだよ」


魔法陣がさらに輝きを増す。

確実に私を殺すつもりか。


「先に言っておくが、テメエが私を殺せると思ってるその慢心が命取りだぞ」

「自分よりも弱い死にかけの奴を恐れる奴が何処にいる?安心しろ、殺しはしないお前は貴重な素材だ。一生俺が使ってやろう」

「クソが!!」


そして私はいつ覚めるかも分からない眠りへとついた。

だがそれはガイスの復活と共に覚めることとなった。



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