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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その六十一 新たな人類

「よくもケイレンさんをやりやがったすね!殺してやるっす!」


殺す。


「あいつを殺したようだな。感謝するぞ、目障りな男を消してくれたお礼に俺がお前に引導を渡してやろう」


殺す。


「彼とは個人的な契約をして居たのですよ。あなたのせいでその契約が破棄されてしまった。違約金の五百万を払ってもらわなければ。え?お金がない、安心してください。臓器を全て売れべ足りるでしょう」


殺す。

私には向かってきた奴は全員殺してきた。

ケイレンが死んだ後の影響力は大きく裏社会の全ての人間が私を殺そうと躍起になっていた。

依頼された者、復讐をしに来た者、名を上げようとした者、理由は様々だったが皆共通してケイレンを殺した私を殺したがっていた。

そいつらを殴殺したり、相手の武器を利用して殺したり、銃や爆弾で虐殺したりとにかく全員殺してきた。

そうしていつしか毎日来ていた刺客も数が減って来て、気が付けば私には向かおうとする者は居なくなった。

殺せない、そう判断されたのだろう。

そんなある日、変わった人物がやって来た。


「テメエ、誰だ」

「そうかしこまらないでください。何も喧嘩しに来たわけじゃありませんから」


きちんとした身なりの男とガタイの良い二人の男が私の元を訪ねて来た。

殺し屋って感じじゃねえな、後ろの二人はともかくとしてこのスカシ野郎はただの一般人と思っていい。


「じゃあ何だよ」

「私はこういう者だ」


すると男は一枚の紙をこちらに渡してきた。

そこには男の名前ともう一つ。


「未来研究所?何だそりゃ」

「単純に言いますと豊かな未来を築くために人類の為の研究をする機関です」

「豊かな未来ねえ。こんな所まで来て豊かな未来を築くつもりか?人間の最下層だぞ、未来なんてものを思い描く奴はいねえよ」

「そうでしょうね、ここはそういう場所だと自覚しています」

「こんな所まで来るって事はろくでもねえ研究してんだろうな。人には言えない黒い事をやってんじゃねえか。そのすまし顔の奥にはどす黒い闇が見えるぞ」


すると名刺にクロリアと書かれていた男は笑みを浮かべる。


「そんな事をおっしゃらないでください。我々は正規の研究施設ですよ。国から研究費用もいただいています」

「正規?ああ、表向きってわけね。それで私に何の用で来たんだテメエら」


私がそう言うとクロリアは笑みを浮かべる。


「おっしゃる通り、あなたにお願いしたいのは極秘で行っている実験です。どうやら最強に興味がおありのようで」

「最強?聞かせろ」

「我々は現在様々な実験を行っています。その中には人類の禁忌に触れる物もあり、その中の一つの人体実験に協力していただきたい」

「改造手術か?その程度興味ねえよ。薬を入れられたが別に大したことなかったしな」

「その辺の実験と一緒にしないでもらいたいですね。我々は新たな人類を作るんです」

「新たな人類?」


こいつ、相当イカレてやがるな。

思ってた以上かもしれねえ。


「そう神にも等しい行為を我々は自らの手で行おうとしているのです。その協力をしていただけませんか。あなたのような強靭な肉体と精神力を持った方が好ましい。本来ならここで有力な人物に声掛けをしようと思っていたんですが」

「全員私が殺したからな。新たな人類って言葉には興味が引かれるな。だが不満があるとすればそこの後ろの二人だ。護衛にしては弱すぎじゃねえか、私が蹴った時そいつらを襲わせるつもりだったのか」

「いや、こいつらは私の護衛です。ここは何かと物騒なので念のため。ですが確かに失礼ではありましたね。おい、自決しろ」

「っ了解しました」


すると後ろに控えていた男二人が躊躇うことなく自らの拳銃を頭に付きつけて、引き金を引いた。

頭がはじけ飛びそのまま地面に倒れる。


「これで満足でしょうか」

「随分としつけられてんな。ノータイムで死ぬなんて」

「しつけてはいませんよ。この二人は今日雇ったばかりで全くの初対面です」

「何だと?」

「脳の中に独自のナノマシンを入れました。それにより私の命令には即時実行するように脳の神経回路から直接伝達されるのです。感情を経由することなく反射的にそれを行ないます。ゆえに私の命令を忠実に実行するロボットになるのです」

「人間をロボットに、やっぱいかれた実験してんじゃねえか。まあいいや、最強には興味がある。どうせ今暇だしな、付き合ってやるよ」


こいつらが信用できるかどうかは分からねえが、万が一他の奴らみたいに私を騙して殺そうとするならこっちもやってやればいい。

着いて行くだけついてみるか。


「それではこの同意書にサインを。死んでも責任を負わないと言う奴です」

「どうせしなねえから安心しろ」


私はクロリアからペンを受け取るとそのままサインをかく。

そしてクロリアは満足そうにその紙を受け取る。


「それでは‥‥‥コアさん。これから末永くよろしくお願いします。それでは行きましょうか、同じく実験に参加する仲間が待っていますので」


私はそのままクロリアの後を付いて行った。

麻酔が効かないと言う事で特殊な目隠しと耳栓をさせられてそのまま案内される。

気付けば体が不規則に揺れて潮の香りがしてくる。

恐らく船に乗せられてるな。

そして目的地に着いたのか、その揺れが収まると耳栓と目隠しを外された。


「さて、ようこそ我々の島へ。ここは無人島でしたが、研究所を設立して臨時の研究島として利用しています。ここに島がある事は誰も知りません、そして知ることも出来ません。ですから皆さんはここで一生を過ごすことになりますが、生活に困るようなことは一切ありません。それでは行きましょうか」


その後私は様々な方法で体をいじくりまわされた。

頭をいじくりまわされたり、体に見知らぬ生物の細胞を入れられたり、生物の部位を体に移植されたりとにかく色々やらされた。

体に異常来たし、全身に絶え間なく激痛が襲い掛かった。


「うぐっ頭が、割れそうだ‥‥‥」


体は異常な熱を持ち、毎晩幻覚と幻聴に襲われる。

意識が曖昧になり、世界が大小さまざまな大きさに見えたりもした。


「素晴らしい数値だ、これほどの被検体は早々居ないぞ」

「過剰な程の実験を繰り返しても副作用が起きるだけで、生命自体は順調に活動し続けています。むしろ体がそれに慣れようと変化し続けています」

「他の被検体が数分を経たずに死ぬような実験を繰り返してるのにな。やっぱりこいつを軸に進めた方がいいんじゃないか」

「だが他にも優秀な被検体は要る。ナンバー2をそろそろ使ってもいいんじゃないか」

「それは駄目だ、まだ不確定要素が多い。あれは俺達が生み出した優秀な個体だ。無駄にするわけにはいかない」

「A組はどうします?このまま放置し続けるのはどうかと思いますが」

「むやみに手は出せんだろ。何しろあそこはブラックボックス、このまま実験を繰り返せば反乱が起きる可能性がある。とにかく今は新たな人類を作る方法を確立させなければいけない。ディメンションホールからはまだ何も出てないのか」

「追加の個体が出ています」

「よし、別の被検体を使おう。すぐに準備しろ」


実験は繰り返される。

今が何日か何年か分からない、だが確実に自分の体が変化しているのが分かる。

何かへと変わろうとしている。


「‥‥‥あ?」


ある日目が覚めて鏡を見た時、見慣れない物が私の体から生えていた。

それを触ってみると、確かに感触が感じられた。

これは私の物か、だとしても。


「何で、耳と尻尾?」


実験は成功した、私は人間とは違う新たな人類となった。

私はモンスターの血が濃いようだ、その他にも人間の血が濃い者、そしてそれらを男女で分けた者などいくつかの検証が行われた。

実験の頃毎日のようにできていた死体の山は少なくなり、私が半獣となって一週間もした時はほぼ実験は成功していた。


「おらっ!」


謎の記号を空中に出現させると炎や水などが出せた。

これが半獣という種族の特徴らしい。

よく分からんが未知のエネルギーが体に充満していることが分かった。

そうして半獣が増えてきたある日、反乱がおきた。


「いくぞ!俺達の自由を取り戻すんだ!」

「戦える奴はすぐに行け。みんな立ち上がれ!」


力を手に入れた獣は自由を求めて飛び立っていく。

私達の力は研究者が制御できないほど膨れ上がり、その恨みを果たすがごとくすべての研究者を魔法で殺しつくした。


「死ね!死ね!」


私も当然参加した、こんな楽しいお祭りに参加しないわけにはいかねえ。

力が溢れ出て止まらなかった。

もう実験で力を使うだけでは足りなかった。

誰かを殺したい、そうする事で私は満たされた。


「っ!」

「見つけた」

「やめろ来るな!!」


その男は私を見ると必死に足をばたつかせる。

腰が抜けたのか、立ち上がれないでいる。

あっこいつ漏らしやがった。


「どうした神様、下々に反抗されたくらいでビビっちまったか」

「俺達がお前らを強くしてやったんだぞ。そうだろ、コア!お前の夢を叶えてやったじゃねえか」

「あっ?あーそう言えばそんなこと言ってたな。確かにおかげで前よりも強くなれた、だけどな気に食わねえ」

「な、なにが――――――」


炎の魔法を使ってその男の全身を焼き尽くす。

一瞬で黒ずんだ男はそのまま力なく倒れる。


「クソだせえ、耳と尻尾を生やしやがって。私は動物が嫌いなんだよ」


そして未来研究所は壊滅した。



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