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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その五十四 後二つ

「‥‥‥っ戻ってこれたんでしょうか?」


気が付くと薄暗く鉄臭い場所に僕達は居た。

すると目の前には大き目な椅子が置いてあり、その椅子がくるりと半回転するとそこに誰かが座っていた。


「待っていたよ、君達。さあさあ、博士が自ら出迎えたんだ。嬉しすぎて小躍りしたくなってくるだろう?」


椅子の大きさに対して座高が低いメメさんは背もたれに大分余裕が残ってしまっている。

サイズが完全に合ってませんね。


「何だよ、何でお前が居んだ?」

「それはもちろんここが博士の研究室だからさ」


確かにこの内装と雰囲気は研究室で何度も見かけてはいますね。

ですが問題はどうしてここに居るのかですね。


「おかしくないか?リドルはここをテレポート先に選んでないだろ?というか、ここは直接テレポートするのは禁止じゃないのか」

「確かに僕はここをテレポート先にはしていませんでした」

「それは簡単、テレポート先をこっちに変更させたんだよ。この機械でね、これも博士の立派な発明なのだよ」


そう言って僕達の足元を指差す。

僕達が乗っている場所には大きな丸形の台の機械が設置されていた。

もしかするとこれでテレポート先を変更された。

え?それって一体どういう意味なんでしょう。


「さてと、君達を呼んだのは他でもない。すぐに治療が出来るようにだよ。すでに半獣化したミノルと人間のアイラには博士の特別治療を絶賛受けている所だよ」

「つまりそれを僕達もうけろと言う事でしょうか。その為に僕達を直接ここに呼びつけたんですか?」

「そう言う事だね。さあさあ善は急げだよ、博士を待たせるなんて百億年早いんだから」


博士は足すら地面に付かない椅子から飛び降りるとそのまま奥のカーテンを開いた。

そこには液体が入った大きな機械が横並びに複数個あった。


「この中に入れば魔力も傷もすぐに治るよ。身体的な治癒力を爆発的に高める特殊な博士特性液が入っているのだよ」

「なるほど、それでけがの治療を出来るのですか。それならお二人は怪我もひどいですし、お先にどうぞ。僕は現在の状況の確認を行いたいので、ブライドさんに会いに行きます」


状況がいまいち掴めません。

通話の内容からいくつかの作戦は成功していましたが、その後彼らがどうなったかまでは分かりません。

直ぐにでも状況の整理と今後の対策について考えなければ、デビさんが今もなおガイスを足止めしているかどうかでさえ状況が変わってきます。

そしてかつさん、一向に話題には上がりませんが無事に帰ってきているのでしょうか。

それならば僕の口からミノルさんの事を報告しなければ。

僕はすぐさまブライドさんの元に向かおうとした時、誰かが僕の腕を勢いよく掴む。


「いっ!な、何するんですか」


咄嗟に腕を引くと掴まれていた手が離れる。

どうやら僕の腕を掴んだのはハイトさんの様ですね。


「少し握られただけでその痛みだ。さっきから両足とも震えてるぞ。かなり無理して立ってるだろ」

「‥‥‥さすがです。誤魔化せませんね。ですが大丈夫なのは本当です。ハイトさんの方が重傷でしょう。原初の半獣と戦ったんですから」

「俺は元気いっぱいだけどな!」

「何言ってんだ。平気なフリをしてるが顔色が悪いのは明らかだ。相当無理してるだろ」

「ていうか、重症度合い関係なく博士の言う事は聞いてもらうよ。何せ、それが私の役目だからね」


すると出口らしき扉のロックが掛かる。

どうやら僕達を外に出すつもりはないようですね。


「結果は全てが終わった後に知れと言う事ですか?」

「寝てればあっという間なのだよ。それに今後の為にも治せる時に身体を治せるのは有効的な手段だとは思わないかい」

「‥‥‥そうですね。現状は何が起きるか分かりませんし、休める時に休むのは最善だと思います」


ここで無理をして後に残る様では皆さんの足を引っ張ってしまう可能性はありますね。

メメさんの言う事に従った方が良いと言う事でしょうか。

それにさっきから安心したせいか、体中の痛みが増したような気さえしてきます。


「リドル、ここは博士の言う通りにしよう。体力回復も作戦の一つだ」

「確かにそうですね」

「仕方ねえな。まだ大ボスが残ってるし、そいつを倒すために体力回復しておくか」


ガイは治療を受けることを決めたのかいの一番に部屋の中へと入って行く。


「それじゃあお二人さんも早く入りなよ。博士特性液体で全身治療してあげるからさ」

「言い方はともかくとして、そのご厚意を無視するわけには行きません。行きましょう」

「ああ、ちなみにどれくらいかかるんだよ」

「軽度によるけど、君達なら一時間で大丈夫なのだよ。これも博士の発明の賜物だね。普通は何週間もかかるものだよ」


確かに怪我の具合を見るに一時間で治療が完了するのは凄いですね。

これなら何とか事が終わる前には出てこれそうです。

僕はメメさんの指示の元、服を着替えて液体の中へと身を沈める。

最初は息苦しさを感じたが、それも徐々になくなってき最終的に浮遊感が全体を包み込みゆりかごに揺られているような心地よさすら覚える。

ああ、これはすぐにでも眠れ、そう‥‥‥です。


―――――――――――――――――――――――

キンメキラタウン、王城、広間(一時治療場)


「ふう、これで全員かな」

「それにしても随分連れてきましたね、マイトさん」


そこにはリツと共に怪我人の手当てを手伝っているマキノの姿があった。

大きな入れ物の中には大量の空の瓶が入っている。


「研究所に捕まっていた人間と半獣化された人間が居たからね。その人達を救出しただけさ。ほら、それ貸して」


重そうにしている瓶の入れ物を代わりに受け取る。

やはり重量はそれなりにあるね。


「ありがとうございます、ていうかもう粗方作戦は終わったんですか。こっちはキンメキラタウンで手一杯で状況が全然分かんないんですけど。さっきからリツがぜっちゃんは大丈夫なの~ミっちゃん助けられた~とかずっと言ってて正直鬱陶しいんですよ」


リツは確か博士の助手をしていて、かつとミノルとも親しい間柄だったかな。


「ミノルの事ならすでに救出してるよ。今頃は博士の治療を受けてるんじゃないかな。残念だけど、かつの方は情報が掴めなくて‥‥‥ごめん、もう行くね」

「あっちょっと!」


遠くからこちらに手招きするブライドの姿が見えた。

俺は空の瓶が入った入れ物を手に持ちながら走る。

ガチャガチャと音が鳴るが割らない様になるべくスピードは落としている。

すると物陰に隠れていたブライドが俺がやってきたことでゆっくりと顔を出す。


「そろそろ作戦も最終段階に入って来てるからな。ここで情報整理をしようと思ってな」

「確かに俺もいくつか聞きたい事があるんだよね」


俺は持っていた瓶の入れ物を床に置く。


「情報を整理すると源魔石を取りに行った連中は無事に作戦を成功させた。だがかなりの重傷でピンカはメメの所で治療を受けている。あの怪我なら明日には完治しているだろう。エングとサザミは更に重傷でエングは未だに目覚めず、サザミは生死の境を彷徨っている。イナミは魔力の多量消費による魔力の回復、ナズミは傷の手当を済ませて現在は街の怪我人の治療を行っている。この二人は比較的軽症だな」

「そして城の潜入チームも爆発の事故があったが無事に機械と源魔石の回収に成功。博士の元にすでに送り届けられてるね。そして研究所潜入チームも先程キンメキラタウンに帰還、無事に連れ攫われた仲間と人間の救出に成功」

「その研究所チームにはイレギュラーな存在が居ただろ」


イレギュラーな存在、恐らく黒の魔法使いの事だろうね。


「さっき研究所があった場所で巨大な爆発が起きていた。地面が揺れる程の衝撃だ、恐らく研究所は跡形もないだろうな。まさかハッカーがこの島に居るとはな」

「爆発って事は黒の魔法使いもそれに巻き込まれた可能性は」

「さあな、正直奴らの安否は俺達には関係ない」


ブライドは突き放すような言葉を使う。

冷たいとは言い切れないな、元々の計画には黒の魔法使いは入ってなかったし。


「それじゃあ次は俺の質問に答えてくれない。この街の現状について」

「大量の奴隷の奇襲を受けたが町の人達の協力もあって無事に乗り越えられた」

「そこまでは俺も知ってるよ。その後の事だ、被害はどれくらい出てるの?」

「被害は最小限に収まったぞ。外壁を壊されたりしたが中心部には入られてない。怪我人もほとんどいないし、現在はムラキ自身が街に出向いて怪我人に励ましの言葉や手伝いを行なっている。ちびっこ王も変わったもんだな」

「そっか‥‥‥」


確かに最初に比べて見違えたかもしれない。


「それじゃあ現状の問題はデビとかつとガルアってことか」

「だな、だが現状は掴めてないんだろ」

「デビも戦いの余波でカメラも通信機も壊れた。追跡は不可能だって博士がお手上げだったよ」

「通信機何て使わなくても奴らの居場所ならすぐに分かるけどな」


そう言ってブライドは窓がある場所に近づくと天井を指差す。

空は紫色に度々光、その間を謎の影が通り過ぎていく。


「まさか上空で戦っているとかいうつもりかな」

「そう言ってるつもりだけどな」


ハハッ本当に規格外の二人だな。

まあ片方は地獄の王だから納得してももう片方は俺達と同じ半獣なんだよな。


「それでかつの方はどうなんだ。事によってはそっちの成功が今後に関わるぞ」

「かつの方は早々に通信機が壊れた。カメラも壊れたから現状は不明、場所はここからかなり離れた所にあるみたいだから視認すら出来ないんだよね」

「なるほど、つまり不明ってわけか」


ブライドはおもむろに窓を覗き込む。


「奴らの帰りを待つしかないな。それで結果は分かる。デビの方は任せたぜ」

「必ず救出するよ。ここまでしてくれたんだ、絶対に死なせない」


すべての計画が終わりに向かっている。

後は残り二つ。



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