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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その三十七 一人じゃないよ

「ナズミ!」


ピンカとマイトは慌てた様子でキンメキラタウンの寄宿舎へと入る。

あの後俺はピンカとマイトにナズミとミズトの戦いの結果を報告した。

ミズトが死んでしまった事を。

扉を開けて広間にはナズミが席に付いて天井を見上げていた。

するとこちらに気付いたのかナズミはゆっくりとこちらに顔を向けて無理に笑みを作る。


「よかったです。お二人とも無事に勝てたんですね」

「ナズミあんた‥‥‥」

「あっでもピンカさんは足を怪我してますね。すぐに治療した方が良いですよ。先程メメ博士が戦いが終わった人達の治療を行っているみたいです。すぐに向かった方が良いですよ」


あからさまな空元気、あの後を見てたから俺には分かる。

まだナズミはミズトの死を乗り越えられていない。

でもこの事を俺達が指摘するわけには行かない。

するとナズミは空気を察してか先程まで無理に笑顔を作っていたが、真剣な表情になり上を見上げる。


「私は大丈夫ですよ。確かにお姉さまの死はとても悲しい事ですけど、私を信じてくれたお姉さまに恥じない様に生きていくつもりです。前を向かないと怒られてしまいますから」

「ナズミ‥‥‥そっか」

「ちょっとマイト下ろして」

「え?でも、足が治ってないし」

「いいから」


ピンカのお願いにイナミは渋々おんぶしていたピンカを下ろした。

ピンカは痛みで一瞬顔を歪めたが、無理やり片足を引きずりながらもナズミの方へと歩み寄る。

一体何をするつもりなんだ。

ナズミも沸け側買わず困惑しているとピンカはナズミが座っている席に付き、テーブルに寄りかかる。


「え、えっと‥‥‥まだ傷も治ってないのに無理はしない方が」

「前を向く?恥じないように生きる?随分とまあ立派な事ね。でも人の死ってのは簡単に乗り越えられるもんじゃないのよ。ましてや大切な人なら特にね」


もしかして自身の母親の死を重ねているのだろうか。

するとピンカはナズミの目元に指を指す。


「そんな目を晴らして説得力無いしね」

「なっ!こ、これはですね、戦いの影響とかで」


ナズミは顔を真っ赤にさせながら目元を隠す。

そう言えばずっとミズトを抱きしめながら泣いてたからね。


「別に隠すことはないわよ。泣きたい時は泣いていいのよ。あんたまだ子供だしね、だから辛くなったらいつでも頼りなさい。一応私姉だしね」


そう言うとミズトは恥ずかしそうに頬を掻く。

それを聞いたナズミの表情がパッと明るくなる。


「ピンカさん‥‥‥はい!」

「おやおや、まさかピンカが他人を気遣うなんてね。昔のピンカからしたら考えられないな。成長したね」

「誰目線よ。あんたはこのまま私の目が見えない所でくたばってもらって構わないから」

「はは、よかったいつものピンカだ。まっピンカの言う通り無理して進む必要はないと思うよ。一人じゃないんだし、少しずつ傷を癒していけばいいよ」

「はい、ありがとうございます」

「俺も何かあったら協力するからな」

「分かりました。何かあればイナミに頼みますね」

「邪魔するぞ」


いつもの笑顔に戻り周りの雰囲気も良くなってきた所である人物が中に入って来る。

その人物はブライドであり険しい表情をしながら入って来た。


「ブライドさん‥‥‥」

「悪いな、街の応援に行ってて遅れた。どうやら戦いには勝利したみたいだな、傷は深そうだが」


するとナズミが席から立ち上がりブライドの元へとゆっくり向かう。

そして懐からミズトが使用していたであろうボロボロの魔剣の柄を取り出した。


「お姉さまは私にこれを託してくれました。これはお姉さまの魂そのものです。だから約束は守りましたよ」


必ず帰って来い、決戦前にブライドが言っていたことを言っているのだろうか。

それを見たブライドがナズミの頭に優しく手を置く。


「そんなの言われなくても分かってるよ。よく帰って来てくれたな、お手柄だぜ」

「ブライドさん‥‥‥」


するとナズミの目元がまたうるんでいるのを見てブライドが笑みを向ける。


「少しは雰囲気が変わったと思ったがまだまだ子供みたいだな」

「ご、ごめんなさい!大丈夫です、もう大丈夫ですから」

「ブライド、ナズミをいじめないでよ」

「いじめたつもりはないんだけどな。ていうかお前らもよく帰って来てくれたな。傷はあいつらからしたらまだマシだな。ピンカは片足が重症か、すぐにメメの所に行け。その傷なら一日あれば治るだろう」

「分かってるわよ」

「そう言えばエング達の姿が見えないけど、もしかしてメメの所に居るの?」


するとブライドが少し話しにくそうに渋るが次の瞬間、口を開いた。


「正直言うと状態はあまりよくない。マイトから伝えられてるか?」

「危険な状態ってことは伝えられた。でもあの二人なら大丈夫だよね」

「あいつらのタフさを信用するしかないな。今の所はメメがしっかりと見ていてくれている。何かあったら連絡が入るだろう。とにかく絶対安静だ。お前らも魔力の酷使や戦いで傷ついてるだろ、すぐにメメの元に迎え」

「それは良いけど他の奴らはどうなってるのよ」


ピンカのその発言に俺達は思わずピンカの方を見てしまう。


「な、何よ。なんか変なこと言った?」

「いやあ、ピンカがまさか王以外の人達の状況を気になるとは思わなくてね。興味ないってさっき言ってたし」

「メインが終わったから、暇だからサブの様子も聞こうと思っただけよ!文句ある!」

「別に、そんなツンツンしなくてもいいのに。それじゃあその内容は俺から話した方が良いかな」

「ああ、いいぞ。お前の方が詳しいだろ」

「じゃあ、教えるね。研究所チームは現在研究所を潰すために動いてる。状況は良いとは言えないけど別々に分かれて動いてるらしい。シアラルスの城に潜入したチームは扉の解除を終えて直に戻って来るだろうね。そしてデビの方は以前ガイスの足止めをしてもらってる。源魔石が回収された今、より一層戦いは激しくなるだろうね」


デビの状況はあまり詳しくは掴めていない。

戦いの余波でもうまともな監視が出来ないらしいからね。


「かつの方はどうなってるの?あっちもかなりの強敵でしょ」

「かつの方か‥‥‥そうだね。正直に言うと状況が分からない。通信機が早々に壊れてしまい、監視をしていたカメラも破壊された。まだ戻ってきていない所を見ると、戦っているもしくはもう既にやられてしまったか。そのどちらかだろうね」

「何よそれ。分かってないのと一緒じゃない」

「もしかしてピンカはかつ達が心配なの?おれもかつの状況が心配——————痛い!何で叩くの!」

「うっさいわよ!ばか!イナミは黙ってなさい!もういいわよ、早くメメの所に連れて行って」

「ピンカは相変わらずツンデレだなあ。まあ、その傷も早く治した方が良いしそろそろ解散しようか」

「じゃあ、俺が送ってやるよ。それじゃあゆっくり休めよ、おまえら」


そう言ってブライドはピンカを連れてテレポートをした。

あいつらなら大丈夫だと思うが源魔石を回収した後でも不安は消えないね。

早くみんな帰って来ると良いけど。



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