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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その三十五 ミュウラvsミズト&ナズミその4

ウォータープラメント


「お姉さまどうして!早く手当てしないと出血で死んじゃいますよ!」

「こうすればいいでしょ‥‥‥っ!」


お姉さまは服の一部を歯で噛むとそれを破り捨てる。


「これで縛って」

「でも‥‥‥」

「早くっ!」


私はお姉さまに言われるがまま破り捨てた服の一部を腕にきつく巻き付ける。

そうする事で一時的だが血を止めることが出来た。


「そんな応急処置では直に死ぬわよ。先程誰かと会話をしていたようだけど、それでやる気をみなぎらせたところでこの状況が覆るわけじゃない」

「それでも私達は戦います。諦める選択肢はありませんから」


そう、もう諦めない。

どんな苦しい状況だろうと私は戦い続ける。

でも、お姉さまは‥‥‥


「そう、さっきまで泣きわめいていたのに随分と強気になった物ね。だけどどうするつもり?頼みの綱のお姉さまは両腕を失ってしまったわよ。魔法使いが両腕を失っても戦いに影響は及ぼさないけれど、彼女のオリジナル魔法の性質上弱体化は否めない。もう戦うことは出来ない」

「それはお前が決める事じゃない」


お姉さまは両腕を失ってもなおその瞳には強い覚悟が込められていた。

まだ戦っている、お姉さまはまだ戦うつもりだ。


「なら見せてもらいますよ。あなた方が私をどう倒すのかをね!」


そう言うと、ミュウラ様は再びオリジナル魔法を展開させる。

あそこに入ればすべての魔法が水の魔法に変換されてしまう。

私達の魔力じゃそれを超えることは出来ません。


「ナズミ、私はもう満足に動くことが出来ない。だからあなたが勝利の鍵よ。どうすればいいか分かるわよね」

「はい、お姉さま‥‥‥私がミュウラ様に勝つための策を考えます」


今までずっとお姉さまの後ろをついて行った。

お姉さまは本当にすごくて私はついて行くのに必死だった。

そんなお姉さまに私は任されてしまった。

お姉さまが私に託してくれた、だからこそもう迷ってなんかいられない。

今度は私がお姉さまを守る番だ。


「お姉さま――――――」

「分かったわ。ナズミの策に従う」

「それじゃあ行きましょう」

「どうやら策は出来たようね」

「お待たせしました。あなたを倒す策がようやく思いつきました」

「ずっと後ろを付いて回っていた金魚の糞のあなたが考えた策が本当に私に通じるかどうか、試させてあげます」


そういうとミュウラ様は魔法陣の中央に立って静観する。

待ち受けるつもりなんだ、自分の魔法に絶対に自信があるから。

でもそれがミュウラ様の弱点でもあります。


「行きます!夢幻の中の人形!」


私は渾身のオリジナル魔法を展開させる。

そうする事で視界がだんだんと霞んでいき周りが見えにくくなる。


「もう何度も見たこのオリジナル魔法でどう逆転するつもりですか?」

「ミュウラ様はまだ私のオリジナル魔法を完全に理解出来てませんよ」

「だってまだ私は本気を出して居ませんから」

「本気を出していない?随分と舐められたものね。今まで手を抜いて戦っていたという事かしら」

「違います。今までのは全て慣れさせるためです」

「ミュウラ様に私のオリジナル魔法を」

「慣れさせる一体どういう意味かしら」

(この四方八方から聞こえる声が感覚をマヒさせる。鬱陶しいわね)


ミュウラ様には私の姿は見えない。

でも私はミュウラ様の姿がバッチリ見える。

その特性を利用してミュウラ様の隙を突く。


「見せてあげます。このオリジナル魔法の真髄を!」

「ははっ一体何を——————っ!」


その時複数の魔法陣が同時に空中に展開させる。

ミュウラ様は一瞬驚いた様子を見せたがすぐに冷静を取り戻していた。


「無駄ですよ。どれだけ魔法陣を放とうが私のオリジナル魔法の領域ではすべて私の魔法になる!」

「それはどうですかね」


一斉に魔法が放たれた時、先程まで余裕そうに静観していたミュウラ様が慌ててその場から飛び退く。

そして放たれたオリジナル魔法が地面に激突し大きな穴をあける。


「っ!どういうこと、どうして私のオリジナル魔法が反応しないの」

「ほら、言った通りじゃないですか」

「私のオリジナル魔法の本気を実感しましたか?」

「残念ですけど、私のオリジナル魔法を展開した時点で勝利は確定しています」

「そんなわけがない。私があなた達に負けるわけがない。こんなのもどうせまやかしでしょう」

「なら、受けてみてはどうですか?私の魔法を」


その言葉を聞いたミュウラ様の表情が曇る。

心を揺さぶり真実が何かを見極めにくくさせます。

そうする事で少しでも時間を伸ばすことが出来る。


「いいわ、受けてあげる。さっさと打ってきなさい」


その言葉通りにミュウラ様は再びその場に立ち止まる。

私はもう一度複数の魔法陣を展開させた。

そして一斉に魔法をミュウラ様に向かって放つ。


(所詮はまやかし、当たる事はないでしょう)


先程よりもミュウラ様は動く気配を見せない。

だけど必ず動き出すはずです。

それが高レベルの魔法使い程、この効果は大きくなりますから。

そしてあと少しで当たるという所でミュウラ様は咄嗟にその場から逃げた。

よし!!


「くっ!どういうこと、今の感じは明らかに魔力が込められていた。魔力が込められた時点で私のオリジナル魔法は発動するはず」

「これが私のオリジナル魔法です」

「私の霞の中に入ってしまえばあらゆる魔法は効力を無くします」

「これが私の本気です」

「無力化?ありえないそんな事が合ってはいけません!ならもう一度より強い魔力を込めて発動させるだけよ!」


ミュウラ様は先程の余裕がなくなり段々と取り乱し始める。

するとミュウラ様は展開していたオリジナル魔法を一度解除してより濃い魔力を込めて再び展開させた。


「これでもうあなたの魔法は私には届かない」

「何度やっても結果は変わりません。あなたはもう負けているんです!」


私は再び魔法陣を複数展開させる。

そしてそれらを一気にミュウラ様に向かって放つ。

だが先程とは違うその魔法は途中ですべて水の魔法に変換させられた。


「うそ!」

「これが現実よ。全てが思い通りに行くなんてありえないの。お返しするわね」


変化された水の魔法がすべてこちらに飛んでくる。

私は咄嗟にその場から避けると再び目の前に魔法陣が展開される。


「ウォーターランス」


その一撃が私の体に貫通するとそのまま霞となって消えて行く。


「偽物ね。別に構わないわ。もうワタシを止めることは出来ないのだから」

「ならこれはどうかしら」


その瞬間、複数のお姉さまがミュウラ様の周りに出現し魔剣を握りしめる。

そしてそれらが一斉ミュウラ様に向けて振り下ろす。

だがミュウラ様はそれを気にせずにその場で突っ立ってただ刃を受け入れる。

そしてその刃は途中で霞となって消えて行った。


「五体満足のミズトが複数人現れて偽物だと分からないほど間抜けじゃないわよ」


そうそれは明らかな囮、まさかこんなにも上手く行くなんて思ってもみなかった。


「魔剣水式、水面水飛沫!」

「え——————っ!な、何で‥‥‥」


私は後ろからミュウラ様に向かって魔剣を振り下ろした。

不意打ちのその一撃はミュウラ様に十分な致命傷を与えた。

そのままミュウラ様はフラフラとよろけながら、膝を付く。

それを見て私は魔法を解除した。


「どうして、何でその一撃が放てたの。私の魔法ですべてが飲み込まれるはず」

「魔法?何のことですか、自分で解除したじゃないですか」

「っ!?何で、魔法陣がないのよ!」


霞が晴れたことで視界が良好となり地面に魔法陣が展開されていないことに気付いた。


「まさかそんなわけがない。貼り直したはず、だからあなたの魔法も水に代わって」

「ああ、あれは私のオリジナル魔法で見ていた幻覚です」

「は?」

「ずっと私は見ていました。何もない魔法を避けて動き回っているミュウラ様を。まるで夢幻の中で踊り狂う人形の様でしたよ」


その言葉を聞いてミュウラ様は唖然とする。


「普段のミュウラ様ならバレていたかもしれません。ですがあの時のミュウラ様は勝利を確信し、油断していました。そして私の魔法が当たると言う事実に困惑し、冷静を失い霞の中で魔法を解きました。そして再び魔法が成功したことによる油断で私は勝利を確信しました」

「すべて幻惑だってという事ね。私は本当に踊らされていたという事、それでも私はこんな所で諦めるわけには行かないのよ!」


激情したミュウラ様は再び立ち上がると魔法陣を展開し始める。

あの傷でまだ立ち上がる何て。


「私は死なない!私があなた達よりも劣っているわけがない。神がそれを許すわけがない」

「もうやめてください。これ以上ミュウラ様傷つけないでください」

「うるさいうるさい、私がミュウラだ!私こそが王なの!」

「それは違う!」


後ろで待機していたお姉さまがゆっくりと立ち上がる。


「ミュウラ様はもうこの世に居ない。もう死んでしまった。だからあなたももう休んで」

「生意気な口を聞くな!私こそが本物なんだよ!」


さらに魔力が高まり魔法陣も大きくなる。

するとミュウラ様はゆっくりと前へと進む。


「お姉さま‥‥‥」

「ありがとう、最後にこの時を作ってくれて。いってくるわね」


お姉さまはそう言って笑みを浮かべるとそのままミュウラ様の元へと向かう。


「これが最後の一撃、受け取ってくれるわよね。ミュウラ様」

「腕無しの魔法使いが私に勝てると思っているの!?」

「私はあなたのおかげで救われた。暗い絶望の淵から私を救い出してくれた。あなたは神を信じていたけど私にとってはミュウラ様が神様だった」

「何をごちゃごちゃと遺言なら聞くつもりはないわよ」

「だからこそ今度は私があなたを助ける。私の全てをミュウラ様に捧げる」

「うるさい!!!」


その瞬間、魔法陣が輝きだした時と同じタイミングでお姉さまが走り出す。

そして空中で体を回転させて魔剣を取り出すとそれを噛んだ。


「歯で魔剣を振るつもり、どこまで往生際の悪いやつね。これでおしまいよ!」


(ミュウラ様、私はあなたが居なくなってからずっとどうでもよかった。生きる意味を失った私はもういつでも死んでも良いと思っていた。だけどまだ私にやるべきことが残ってる事に気付いて、もう一度魔剣を握りしめた。これが私の生涯最後の一撃!)


「死ねええええええ!」


(あなたを救うのはこの私だ。だってミュウラ様は私がこの世で一番愛してる人だから!)


「魔剣全式、風雷氷光水炎毒岩!!」


駄目だ、ミュウラ様の方が一瞬早い。

このままじゃ刀を振り切れません!


「うおおおおおおお!」

「っ!?な、何で‥‥‥」


その時一瞬だけミュウラ様の動きが止まった。

それによりお姉さまの一撃がミュウラ様に届いた。



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