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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その三十三 シンラvsピンカ&イナミその4

花草人鬼は私のゴーレムが食い止めてくれている、だからこそ無防備になっているシンラを狙うならこの時しかない。

種も残り少ないはず、やるなら今しかない。


「なるほど、私を直接襲うつもりですが。ですがあなたのような駄目な娘が直接私をどうにか出来るわけないでしょう」


シンラは迫りくる私達に向かって余裕の笑みを見せる。

上等じゃない、その減らず口を閉ざしてやるわ。


「ストーンバレット」

「ただの小石を飛ばす魔法で私をどうするつもりですか」


シンラは私が放った魔法を避けることなくそのまま受け止める。

やっぱり魔法を使う素振りがない、もしかしてオリジナル魔法を発動してる時は他の魔法が使えない。


「キルトルネード!」

「そよ風程度の魔法じゃ私を切り刻むん何て不可能ですよ」

「やっぱり魔力抵抗があるからダメージが通らない。どうするピンカ」

「イナミ、魔法を撃ち続けて。それを視界を遮るものを多く」

「え?分かった」

「何やら考えがあるようですが、私との力の差をまだ感じられませんか。家族を傷つけるのは私としてもあまり心躍るわけでは無いのですよ」


シンラはそう言うと悲しげに俯く。


「家族じゃないって言ってた癖にどの口が言ってんのよ。良いから黙って喰らいなさい。あんたとこれ以上会話を続けるつもりはないから」


その瞬間、イナミが魔法陣を展開させる。


「グランドファイヤー!」

「ロックスタンプ!ロックタワー!」


炎の魔法が全体を囲い、そこから岩の魔法をシンラへとぶつける。

だがシンラは避ける様子を見せずにそのまま微動だにしない。


「少し暖まった程度ですね。そして軽く小突かれたくらいの岩の衝撃。通常の魔法では私に傷一つ付けられないのはもう分かっていますよね」

「イナミ続けて!」

「分かった!」


私は岩の魔法を中心にシンラに向かって魔法を放ち続ける。

そしてイナミは広範囲で視覚が遮られる魔法を中心に魔法を放ち続ける。

だがシンラの表情が変わる事はなかった。


「ピンカ、魔法の威力が落ちて来てますよ。そろそろ魔力も無くなって来たのではないですか」

「うるさいわね。すぐに逆転してやるから、黙って喰らい続けなさい!」

「残念ですけど、逆転はあり得ません」


その時ゴーレムたちの方から一際大きな衝撃音が聞こえて来る。

すぐにそちらの方を振り向くと私のゴーレムが花草人鬼の巨大なツタにからめとられ、絶え間なく爆発の攻撃を受けていた。

まずい、かなり押されてる。

やっぱりあいつの魔法は普通じゃない、何とかしないとここでゴーレムを失うわけには行かない。


「っ!な、何!?」


移動しようと体を動かした瞬間、急に力が出なくなりその場で膝を付いてしまう。


「ピンカ、その足!」

「え?これって寄生花!」


いつの間に付けられた、全く気付かなかった。

脚に埋め込まれた種が開花して体を侵食していく。


「こっそりと放っておきました。随分魔法を使っていたので成長も早かったですね。威力は抑えているので痛みがなく、気付けないのも無理はありません」

「こんなの引っこ抜けば!」

「駄目だピンカ!」


私が花を掴んだ瞬間イナミがそれを止める。


「賢明な判断です。既に花は開花しました、無理やり引っこ抜けばその足が使い物にならなくなりますよ」

「ピンカ、一旦落ち着いて体勢を立て直そう」

「体勢を立て直す。この状況ってどうやって立て直すって言うの」

「その通りです。状況は再び絶望へ、あなたの自慢のゴーレムもいずれ破壊されるでしょう。対して切り札を使い果たしたあなた達はこれ以上の抵抗手段は無し。完全敗北ですね。だから言ったでしょう、私の家族のままで居れば死なずに済んだのに」


花草人鬼は一体のゴーレムの動きを封じてもう一体のゴーレムの体に種を入れ込み内側から破壊しようとしている。

このままだと二体とも失うわね。

立ち止まってればすべてを失うかもしれない。

だとしたら私は!


「降伏も命乞いもしない。このまま黙って終わる位なら前に進んでやるわよ」


私は足に植えられた花を掴む。


「たとえそれで片足を失ったとしても、私は勝利だけは譲らない!」


その花を思いっきり引っ張った瞬間、血が溢れ激痛が全身を駆け巡る。

だがそのおかげで花を足から切り離すことは出来た。


「っ!はあ、はあ、はあ、これで満足?」

「ピンカ、本当にあなたはバカな娘ですね。意地で片足を失うとは、ここまで頑固だと感心してしまいますよ」

「ゴーレム!自爆しなさい!」

「何!?」


私が指示を出した瞬間、攻撃され続けられたゴーレムが自らの体を爆発させる。

それにより強烈な冷気が一瞬にして空中に散布され一気に花草人鬼の体が凍り付く。


「そいつぶっ壊せ!」


そしてもう一体のゴーレムが炎を纏った拳を凍り付いた花草人鬼に向かって振り下ろす。


「させるわけ——————」

「イナミ!飛ばして!」

「は、はい!」


私はイナミの名前を叫んでアイコンタクトをする。

すると私の糸を察したのかすぐにオリジナル魔法を展開した。


「もう一つの鏡世界!」


それはシンラの足元に現れる。


「こんなもの逃げればっ!」


その時その場を離れようとした瞬間、シンラの足が止まる。

そう、周りには岩が大量に落ちていて障害物となり移動の妨げになっていた。


「まさか、これを狙って!」

「さあ、喰らいなさい」


シンラはなすすべなく鏡の中に落ちて行くと別の鏡から姿を現す。

だがそれはゴーレムの拳の目の前だった。


「私のゴーレム一撃を!」

「——————————っ!?」


そのままシンラは氷漬けになった花草人鬼と共に吹き飛ばされる。

防ぐことは出来なかった、完璧に入った。

流石にもう倒れたはず。


「ピンカ、大丈夫!?本当に無茶するんだから、治らなかったらどうするの」

「うるさいわね。このくらいのことしないと、あいつは倒せないでしょ。それにこっちに注意を向かせる必要はあったし」

「だからって、自分の足を犠牲にする必要はなかったのに。とにかく早くマイトに迎えに来てもらわないと」


そう言ってイナミは通信機でマイトと連絡を取ろうとする。


「あんた元気なんだからテレポートで送ってってよ」

「またそうやって意地張って、マイトの助けなんて要らないとか思ってるでしょ」

「分かってるんだったらさっさと連れて行きなさいよ」


こんな姿あいつに見せられるわけがないし。

その時ふと足元を見るとある違和感を感じ取った。

あれ?どうして‥‥‥


「イナミちょっと待って!」

「待たないよ。ピンカの足はすぐにでも治療が」

「違うわよ!まだ終わってない!」

「え?それって——————っ!」


その時、倒れていたはずのシンラが起き上がりゆっくりとふらつきながらも確実にこちらに迫っていた。


「やっぱりまだ倒れてない。どうりで魔法陣が出現したままなのね」

「よくもやってくれましたね。まさか最後の悪あがきがここまでとは思いませんでしたよ」

「嘘だろ。ピンカのゴーレムの一撃を浴びてまだ立てる何て」

「よく見なさい。ふらついて立っているのもやっとって感じ、もう限界よ。痛みでギリギリ意識を保ってるって状態、あんなのもうやられているような物よ」


まだイナミは魔力を残してる。

押せば倒れる程度だし、今度こそ終わらせる。

だがそんな状況にもかかわらず何故かシンラは不敵な笑みをやめない。


「否定はしません。確かに私は満身創痍でもうすぐ倒れるでしょう。ですがただでやられるわけがないじゃないですか」


その時地面に展開されていた魔法陣が輝きだす。

まさか、また花草人鬼を召喚するつもり!?

だが魔法陣から出てきたのは予想外の物であり知っている物でもあった。

巨大なつぼみ、一際太い根っこあれはたしかキンメキラタウンの城で生やした。


「バクハ花、私も諦めが悪い方なんですよ。このまま家族一緒にあの世に行きましょう」

「やばいよピンカ!あれって俺達が本気の魔法を放ってようやく壊せたものだよ。今の俺達じゃあれは壊せないよ」

「その通りです。このバクハ花は今あるすべての種を使って生み出した一品です。あの時よりも固さも威力も上がっています。逃げた所でこの爆発の範囲はこの島を吹き飛ばす程でしょう」


確かに壊すのは並大抵じゃない。

でもまだ私にはゴーレムが居る。


「ゴーレム、すぐにあの花を破壊して!」


ゴーレムに指示を出し動き出した瞬間、突如足元が爆発した。

それにより足が破壊されてそのまま倒れる。


「何で爆発したの!?」

「どうやら花草人鬼が氷漬けにされる前に足の隙間に種を埋め込んでいたようですね。これで歩行能力は失われました。あの巨体を動かすのは今のあなた達じゃ無理でしょう。諦めてあの世で一緒に過ごしましょう」

「冗談じゃないわよ。あの世はあんた一人で行きなさい」

「でも自力で修復が出来るんじゃなかったっけ、何でやらないの?」

「それは‥‥‥」

「魔力不足ですか?」


こちらの確信を突くかのように薄ら笑みを浮かべる。


「もしくはもう一回しか使うことが出来ないか、炎の魔法の方に魔力を使いたいんですか?出なければバクハ花を破壊出来ませんからね」

「うるさいわよ」


悔しいけどその通り、自己修復に魔力を使ったらもう炎の魔法を放てなくなる。

そしたらバクハ花を壊せないかもしれない。

でも完全に手が無くなったわけじゃない。


「イナミ、あんたの鏡でゴーレムの拳を花の所まで届かせるようにしなさい」

「ええ!?それは無理だよ。あんな巨大なゴーレム、鏡の中で移動させられない――――――」

「無理じゃない!やるの!大丈夫、あんたなら出来る。あんたは私の弟なんだから」

「ピンカ‥‥‥うん、分かったよ姉ちゃん!俺やってみる!」

「姉ちゃんて言うな馬鹿、それじゃあ任せたわよ」


イナミは目を瞑ると集中するように手をかざす。


「まさか本気でやれると思ってるんですか?たった二人で私の最高傑作を破壊できると?」

「最高傑作だからとか関係ないわ。イナミはやる時はやるやつなのよ」


そう、ずっと分かってた。

イナミが天才だって事、私なんかよりも才能があった事を。

だけど自信が出なくて引っ込み思案の性格だから、積極的に前に出ることも無く私が余計にプレッシャーを与えたせいでそれがさらに悪化して私の言う事を聞くだけで自分では行動しなくなってしまった。

私があいつの成長を邪魔した、だからこそ今積極的に意見や感情をも手に出すイナミを見て嬉しく思う。


「鏡を縦一列に並べてテレポートの要領で一度形を変化させて経由させる。そうすれば何とか通ることは出来るはず。後はその間の魔力の操作やどれくらいの大きさを作るのかをぶっつけ本番でやればいいだけ」


こんな事本人には言えないけどでも私はあんたの事を。


「行けるわね、イナミ!」

「何とかやってみる!」

「それじゃあ行くわよ!」


残りかすの魔力だけど何とか気合を入れればマシな魔法は撃てるはず。

私は胸の苦しみを感じながらも魔法を放った。


「リフトタイフーン!」


ゴーレムの拳から出ていた炎を風の魔法でさらに大きくして威力を補強させる。


「無茶振りしてくれるなあ。でもやるよ、鏡の中の転移口(ミラージュテレポート)!」


ゴーレムの拳の近くに複数の鏡が縦一列に展開される。


「まさか本気で壊すつもり、本当に壊せると思ってるの」

「知らないようだから教えてあげるわ。私達は家族を傷つけた奴を絶対に許さない。どんなことをしてでも必ず報いを受けさせる!」


炎を纏ったゴーレムを拳を振り上げて鏡に向かって振るった。

一段階目の鏡が腕に入りその少し居た間に二つ目の鏡に手が入る。

そしてそれ感覚が段々と早まっていき、最終的にバクハ花まで届いた。


「届いたところで壊せはしない!あなた達程度の力で私の最高傑作を破壊できるわけがないでしょう!」

「壊すわよ!壊してやるわよ!!」

「いけええええええええ!」


さらに炎は激しさを増しゴーレムの体の隙間から炎が漏れ始める。

そしてバクハ花のつぼみが開きかけた時、その拳がバクハ花の根元から見事にへし折った。


「なっ!?私の最高傑作が壊された。そんな訳が、そんな事があるわけ!」

「ロックタワー!!」


地面から岩を出現させて私はシンラよりも高い位置からシンラに向かって跳び降りる。


「これで終わりよ」

「やめて、ピンカ。お願い、私よ!お母さんよ、家族を傷つけてもいいの!」


その必死の形相は母と瓜二つでその声はあの時を蘇らせる。

でもそれはもう過去のものとなった、もうママはこの世にはいないんだ。

だから私は精一杯優しい笑みを見せる。


「おやすみ、まま」

「あっ——————」

「ロックスタンプ!」


トドメの一撃をシンラに向かって放った。

シンラは岩に押しつぶされ私はそのまま地面に転がる。

すると真横に源魔石の欠片が落ちていた。

潰された衝撃で落ちたのかな。

その時、イナミが満面の笑みで顔を覗かせて来る。


「ピンカ凄いよ!俺達シンラに勝ったんだよ!」

「ふっ当然でしょ。私達が負けるわけないじゃない」


そう、本当にすごいのはあんたの方よ。

だってイナミは私の自慢の弟だから。


「帰ろうか、お姉ちゃん」

「‥‥‥そうね、帰ろう」


私はイナミの手を取りそのまま背中に乗っけてもらう。


シンラvsピンカ&イナミ  勝者ピンカ&イナミ


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