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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その二十八 逆転

『こちら‥‥‥デビ。ガイスを止められなかったのじゃ』


通信機からデビのか細い声が聞こえて来る。

その声とその言葉を聞いてもうデビはガイスを追う事が不可能なのだとすぐに分かった。

分かったけど、理解はしたく無かった。

何とかデビにはガイスを追ってもらわなければならない。

出なければ城に居るサラ達に危険が及ぶ。

そしてガイスが自由の身になればサラ達だけではなく他の皆も‥‥‥

それだけは絶対にダメだ、何とかデビにはガイスを止めてもらわないと。

改めてデビに通信しようとした時割り込みが入る。


『あーあーこちら博士。聞こえてるかな助手君。どうやら状況は芳しくないようだね』


助手ではないがそのことを指摘している時間は無いので黙っておこう。


『みんなの通信機から聞こえて来る音声を読み解いて行くと、それぞれの場所でかなり絶望的な状況に陥ってるみたいだ。つまり、絶体絶命の状況という事だよ』


デビと同じように上手く事が運んでいないのだろう。

そう簡単に行くとは思ってなかったが、失敗するとは思っていなかった。


『ここで一つ博士から提案があるんだけど、皆を回収すると言う事はどうかな?今回の作戦ははっきり言って失敗だ。敵が予想以上に強く、準備期間もそれほどなかったからね。万全じゃない状態で戦えば自ずとこうなる事は予想できた』

「ちょっと待って欲しいですね。皆はまだ戦う意思を示して」

『あーもし今文句を言ってるとしたらそれは時間の無駄だよ。博士からの通信は一方的な物だからね』


なるほど、だから俺の言葉に反応を示さないんだね。


『こちらで救助優先順位を決めておいたよ。すぐにでも手当てが必要な者ばかりだからね。ああ、お礼はいいよ。博士はそう言うのを求めない性質だからね』


救助、確かにそれは俺の仕事だ。

危険に陥って人を直ぐに助けて前線から退けさせる。

力尽きて倒れた相手を安全に街へと帰すのが俺の役目。

だけど本当にそれでいいのだろうか。


『助手君の意見は無視して進ませてもらうよ。なんせ本当に時間がないからね。それじゃあまずはミズト&ナズミチームから』

「メメ博士、他の機械から通信機の音声を拾ってるんですよね。なら俺の声も拾ってるはずですよね」


すると博士の声が止まる。

どうやら俺の予想は当たっているみたいだね。


「まだ時間をくれませんか」

『助手君は仲間を見捨てたいと言うのかい?』

「そうじゃないですよ。ただ俺は信じたいんです。こんな所で終わらせたくないんですよ。この戦いはあいつらの戦いでもありこの島の人々の未来をかけた戦いでもありますから」

『‥‥‥助手君は主に最前線で戦っている人達のサポートと帰還が主な役目、博士はそんな助手君に適切なアドバイスをするオペレーターの役目、このチームの実行犯は君だよ。現場に任せようじゃないか』

「メメ博士、ありがとうございます」


それぞれ同じタイミングで戦いを始めて同じタイミングで絶体絶命の窮地に陥っている。

それは互いの実力がほぼ拮抗しており、この時間帯を乗り越えられるかどうかで決まって来る。

どうせみんなの事だ、俺が行った所でで突っぱねて戦うことをやめるわけないよね。

なら、俺が出来る事は諦めちゃ駄目なんだと最後まで戦う意味をもう一度知らせる事。

俺は覚悟を決めて通信機をオンにする。


「皆聞こえるか。こちらマイトだ、今救難信号が各地から来ている。それぞれかなり絶望的な状況だってことは理解で来た。すぐにでも救助に行くべき状況なんだろうけど、ここではっきりと言っておく。俺は行かないよ」


そう、行くわけにはいかない。

皆がこんな所で諦めるわけがないから。

どうしようもなく諦めの悪い人達だからこそ、救助するタイミングは終わり時しかない。


「もちろん仕事を放棄するつもりはない。だけどここで助けに行った所で皆はどうせ俺に文句を言って死にに行こうとするから、だったら最後まで戦い抜け。死ぬかもしれない、もう駄目かもしれないと思っても手が足が動くのなら戦え。全てが終わったら必ず俺が助けに行くからさ、だから最後まで戦い抜いて欲しい」


俺は前線にはいない、皆と違って俺には戦うべき強い動機も力もない。

サポートが俺の限界、だからこそ俺には俺の出来る事を知る。

意地っ張りで頑固な人たちだからこそ、俺はこの言葉をかける。


「負けるな、必ず勝て。諦める何て絶対に許さない。元十二魔導士として、そしてこの島の運命を背負う者として誇りをかけて最後まで戦い抜け!」


俺は思っていたことを全て言った。

この事は今の俺が言うべきではないかもしれない、だからこそこの言葉が最大の効力を発揮する。

通信を切ろうとした時、その結果はすぐに表れた。


『ちょっとマイト!なあに偉そうにくっちゃべってんのよ!戦ってないあんたがそんなこと言うんじゃないわよ、ぶん殴るわよ!』


相変わらずピンカはこの手の事にすぐに食いつくな。


『言われなくても諦めるわけないでしょ。あんたの言葉何てこれっぽっちも意味ないから!』


そう言って一方的に通信が切れる。

ピンカがいつも通りでよかったよ。

するとまた別の音声が聞こえて来る。


『随分と生意気な口を叩くようになったな、マイト』


これはサザミか、どうやらかなり怒らせてしまったようだ。


『がっはっは!ありがとな、マイト。おかげで気合が入り直ったぜ。必ず勝って来るから任せておけ』


そう言って大声と共に通信が聞こえなくなる。

次は焦ったような声色が聞こえて来た。


『マイトさん、ありがとうございます。それとお姉さまを直ぐに――――――』


何かを言いかけたタイミングで通信が切れてしまった。

今の声はナズミ?通信が切れたけど何か合ったのか。


『マイト聞こえるかい。あたい達は無事だ、今の言葉痺れたよ。ガイスが来ても任務は必ず成功させる。だから信じてくれ』


そして続けてブライドから通信が入る。


『こちらブライド、中々の演説だったな。ハッパかけられたとなっちゃあ、こっちもやる気が出るってもんだ。安心しろ、お前等が帰るべき場所は守ってやるから安心してマイトは奴らを連れて帰って来い』


ブライドの頼もしい通信が聞こえて来る。

あの人なら心配は要らないだろう。

すると今度はメメ博士から通信が入って来る。


『中々やるじゃないか。音声を聞く限り皆奮起したみたいだよ。助手君の言葉が響いたみたいだね。ここからが彼らのターンかもね』

「はい、でも一人気になる人物が‥‥‥ん?」


また通信が入って来た。

すると通信機からその気になる人物の声が聞こえて来た。


『こちらデビじゃ。今ガイスを追っておる!』

「本当か!」

『情けないことを言ってしまったのじゃ、忘れてくれ。妾は地獄の王であると共にこの島の住人でもある。妾には覚悟が足らなかったのじゃ。だから今度は本気の本気じゃ。妾の命をかける』

「命を‥‥‥」

『ガイスの事は妾に任せておけ。それじゃあ切るぞ』


そう言って一方的に通信が切られる。

言葉の節々から覚悟が感じ取られた、何をするかは分からないが本気でガイスを止めるらしい。

デビの強さなら負けることはないだろうがだからこそ命をかける意味がどういうことなのだろうか。

とにかくここからが正念場だ。


「皆、必ず勝ってくれ」



――――――――――――――――――――――

キンメキラタウン


「ふう、次の世代の奴らがここまで行って来たんだから俺がこんな所で諦めるわけには行かないよな」


奴隷たちがこの街に侵入してから一時間が経過した。

街の全方位をクリシナと共に守っては居るが、さすがに守り切れない部分が出て来た。

無理だと頭に過ぎった時にこの通信が聞こえて来た。

ここまで言われてそう簡単に街を渡すわけには行かない。


「さてと、奴隷共。ここから先は一歩も町に入らせないぞ!」


壁に開かれた穴から入ってこようとする奴隷たちに拘束の魔法を放つ。

ガイスから魔力を授かっているからこそ、魔力切れが起きない。

戦いは薬で奴隷化を解除しない限り続くことになるだろうな。

一人だと、魔法を撃つタイミングと注射を打つタイミングを取るのが難しいな。

せっかく拘束しても他の個所から城に侵入しようとする奴に気を取られていつの間にか拘束から解かれることが多い。

やはり人手があともう少し必要だ。

薬の補充も必要だし、街の人々に手伝ってほしい所だが奴らの狙いは街の人々だろうしもう既に避難している人達をわざわざこんな危険な場所に向かわせるわけには行かない。


「プリズンフリーズ!」


数十人を一気に凍らせた時、風の魔法で上から侵入してくるものが現れた。


「しまった!」


中に入られる!


「ロックタワー!」


突如岩の柱が建てられ侵入しようとしてくる奴隷の進路を塞いだ。

それに続いて次々と魔法が放照れて奴隷たちを遠くに吹っ飛ばしていく。

今の魔法は何処から。

後ろを振り返った時、続々と街の半獣がこちらに来ていた。


「お待たせ~」

「お前はメメの助手の。これはどういうことだ?何で街の奴らがここに来てる、避難させたはずだが」

「クっちゃんがね~こうなる事を予測して~事前に魔法協会で~呼びかけてたんだ~」


そう言うと一枚の紙をこちらに見せて来る。

そこには街の危機に瀕した時共に戦うメンバーを募集、役割はその都度指示を出しますと書かれていた。


「あいついつの間にこんな物を」

「クっちゃんは~一人でやるべきじゃないって~そう思ってたんじゃないかな~はい、薬の補充~」

「あんたらには色々と世話になった。この島のために戦ってくれてるんだろ。だったら俺達だってこの島の住人として守られてばかりじゃ嫌なんだよ」

「私達だって魔法使いよ。戦うことくらいは出来るわ」

「お前等‥‥‥ははっそうかよ。そうだな、自分の島くらい自分の手で守って見せろ。やるべきことは分かってるだろうな!」

「「「「はい!!!!」」」」


キンメキラタウンに避難していた半獣が覚悟を決めて前線に立って行く。

各地でこの人数が居れば必ず町を守ることは出来る。


「行くぞ、ここから逆転だ!」



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