その二十七 ぺプロの研究所探索その3
「意思が無いって、まさか操られてる?」
自らガイスを崇拝して、奴隷の印を刻まれても自分の意思はしっかりと持っていた人達とは違く多く居る奴隷たちのように完全に自我を奪われてる。
「やっぱりあの後あの二人カノエにやられたんだよ。僕達も一歩間違ってたらあんな風になってたかもしれないんだ」
「そんな、早く元に戻してあげないと」
「戻すってあいつらは敵でしょ。むしろ倒した方が良いんじゃない」
「駄目だよ、ぺプッち。あの二人は敵じゃないもん、だって最後に見た二人からは敵意が無かったもん」
メイは純粋な瞳で彼らを敵じゃないと言い張る。
この子は本当にお人よしというか楽観的というか。
「メイ、あのね――――――」
「おい、話してる場合じゃないぞ、来る」
クラガの言葉をキッカケに突如二つの魔法陣が目の前に展開される。
「「バーニングコールドスクリーン!!」」
「何それ!!」
「びっくり箱!」
メイがオリジナル魔法を展開すると風の壁が私達を敵の魔法から防いでくれる。
相手の魔法は私達の間を通り抜ける。
それにより炎と氷の道が出来た。
「最初から飛ばしてきたわね。本気で私達を殺すつもりよ。メイ、これでも戦わないっていうつもり?」
「二人の意思じゃないから敵じゃないよ。元に戻ればきっと大丈夫だよ」
「メイ、落ち着けよ!あんなの当たったら即死だよ!そんな攻撃を繰り出してくる奴が仲間なわけないじゃん」
「駄目だよ」
メイはカビットの言葉を聞いてもなおその意見を変えようとはしない。
変な所で頑固なんだから。
「あの二人は助けを求めてる。困ってる人が居たら助けるのが普通だよ。ガビッちそうしないの?」
「それは‥‥‥」
「諦めな、カビット。メイがこう言ったら意見を変えるわけないんだから。まったくわがままなリーダー」
私は呆れて思わず笑みがこぼれる。
「そんなこと言いながら一緒にやってくれるぺプッちが私は大好きだよ」
「はいはい、そう言うの良いから。じゃっちゃっちゃっと終わらせちゃおう。この奥にまだ捕まってる人が居るかもしれないしね」
「どうやらお前らは相当なお人よしのようだな。この状況でも助けると言う選択肢を選ぶのか」
「当然だよ!クラッちもちゃんと手伝ってよね」
そう言うとメイは強めにクラガの背中を叩く。
「くっ貴様‥‥‥」
「喋ってないで来るよ!」
先程まで沈黙していたザックとニュートが再び動き出す。
「防がれた。ならもっと強い魔法を使って」
「お前たちを殺すっす。化身の想像!」
すると突如魔法陣から水で出来た謎の生物が現れた。
あれは明らかにオリジナル魔法、しかもかなり強力な。
すると出て来た生物の背中にザックが乗り込む。
実体自体はあるっぽい?
「続けていくぞ。究極魔法装備!」
ニュートは自身の足元に魔法陣を展開させるとその姿が変わって行く。
炎で出来た鎧のような物を身に纏っている。
あれもかなり強い。
「どうやら油断ならない相手みたいだな。お前達だけでやれるか?」
「ちょっと、何で協力しない前提で話してるの。サボってないで。ちゃんと働いて」
「そうだよ、クラッち。いくら相手が強くて苦戦してもちゃんとやらないと駄目だよ」
「苦戦だと?どうやら勘違いをしているな、俺がやればすぐに終わるからどうすると聞いているんだ。俺はそもそもこいつらを助けるつもりはない」
「ちょっと借りは返すんじゃなかったの?」
「やり方は俺が決める。指図されるいわれはない」
やっぱりこいつはなから協力するつもりなんて無かったんだ。
信用できない奴、奴隷の印を付けておくべきだった。
「何をごちゃごちゃ言ってる。お前らはここで死ぬんだよ!」
「行け、クリープちゃん!全員殺せ!」
二人が一斉にこちらに向かってくる。
口論してる暇なんて無い、とにかく今はこの二人を何とかする方法を探さないと。
「ブーストバーニングファイヤ!」
「なっ!?」
火力が上がってる!
予想外の威力に私はその場から離れることしか出来なかった。
「あっつあっつ!」
「わーガビッち丸焦げだ」
「馬鹿!何やってるの!遊んでる場合じゃないから!」
私は地面を転げまわっているカビットに水の魔法を当てる。
するとカビットはそのまま地面に倒れて動かなくなる。
今度は謎の生物が大きく口を開いた。
「メイ!来るよ!」
すると水の生物の口から大量の水が放出される。
あれはまるでウォーターガン、でもそれよりもはるかに大きくて強い!
「これはやばばだね!助けて牛乳神様!びっくり箱!」
メイの展開した魔法陣から巨大な岩が現れる。
それにより何とか攻撃を防ぎぎる事に成功した。
「うわー後もうちょっとで貫通する所だったよ。すごく強いね」
「メイのびっくり箱でもギリギリならかなり強力ね。あの生物何とかしないと」
「クリープちゃんは無敵っしょ!お前らが死ぬまで打ち続けてやるっす!」
ザックの言う通りクリープという生物は再び先程の水鉄砲を打ち構えに入る。
「そんな簡単に何度も打たせるわけが——————」
「後ろががら空きだぞ!ブーストファイヤーバインツ!」
「しまっ!」
巨大な炎の牙が背後に迫って来る。
油断していた、この攻撃は避けられない。
喰らう覚悟を決めた時、横から何かが通り過ぎていく。
「ジェットブレス」
強力な風が迫って来る炎の牙の軌道を逸らす。
そしてそこに居るのは先程まで丸焦げになっていた男だった。
「カビット、ありが――――――」
「ノープロブレム。レディを助けるのは当然の事さ」
あっガビットに代わってる。
さっきの衝撃で切り替わったのか。
「あっ頼もしい方のガビッチだ!」
「よお、メイ!相変わらずビューティフルだな。さてとあいつが今回のエネミーか?」
「ガビット、あの二人は極力傷つけないで。この薬を打って無力化が目的」
「なるほど、オーケー。俺に任せておけ」
普段の泣き虫な男とはえらい違いね。
本当に別人みたい。
「雰囲気が変わったな。だが今の俺に勝つのは不可能だ」
「ルーザーになるつもりはないぞ。俺は常にウィナーだからな」
そう言うとガビットは魔法を撃つ構えをする。
「アイスクラッシュ!」
「ブーストファイヤーストーム!」
二つの魔法がぶつかり合い、一気に消滅する。
「なっ!互角!?」
「今までのエクスペリエンスが俺をさらに強くさせる!もう負けはしない!アグレッシブフルフルート!」
更にガビットは追撃を加える為に風の刃をニュートに直撃させる。
「ぐふっ!?」
「ニュート!よくもやりやがったな!クリープちゃん!あいつを撃ち殺せ!」
ザックは水鉄砲の矛先をガビットへと切り替える。
まずい、ガビットの方にさっきの一撃が来る。
「びっくり箱!」
するとクリープの足元が崩壊しそのままザックと共に穴に落ちる。
「な、何でいきなり穴が開いたっす!?」
「アイスクラッシュ!」
すると真上から巨大な氷の塊をメイは落とす。
「う、うわあああ!」
背中に乗っていたザックは慌てた様子でクリープから逃げるとそのままクリープが氷に押しつぶされる。
そしてクリープはそのまま水になって消えてしまった。
何かたおせたっぽい。
「くそ、やられたっす」
「はっはっは!どうだ見たか!」
「ほう、中々やるようだな」
「ちっ厄介だな。おい、ザック!あれやるぞ!」
「わかった!」
あれ?一体何をしようとしてるの。
「そう簡単にやらせるわけないでしょ!シャイニングビーム!」
「ブーストファイヤーウォール!」
分厚い炎の壁が私の魔法を防ぐ。
あれじゃあ、突破出来ない。
「俺のオリジナル魔法は得意魔法を更に強化することが出来る。そしてザックのオリジナル魔法は得意魔法を具現化させることが出来る。これの意味が分かるか?」
「まさか!」
「俺達の合体奥義を見せてやるぜ!」
「化身の想像!」
すると今度は氷で出来たガタイの良い生物が生成される。
「究極魔法装備!」
そしてニュートのオリジナル魔法がその氷の生物に展開される。
それにより次々と氷の生物の体に鎧のような物が装着される。
「これこそ究極のオリジナル魔法」
「無敵の最強生物の誕生っす!」
「「究極化身!!」」
名前はダサいけど、この魔力量はかなりやばい!
「ゴララ!こいつらを捻りつぶすっす!」
その拳を握りしめると私達に向かって一気に振り下ろしてくる。
「びっくり箱!」
メイの魔法により分厚い炎の壁が展開されたがそれはいとも簡単に突破される。
「きゃあああ!!」
「うおっ!!」
「あああああ!」
そして強力な一撃が私達に振り下ろされる。
その余波だけでも研究所の地面や壁に亀裂が走る。
「つ、強い‥‥‥」
メイのオリジナル魔法でも対処できない何て。
「さてと、終わらせるか」




