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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その十九 ぺプロの研究所探索

「メイー!メイー!」


私は研究所の中をメイの名前を叫びながら徘徊する。

リドルさんと別れてから突如警報が鳴り響いた。

もしかして誰かが見つかったのかもしれない。

だとしたら捕まっている人々を研究所から連れ出している可能性もある。

そうなればまた見つけるのは難しい。


「早く見つけないと、メイならうるさいからすぐに見つかると思ったのに」

「居たぞ!こっちだ!」

「うわっ見つかった。意外と居るな、奴隷たち」


正直相手するのもめんどくさい。

私はすぐさま追いかけて来る奴隷たちから距離を取る。


「待て!」

「待つわけないじゃん。アイスブレイク!」


私は追いかけて来る奴隷たちの足元を凍らせる。

これでしばらくは動けないでしょ。

薬打って無力化させたいけど、今はメイを探すのが先。

すぐにその場を離れると私は再びメイを探すために奔走する。

だけどメイ何処か捕まっている人すら見つけられない。


「何で、おかしくない?こんなに探してるのに誰も見つけられないなんて」


捕まっている人が一人でもいればその人から情報が聞きだせるかもしれないのに。

この島の人間が全員ここに居るとしたらそれなりの人数にはなるはずでしょ。

なのに一人も見つけられないなんてある?


「いや、ありえない。だとしたら答えは一つ、別の道がある」


裏ルートとかそんな感じでしょ。

あんな大人数、一気に移動させるのも大変だしそんなことすれば見つかる可能性は高い。

問題はどこにその裏道があるかどうか。


「てっそれが一番の問題でしょうが‥‥‥ん?」


何か臭う、この独特な臭いはまるでぞうきんを絞ったようなこの臭い。


「もしかして!」


私はすぐさまその臭いがする場所へと向かう。

するとそこには檻が複数個あり、どれも中には誰も居なく開けっぱなしだった。

でも複数の足跡があるってことはついさっきここを出て行ったって事、まだ沿う遠くには行ってないはず。


「ん?これって牛乳瓶?」


私は近くに落ちていた牛乳瓶を拾う。

間違いない、これはメイの牛乳。

メイはここに居る、そして生きてる!

でも一体どこに‥‥‥


「あれ?」


私は牛乳瓶が落ちていた個所に気になる物を見つける。

そこには水が落ちたような水滴が地面に残っていた。

だけどそのうちの一つが一部分だけ消えていた。

かき消えたって言うよりも抜き取られたような感じ。


「待って、もしかして!」


私は地面に顔を近づける。

するとほんの少しだけだが、風が頬を撫でた。

地面の下から風が吹いてる、地下があるんだ。


「見つけた!ここだ」


繋ぎ目とか取っ掛かりとか何もないけど、間違いなく下に別の道がある。

開き方なんて探してる暇ない、ぶっ壊す!


「ファイヤーボム!ストーンクラッシュ!アグレッシブフルート!」


複数の魔法をぶつけてようやく人一人分は居れるくらいの大きさの穴が出来た。


「やけに頑丈ね。でもやっぱり道は合った。この奥にメイが居るはず」


私はすぐに穴の中に入るとそのまま道なりに走って行く。

中は薄暗いが明かりが灯っている。

間違いなくここは抜け道として利用されてるはず。

少し進んだ先に話が声と人影が見えた。

それを見た時、私はスピードを速めた。


「ねえねえ、私達これからどうなっちゃうの」

「お前らは半獣だからな。奴隷としてガイス様の手となり足となり死ぬまで働け」

「それはやだなーだって私自由が好きだもん」

「ふん、今更後悔したところで遅い。お前らは負けたんだ」

「負けてないよ?」

「は?いまさら何を言って」

「私達の勝ち~」

「ロックガン!」

「うがっ!?」


私はメイたちを引き連れている半獣を狙って魔法をぶつける。

完全に気を抜いていたのか見事にクリーンヒットしそのまま動かなくなる。


「ぺプッちー!待てたよ!」

「たくっ手間かけさせないでよ」

「マジで助けに来てくれてありがとう!本当に怖かったんだから」


カビットは涙目になりながらこちらにすり寄ってくる。


「よく分からんけど無事そうでよかった。ていうかここに居るのは全員半獣なの?」


てっきり人間の人もいると思っていたけど連れていかれていた人たちは全員半獣ね。

かなり憔悴しきってるけど。


「ほらねみんな!私の言う通りだったでしょ!」

「ああ、確かに彼女の言う通り助けは来たが、俺達は結局助からない」

「そうだ、結局は奴隷の印がある限りガイスには逆らえない」


何か、人生あきらめーって感じの人達ばっかね。


「そうだ、聞いてよぺプッち。変な印付けられちゃったの。すっごくダサいからすぐにでも取りたいんだ。牛乳に付けても取れないしどうすればいい?」

「そもそも牛乳に付けて取る物なんて無いんだよ」

「うそっまじ!?メイもカビットも奴隷の印付けられたの」

「ああ、逆らわない様にって。ガイスには忠誠を誓ってないけど、特別製の印らしくて遠隔で爆発が出来るらしい。だから逆らえないんだよ」


遠隔の爆破、だからこの人達全員死んだよう顔してんだ。


「オーケーそう言う事なら私に任せて。私、奴隷の印を消す薬持ってるからすぐに打つね」

「え!?ぺプロそんな物持ってたの!」

「すっごい!ぺプっちが作ったの?」

「ばか、そんなこと出来るわけないでしょ。そういう薬を作れる人に作ってもらったの。良いから印の場所見せて」


メイは大人しく首元の印を見せる。

私は薬をその首元に向かって打つ。

すると徐々にメイの奴隷の印が消えて行き最終的に完全に消えた。


「おお!本物だ」

「俺にもくれ!」

「私にも打って!」

「分かったからちょっと落ち着いて。数は十分にあるから」

「おい、ぺプロ!先ずは仲間である俺からだろ」

「ぺプッちありがと!すっかり元通りだよ」


そう言ってメイは嬉しそうに踊り始める。

本当に自由な奴。


「分かったからあんたも落ち着け。すぐに打ってあげるから‥‥‥何?」


カビットに薬を打とうとした時見知らぬ男が割り込んでくる。


「俺を先に打たせろ」

「は?順番守れない奴に打つ気はないわ」

「待つ気はない。すぐに打て、俺には時間がない」


妙な高圧的な視線、そしてこの堂々とした佇まい、ただ者ではなさそう。


「だから待てない奴に打つ気は無いって」

「そうだよクラッち。順番はちゃんと待たないと駄目だよ」


そう言ってメイは馴れ馴れしくその男の肩を叩く。

それを見て何故かカビットが身を震わせてる。


「おい、メイ。あんまり変なことをするなよ、怒らせたらどうなるか」

「何?この人誰なの?」

「誰ってもちろん黒の魔法使いのクラッちだよ!」

「黒の魔法使い!?」


予想外の名前に思わず大声を出してしまう。


「何でそんな大犯罪者がここに居るの。まさかガイスと戦ったて負けたの」

「奴とは戦ってない。奴とは戦うつもりも無いしな。ここには研究所を破壊する為に来た。奴のやっている事が気に食わなくてな。少しでも奴の計画を狂わせてやろうと試みたわけだ」

「それで返り討ちに合って捕まっちゃったって事、なるほどね」

「もう、クラッチは大胆なんだから」


そう言ってメイはクラガの肩をバンバン叩く。

それを見てカビットが悲鳴を上げながらうずくまる。


「とにかく、俺はすぐに他の仲間と合流して研究所を破壊しなければならない。すぐに打て」

「なおさら打つわけないじゃん。犯罪者にやる薬はない」

「なんだと?」

「ほら皆来て!順番に打ってあげる」

「おい!」


私はクラガの言葉を無視して他の人達の体に順番に打って行く。

そして残りはクラガ一人だけになった。


「さてと残りはあなた一人だけ」

「俺と貴様の利害は一致しているはずだ。研究所を破壊されて得をするのはお前だろ」

「そうね。私達は捕まった人々を助けるつもり、研究所を壊してくれるなら大歓迎。でも信じられるわけがない」


そう、ただでさえ色々とやらかしている犯罪者に研究所を破壊してくれるから解放なんて出来ない。

むしろこれは利用するしかない。


「取引をしましょう。私達に危害を加えることなく私達に協力してくれたら、薬を上げる」

「俺を利用するつもりか?今ここで殺して奪うことも出来るぞ」


その言葉と共に明らかな殺気を放って来る。

やっぱりやばい奴、自由にさせる何て怖くて出来ない。


「どちらにしろ。今のあんたは自由に動けない。いまの状態で私を殺しても薬をその前に破壊する。それに今の状態で研究所を破壊すればクラガにバレて一発でお陀仏よ」

「‥‥‥何をやらせたいんだ」


かかった。


「他に捕まってる人達の保護とあなたの仲間にこの事を伝えて。少しでも怪しい動きがあればすぐに壊すから」

「それとそれと、ミノッちも助けてよ!」


メイはすがるようにクラガに頼み込む。


「ミノッち‥‥‥?もしやミノルのことを言っているのか。それならば協力は出来ない」

「何で!ミノッち捕まっちゃってるんだよ。早く助けないと大変なことになっちゃうかも」

「俺が行かなくてもあいつが居の一番に助けに行くだろう」

「かつっちの事?それならそうかもしれないけど」

「かつは別の用事でここには来れない。リドルさん助けに来てくれてるけど、今足止めを喰らってるから、助けられるかどうか」


奴隷自体は大したことないだろうけど、こんな研究所に奴隷だけって言うのもないでしょ。

腕利きが二人か三人居てもおかしくない。


「どちらにしろ俺はもう奴とは会う事は出来ない。そう言う約束だ、奴も俺には助けに来てほしくないだろう」

「ミノッちが会いたくないなら駄目かー、じゃあじゃあ他の人を助けるのを協力してくれる」

「ちっその代わり必ず薬を寄こせよ」

「やったー!クラッちが仲間になった」


とにかく制御は出来そう。

薬がある分にはさすがに襲ってこないでしょ。


「はい、薬打ってあげる」


そう言ってメイはクラガの首元に薬を打つ。


「‥‥‥は?」

「なっ!?」

「えええええええ!?何やってんだよメイ!」

「何って薬を打ったんだよ。これで自由に動けるようになったでしょ」

「それがだめなの!何でそんなことしちゃうわけ」

「そうだよ、メイ。終わった、俺たち全員殺されるんだ」

「ガビッちは面白いな。殺されるわけないじゃん、仲間なんだから」

「だから仲間じゃないんだよ!」


するとクラガの首元にあった印が完全に消えた。

終わった、こいつ私達を全員殺すつもりだ。


「まさかここまで馬鹿だとは思わなかった」

「馬鹿って誰が?」

「メイの事だよ!」

「えーひどいなあ。私はバカじゃないよ。そうだよね、ぺプッち」

「ざんねんだけど、この瞬間だけは否定できないから」

「皆ひどいよ!」


メイ、そんな能天気なこと言ってる場合じゃないから。

最悪の犯罪者が今、自由の身になってるの。


「さてと、この後の展開はもう目に見えているだろう」

「くっ!メイ!あんただけでも逃げて!」


クラガはゆっくりとこちらに歩み寄って来る。

せめてメイだけは逃がす。

そう覚悟して構えた時、クラガは平然と私達の横を通り過ぎた。


「え?」

「何してる。早くしろ、他の奴らに逃げられるぞ」

「何か、協力的になってる」

「何が狙いなの?」

「別に、俺はただ借りっぱなしは気にくわないだけだ。研究所を破壊するまでだ」


そう言って先に行ってしまった。


「ねっ面白い人でしょ」

「私はあんた程面白いやつ見た事ないわ」

「メイ、お前と居ると心臓がいくつあっても足りないよ」


とにかく、思わぬ協力者を経て残った人達を逃がして研究所に戻って行く。



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