その十六 リドルの研究所探索
あやつの言葉と今の爆発を考えるとまさか潜入組のサラ達がやられたのか!
「お主何をやったのじゃ!」
妾は二つほど魔法陣をぶつけてあやつの魔法を弾き飛ばす。
するとガイスは余裕の笑みを見せて来る。
「何かして来たのはむしろそっちだろ。俺はただ保険としてある場所に仕掛けをしていただけだ」
「ある場所に仕掛けじゃと?」
「あの城にはいくつかの秘密の通路がある。そこにある物を狙う奴が来るかもしれないからな。扉を開けば爆発する魔法を仕掛けておいた」
「何じゃと!」
という事はあやつらはその仕掛けにやられたのか。
どういう事じゃ城にはミレイが協力者として案内をしてくれるんじゃなかったのか。
「やはり源魔石を取りに来ていたようだな」
「くそ、作戦は失敗したのか――――――ちょっと待て!何処に行くのじゃ!」
ガイスは先程までこちらに魔法をぶつけていたのに、突如やめてシアラルスの方へと体を向ける。
「俺の城に決まっているだろう。侵入者が居るって言うのが分かったのに、このままお前と無駄な遊びに付き合うわけがない」
「無駄な遊びじゃと!?妾は本気じゃと?」
「本気の奴が俺の魔法の威力に合わせて調節するわけがないだろ」
くっ流石にバレているのじゃ。
「何を言っているのじゃ。妾は本気じゃないと?」
「気付いているだろ。俺の魔法の威力が落ちている事を。戦いが激化していることで魔力消費が激しくなりこちらに割く魔力が無くなってきていることを」
「そうなのか?全然気づかなかったのじゃ」
嘘じゃ、そんな事分からないわけが無かろう。
「ふん、とぼけても無駄だ。とにかくネズミが逃げる前に始末を付けなければならない。付き合っている暇はない」
「ちょっ!待つのじゃ!」
だが妾の制止に聞く耳を持たずに立ち去ろうとする。
こやつ妾を無視していく気か!
そんなのは絶対ダメなのじゃ、潜入がバレた以上あやつをその場に止まらせるのは妾の役目。
今頃本当にまずかったら通信で応援を要請するはずじゃ、それかマイトが通信で応答するか判断するはずじゃ。
とにかく妾は来奴を足止めしなければ行けないのじゃ。
「油断したのう!デビルオンインパクト!」
奴の背後に向かって妾は魔法を放つ。
だがそやつは冷静にその場から動くことなくただ魔法が通り過ぎるのを待った。
「これが答えだ。ただの遊びに付き合うつもりはない。戦えぬお前に興味などない」
そしてそのまま風の魔法でシアラルスへと向かって行く。
「待つのじゃ‥‥‥待て!!」
だが待つことはなくその後ろ姿は見えなくなってくる。
やばいやばいやばい、逃げてしまうのじゃ!
妾のせいで、作戦が失敗しちゃうのじゃ!
そんな事は絶対にダメなのじゃ!
『こちらマイト!デビ、シアラルスの方にガイスが向かってる。止めてくれ!』
止めないと、止めないといけないのじゃ。
じゃが妾はどうすればいいのじゃ。
妾に何が出来るのじゃ?
『こちら‥‥‥デビ。ガイスを止められなかったのじゃ』
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研究所
「ここの研究所はかなり綺麗ですね」
僕はぺプロさんと共に研究所を探索していた。
いつもの研究所はボロボロで壊れた個所がいくつもあったんですが、ここは妙に整備されています。
「人間をここで捕まえて半獣にさせている実験を行っているんでしょう。その為に色々と弄ったんじゃないですか」
「なるほど元々はボロボロの所だったんですが、整備したんですか」
「それよりも早く人が捕まっている場所に行きましょう。メイもそこに居るかもしれないですね」
「そうですね。メイさんは元々半獣ですし、実験には関わっていないでしょう」
その代わり拷問をかけられている可能性はありますが。
それとアイラがまだ無事だと言うのですが。
「っ!止まってください、誰かが居ます」
僕達はすぐに迎撃する構えを取る。
そしてその奥から出てきたのは印を刻まれた半獣だった。
「奴隷ですか」
「侵入者か。直ちに排除する。アイスクラッシュ!」
「アグレッシブフルート!」
氷を砕いたと同時に敵の懐へと潜り込む。
そして出発する時にもらった薬が入った注射器を取り出してそれを相手の首元に当てる。
「うっ!‥‥‥」
するとそのまま体をびくっと震わせてぐったりとうなだれたまま動かなくなった。
印があった首元を見て見るとそれはすっかりと消えていた。
「ふう、どうやら薬の効果はあるそうですね」
「道中の奴隷たちは全員薬で無力化させればよさそうですね」
「そうですね。とにかくまずは捕らえられた人たちの救出です」
「おいおい、何だよ。侵入者すら対処できないのかよ」
突如聞こえてきた声の方を向くと明らかに風貌が違う男が現れた。
奴隷の印が付いているという事は奴らの仲間。
「やっぱ奴隷は使えねえな。ガイス様の魔力を分けてもらった方が良かったんじゃねえか」
「退いてください。僕達は人を探してるんです」
「イヒヒヒヒ、まさかそれではいそうですかって行かせると思ってるのか?どうせあの魔法使いの仲間だろ?来ると思ってたぜ」
「退いて、邪魔するようなら容赦しないから」
「威勢いいねえ。そう言う女を滅茶苦茶にするのが俺のお楽しみなんだよ」
そう言ってその男は下卑た笑みを浮かべる。
どうやらそれなりの実力者の様ですね、先程の有象無象の奴隷とは違う。
恐らくどこかしらの街ではトップランクの魔法使い。
「気持ち悪、あんたみたいなのが一番許せない」
「ぺプロさん、先に行っててください」
「え?良いんですか?」
「はい、先ずは救出が最優先です。僕もすぐに向かうので」
「分かりました、後任せます」
ぺプロさんは先に向かうために男を通り過ぎようとする。
それを見た男は舌なめずりをしながら向かってくるぺプロさんを迎撃しようとする。
「そう簡単に行かせるわけ——————」
「アグレッシブフルート!」
手を出そうとする男の当たるギリギリで魔法を放つ。
それにより男は委縮し、手を出せずにぺプロさんは先に進んだ。
「お前‥‥‥!」
「女性への礼儀がなっていないようですね」
「礼儀だと?それなら知ってるぞ。先ずは挨拶をして、その時頭を下げさせる!!ロックスタンプ!」
「リフトタイフーン」
上から出現させる岩を風の魔法でその場に止まらせる。
「違います。先ず軽く挨拶をしてから‥‥‥!」
「う、うわーーー!」
そのまま岩を相手の方に向かって投げ飛ばす。
そのまま男は壁に激突し意識を失った。
「相手の頭を地に付けさせるんです。これがクソ野郎に対しての礼儀作法ですよ」
こんな奴でも奴隷から解放させなければいけないんですよね。
僕は薬と男に注入する。
すると体に刻まれていた印は消えて行った。
「さてと、ぺプロさんの後を追わないといけません――――――っ!」
その時突如水の弾丸がこちらに飛んでくる。
それは壁にぶつかると大きく深い穴を作った。
この魔法の威力は十二魔導士に匹敵する!
「ああー殺せなかった。私はなんて駄目なんだろう。いざと言う時にやれない私はただのゴミだ」
すると曲がり角からゆらゆらと体を揺らす怪しげな女の人が現れる。
「どうか、すぐに死んでくれませんか?」
「どうやらあなたは一筋縄ではいかなさそうですね」




