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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その十一 カノエvsサザミ&エングその3

「炎王の領域だと?」


エングはカノエが言ったオリジナル魔法にピント来ていないのか同じ言葉を復唱する。

だが俺はその言葉に聞き覚えがある。


「領域、噂では聞いていた。王たちはそれぞれの領域を持っていると。それはその場を支配し、自身に圧倒的な有利な環境を作り出すことが出来ると。それは王自身が持つ莫大な魔力と魔法の知識がなせる業だ」

「おいおい、何でそんなこと知ってるんだよ。まっとにかくやばそうなのは伝わって来るな」


やばいなんてものじゃないだろう。

オリジナル魔法だという時点で危険なのに王特有の魔法は恐らくどんな状況もひっくり返す程の力を持っているだろう。


「エング!平然を装っているが奴の傷は深い!魔法を展開する前に畳みかけるぞ!」

「がっはっは!任せろ!次こそ、沈めてやるよ!」


俺とエングは一気にカノエの元へと向かう。

カノエが逃げた先は狭い廊下だ。

この場所なら逃げ道はほとんどなく魔法をぶつけることが出来る。

だが、念のためもう一度静観する者をぶつけて確実に一撃を与える。


「リフトタイフーン!」


風を巻き起こして視界を塞ぐ。

その間に奴の体に触れれば俺たちの勝ちだ。

風が渦巻く中を俺は飛び込む。

見えた、触れられる。


「言っただろ。お前らは追い詰められているってな」


触れようとした直後、そんな声が聞こえて来た。

その瞬間、突如地面に魔法陣が展開されていた。

ありえない!こんな早くしかも視界もままならない状態で展開できるわけがない。


「炎王の領域!」


そう唱えられた瞬間、体中が熱気に包まれ燃えるような熱さが全身を襲った。


「うぐっ!あああああ!」


あまりの暑さに耐えかねて俺は転がりながらその場を離れる。

魔法陣の外に出たからだろうか、突如熱を感じなくなった。

その時、俺はある所に気付いた。


「体が燃えていない?」


確かに熱は感じた、だけど体は燃えていない。

燃えたのは体じゃないのか。


「ガハハハハ!まさかこんなうまく引っかかるとわな。ここには事前に魔法陣を設置しておいたんだよ。のこのこと付いてきやがって、追い詰められているとも知らずにな」


そういう事か、だからこそ奴はわざわざ俺を逆なでさせるようなことを。


「どうだこの熱量は!耐えられねえだろ。お前等みたいな気合の足りねえ魔法使いは一歩でも踏み込めば即丸焦げだぜ」

「それはどうかな!!」


その時、エングがカノエの元へと迫っていた。

あいつ、中に居たのか!


「お前は!?」

「がっはっは!油断したな!喰らえよ、フレイムキャノン!」


完璧に入った、確実にカノエの渾身の一撃を入れた。

そのはずだったが、放たれた一撃はその場で渦の様にして渦巻いていた。


「な、何だこりゃ!?」

「炎王の領域の中じゃ、炎の魔法は全てを飲み込む。返してやるよ」

「っ!?」


その渦は反転してエングの元へと飛んできた。

強烈な爆風と共にエングが吹き飛ばされているのが見えた。


「エング!!」

「げほっがは!こりゃ、まずいな‥‥‥」

「ひどいやけどだ。まともに喰らったのか」

「一杯食わされちまったよ。ちょっとなめてたわ。暑さに耐えられれば行けると思ったんだがな」


そう言ってエングは苦笑いを浮かべる。

まずい、状況は最悪だ。

あの領域では炎の魔法は全て吸収される。

つまり、エングのオリジナル魔法が完封されてしまう。

決定打が封じられた。


「どうした、さっきまでの威勢は!必殺の一撃を封じられて落ち込んだか!」

「エング、行けそうか?」

「少しばかりしんどいが泣き言言ってられる状況じゃないだろ」


エングは体をゆっくりと起こす。

既にオリジナル魔法を二度も発動している。

魔力の消費もかなりあるはずだ。

本格的な戦闘での慣れない魔法、それによる副次的ダメージ、魔力の操作もまだ完璧じゃないはずだ。

練習の時は四、五発撃てると言っていたが今の状態を見るに万全で撃てるのは残り一発か。

俺も魔力レベルが完全じゃないうえ魔力消費の激しいオリジナルを完全な状態で発動するのは少し無理をする必要がある。

次外せば終わりだな。


「エング、お前は少し休んでいろ。お前が要だ」

「だがあの領域をどう突破するつもりだ?」

「俺のオリジナル魔法は完全に魔法を遮断させる。魔力自体を発動できなくさせるんだ」

「なるほどな、つまり今発動させた魔法も解除させるってわけか」


理屈で言えばそうなる。

だがそれを実際に行えるかは不可能に等しい。

俺の発動条件は相手に触れる事、あの領域内に入らなければならない。

エングの体はひどいやけどだが、あれは魔法をぶつけられたことによるやけどだ。

あの時の妙な感覚をもう一度体験すれば分かるかもしれない。


「ふぅ‥‥‥」

「おっまさか入るつもりか?やめておけ、あいつ位の根性がなければ苦痛でもがき苦しむだけだぞ」

「俺に根性がないように見えるか?」

「ガハハハハ!さっきの事を忘れたわけじゃないだろうな?無様に転げまわっていたじゃねえか」

「確かにあの時は覚悟が足らなかったな。だが今は違う」


俺は一歩踏み出す。

あの領域に入れば先程の痛みと熱を感じることになるだろう。

だがエングが耐えたのなら俺も乗り越えなければならない。

あいつの横に立つと言う事は、あいつと共に戦うと言う事はそう言う事だ!


「ぐっあああっ!」


体を焼き尽くす程の熱と痛みが突然襲ってくる。

やはり、この痛みは内側から来ている。

じわじわと何かが燃え尽きて行っているのが分かる。

根本的な痛みの根源、これはもしかして。


「魔力が、燃えている?」

「そうだ。領域に踏み込んだものの魔力を燃やし尽くす。その炎は領域を出ない限り消えることはない。さらに魔力が尽きれば今度は命を燃やす。魔力は生命と直結しているからな」

「なるほど、そりゃあ苦しいわけだ」


俺は一歩一歩確実に前へと進む。

どうやら中心に近づけば近づくほど、火力も増していくようだ。

歯を食いしばっていなければ今にも叫び出したいくらいだ。


「おいおい、本気で来るのか?言っておくがこの領域は魔力が尽きない限り発動し続けるぞ。さらに言うと俺の魔力は常時ガイス様に供給される。つまりお前の命が尽きるまで炎は消えない」

「っか、よ‥‥‥かんけい、なっいな」


やばいな、魔力を根こそぎ消されると言うのは意識を持って行かれそうだ。

これをエングは耐えたのか、やっぱり‥‥‥すごい奴だな。

俺はそのままゆっくりとその場で倒れた。


「ガハハハハ!どうやら先に気力が尽きたようだな!所詮はそんなもんだ!やはりお前には根性がない。さあ、後は最後の一人をやるとするか」

「何終わった気になってんだよ」

「何だと?」

「忘れたようだから教えてやるよ。あいつは俺よりも負けず嫌いだぜ」

「モメントウィンド!」


俺は自身の体を風で吹き飛ばして一気にカノエとの間合いを詰める。

瞬間的に中心に向かった事で一気に体が燃えた痛みが来た。

だがそれでもそうだとしても!


「この状態で魔法が使えないとでも思ったか!ファイヤーファング!」


体に炎の牙食い込む。

骨が肉が燃えて砕ける。

あいつの隣に立つために!


「っ!」

「な!?」


引くわけには行かない!!


「静観する者!!」


そのままカノエの右肩に俺の手が触れる。

その瞬間、魔法陣が消えて体の奥底にあった熱さも消えた。

俺はそのまま転がり壁に背中を叩き付ける。


「後は任せたぞ」

「くそ!まさかまた触れられるとわ!何とか逃げ——————」

「逃げられねえよ!」


動けないカノエに向かってエングは魔法を撃つ構えをする。

カノエは足を動かそうとしているが固定されたかのようにその場から動けずにいた。


「くそ!くそくそくそ!」

「サザミ、お前が手にした勝機、絶対に逃さねえ!喰らえよ、フレイムキャノン!!」


魔法陣を展開してエングは動けないカノエに向かって必殺の一撃を放った。

これで終わったはずだ、確実にカノエは動けなかった。

避けることは絶対に不可能だ。


「っ!?何だと‥‥‥」


避けることは絶対に不可能だ。

不可能のはずだ、それなのに魔法が放たれた射線上にカノエの姿が無かった。


「一体何処に行きやがった!」


逃げられるわけがない、まさか体ごと吹き飛ばされた?

いや、魔力レベルの差がある以上そこまでダメージは入らないはずだ。

その時、カノエが立っていた場所に穴が開いているのが見えた。


「まさか!」

「ガハハハハ!死ぬかと思ったぜ!」


そう言ってカノエはゆっくりと穴から出て来た。

初めからあった穴じゃない。

穴は力づくでこじ開けられた穴だ。


「その場から動け無くてもある程度体は動かせたんでな。思いっきり殴って床を壊して何とか避けられたぜ」

「やられた、俺の一撃が交わされた」


あの一撃が最後の一撃だった。

それを外したと言う事は。


「さてと、お前等万事休すって所かな」


俺達はこいつに勝てない。



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