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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その三 ミュウラvsミズト&ナズミ

ウォータープラメント


恐る恐る城の中に入って見たもののそこには誰も居なかった。


「静かですね」

「警戒を怠らないで、いつ何が飛んでくるか分からないわよ」


お姉さまの言う通り、この明らかに異常な状況ではそう言った事も警戒しなければならない。

だけどミュウラ様がわざわざ城に誰かを待ち伏せてるとは思えないけど、今のミュウラ様がそうかどうかは分からない。

そのまま進んで行くがお姉さまの警戒とは裏腹に簡単に王の間にたどり着いた。


「行くわよ、ナズミ」

「はい、お姉さま」


この奥にミュウラ様が居る。

そう思うと自然と拳を握ってしまう。

だけどもう臆している場合じゃない、ちゃんと覚悟を決めないと。

お姉さまはすぐに迎撃できる準備をしながらその扉を開いた。


「え?」


その先に見える光景は自身が予想していた物とは全く違う光景だった。


「あら、やっと来たのね。ようこそ私の城へ、ナズミミズト」


そこにはテラスで優雅に紅茶を飲んでいるミュウラ様の姿があった。

とてもこれから戦うような雰囲気には見えなかった。

思わず警戒心が解けてしまう。


「ミュウラ……様?一体何を」

「何って、紅茶を嗜んでいるのよナズミ。あなたも一緒にどう、こんな天気のいい日にはゆっくりと過ごしたいでしょ?」

「ようやく会えましたね、ミュウラ様」


お姉さまは鋭い目つきで椅子に座りながら紅茶を飲んでいるミュウラ様を睨みつける。

するとミュウラ様は少し残念そうに紅茶を机の上に置く。


「どうやら、紅茶を嗜む余裕はないようね。良いでしょう、こうなる運命だと言うのなら私も相応の対応をしなければ行けないわね」


そう言いながらミュウラ様はゆっくりと椅子から立ち上がり私達の元へと歩み寄る。

独特な気迫が辺りを包み込む。

私達の前ではこんな雰囲気を纏っていなかった、余裕と殺意。

自身が上だと信じて疑わないその姿勢とそこに含まれた微かな殺意。

私達を敵として見ているんだ。

あの、ミュウラ様が。


「これがあなた達が欲している物、そして我らが王が欲する物」


手には源魔石の欠片が握られていた。

お姉さまも同様に源魔石の欠片を見せる。

それを見てミュウラ様は薄い笑みを浮かべてそれをポケットにしまった。


「勝者だけがすべてを得られる、島王選と同じよ。あなた達は私の為に命をかけて戦ってくれたわ。だけど今は命をかけて私を殺そうとしている。ああ、神は言っていますこんなにも悲劇的なことはないと」

「ミュウラ様にとっての神とは何ですか?」


お姉さまはそんな質問をミュウラ様に投げかける。

するとミュウラ様は悩んでいるのか顔を俯ける。


「難しい質問ね。人々にとって神は崇める対象、崇拝する事で自身が安心して生活をすることが出来る。崇めると言う事は自身を守ってもらい、絶対的な正解を導いて欲しいから。私はそう言った事を望んでる」

「ミュウラ様が神の名を口にする時は自身の想いを口にした時、ミュウラ様自身神を崇拝しているわけじゃない。神の名を口にすることで相手に想いが伝わるとあなたは言いました」


その言葉にミュウラ様は不機嫌にそうに目を細める。


「何が言いたいの?」

「あなたは私の求める王ではないと言う事です。ミュウラ様、いえお前は誰だ」


先程よりも濃い殺気がミュウラ様に向けられる。

お姉さま、怒ってるんだ。

大切な人を操られて、ミュウラ様の姿で声でミュウラ様とは違う考えを言われて。


「少し、思い出しにくくなっているの。喋り方はあっているかしら、それとも内容が間違っている?」

「お前の存在自体が間違っている」

「ふふっひどいわ。私はこんなにもあなた達を愛しているというのに、そうねでも愛と憎悪は表裏一体だから。愛せば愛す程、あなた達を壊したくてたまらないの!」


するとミュウラ様が複数の魔法陣を展開する。

だがその魔法陣から魔法が放たれる前に魔法陣が細切れになる。


「返してもらうわ、私の王を。醜い魔力を引きずり出させてやる」

「やって見なさい、あなた達に私が殺せるかしら!」


――――――――――――――――――

ウォームウッズ


この独特の木の匂いが懐かしい。

巨大な樹木の中に居るとやっぱり安心する。

自然はやっぱりいい、心が落ち着く。

キンメキラタウンは自然が少ないから、居心地が悪い。

すぐにでも戻りたい気分、でもその前にやらなければいけないことがある。


「この奥ね」


王の間、あの2人は恐らくここに居る。

明らかに気配がする、隠してないってことは誘ってるのね。

行ってやるわよ、どうせ行かなきゃいけないんだし。

そのまま扉を開くと、案の定二人が待ち構えていた。


「こんにちは、ピンカ。いや、今の時間だとおはようですかね」

「シンラ……」

「ふふっ呼び捨て何て見ない間にずいぶんと反抗的になってしまいましたね。ですが私はそんなピンカも好きですよ」

「御託はいいわ。あんたに気に入られたくもない」


私は未だに喋らずに横で突っ立っているイナミを見る。


「あんたにはガッカリしたわ。敵側に寝返る何て。それでもシンラ様の十二魔導士の自覚があるの」

「十二魔導士はもう解散したでしょ。俺は俺の意思でここに立っているんだ」

「意思だって?どうせ流されただけでしょ、そうやって他人にそそのかされてだからいつまで経っても自立できないのよ」

「ピンカに言われたくない。何も分かんない癖に!」


イナミは怒鳴り声をあげて私の言葉に聞き耳を立てようとしない。

何なの、イナミどうして私の言葉を無視するわけ。


「あんたが納得いかなかろうと意地でも連れて帰るから。弟のわがままを聞いていられるほど姉は優しくないからね」


私はそのままイナミの元へと歩み寄る。


「いつもいつもそうやって俺の事を知ろうとしない。ピンカだって、一人じゃ何もできない癖に!」

「一人で、出来るわよ」

「出来ないよ!そう言って見栄ばっかり張って、誰も信用出来ないからって一匹狼演じて自分は強いんだって口調を荒げて皆に伝えようとして、それでも結局ピンカはいつも一人で居る時は泣いてるんだから!」

「くっ!私は泣かない!それ以上、馬鹿にするのなら許さない!」

「ピンカ!」


イナミは一際大きな声で私の名前を叫ぶ。


「取り戻せるんだよ。ガイス様が言ってたんだ、協力すればシンラ様を生き返らせてやるって。ピンカ、戻れるんだよ。俺達はもう一度家族に慣れるんだ」


それはイナミの心からの叫びだった。

もう一度家族に戻れる、本当に。

いや、そんなわけがないだってガルアが言っていた。

もう戻れないと、シンラ様はママは死んだのだと。


「イナミ、目を覚ましなさい。あんたがしてる事は希望にすがってるだけよ。ありもしない希望にね」

「それは違いますよ、ピンカ。あなた達のママは生き返ります。それは私が保証しましょう。彼女の魔力は厳重に保管されています。共に協力してくれているというのならその魔力を私の体に流し込んでも良いと、言いました」

「実際に魔力も見たんだ。それは紛れもなくシンラ様の魔力だよ」

「シンラ様の魔力……」


魔力は人によって違う。

マナが体内に入り魔力に変化する事でそれぞれ魔法を放つことが出来る。

その魔力がガイスである為にシンラ様はガイスの性格に段々と近付いている。

今だってシンラ様っぽい喋り方をしているけど、それも変わって行く。

だけどもしシンラ様の魔力を注げば元に戻る?

その答えは……


「だからピンカ、一緒にやろうよ!協力すればいいだけなんだ、他の皆にもこの事を伝えればみんな分かってくれるよ。ガイスはこの島に留まるつもりはないんだ。みんな普通に暮らせるんだ、誰も失うわけには行かないんだよ」

「イナミ」

「何?」

「死んだ人はもう蘇らないの」


気付けばその言葉が出ていた。

頭で考えていたわけじゃない、自然と先に口が動いていた。


「何、言ってるの?」

「シンラ様はもう死んだの。イナミの隣に居るのはシンラ様じゃない、そいつは偽物よ」


シンラは黙ったままイナミの反応を伺っていた。


「違うよ、ピンカ。死んでないんだよ、取り戻せるんだよ。何で分かってくれないんだよ、どうして協力してくれないんだよ。ピンカは戻って来てほしくないの!?家族に戻りたくないの?」

「私の家族はママのシンラと弟のイナミと姉の私。その三人だけ、そいつは家族じゃない!」

「ピンカ!それ以上言うと怒るよ!」

「イナミ、皆戦ってんのよ。それなのにあんたはまだ前に進まないつもり、過去を超えて未来に行こうとしてるあいつらにあんたは生き返れるってそんな不確かな希望を与えるつもりなの?ふざけんなよ、私はそんな物の為に戦ってるわけじゃない!」


思わず拳を握りしめる。

あのバカには一度きついビンタが必要ね。


「姉として目を覚まさせてやる。今のあんたに必要な物はそんな物じゃないってね」

「それはこっちのセリフだよ、ピンカ。俺は諦めない」


すると先程まで傍観していたシンラが動き始める。


「どうやらこれで決まったようですね。ピンカがどういった立場で私達と対峙するのかを。彼女は境界線を引きました、イナミもう彼女は私達の家族ではなく敵なのですよ」

「シンラ様……」

「始めましょうか、源魔石を奪い合う殺し合いを!」



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