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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十三章 奪われた者達の決戦
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その一 状況整理

「行っちゃったわね」


クリシナは寂しくなった広間を見つめてぽつりと呟く。

そしてクリシナは同様にその場に残っているブライドの方に視線を移す。


「最後の言葉、ブライドにしては珍しいわね。必ず帰って来いなんて、まるで勝てることは決まってるみたい」

「ははっあいつらは強いよ。この一週間、あいつらは己の限界を超える為に心身を鍛えきた。その結果、見事に限界を超えて見せた。それは本当に賞賛すべきことだと思うし、素直にすげえと思う。だが目標のレベルに行った者と行かなかった者がいる」

「んー私としてはその目標自体が無理難題だったと思うけど。素直に頭よしよししてあげればいいのに」

「今回の戦いではその差が恐らく決着に響くんだよ。だがそれでもあいつらが勝てると思えるのはクリシナが言ったように仲間がいるからだ。だが……」


ブライドは一拍置いて話の続きを話し始める。


「ピンカは辛いだろうな……」

「一人ぼっちで戦いに行かなきゃいけないのよね。しかも家族が敵になっちゃう何て、私も一緒に行ってあげたかったわ」

「やめとけ、嫌われるぞ。まあ、ピンカ次第だろう。俺達は俺達のすべきことをやるだけだ。さてと、そろそろ目的地についた頃かな」


――――――――――――――――――――――――――――

ネッパニンス

サザミ(魔力レベル12)エング(魔力レベル14)チーム


「久しぶりだな、ここに来るのも」


懐かしの土地に思わず声が漏れてしまう。

この他の土地にはない熱さと山付近に立てられている為道が凸凹しているのも懐かしい。


「がっはっは!たしかにこの空気感は久しぶりだな!故郷に戻ってきたようだぜ」

「それはそれとして……エング」

「ああ、分かってるぜ」


俺は改めて街中を見渡す。

やはりそうか、この違和感は嘘ではなかったようだ。

その時、耳元でブライドの声が聞こえて来た。


「ん?もしかしてこりゃあ通信か?」

「エング、静かにしろ」


俺は通信機から聞こえて来る音に集中する。


『あーあーテストテスト。聞こえてるか、ブライトだ。お前らの状況を聞きたい、まずはサザミとエングペアの状況を教えてくれ』


状況説明か、確か通信機の縁を押せば通信が出来るんだったな。

俺はそのまま耳に装着している通信機の縁を触る。


「こちらサザミ、エングペアだ。今はネッパニンスに居る。今の所は敵の姿は見当たらない。いや、見当たらないどころか気配すら感じられない。それ以外は特に大きな変化はない。以上だ」


確かもう一度縁を押せば通信は切れるんだったな。

簡潔に情報を伝えると再びブライドの声が聞こえて来る。


『分かった。次にピンカの方はどうなってる』

『えーっとこれで良いのかしら。あーこちらピンカ、今はウォームウッズに居るわ。イナミの姿は見えないわ。ていうか、サザミと同じように誰も見えないわね。こっちからは以上よ』


どうやらウォームウッズにも俺達と同じように人が見かけないようだ。

以前来た時は侵入するのが躊躇われるほどに居たというのに。


『分かった、次はミズト、ナズミペア。状況を教えてくれ』

『私達はウォータープラメントに居るわ。町の状況はそっちの二つと同じ状況、恐らく城に待ち構えているから、すぐに向かうわ。通信切るわね』


簡潔な説明を終えるとそのままミズトの声が聞こえなくなる。

どうやら街の状況は全員同じのようだ。

まさか全員城に待ち構えているのか?

いや、そんなに大勢城に詰めればかえって動きにくくなるはずだ。

なら奴らは何処に。


『了解、それじゃあ次は城潜入メンバーサラ、ハイ、ロー状況はどうなってる?』

『はいよ、あたいらは今シアラルス付近の森で偵察中だよ。ガイスが出て来るのを確認次第、潜入を始めるつもりさ』

『分かった、デビ、マイト聞こえたか?ガイスが出て来るのをあいつらが確認した時、お前の出番だぞ』

『はいはい、分かっておるわ。ガイスを足止めすればいいんじゃろ』

『こちらも分かってるよ。デビの状況を逐一報告すればいいんだろ?』

『ああ、デビに何か異変が起きた場合はすぐにその場を離れろよ』


あの女の役割はガイスの足止め、それが無ければこちらに攻めて来る。

特に今回の作戦では重要な役回りだろうな。

まあ地獄の王ならその心配もないだろう。


『次に研究所チーム、リドル、ハイト、ツキノ、ガイ、状況を教えてくれ』

『はい、僕達はぺプロさんと合流して現在研究所に向かっています。研究所に付き次第、奴隷の解放と施設内に居る半獣を人間に戻す薬を投与していきます』

『ああ、そっちは任せたぞ』


研究所の侵入か、あのかつの仲間のリドルが余計な難題を増やしたせいでもあるが結果的に奴隷も戦力として加算されるのが現状だ。

早急につぶしておいた方が良いだろう。


『そしてかつとガルア、状況はどうなっている』

『こちらかつだ。今はガルアと一緒に目的の場所に向かってる。多分そろそろつく頃だと思うから、しばらくは通信が出来そうにない』

『分かった、戦いが終わり次第通信をくれ。それではみんな、武運を祈る』


そう言うと完全に通信が切れてしまった。


「どうやらついに本格的に作戦が始まったようだな」

「あの城にカノエが居るんだろ。早く行こうぜ」


興奮しているのか、エングは早歩きで城へと向かって行く。


「ちょっと待て、前回の反省を忘れたのか。今のカノエは本物のカノエ様ではない。同じように何か罠が張られているかもしれない」


それに加え、街に誰も居ないと言うのが気になる。

心の隅の不安が消えない。


「それに今の俺とお前には明確な差が出てる。だからこそ余計に慎重にならなければならない」

「まさか魔力レベルのことを言ってんのか?サザミ、俺とお前に差なんかねえよ。あの時の約束を忘れたわけじゃないだろ」

「約束か……ああ、分かってる」


あの時、カノエ様と誓った約束———————


あれはまだ俺とエングが未熟だった頃、十二魔導士になってまだ日が浅く互いに競い合っていたころ。


「どうだ!このモンスターの数を!」


エングの隣には大量のモンスターが山積みとなっていた。


「クフフ、少ないな。これを見て見ろ」


俺も同様に積み重なったモンスターの山をエングに披露する。

エングの山よりも高く数も多かった。


「うぐっ!数より質だ!俺の方が大きいモンスターばっかだろ!」

「そんな非効率な討伐をした所で意味がないだろ。そもそもこの高さがすでに俺とお前の差を物語っている」

「負け惜しみか、弱っちいやつ専門だもんなお前は」

「何だと!もういっぺん言ってみろ!」


思わずエングを睨みつけるとエングも同様にこちらを睨みつけて来る。

やっぱりこいつとは馬が合わない。

なら明確な実力差を示すべきだ。


「カノエ様に決めてもらおう。それが公平だろう」

「おいおいいいのかよ。そんなことしたら弱いってのがバレちまうぞ」

「勝手に言ってろ、最後に笑うのはこの俺だ」


すぐにカノエ様に頼みどちらの数が多いのかを決めてもらう事にした。

正直エングと俺の力は拮抗していた。

何度か戦ったからこそ分かる、だからこそ第三者の意見が必要だった。

カノエ様は一目見ただけで腕を組み言葉を発した。


「お前ら何でこんな無駄な事してるんだ?」

「は?」


思わぬ言葉に表情が固まってしまう。

この人は何を言っているんだ。


「カノエ様、どちらがあなたの右腕に相応しいかを決めて欲しいのです。確実にエングよりも俺の方が上だと思います」

「あっテメエ来たねえぞ。俺の方が上ですよね」

「何言ってんだよ。別に上も下もねえんだよ。俺がお前らに求めてんのは個人の強さじゃねえ」

「とっいいますと?」

「いいか、お前等は二人で最強になれ。それが俺の求める十二魔導士だ」


そう言ってカノエ様は笑って見せた。

そうだ、カノエ様は俺達を二人で最強になる様に言ってくれた。

だが俺は今、エングと肩を並べられるのだろうか。


「何ボーっとしてるんだ、行くぞサザミ」

「ああ」


少しだけそう思ってしまう。



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